62 / 115
第3章 大狼討伐戦
第23話 決断
しおりを挟む
「どうしますかね。先生」
「悩ましいねぇ。教授」
トランプのカードを切りながら相談タイム。
何事も起きず。最上階での乱戦(ババ抜き)経て解散。
11人でやるとサッパリ終わりが見えなかった。
そこで3組に分かれてのトーナメント戦を制し、僕の勝利で終わった。有知有能スキルの甲斐あって、殆どの手が見えてしまう。後半は余裕でしたわ。卑怯とも言う。
各自の部屋に戻ってからも、もう一回、もう一回とキュリオが満足する(勝つ)まで終わらず。
何を悩んでるかって?そりゃ指輪の事ですよ。
半分答えは出てるものの、シンプル過ぎるのもねぇ。
大味な輪っかを作る技術はあっても、繊細な細工を施す腕は無い。
かと言って山査子さんに頼んで、速攻で作成されても味って言うか、気持ちの部分で物寂しい。
厳ついデザインじゃ女の子が納得しない。婚約指輪システムは存在しないらしいので、結婚指輪を兼ねている。
結婚指輪なら、ユニセックスな統一性が無いと。
無能家と來須磨家の違いも出したい。個性も加味して。
「とりま、山査子さんに小型の研磨機造って貰おう」
「生涯の記念だもんな。手作りしかないよなぁ」
そうこの2人。美術に関しては1を頂く程に弱い。だからこその悩み。悩んだって急に開花しないけど。
「いつまで切ってるのぉ。早くぅ」
「はいはい只今ー。これで最後だよ。いい加減寝ないと」
「最後は勝つ!」
態と勝たせようとしても、キュリオ氏は必ず逆行くんだよなぁ…。
トランプやカードゲーム系はリンジーさんが一番強い。流石は適材適所。そのリンジーさんに負けるのは悔しくないが、僕に負けるのが超悔しいらしく、エンドレスで挑まれると。疲れます…。
疲れの抜け切らない午前9時。ぐらい。
殆どの冒険者や商人、一般人も。砂時計など使わず体感、体内時計で動いてるらしい。慣れって怖い。
かく言う僕らも同じ。慣れって凄いぜ。
別動だった方々。リンジー親子、マクベス、ゴルザ両名とギルド本部で合流した。
「お早う御座います…」
「おはよー」
リンジーさんがヒオシの目の隈を見つけ。
「ゲームは程々にと、あれ程」お母さんか。
「申し訳ない」
「休息は大切だ。冒険者なら尚更な」
ゴルザさんまで小言を言う。お父さんか。
「すみません」
何はともあれ、キュリオの登録を済ませる。
「本当にいいのね?冒険者になるって事がどんな事なのか。言わなくても解ってると思うけど」
「うん。私は、みんなに着いて行く。もう待つだけは嫌。一緒に戦うって決めたから」
固い意志を最終確認。キュリオと同じくメイリダさんも覚悟を決めた。みんなで助け合う。言葉にしなくても解り合える関係。男は一々口は挟まない。
大切な人を守る。そんな当たり前の事は。
予期せぬ英雄の登場にギルド内は沸いていた。
異質な僕らが霞み、外野の意識はゴルザさんに集中。
この隙にテキパキ済まそう。
書類手続きも面談も一切スルーパス。町を救った立役者の一人。それ以上何が要るっての。
出来上がった登録証。キュリオ・ムノウ。申し訳ねえ。恨むなら僕を産んだどっかの両親に言って下さい。
「わーい。これからも宜しくねぇ」
「こちらこそ」
「…」ジェシカも自分のカードをそっと確認してた。まだ変わってないらしい。
もう少しだけ待っててね。
それ言ったら、リンジーさんとメイリダさんもか。
オプションBOXは【絶大】新色登場。極大とどれ位違うかは実践して確かめる。
スキルは【雷明】【福音】【幸運】の3つ。
てっきり武器を操っていたから【操術】辺りの何かだと思ってたけど…。
入れ替わった?心当りがあり過ぎて解らんね。
「複数スキルとは。中々珍しい」
ゴルザさんも自分のカードを覗き込み。
「ん?」平静を装い二度見していた。久々に確認すると色々変わってる。なんて事は往々にしてあるもんです。
「どうかしました?」
「いや…。私にもまだ、役目が在るのだと解っただけさ」
独りで納得してる。教えて欲しいが、聞くのも怖い。
自慢し合う物じゃないのでスルー。親しき仲にも礼儀ありってね。
用が済んだので、北の岩場に移動。と思いきや。
「待ちなさい」
マクベスさんに急に呼び止められた。
「どうかしました?色々と準備で忙しいんですが」
「後でも明日でもいい。君らの…。ゴルザ様、リンジー、メイリダ以外のメンバーの等級に付いて話がある。詳しくはロンジーからでも聞きなさい。そしてもう一度私の所へ来なさい」
それも避けては通れぬ道。ずっとEのまんまじゃ、色々体裁悪いのもある。自由度からしてC辺りで留めたいな。
「解りました。必ず寄ります。他の人は各自で決めて」
こればかりは僕が勝手に決められない。
「無能の言いなりでは癪だしな」一言余計だよ峰岸君。みんな解ってるってば。
収集物をほんの一部換金。雑貨屋サマリーナでシルク生地を大量購入。必要以上には買い占めない。他に買おうとしてる人の迷惑にならない程度にて。
丁度良い上質な出物が在った。最上級品に造り変える予定です。
お外は生憎の雨模様。雨期には入ってないから雨足は大して強くはない。
北の岩場に大移動。簡易的な…。でなくてしっかり豪華な石造りの拠点が山査子さんとリンジーさん合作で、瞬時に建造されてしまった。
ローレンライ、どうすんの?
