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第3章 大狼討伐戦
第11話 地からの呼び声
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作戦会議。と呼べる程でもないかな。
昨夜に感じた気配について話題にしてみた所。
「私たちも周辺の気配を探ってみたけど。何も掛からなかった。代わりに、モンドウ先生が生きてる可能性が出て来たの」
「あの人も一緒に飛ばされて来たのか…」
「にしては、出て来るのが遅いねぇ」
「そのモンドウとは?」
リンジーさんの疑問は当然。
「俺らの異世界で、このクラス…。このギルドのような集団の取り纏めてた年配者。マスター的な人」
ヒオシが解り易く説明を。解り易い?
「人間性は兎も角。マスターだから、それなりに偉い人」
「それなりにね」
「うん。盗撮疑惑は拭えないから…」
「盗撮?あの人、そんな事してたの?」
「怖くて中身は確認してない。あいつのロッカーに在ったデジカメだけが消えてたの」
「イマイチ根拠に欠けるなぁ」
「それさ。生徒の誰かから没収した物とかの可能性は?」
「…あぁ、その線もあるね」
「うーん。そっちの方か…」
「先生か、また別のクラスの誰かの生き残りか。今はどちらとも言えない。昨日の気配が、仮にそいつの使い魔だとして。こちらに気付いて近付いて来ないのも変だし」
「一緒に来たにしては、一切出て来なかったのも可笑しい。教員としては、行動が伴ってない。変態エロセンだったら、率先して好き放題暴れるなり、または上手く誘導して女子生徒を転がすとか。しても良さそうなのに」
結局結論は出なかった。デジカメの中身を誰も確認してないんだから、本当に先生が変態かも不確か。
「デジカメ?とは何かしら」
メイリダさん、ご尤も。この世界には写真技術すら無い。説明が難しい。
「今自分が見てる物を、瞬間で描ける絵画って感じの魔道具さ」
「この学校に映研とかマン研とかがあったら、ビデオカメラぐらいあっただろうに」
新たな難解なフレーズに、ジェシカとキュリオが首を捻っていた。余計な混乱を招いてるぜ、ヒオシ君。
「丁度いいや。3人で校内探っててよ。その間に僕らはリンゴゲットしてくるから。索敵は怠らないようにね」
「解った。他にも使えそうな物があったら集めておくね。黒竜だけには気を付けて」
「私らが森に居た時は。こちらから手を出さなきゃ、魔物からは襲って来なかった。今は違うかもだから、軽く試してみて」
新たな魔道具は、大回復と状態異常解除のみにしてもらった。
便利過ぎる道具に頼っていては、いざ失った時に戦えなくなる。もしも竜種に遭遇しても、この6人ならそう簡単にはやられはしない。逃げの一手。万が一の時は、学校まで引き連れ、この9人で叩く。勝てないまでも、負傷させて撤退させる。それ位が出来なきゃ、どの道先は無いよ。
残留組は、山査子さんとカルバンが居れば魔道具をほぼ無限に製造可能。火力の心配をするだけ無駄。
メイリダさんが、一人沈むカルバンの肩に手を掛ける。
「楽な自殺なんて考えないで。死に逃げだけは、私とキュリオが絶対に許さない」
「…解って、います」
「私にはよく理解出来ないんだけどぉ。ママやパパ。町の犠牲者の分まで生きて貰わないと。浮かばれないし、救われないよぉ。アビさん。町まで戻ったら、あの唄をまた」
「はい。何度でも」
「…自分が今、生きている。生きるのが、こんなにも辛くて苦しいだなんて。でも、逃げません。それだけはお約束します」
