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しおりを挟むしゅん。となっているエリアス様と
「部屋割りを決めようか」と呑気なジュリアス様。
対極的な2人にイラッとしながらも
ふぅー。落ち着いて。と深呼吸をする。
「まずは、この部屋はワタシの部屋で
その隣が君のだ、それからリビングがあるから
ご飯はそちらで食べよう」と案外まともな提案をされた事でほっとする。
「客間があるにはあるがそこは物置だからほっと置いていいよ」と言うジュリアス様。
まぁ、触りたくもないから「はい」と返事をする。
「お風呂も、指定の棚さえ触らなければ勝手にして良い。
君の物が整うまでは済まないが、共有スペースだと心得て欲しい。
ワタシはワタシでする事があるから今日は
ゆっくりするとよい」
「はい」
「何か質問は?」とジュリアス様。
「嫌いな物はありますか?」と聞けば「君が作るのか?」と質問で返される。
「はい、一応料理は下町で習いましたし炊事は一通りできます」
「ふむ、いや、大きな洗濯などはクリーナーで済ませよう
一緒に洗いたくない物などは自分で洗うように
それからワタシに好き嫌いはない
以上だ」とキッパリと告げるジュリアス様。
「はい」私は何も異論はないから頷く。
後ろでエリアス様がびっくりしていた。
小さな声で「ずいぶんまともになったのね」とぽつり。
「聞こえているぞ、エリアス」キッと睨んでいるが怖くない。
「ああ、それから君の事はワタシもエリと呼ばせてもらう」
「ああ、はい」
「紛らわしいからな」と一言添えて。
まぁ、私も同意するけど、最後の一言は要らないんじゃないの、と気持ちになる。
「ジュリアス様、私を一緒に住まわせていただきありがとうございます」とお礼を述べれば
「………いや、いい………」とポツリと言うジュリアス様。
シッシッと猫を追い払うように仕草をしながら背中を見せるジュリアス様。
「それじゃあ失礼します」そう言って私はジュリアス様の部屋を後にした。
***********
ジャングルな内装の部屋から出て見れば。
案外廊下もフローリングで、私の部屋となる室内は
普通な事に心からほっとする。
と言うより、伯爵の家の私の室内よりずいぶん広い!
それに家具も可愛い!
心がウキウキと弾む。
「エリ、貴女アレは物置だったのよ」とポツリと呟くエリアス様の言葉に分かっていたけれど。
それじゃあ早速、荷解きをする。
荷解きと言うほどでもない、私の手荷物は貯金していた
私のお金と乳母の残してくれた数点の洋服だけ。
伯爵の家にある私物なんて何もない。
「買い物に行けるか聞いてみよ」
衣装タンスに洋服をかけたら、ジュリアス様に声をかける。
「ジュリアス様、ちょっとだけお買い物行ってきて良いですか」
「ああ、ちょっと待ちなさい」
そう言ってガソゴソと取り出した物は、魔法道具のバックとお財布だった。
「このお金で好きなの買いなさい、それからコレを連れて行くと良い」
そうやってパチンと指を鳴らせば、ニョキニョキと
地面から生えてきた人形(ヒトガタ)の男の子と女の子。
「双子のマールとメールだ。」
「ご主人さま」と双子ちゃんが声を揃えていう。
「マールが男の子でメールが女の子だ」
ジュリアス様が「子」って言うのが違和感だけど、もっと違和感なのが、2人とも猫耳が付いている事だ。
私を見上げているのも、ものすごく可愛い。
「よろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いします」とニコッと笑うと2人とも
八重歯が見える。
カギ尻尾なのが「マール」男の子で、三毛猫なのが「メール」の女の子。
何より可愛いのが、2人ともお揃いの衣装を着てる事だ。
「マールとメールから決して離れるな」と
ジュリアス様が言う。
「でもお金は……こんなに」「気にするな」とフッと笑うジュリアス様はなんだか悪い顔をしていた。
それならありがたく使わせて貰おう。
「ありがとうございます」ははーとお金を持ち上げれば
「君は何をしている?」と怪訝な顔になったジュリアス様。
それから私はジュリアス様の部屋を出て
キッチン来て、戸棚や収納箱、冷蔵室に入って材料を見るけど、見事に空で。
料理をする包丁にまな板やフライパン、鍋などはそのままあるけど。
本当に最低限の物しか置いていなかった。
必要な物をリストアップして、早速お買い物に行く。
私はこの時、まだ自分がいた伯爵領だと思っていたーーー。
「あっ、待ってエリーーーーー」
*****
ジュリアス様の家から出て見れば、景色がガラリと変わる。
箒に乗っている人々に、なにより朱色の空
白い太陽 白い雲は向こうと同じ。
それだけでも、ここは自分がいた伯爵領だけでない事を知る。
「何、ここ………」
口をあんぐりと開いている私に
「エリ、先に行かないで」と一歩遅れてエリアス様はやってきた。
マールとメールも、ととと。と後ろからやってくる。
「エリアス様、ココ何処ですか?」
と聞けば
「ここは魔法の国、メタルフォーゼよ
獣人にエルフに魔族も一緒に済んでいるわ」
「メタルフォーゼ、聞いた事ないです」
「そりゃそうでしょうね、人間には都合が悪い事だもの」
と哀しそうに笑うエリアス様。
「エリ様、ここははじめてかにゃ?」とメールが聞いてくる。
「うん、はじめて」
「じゃあ教えますにゃ」とマール。
「ここは、魔法の国、メタルフォーゼ
人間の国の間の境目にあり地図には載っていない場所
通貨や言葉も、人間の国と同じで生活には欠かせないにゃ
文字も支障がないよう共通語にゃん」
とメール。
「だから、ホラ」とマールから鏡を渡されて見てみれば。
私の見た目も元通りになっていた。
金髪に近い髪色からくすんだ灰色へ。
「ここ、メタルフォーゼは人間の国と違って自然とかかっていた魔法は溶けて、阻害魔法は必要ないにゃん」とマールがいう。
「エリ、驚いたでしょう?マールとメールの
言葉を信じて。信じて…は難しいかも知れないけど悪いようにしないから」
と、エリアス様の目は真剣そのものだった。
「それから、さっきは黙っていてごめんなさい」と
エリアス様は謝ってきたけれども。
「怒ってないから大丈夫です、ただちょっとだけ説明が欲しかったけど」と私が言うと
エリアス様は「う、そうよね、その通りだわ、でも許してくれてありがとう」と微笑んでいる。
ふわりと笑うエリアス様はやっぱり綺麗。
ただやっぱり
エリアス様の手の感触がない事だけが残念だった。
「エリアス」と言う傾国の悪女だと言う女性と
目の前の女性の「エリアス」は違うと
確信している。
「エリ、私が言うのもなんだけど私が優しいフリをしていて貴女を油断させているのかもと少しは警戒しなくちゃ」と
エリアス様は言うけど
「本当に騙す気なら、警告なんてしないですよ」と
私も笑う。
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