時間が惜しい。ツッコまないぞ。
最奥のブースに鍛冶用の炉を配置。
僕とヒオシは作業を開始。豪勢にもゴルザさんが補助に着いてくれた。捗る上に的確なアドバイスくれそう。
先ずは全員分の武装の見直しと調整。
「私の物も手直しを頼みたい。ウィード兄弟の最高傑作の幾つかだ」
「「…」」想定済でもすげぇプレッシャー。一番最後に打たせて貰おう。
遠慮の無い峰岸君まで便乗。
「俺も幾つか頼みたい。修理と魔石がセット出来る物に変えてくれ」
「あいよー」注文多いぞ。峰岸武装は適当で…。は職人の端くれとして情けないから本気出す。
サクサク進んで終盤戦。峰岸君が寄越した3種の長剣を片付け終わり、いよいよゴルザさんの武装に手を付けた。
見事だ。中身も外観も。とても真似出来る域にない。
貴重な白石の粉を塗してあり、白を基調とした控え目な装飾で荘厳なる風格を漂わす。鎧、大盾、長剣どれ1つとして師匠たちの魂を感じた。
小さな凹みや欠け、皹を修繕。研ぎの作業はお任せ。
魔石の溶液とゴーレム産のインゴットで肉を足しては叩き上げる。純粋に楽しかった。少しだけ悪乗りした。
「見事だ。口を挟む可くもないな」褒められた。ガンガン言って欲しかったトコだけど嬉しい。
一通り終わった段階で、ゴルザさんの質問が来た。
「これは?」
キュリオ専用の七色の扇子を持ち上げ、繁々と眺めていた。
「恐らくあの雷鳥の羽です。キュリオが何処からか拾ってきた羽を僕が改造しました」
「そいつだけ、妙に存在感あるよなぁ」
金属材質だったら鉄扇。元が超頑丈羽なので驚く程軽く、使い方は多岐に及ぶ。中々万能な武具だ。
後は持ち主のセンス次第。扇子だけに。なんてね。
「ほう。あいつが、これを彼女に渡したか」
意味深だけど、これは改めて聞くべきだ。
部屋の片隅で峰岸君が修理品を手に取っていた。
作業中も邪魔にならないように黙っててくれた。お話しながらは打てやしないから丁度良かった。
「お前ら、すげぇな」一言だけ呟く。
「生き残る為だよ。全然凄くない」
「どんなに取り繕っても、殺傷用の武器だ。例え相手が人間でもな」
「そうか…。そうだな」
「どんな豪剣でも。どの様な鈍でも。全ては使い手次第。心得、心して振り、命を奪う。ここは、そう言った世界だ」
それ以上の言葉は無い。ここは寂しき世界。
戦いに囚われ、争い、殺し合う。人々は日々を強く生き、より良き明日を願い眠る。
終わりは来るのか。人類はそれを手に出来るのか。
その一端を、僕らも背負わされた。
マルゼに先行してる人の分も含め、人数分の武具を整え終わり後片付け。見立ては全て峰岸君の指示。
相性悪くても知りませんな。
隣の棟で女性陣がドレス製作とフィッティング。そろそろ終わったかな。見たいけど本番までのお楽しみだってさ。
僕らのタキシードはローレンライ伝で発注済。今夜には届く手筈。調整無しで作れちゃうんだから凄い。
「終わったのかい?」
ロンジーさんだけこちらに様子を見に来てくれた。
音で解ったんでしょ。
「リングの仕上げが未だですが、山査子さんに道具頼まないとこれ以上は」
「今日は徹夜かなぁ」
「マクベスも言っていた話をしたい。夜に宿に寄らせて貰うよ。今日はまだやる事があるんだろ?」
「ご明察。挙式を上げる会場が確保出来てないので」
「貴族家の誰かに後援をお願いしないとダメなんだっけ?」
「そうさ。複数婚なんざ、貴族階級の嗜みさ。一般階級でやる奴は居やしない」
ここに居ます!