僕は思う。もしも僕らが全員。この学校で仲良く死んでいたら。この世界の人は、誰も傷付かなかった。ヒオシも同じ気持ちだと思う。
一番最初の引き金を引いたのは。間違いなく僕ら2人。
紛れもない真実。
そんな僕らが、全ての罪をカルバン一人だけに押し付けてる。本当は筋違いだ。それが解っていても。今はまだ彼女には何も言えなかった。
「チッ…。行こうぜ。日が暮れちまう」
「早くて2日。遅くても3日間あれば充分な距離。4日経っても戻って来なかったら、諦めて王都に行ってて。峰岸君たちを助けてあげなよ。フェンリルは狼。犬の祖先。弱点も同じだと思う。これだけ言えば、後は解るでしょ?」
「…うん、解った。ここで、待ってるから」
鷲尾さんは死ぬなとは言わなかった。そんな無責任な台詞は。死は何時でも、誰にでも平等だから。
校舎を出て、馬車をBOXから取り出した。
「死なば諸共」
「想いは一つ、ってか」
「黒竜の縄張に踏み込むんだ。ある程度の覚悟は要る」
「でも折角生き残ったのに。たったの数日でしたって言ったら…。兄さん、怒るだろうなぁ」
「これは覚悟でしょうか?人様に死ぬなと言っておきながら自分たちが率先して死地に向かうなぞ」
「うえーん。始めての冒険なのにぃ。冒険者って碌でもないね。メイちゃんの言ってたとおり…」
それぞれの想いを一つの自走馬車に乗せ、僕らは西の森へと走り出した。
森へは数分で到着しちゃった…。
大型馬車は通れませんわ。
「いっちょ行きますかい、先生」
「ピンポンダッシュならぬ。リンゴ奪取」
決して上手くはないけれど。僕らは、魔の森へと踏み入った。
-----
「行っちゃったね」
「メイトの骨でも拾ってあげようと、思ってみても」
「綺麗に消し飛ばされてる?」
6人が森へと向かった後は。特にやる事も無かった。
教員たちの荷物。電源の切れたスマホ。
ライターにタバコ。誰も吸わないし、使っちゃダメ。
生理用品もフウが居れば困らない。
コ…、これは要らないわ。教頭は何て物を。見損なった。
期限切れの牛乳パック。上手い具合にチーズに…なってるわけなかった。ただのゴミ。
着替え用のジャージ。使い道の無い財布と中身。
校長室の抽斗を漁ると、百万の帯付き札束が4つ。
「現金…持って帰る?」
「一応貰っとく。帰った瞬間、取り上げられそ」
「こちらの金貨のような物?紙幣なんだね」
「こっちじゃ紙くず。メモ用紙にもならん。フウに全部あげるよ」
「アビの気が変わったら、山分けしよ」
「記念に一枚貰っても?」
「一束でもどうぞ。カルも、一緒に私たちと異世界に行かない?」
「…行けないよ。それこそ逃げるみたいで嫌。私はこちらで罪を償う」
カルちゃんの気持ちは揺るぎない。
私たちを拾わなければ。彼女は…。止め止め。たらればでは誰も救われない。
体育館に向かう途中。渡り廊下から、フウが消し飛んだ校舎側を眺めていた。
教員室側も、保健室から南が抉れていたのをフウが元の状態に戻した。自分の記憶に残る景色を。
あちら側もやる積もり?
「ちょい試してみても?」
「止める理由が見つからない。みんなの、お墓?」
「そんな大層なもんじゃないよ。ケジメてか、区切り」
「区切り?」
「ツーザサでは、ご遺体が埋まってて。町中の復元は無理だったから。そちらの供養も兼ねて。私の自己満足」
やっぱお墓じゃない。私とカルは黙って見守る。
手を組み祈りを捧げた。こちらの神など知らなくとも。
どうか安らかに。クラスメイトも。魂だけは帰れるように。見せ掛けの平和な世界へ。
私はあの日の唄を歌う。込める想いも同じ。
より抑揚を付けて。一つの曲みたく。
綺麗に戻った校舎。前よりも強固で頑丈。要塞?
