冷たい息を温めて

佐々木 朔夜

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冷たい空

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冬の寒く青い空が広がる
俺達が出会ったのはこんな寒い日の
月のきれいな冬の夜だった

「はぁ…」

その日、俺は三か月付き合っていた男と
別れた…

「三か月か…」

我ながらよく持ったと思っている
同じ職場の同僚の男だった

気立てがよく、女からも好かれていた
そんな男がどうして俺と付き合ったのか?

そんなの簡単だ…

『女に飽きたんだよ…そしたらそこにお前がいたわけ』

沢山の女に手を出して飽きたからという理由で
俺に手を出した…それだけのことだ

「たったそれだけの事…なんだよなぁ」

「あの…」

不意に聞こえた少し高めの声
声の主を見てみるとそこには
月に照らされた綺麗でふわふわな金色の
髪の毛を持つ男の子がいた

「え?おれ?」

「そうです!…お兄さんとても悲しそうな声を出してたから…」

「そう?」

ははは…と乾いた笑いしか出てこなかったのを
今も鮮明に覚えてる

「僕、西城 リンって言います!」

「あ、俺は多田 リオ…です」

あの時は確か年下のリンに少し緊張してて
思わず敬語で自己紹介したんだっけ

それから、毎晩とはいかなくても
夕方ごろに合えばリンと話して仕事の疲れも
職場の妙な空気のことも忘れて癒されていた

「リンってさ…今何歳なわけ?」

「…?何歳に見えますリオさん」

ニコニコしながら聞いてきたっけ

「じゅう…なな?」

「わっ!すっごいなんでわかったんです?!
僕、声が高いしこんな顔だから皆17歳に
見えないっていうんですよ?!」

「そう?確かに声だけ聴けば17って
わからないけど…ふとした瞬間とかは
ちゃんと高校生男士だしなぁ」

「そ…かぁ」

それからは簡単だ
リンが俺に対して「好き」だといい始めた

俺はそんな気持ちに
少しとまどった
だって未成年だぞ?

これからいろんな人と出会って
綺麗なおねぇさんとかと恋に落ちて
いつかは結婚して家庭を作って

それが普通の男性の在り方のはず
まだ若いのに未来のない生き方なんかしてほしくなくて

リンには幸せになってほしくて
そのあどけない笑顔で
いつまでも笑っていてほしくて
俺はリンに内緒で引越しをして
職場も変えた

そして、三年たった今
俺はまた…この場所に帰ってきてしまった

もしこの時
戻ってこなければ
俺は…こんな冷たい空の下で
こんな冷たい息をはかないですんだのか?

あぁ神様、どうか教えてください
いつになったらこんな冷たい息を
冷え切った体を温めてくれる
人が現れるんですか
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