「心当りを紹介してやってもいいが…。そいつはかなりの強欲でねぇ。金は有るのかい?」
自慢のコレクションをテーブルの上に並べた。
もちゴレキン産の一級品。
ダイヤ、サファイヤ、オパールなど。拳大の未加工原石。
足りなきゃ金塊も追加しよう。
「どうですか?」
ロンジーさんだけでなく、ゴルザさんと峰岸君もお口をパックリ開けて放心してる。問題無さそう。
「心配しただけ無駄だったね。ダイヤなんざ調子放いて出すんじゃないよ。目の色変えて襲って来るからね」
怖い怖い。貴族の欲望は底が知れないねぇ。
話は付けられると踏んで。
「ゴルザさんはこれからどうします?出来れば出席して欲しいんですけど」
「是非是非」
「これ以上の豪遊は…。村に帰ってから娘に怒られそうだがな。数日後に再編される国軍らと共に出立する。それまでの間でなら参列しようとも」
よし。そうと決まれば。
「席空けときますから」
「よろしくです」
出来るならサイカル村のみんなにも来て欲しい。けれどそれは不可能。何時かまた訪問した時にでも。
「ターニャは悔しがるだろう。逃した魚の巨大さにな」
ヒオシの肩をバンバンと叩いた。
「痛いっす。あれはあれ。今は今、ですよ」
彼女なら自分でいい人見つける。そんな気がする。
だって生ける英雄の娘さんだもん。
「女子のみんなに伝えといて下さい。夜に宿屋集合で」
「んじゃ、ひとっ走り…」
「待ってくれ、無能。こんな事を頼める義理じゃないのは承知の上で、どうしても頼みたい。俺たちも」
「皆まで言うなし。同郷の誼って事で」
「今更一組増えたって変わりゃしない。式は盛大にしようぜ。言わなくたってきっと斉藤さんは、自分たちのドレスも作ってるだろうよ」
「すまん。恩に着る」
この際出来るだけ大勢でワイワイやりたい。
僕らに取っては生涯最後。峰岸君は帰ってからももう一回挙げそうだけど。
プラチナの地金を手渡した。
「そっちの2人の指のサイズ知らないから。山査子さんに頼んで作って貰って。後、序でに研磨機頼んどいてね」
「了解した。材料としては随分と多いが?」
「余りは手数料として渡して。好きなアクセでも。自由に使って貰えばいいよ」
鷲尾さんたちも。何も無しじゃ可哀想だから。可哀想は違うか。色々頑張った報酬で。
ロンジーさんから、公爵ツヴァイス郷の名を聞き、いざ行かん。アムール伝いにアポを取ろう。
走りながらリングのデザインに付いて打ち合わせ。
奇抜だと批判を買うし、何より被りたくない。まず被らんだろうけど念の為。
アムールの書斎でツヴァイスさんの到着を待つ間。
不要紙を貰い、デザインの原案を練り練り描く。
「…2人とも、酷いな」
荒ぶる絵を覗き見たアムールが一言。
「それを言うなよ」
「うっさいわ」
これでもこっちは大真面目。しっかし我ながら無惨。
「城島君が王都に居ればなぁ」
城島君は生粋のアニオタ。そっち方面の画力はクラスでトップ。だと思ってる。
BOXに入れて来たお土産で交渉したかった。
「こうなったら自力で。無理なら山査子さんに頼む」
最後の切り札はそこしかないよな。同意。
「人には向き不向きがあるものですぞ」はいはい。
コンコンと静かなノック。
「アムール。入りますよ」女性の声?
「…え?はい、どうぞ」あからさまに狼狽えるアムール。複数の侍女を侍らせ入室したのは。
「あ、フレーゼ様」
「ご、ご機嫌うるわっしゅ」無理すんなヒオシ。
「ご機嫌よう。とは言え2人が居ると聞いて参った。楽になさい」
「有り難う御座います。先にお断りしておきますが。僕らは異世界人なので、礼儀はさっぱり払えません。失礼はご了承下さい」
「どうかお許しを」
「ここはアムールの書斎。私も玉座から降りれば、一人の人間。何を言われても許します」
異世界人だと言っても驚かない。バレバレか。
「でなければ赤竜など討伐出来ようはずがありません。例えどれ程弱っていようとも。たかが数人では」
心の声まで読まれてーる。恐るべし看破スキル。
「今日は、2人にどの様な?」
「用が無くては、息子の友人方にも会えないと?何やら楽しそうな席を設けると聞きましたが」
聴聞会での雰囲気とはガラリと違い、温和な表情を浮かべている。心中穏やかではないにしろ。
「はい。同郷のキョーヤを筆頭に、複数の合同結婚式を開きたいと。ツヴァイス郷に後ろ盾をお願い出来ればと思い参じました。何分会場の用意も立てられなくて、困った次第で」
「出席者は、あの会場に居たメンバーです」
「ゴルザ殿も?」
それが聞きたかったのか。
「その、予定です」
「ラムールの国葬を催す予定でおりました。重なるようなら日程を移行しましょう」
日程?葬儀の会場が同じなの?喪に服す喪中期間と重なるからとかか。
「喪中に離反する気はありません。ゴルザさんは出立されますが、1週間なら式を控えます」
期間の相場を知らない。推定7日位ではないかと。
「こちらの世界では王族の喪中期は3ヶ月。そちらの世界では随分と短いのだな」
3ヶ月?長え。待てませんので国外脱出を候補に入れる。
「僕らの異世界では、国の形は色々でも王国、王制を執る国は極僅か。一統独裁政権を置く所も少数です。その他殆どが、数年おきに一般層から国民投票に依り統治者を選出する形。要するに王族は国の象徴。ご逝去されても国民に対する喪期は数日間だけ。希薄で薄情だと思われてもそれが現状です」
細かいシステムは各国で違う。根本の形だけを伝える。
「私が吠えた所で凪の礫。期が長いなら国外にでも出よう、などとは考えなかったかしら?」