何と戦う積もりよ…。
結構な魔力を消費したのか、フウもお疲れ気味だった。
普通の水を手渡す。薬類はギリギリまで町に置いて来たから我慢我慢。
「あのお祈りの唄さ。曲付けて貰おうよ」
「あ、岸川さんなら出来るかな」
「キシカワ?」
「王都で会った、召喚者の中の一人。あの子って作曲出来たっけ?」
「魔道具渡したでしょ。こうゆう時に使わなきゃ」
「押し売り感が、パないね。アビ、怖いわぁ」
「いいじゃん、減るもんでもなし。音楽室に行ってみよ」
岸川さんの得意分野は知らない。室内の楽器を全部持って行き選んで貰い所。でもでも私たちのBOXは、3人揃って大まで。無能君の無限が欲しい。
戻って来たら、持ってくのをお願いしてみよう。
祈りの唄の為なら、協力してくれると思うし。駄目って言われたら諦めて往復…。自由と時間が許せば。
再会出来た人を一人一人思い浮かべた。
岸川さんには、楽器類と楽譜とシャープ。
鴉州さんには、バスケットボールと空気入れ。バスケのエース番て何番?て、適当にゼッケンを。
桐生君には空手着。ネーム入りの黒帯が見つかった。男の子の汗臭がキッツい。カビ臭さと良い勝負。
視聴覚室で。城島君が好きそうなコミック。マンガ同好会だった気がする。違っても気分転換にでもなれば。
「変わった、絵本?」カルが食い付いた。
日本語が読めなくても、絵だけは伝わる。
少女漫画の類いは無い。ちょっと残念。見せられれば少しは元気になってくれたかもなのに。少年漫画だけなんて。
柔道部の部室にはフウが一人で入った。残した思い出を拾っている。暫くそっとしておこう。
復元された校舎側。
お解り?中身なんて無いワケよ。フウのイメージで、建物を建て直しただけだから。
こっち側なら購買と食堂と図書室、美術室とか在った。
今では壁や枠が在るだけ。以外、なんも無し!以上。
自分たちとクラスメイトの荷物や机も消えていた。
思い出が掻き消されたようで、少し悲しかった。
少しずつ消えてしまう。元の世界の遺物と記憶。
何も無いと解っていながら。峰岸君と斉藤さんが好きそうな図書室を覗いた…。それだけでした。
肌寒い屋上には行かず。本校舎南端に存在したプールの区画に着いた。
「痩せちゃったから、道着がぶかぶかだったよ」
目が赤いフウと合流後、水着でもあれば、いつか温水プールにでも入りたいねぇ。なんて話しながら。
「はて?」
「これは?」作り直した本人が一番驚くなよ。
「地下への階段?」
以前は普通のプールだった場所。見た事もない光景。
意表を突かれた私たち。
ぽっかりと大きな口を開いた、ダンジョンへの入口。
なぜでしょう。なぜだろう。
「この荒野に、ダンジョンあったの?」
「この国に関しては、よく知らない」でしょうね。
「とりま、気味が悪いから蓋しとく。今日は」
臭い物と怪しさ満点な物には蓋をしよう。今日は見なかった事にして。安心と安眠を。
-スキル【創造者】
並列スキル【創壁】
派生スキル【超硬】発動が確認されました。-
フウのピースサイン。自信作が出来たみたい。
その夜。地面が揺れる。
「地震かな」ドカンドカンと地鳴りまで響いてる。
「大丈夫。あの蓋はめっちゃ硬くしたから」
フウが手をヒラヒラ振り、再び寝に入った。
ガキーーーン。と一発高音がした。
地下からのし上がろうとした何かが…。今日は諦めたみたい。良かった良かった。
少し怯えるカルの頭を撫でながら、私も横になった。
昨夜に感じた気配について話題にしてみた所。
「私たちも周辺の気配を探ってみたけど。何も掛からなかった。代わりに、モンドウ先生が生きてる可能性が出て来たの」
「あの人も一緒に飛ばされて来たのか…」
「にしては、出て来るのが遅いねぇ」
「そのモンドウとは?」
リンジーさんの疑問は当然。
「俺らの異世界で、このクラス…。このギルドのような集団の取り纏めてた年配者。マスター的な人」
ヒオシが解り易く説明を。解り易い?
「人間性は兎も角。マスターだから、それなりに偉い人」
「それなりにね」
「うん。盗撮疑惑は拭えないから…」
「盗撮?あの人、そんな事してたの?」
「怖くて中身は確認してない。あいつのロッカーに在ったデジカメだけが消えてたの」
「イマイチ根拠に欠けるなぁ」
「それさ。生徒の誰かから没収した物とかの可能性は?」
「…あぁ、その線もあるね」
「うーん。そっちの方か…」
「先生か、また別のクラスの誰かの生き残りか。今はどちらとも言えない。昨日の気配が、仮にそいつの使い魔だとして。こちらに気付いて近付いて来ないのも変だし」
「一緒に来たにしては、一切出て来なかったのも可笑しい。教員としては、行動が伴ってない。変態エロセンだったら、率先して好き放題暴れるなり、または上手く誘導して女子生徒を転がすとか。しても良さそうなのに」
結局結論は出なかった。デジカメの中身を誰も確認してないんだから、本当に先生が変態かも不確か。