「ご明察。僕らはそこまで待てませんので」
「案ずるな。喪中であっても、全ての祭事を禁ずる制度や掟は特に無い。民も皆も生活があるのでな」
「それでは、期日を移行される理由が無いのですが…」
「四方や貴様は、この私を除け者にする気なのか?」
「え…」「は?」
「は、母上も出席されるお積りで?」
「当然です。他は知られていなくとも、異世界人キョーヤはベンジャムからの国賓。私や夫の参列無くして婚挙を催すなどあってはならぬ」
確かに。そこまで頭回ってなかった。
峰岸君たちを組み込んでしまっている時点で回避不能。
今更無かった事にも出来ん。きっと楽しみに待ってる。
「盛大な宴としましょう。ご配慮感謝します。宛ら僕らはキョーヤの友人枠。主賓はキョーヤで参ります。してツヴァイス殿にお目通りの許可を頂きたく思います」
「なぜ?私では役不足とでも?」
しまった!一気に真っ赤に沸騰する王女のお顔。
「ば、バカタッチー。謝れ、直ぐに!」
「これは手付けに御座います!」
慌てて取出し差し出したのは…。出してしまったのは。
「おい、そっちは…」遅いぜヒオシ先生。
うっかりダイヤの結晶石の方でした。テヘッ。
出しちゃったら戻せませんなぁ。
「何ですか?それは」
「会の手数料、慰安料、慰謝料、御挨拶。複数婚の手続きその他諸々含めたダイヤモンド結石にて御座います。どうかお納め下さい」
「だ、ダダダダダダ!!??」
うっさいぞアムール。口には出さんけど。
「北方の山の麓の一角にて。散歩中のゴーレムを運良く倒した所の出物。高度な鑑定にも掛けました、紛う事なき本物でございます」
カルバンと山査子さん合作の魔道具。中でも鑑定具は超便利。ここでは命を救われた。
もしも、多分ダイヤですのでどーぞ。なんて出したら王女様の沸点は軽く振り切っていたでしょう。
フラついた王女の身体をアムールが支えた。手にした石はしっかり胸に抱いてるから意外に大丈夫だと思う。
「こ、国宝を軽々凌駕する品が手付けとは…。恐れ入りました。異世界の住人たちよ。ゴルザ殿に私恨あれど、貴殿らには関係は薄い」
無い訳じゃないからね。
「数日内で行えるように手配させよう」
やばいです。何が?
どんどん話が大きくなってる所でしょ。こりゃ式で異世界人の一員ですと発表されても否定出来ん。
その後は話はトントン拍子に進む。率先して仕切るフレーゼ様。遅れて現われたツヴァイス郷(禿げたおじさん)が床に平伏し。泣く泣くアムールが主催の任を得た。
悠然と退出された王女様をお見送り。
「ああなっては、もう誰にも止められんぞ」
「そこを何とか、宜しく頼むよアムール」
「軌道修正は頼んだ。出来るだけ…」
「仕事が増える。こうなっては兄上にも雑務を負担して貰おう。この期に及んでツーザサの件まで押し付けようとする帰来が窺えたからな。それでは次代の王は務まらん」
「王選から降りるの?」
「元より王の器ではないわ。貴族院の支持も大半、既に兄上に傾いている。何もせずとも、人望と徳だけは高い。父上と本人の前で宣言もした。面倒だからと言う理由だけで逃しはせぬぞ」
エムール様自身が乗り気じゃなかったのかぁ。だから本来不要な王選が展開されていたと。意外っちゃ意外。
んなお家事情は知ったこっちゃない。
「僕らローレンライを引き続き借りてるから。日程詳細決まったら連絡頂戴」
「あの感じだと、思ったより早そう」
指輪の作成も大事。それ以前にやらなくてはならない行事の数々。プロポーズ。愛の告白。
自分の気持ちを伝えるのって、こんなにも苦しいなんて。
最後の最後で断られない保証は無い。
ご挨拶すべき親御さんも、残念ながらロンジーさんのみ。ヒオシはそちらのハードルがある。
お互い、今夜は頑張り時だな。
宿への帰り道。外はすっかり夜の風景。
男同士。2人だけなのも、随分と久々。王都では初かも知れないな。酒場の誘惑が凄い。漂う焼き物の香ばしい匂いが帰る足を鈍らせる。
「気が重いよなぁ」
「告白が?」
「違う。順位付けの方だよ。自分で決めなくちゃいけない事ではあるけど。タッチーはどうやって決めた?」
「何となく、決まってた。優劣なんて失礼だし、最初から決めてた。そこで迷いたくなかった。迷ってたらさ…」
「2人とも居なくなりそうだから、か」
二兎を追う者は一兎をも得ず、て言葉もある。
軽いノリで結婚は出来ない。余計な迷いは要らぬ誤解も生み易い。自信が無ければ、最初から複数婚を願う資格は無いのだと思う。そこから逃げるような軟弱者が、誰かを幸せに出来るとは思えない。
だから今夜告げるんだ。心を込めた指輪と共に。
夜だけ開店してる変わったお店。変な如何わしい店じゃないよ。祭事用品店。冠婚葬祭用の専門店です。
店名エバンチュード。エチュードなら意味合い的にバッチリだったね。
デザインに全く自信の無い僕らが、最後に頼るべきはやはりプロ。目当ては宝飾品。指輪コーナー。
「ど、同性婚でしょうか?」
何言ってんの店員さん。
「普通に違います。今夜それぞれのお嫁さん候補に手渡す品を選ぼうかと」
「ったく。邪魔しないでくれるかなぁ。こっちは他事でも悩んでんだからさ」
「し、失礼しました。ごゆっくりどうぞ」
ヒオシに睨まれ、汗汗しながら退散する店員さん。ちょっと可哀想。
選んで買い、それをベースに山査子さんに地金で複製して貰って仕上げを自分たちで行う予定。
サイズ合わせは告白時に。要するに、もう時間が無いのです。言い訳です!
キュリオのイメージ。猫好き。希発で活発。少し気紛れ。虎柄縞模様やゼブラ柄では建前が良くない。選んだのは格子模様。流線型に造り変えれば∞の形にもなる。
ジェシカのイメージ。几帳面。色々な目線で影で支えてくれる奥ゆかしさ。螺旋模様がいい。∞の意味とも繋がる。芯の部分に一本筋を通す形とすればピッタリだと思う。
メイリダさんのイメージ。情に厚くて義理堅い。六角形を数珠繋ぎにしたようなデザインを選んでいた。無骨な中にもしっかりとした愛情を感じる。
リンジーさんのイメージ。冷静で思慮深い。何時まで経っても男っぽい喋り方が抜けないのは、玉に瑕。騎士団時代の責任感の強さが窺える。ヒオシとの間に何も無ければ元の席に戻っていたと思えた。
長楕円が連なったデザインを選んでいた。
それぞれを2つずつ。自分の分が無いと変でしょ?
常時指に着けない場面を想定し、細身のネックレスチェーンも6本購入した。
「お相手様は2人…いらっしゃるのですか?それとサイズ合わせは」
「そうそう。お金なら有るから心配しないで」
「サイズ合わせ程度なら自分たちで出来る。ちゃっちゃと包んでくれ」
「左様で御座いましたか。これは無粋な事を」
提示された代金を支払い、白い布で包まれた商品を受け取った。
「今後とも御贔屓に~」めげない店員さん。
贔屓も何も無いだろと思いつつ。お店を出ていざ戦場へ。
「何気に高かったね」
「材質的には銀っぽい。デザインと加工費かぁ。俺らが生きてる内に平和な時代が来たら、アクセSHOPでも開こうぜ」
「…デザイナースキルでも在れば…」
深い溜息を吐き出し、足取り軽く走り出す。
ヒオシも答えを出したみたい。宿に到着した頃には、スッキリとした表情に変わっていた。
平和な時代か。本当に来ればいいし、そうなれるように努力もするけど。先ずはウィード師匠たちに、弟子入りし直そう。デザイン能力も努力で何とかなる、かな…。
-----
遅い夕食後。それぞれの部屋。
來須磨組の部屋の3人は、他とは違い、少しだけ重苦しい雰囲気を醸し出していた。
「序列に関しては理解した。その上で2人に話しておきたい事がある…」
「…」
「辞退される、お積りですか?」
「いいや。受け取りたい気持ちに変わりは無い。話したいのは、私の過去。昔話。今は亡き、元婚約者の話だ。それを聞いた上で、本当に渡すのかをヒオシに決めて貰いたいのだ」
リンジーの口から初めて語られた、元婚約者キルギスとの馴れ初めと、訪れた終わりの話。
「うん。おれの気持ちは変わらない。何よりも大切だと思えた人なんだろ?今でも好きで忘れられない部分も在るって聞くと、おれの気持ちもモヤモヤもするし嫉妬もする。でも逆に忘れないで欲しいとも思う。昔愛した人を月日が経ったからって、綺麗さっぱり忘れるような人じゃなくて安心した。おれもその人と同じ位。それ以上にリンジーが好きだし、愛してると断言する」
「…ありがとう」
「メイリダも同じだ。序列なんて無ければいいとさえ思う。おれは何方かを選ばなければならない時が来て、例え腕が一本しか無くても。必ず2人とも救う」
「ええ。私もそうならない様努力する。でもそれは、至極卑怯な答えだね」
「だな。本当に卑怯で、欲張りな答えだ」
「優柔不断だからさ、おれ。だから迷うなら2つとも選ぶ。何方かを選ぶのを捨てる。強欲で我が儘なおれだけど。これからも出来損ないのおれを2人で導いてくれ」
2人の左手が差し出された。
ヒオシは自分の決めた序列に従い、薬指に出来たてのリングを通した。本式で再度通す事になろうとも。
改めて2人と愛の誓いを囁き合い、長い長いキスをした。
幻のような異世界。彷徨うだけだった冒険の日々。
辿り着いた王都。ツーザサの惨劇。これからも予想される激戦。怖くもあり心が折れそうでもあった。
集う仲間。肩を並べられる親友。そして愛する2人。
あやふやな出来事の中で掴んだ確かな温もり。
だからこそ誓う。共に果てるまで生き抜くと。
-----
鼻水を啜上げる、女性の姿が別室に在った。
「泣いてるの?」
「泣いてないもん。悔しくないったらない!」
「いいじゃんアビは、サリス君が居るんだし。私なんて何も無いんだよ」
「私もです…」
「フウには愛しのアルバ様が居るじゃん。カルは…、もっとガンガン攻めよう」
「励ましの言葉が痛い…」
「アルバ様はね。本気じゃなかったよ。状況を見て和ませようとしただけ。だって英雄の一人だよ。多少言葉遣いが変でも、強くて格好いい人がだよ?何も無くて、誰も想う人が居ないワケないじゃん」
「確かに。そうかも」
「かもじゃないよ。これは確信だよ」
「じゃあ私以外」
「彼氏候補も居ないまんま」
「辛い。辛すぎる…」
構図の逆転に戸惑う鷲尾。現状を嘆く山査子とカルバンの恨み節。女だけの夜はこうして流れて行った。
-----
ツーザサの南の山嶺中腹。
轟々と流れ落ちる大瀑布の袂に、2人の裸の男の姿が在った。
「あ、アルバ師匠。こ、この滝に打たれる行為に意味があるのでしょうか!!」
「さ、さっびいよぉさっびいよ。知らねえっぺ」
「し、知らないって何ですか師匠!短期間で強くなれるって聞いて来たのに」
「し、心頭滅却ぅ。技術の神髄ぃ。さぶぁばばばば」
勢いに押されて深い滝壺に飲まれるアルバ。
「師匠ぉーーー」
未来あるサリス少年には、少々厳しく前途は多難。