「デジカメ?とは何かしら」
メイリダさん、ご尤も。この世界には写真技術すら無い。説明が難しい。
「今自分が見てる物を、瞬間で描ける絵画って感じの魔道具さ」
「この学校に映研とかマン研とかがあったら、ビデオカメラぐらいあっただろうに」
新たな難解なフレーズに、ジェシカとキュリオが首を捻っていた。余計な混乱を招いてるぜ、ヒオシ君。
「丁度いいや。3人で校内探っててよ。その間に僕らはリンゴゲットしてくるから。索敵は怠らないようにね」
「解った。他にも使えそうな物があったら集めておくね。黒竜だけには気を付けて」
「私らが森に居た時は。こちらから手を出さなきゃ、魔物からは襲って来なかった。今は違うかもだから、軽く試してみて」
新たな魔道具は、大回復と状態異常解除のみにしてもらった。
便利過ぎる道具に頼っていては、いざ失った時に戦えなくなる。もしも竜種に遭遇しても、この6人ならそう簡単にはやられはしない。逃げの一手。万が一の時は、学校まで引き連れ、この9人で叩く。勝てないまでも、負傷させて撤退させる。それ位が出来なきゃ、どの道先は無いよ。
残留組は、山査子さんとカルバンが居れば魔道具をほぼ無限に製造可能。火力の心配をするだけ無駄。
メイリダさんが、一人沈むカルバンの肩に手を掛ける。
「楽な自殺なんて考えないで。死に逃げだけは、私とキュリオが絶対に許さない」
「…解って、います」
「私にはよく理解出来ないんだけどぉ。ママやパパ。町の犠牲者の分まで生きて貰わないと。浮かばれないし、救われないよぉ。アビさん。町まで戻ったら、あの唄をまた」
「はい。何度でも」
「…自分が今、生きている。生きるのが、こんなにも辛くて苦しいだなんて。でも、逃げません。それだけはお約束します」
僕は思う。もしも僕らが全員。この学校で仲良く死んでいたら。この世界の人は、誰も傷付かなかった。ヒオシも同じ気持ちだと思う。
一番最初の引き金を引いたのは。間違いなく僕ら2人。
紛れもない真実。
そんな僕らが、全ての罪をカルバン一人だけに押し付けてる。本当は筋違いだ。それが解っていても。今はまだ彼女には何も言えなかった。
「チッ…。行こうぜ。日が暮れちまう」
「早くて2日。遅くても3日間あれば充分な距離。4日経っても戻って来なかったら、諦めて王都に行ってて。峰岸君たちを助けてあげなよ。フェンリルは狼。犬の祖先。弱点も同じだと思う。これだけ言えば、後は解るでしょ?」
「…うん、解った。ここで、待ってるから」
鷲尾さんは死ぬなとは言わなかった。そんな無責任な台詞は。死は何時でも、誰にでも平等だから。
校舎を出て、馬車をBOXから取り出した。
「死なば諸共」
「想いは一つ、ってか」
「黒竜の縄張に踏み込むんだ。ある程度の覚悟は要る」
「でも折角生き残ったのに。たったの数日でしたって言ったら…。兄さん、怒るだろうなぁ」
「これは覚悟でしょうか?人様に死ぬなと言っておきながら自分たちが率先して死地に向かうなぞ」
「うえーん。始めての冒険なのにぃ。冒険者って碌でもないね。メイちゃんの言ってたとおり…」
それぞれの想いを一つの自走馬車に乗せ、僕らは西の森へと走り出した。
森へは数分で到着しちゃった…。
大型馬車は通れませんわ。
「いっちょ行きますかい、先生」
「ピンポンダッシュならぬ。リンゴ奪取」
決して上手くはないけれど。僕らは、魔の森へと踏み入った。
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「行っちゃったね」
「メイトの骨でも拾ってあげようと、思ってみても」
「綺麗に消し飛ばされてる?」
6人が森へと向かった後は。特にやる事も無かった。
教員たちの荷物。電源の切れたスマホ。
ライターにタバコ。誰も吸わないし、使っちゃダメ。
生理用品もフウが居れば困らない。
コ…、これは要らないわ。教頭は何て物を。見損なった。
期限切れの牛乳パック。上手い具合にチーズに…なってるわけなかった。ただのゴミ。
着替え用のジャージ。使い道の無い財布と中身。
校長室の抽斗を漁ると、百万の帯付き札束が4つ。
「現金…持って帰る?」
「一応貰っとく。帰った瞬間、取り上げられそ」
「こちらの金貨のような物?紙幣なんだね」
「こっちじゃ紙くず。メモ用紙にもならん。フウに全部あげるよ」
「アビの気が変わったら、山分けしよ」
「記念に一枚貰っても?」
「一束でもどうぞ。カルも、一緒に私たちと異世界に行かない?」
「…行けないよ。それこそ逃げるみたいで嫌。私はこちらで罪を償う」
カルちゃんの気持ちは揺るぎない。
私たちを拾わなければ。彼女は…。止め止め。たらればでは誰も救われない。
体育館に向かう途中。渡り廊下から、フウが消し飛んだ校舎側を眺めていた。
教員室側も、保健室から南が抉れていたのをフウが元の状態に戻した。自分の記憶に残る景色を。
あちら側もやる積もり?