自らも滝壺に飛び込み、師匠の後を追う。
少年は一抹の不安を抱かずには居られなかった。
「悩ましいねぇ。教授」
トランプのカードを切りながら相談タイム。
何事も起きず。最上階での乱戦(ババ抜き)経て解散。
11人でやるとサッパリ終わりが見えなかった。
そこで3組に分かれてのトーナメント戦を制し、僕の勝利で終わった。有知有能スキルの甲斐あって、殆どの手が見えてしまう。後半は余裕でしたわ。卑怯とも言う。
各自の部屋に戻ってからも、もう一回、もう一回とキュリオが満足する(勝つ)まで終わらず。
何を悩んでるかって?そりゃ指輪の事ですよ。
半分答えは出てるものの、シンプル過ぎるのもねぇ。
大味な輪っかを作る技術はあっても、繊細な細工を施す腕は無い。
かと言って山査子さんに頼んで、速攻で作成されても味って言うか、気持ちの部分で物寂しい。
厳ついデザインじゃ女の子が納得しない。婚約指輪システムは存在しないらしいので、結婚指輪を兼ねている。
結婚指輪なら、ユニセックスな統一性が無いと。
無能家と來須磨家の違いも出したい。個性も加味して。
「とりま、山査子さんに小型の研磨機造って貰おう」
「生涯の記念だもんな。手作りしかないよなぁ」
そうこの2人。美術に関しては1を頂く程に弱い。だからこその悩み。悩んだって急に開花しないけど。
「いつまで切ってるのぉ。早くぅ」
「はいはい只今ー。これで最後だよ。いい加減寝ないと」
「最後は勝つ!」
態と勝たせようとしても、キュリオ氏は必ず逆行くんだよなぁ…。
トランプやカードゲーム系はリンジーさんが一番強い。流石は適材適所。そのリンジーさんに負けるのは悔しくないが、僕に負けるのが超悔しいらしく、エンドレスで挑まれると。疲れます…。
疲れの抜け切らない午前9時。ぐらい。
殆どの冒険者や商人、一般人も。砂時計など使わず体感、体内時計で動いてるらしい。慣れって怖い。
かく言う僕らも同じ。慣れって凄いぜ。
別動だった方々。リンジー親子、マクベス、ゴルザ両名とギルド本部で合流した。
「お早う御座います…」
「おはよー」
リンジーさんがヒオシの目の隈を見つけ。
「ゲームは程々にと、あれ程」お母さんか。
「申し訳ない」
「休息は大切だ。冒険者なら尚更な」
ゴルザさんまで小言を言う。お父さんか。
「すみません」
何はともあれ、キュリオの登録を済ませる。
「本当にいいのね?冒険者になるって事がどんな事なのか。言わなくても解ってると思うけど」
「うん。私は、みんなに着いて行く。もう待つだけは嫌。一緒に戦うって決めたから」
固い意志を最終確認。キュリオと同じくメイリダさんも覚悟を決めた。みんなで助け合う。言葉にしなくても解り合える関係。男は一々口は挟まない。
大切な人を守る。そんな当たり前の事は。
予期せぬ英雄の登場にギルド内は沸いていた。
異質な僕らが霞み、外野の意識はゴルザさんに集中。
この隙にテキパキ済まそう。
書類手続きも面談も一切スルーパス。町を救った立役者の一人。それ以上何が要るっての。
出来上がった登録証。キュリオ・ムノウ。申し訳ねえ。恨むなら僕を産んだどっかの両親に言って下さい。
「わーい。これからも宜しくねぇ」
「こちらこそ」
「…」ジェシカも自分のカードをそっと確認してた。まだ変わってないらしい。
もう少しだけ待っててね。
それ言ったら、リンジーさんとメイリダさんもか。
オプションBOXは【絶大】新色登場。極大とどれ位違うかは実践して確かめる。
スキルは【雷明】【福音】【幸運】の3つ。
てっきり武器を操っていたから【操術】辺りの何かだと思ってたけど…。
入れ替わった?心当りがあり過ぎて解らんね。
「複数スキルとは。中々珍しい」
ゴルザさんも自分のカードを覗き込み。
「ん?」平静を装い二度見していた。久々に確認すると色々変わってる。なんて事は往々にしてあるもんです。
「どうかしました?」
「いや…。私にもまだ、役目が在るのだと解っただけさ」
独りで納得してる。教えて欲しいが、聞くのも怖い。
自慢し合う物じゃないのでスルー。親しき仲にも礼儀ありってね。
用が済んだので、北の岩場に移動。と思いきや。
「待ちなさい」
マクベスさんに急に呼び止められた。
「どうかしました?色々と準備で忙しいんですが」
「後でも明日でもいい。君らの…。ゴルザ様、リンジー、メイリダ以外のメンバーの等級に付いて話がある。詳しくはロンジーからでも聞きなさい。そしてもう一度私の所へ来なさい」
それも避けては通れぬ道。ずっとEのまんまじゃ、色々体裁悪いのもある。自由度からしてC辺りで留めたいな。
「解りました。必ず寄ります。他の人は各自で決めて」
こればかりは僕が勝手に決められない。
「無能の言いなりでは癪だしな」一言余計だよ峰岸君。みんな解ってるってば。
収集物をほんの一部換金。雑貨屋サマリーナでシルク生地を大量購入。必要以上には買い占めない。他に買おうとしてる人の迷惑にならない程度にて。
丁度良い上質な出物が在った。最上級品に造り変える予定です。
お外は生憎の雨模様。雨期には入ってないから雨足は大して強くはない。
北の岩場に大移動。簡易的な…。でなくてしっかり豪華な石造りの拠点が山査子さんとリンジーさん合作で、瞬時に建造されてしまった。
ローレンライ、どうすんの?
時間が惜しい。ツッコまないぞ。
最奥のブースに鍛冶用の炉を配置。
僕とヒオシは作業を開始。豪勢にもゴルザさんが補助に着いてくれた。捗る上に的確なアドバイスくれそう。
先ずは全員分の武装の見直しと調整。
「私の物も手直しを頼みたい。ウィード兄弟の最高傑作の幾つかだ」
「「…」」想定済でもすげぇプレッシャー。一番最後に打たせて貰おう。
遠慮の無い峰岸君まで便乗。
「俺も幾つか頼みたい。修理と魔石がセット出来る物に変えてくれ」
「あいよー」注文多いぞ。峰岸武装は適当で…。は職人の端くれとして情けないから本気出す。
サクサク進んで終盤戦。峰岸君が寄越した3種の長剣を片付け終わり、いよいよゴルザさんの武装に手を付けた。
見事だ。中身も外観も。とても真似出来る域にない。
貴重な白石の粉を塗してあり、白を基調とした控え目な装飾で荘厳なる風格を漂わす。鎧、大盾、長剣どれ1つとして師匠たちの魂を感じた。
小さな凹みや欠け、皹を修繕。研ぎの作業はお任せ。
魔石の溶液とゴーレム産のインゴットで肉を足しては叩き上げる。純粋に楽しかった。少しだけ悪乗りした。
「見事だ。口を挟む可くもないな」褒められた。ガンガン言って欲しかったトコだけど嬉しい。
一通り終わった段階で、ゴルザさんの質問が来た。
「これは?」
キュリオ専用の七色の扇子を持ち上げ、繁々と眺めていた。
「恐らくあの雷鳥の羽です。キュリオが何処からか拾ってきた羽を僕が改造しました」
「そいつだけ、妙に存在感あるよなぁ」
金属材質だったら鉄扇。元が超頑丈羽なので驚く程軽く、使い方は多岐に及ぶ。中々万能な武具だ。
後は持ち主のセンス次第。扇子だけに。なんてね。
「ほう。あいつが、これを彼女に渡したか」
意味深だけど、これは改めて聞くべきだ。
部屋の片隅で峰岸君が修理品を手に取っていた。
作業中も邪魔にならないように黙っててくれた。お話しながらは打てやしないから丁度良かった。
「お前ら、すげぇな」一言だけ呟く。
「生き残る為だよ。全然凄くない」
「どんなに取り繕っても、殺傷用の武器だ。例え相手が人間でもな」
「そうか…。そうだな」
「どんな豪剣でも。どの様な鈍でも。全ては使い手次第。心得、心して振り、命を奪う。ここは、そう言った世界だ」
それ以上の言葉は無い。ここは寂しき世界。
戦いに囚われ、争い、殺し合う。人々は日々を強く生き、より良き明日を願い眠る。
終わりは来るのか。人類はそれを手に出来るのか。
その一端を、僕らも背負わされた。
マルゼに先行してる人の分も含め、人数分の武具を整え終わり後片付け。見立ては全て峰岸君の指示。
相性悪くても知りませんな。
隣の棟で女性陣がドレス製作とフィッティング。そろそろ終わったかな。見たいけど本番までのお楽しみだってさ。
僕らのタキシードはローレンライ伝で発注済。今夜には届く手筈。調整無しで作れちゃうんだから凄い。
「終わったのかい?」
ロンジーさんだけこちらに様子を見に来てくれた。
音で解ったんでしょ。
「リングの仕上げが未だですが、山査子さんに道具頼まないとこれ以上は」
「今日は徹夜かなぁ」
「マクベスも言っていた話をしたい。夜に宿に寄らせて貰うよ。今日はまだやる事があるんだろ?」
「ご明察。挙式を上げる会場が確保出来てないので」
「貴族家の誰かに後援をお願いしないとダメなんだっけ?」
「そうさ。複数婚なんざ、貴族階級の嗜みさ。一般階級でやる奴は居やしない」
ここに居ます!