「ちょい試してみても?」
「止める理由が見つからない。みんなの、お墓?」
「そんな大層なもんじゃないよ。ケジメてか、区切り」
「区切り?」
「ツーザサでは、ご遺体が埋まってて。町中の復元は無理だったから。そちらの供養も兼ねて。私の自己満足」
やっぱお墓じゃない。私とカルは黙って見守る。
手を組み祈りを捧げた。こちらの神など知らなくとも。
どうか安らかに。クラスメイトも。魂だけは帰れるように。見せ掛けの平和な世界へ。
私はあの日の唄を歌う。込める想いも同じ。
より抑揚を付けて。一つの曲みたく。
綺麗に戻った校舎。前よりも強固で頑丈。要塞?
何と戦う積もりよ…。
結構な魔力を消費したのか、フウもお疲れ気味だった。
普通の水を手渡す。薬類はギリギリまで町に置いて来たから我慢我慢。
「あのお祈りの唄さ。曲付けて貰おうよ」
「あ、岸川さんなら出来るかな」
「キシカワ?」
「王都で会った、召喚者の中の一人。あの子って作曲出来たっけ?」
「魔道具渡したでしょ。こうゆう時に使わなきゃ」
「押し売り感が、パないね。アビ、怖いわぁ」
「いいじゃん、減るもんでもなし。音楽室に行ってみよ」
岸川さんの得意分野は知らない。室内の楽器を全部持って行き選んで貰い所。でもでも私たちのBOXは、3人揃って大まで。無能君の無限が欲しい。
戻って来たら、持ってくのをお願いしてみよう。
祈りの唄の為なら、協力してくれると思うし。駄目って言われたら諦めて往復…。自由と時間が許せば。
再会出来た人を一人一人思い浮かべた。
岸川さんには、楽器類と楽譜とシャープ。
鴉州さんには、バスケットボールと空気入れ。バスケのエース番て何番?て、適当にゼッケンを。
桐生君には空手着。ネーム入りの黒帯が見つかった。男の子の汗臭がキッツい。カビ臭さと良い勝負。
視聴覚室で。城島君が好きそうなコミック。マンガ同好会だった気がする。違っても気分転換にでもなれば。
「変わった、絵本?」カルが食い付いた。
日本語が読めなくても、絵だけは伝わる。
少女漫画の類いは無い。ちょっと残念。見せられれば少しは元気になってくれたかもなのに。少年漫画だけなんて。
柔道部の部室にはフウが一人で入った。残した思い出を拾っている。暫くそっとしておこう。
復元された校舎側。
お解り?中身なんて無いワケよ。フウのイメージで、建物を建て直しただけだから。
こっち側なら購買と食堂と図書室、美術室とか在った。
今では壁や枠が在るだけ。以外、なんも無し!以上。
自分たちとクラスメイトの荷物や机も消えていた。
思い出が掻き消されたようで、少し悲しかった。
少しずつ消えてしまう。元の世界の遺物と記憶。
何も無いと解っていながら。峰岸君と斉藤さんが好きそうな図書室を覗いた…。それだけでした。
肌寒い屋上には行かず。本校舎南端に存在したプールの区画に着いた。
「痩せちゃったから、道着がぶかぶかだったよ」
目が赤いフウと合流後、水着でもあれば、いつか温水プールにでも入りたいねぇ。なんて話しながら。
「はて?」
「これは?」作り直した本人が一番驚くなよ。
「地下への階段?」
以前は普通のプールだった場所。見た事もない光景。
意表を突かれた私たち。
ぽっかりと大きな口を開いた、ダンジョンへの入口。
なぜでしょう。なぜだろう。
「この荒野に、ダンジョンあったの?」
「この国に関しては、よく知らない」でしょうね。
「とりま、気味が悪いから蓋しとく。今日は」
臭い物と怪しさ満点な物には蓋をしよう。今日は見なかった事にして。安心と安眠を。
-スキル【創造者】
並列スキル【創壁】
派生スキル【超硬】発動が確認されました。-
フウのピースサイン。自信作が出来たみたい。
その夜。地面が揺れる。
「地震かな」ドカンドカンと地鳴りまで響いてる。
「大丈夫。あの蓋はめっちゃ硬くしたから」
フウが手をヒラヒラ振り、再び寝に入った。
ガキーーーン。と一発高音がした。
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