「心当りを紹介してやってもいいが…。そいつはかなりの強欲でねぇ。金は有るのかい?」
自慢のコレクションをテーブルの上に並べた。
もちゴレキン産の一級品。
ダイヤ、サファイヤ、オパールなど。拳大の未加工原石。
足りなきゃ金塊も追加しよう。
「どうですか?」
ロンジーさんだけでなく、ゴルザさんと峰岸君もお口をパックリ開けて放心してる。問題無さそう。
「心配しただけ無駄だったね。ダイヤなんざ調子放いて出すんじゃないよ。目の色変えて襲って来るからね」
怖い怖い。貴族の欲望は底が知れないねぇ。
話は付けられると踏んで。
「ゴルザさんはこれからどうします?出来れば出席して欲しいんですけど」
「是非是非」
「これ以上の豪遊は…。村に帰ってから娘に怒られそうだがな。数日後に再編される国軍らと共に出立する。それまでの間でなら参列しようとも」
よし。そうと決まれば。
「席空けときますから」
「よろしくです」
出来るならサイカル村のみんなにも来て欲しい。けれどそれは不可能。何時かまた訪問した時にでも。
「ターニャは悔しがるだろう。逃した魚の巨大さにな」
ヒオシの肩をバンバンと叩いた。
「痛いっす。あれはあれ。今は今、ですよ」
彼女なら自分でいい人見つける。そんな気がする。
だって生ける英雄の娘さんだもん。
「女子のみんなに伝えといて下さい。夜に宿屋集合で」
「んじゃ、ひとっ走り…」
「待ってくれ、無能。こんな事を頼める義理じゃないのは承知の上で、どうしても頼みたい。俺たちも」
「皆まで言うなし。同郷の誼って事で」
「今更一組増えたって変わりゃしない。式は盛大にしようぜ。言わなくたってきっと斉藤さんは、自分たちのドレスも作ってるだろうよ」
「すまん。恩に着る」
この際出来るだけ大勢でワイワイやりたい。
僕らに取っては生涯最後。峰岸君は帰ってからももう一回挙げそうだけど。
プラチナの地金を手渡した。
「そっちの2人の指のサイズ知らないから。山査子さんに頼んで作って貰って。後、序でに研磨機頼んどいてね」
「了解した。材料としては随分と多いが?」
「余りは手数料として渡して。好きなアクセでも。自由に使って貰えばいいよ」
鷲尾さんたちも。何も無しじゃ可哀想だから。可哀想は違うか。色々頑張った報酬で。
ロンジーさんから、公爵ツヴァイス郷の名を聞き、いざ行かん。アムール伝いにアポを取ろう。
走りながらリングのデザインに付いて打ち合わせ。
奇抜だと批判を買うし、何より被りたくない。まず被らんだろうけど念の為。
アムールの書斎でツヴァイスさんの到着を待つ間。
不要紙を貰い、デザインの原案を練り練り描く。
「…2人とも、酷いな」
荒ぶる絵を覗き見たアムールが一言。
「それを言うなよ」
「うっさいわ」
これでもこっちは大真面目。しっかし我ながら無惨。
「城島君が王都に居ればなぁ」
城島君は生粋のアニオタ。そっち方面の画力はクラスでトップ。だと思ってる。
BOXに入れて来たお土産で交渉したかった。
「こうなったら自力で。無理なら山査子さんに頼む」
最後の切り札はそこしかないよな。同意。
「人には向き不向きがあるものですぞ」はいはい。
コンコンと静かなノック。
「アムール。入りますよ」女性の声?
「…え?はい、どうぞ」あからさまに狼狽えるアムール。複数の侍女を侍らせ入室したのは。
「あ、フレーゼ様」
「ご、ご機嫌うるわっしゅ」無理すんなヒオシ。
「ご機嫌よう。とは言え2人が居ると聞いて参った。楽になさい」
「有り難う御座います。先にお断りしておきますが。僕らは異世界人なので、礼儀はさっぱり払えません。失礼はご了承下さい」
「どうかお許しを」
「ここはアムールの書斎。私も玉座から降りれば、一人の人間。何を言われても許します」
異世界人だと言っても驚かない。バレバレか。
「でなければ赤竜など討伐出来ようはずがありません。例えどれ程弱っていようとも。たかが数人では」
心の声まで読まれてーる。恐るべし看破スキル。
「今日は、2人にどの様な?」
「用が無くては、息子の友人方にも会えないと?何やら楽しそうな席を設けると聞きましたが」
聴聞会での雰囲気とはガラリと違い、温和な表情を浮かべている。心中穏やかではないにしろ。
「はい。同郷のキョーヤを筆頭に、複数の合同結婚式を開きたいと。ツヴァイス郷に後ろ盾をお願い出来ればと思い参じました。何分会場の用意も立てられなくて、困った次第で」
「出席者は、あの会場に居たメンバーです」
「ゴルザ殿も?」
それが聞きたかったのか。
「その、予定です」
「ラムールの国葬を催す予定でおりました。重なるようなら日程を移行しましょう」
日程?葬儀の会場が同じなの?喪に服す喪中期間と重なるからとかか。
「喪中に離反する気はありません。ゴルザさんは出立されますが、1週間なら式を控えます」
期間の相場を知らない。推定7日位ではないかと。
「こちらの世界では王族の喪中期は3ヶ月。そちらの世界では随分と短いのだな」
3ヶ月?長え。待てませんので国外脱出を候補に入れる。
「僕らの異世界では、国の形は色々でも王国、王制を執る国は極僅か。一統独裁政権を置く所も少数です。その他殆どが、数年おきに一般層から国民投票に依り統治者を選出する形。要するに王族は国の象徴。ご逝去されても国民に対する喪期は数日間だけ。希薄で薄情だと思われてもそれが現状です」
細かいシステムは各国で違う。根本の形だけを伝える。
「私が吠えた所で凪の礫。期が長いなら国外にでも出よう、などとは考えなかったかしら?」
「ご明察。僕らはそこまで待てませんので」
「案ずるな。喪中であっても、全ての祭事を禁ずる制度や掟は特に無い。民も皆も生活があるのでな」
「それでは、期日を移行される理由が無いのですが…」
「四方や貴様は、この私を除け者にする気なのか?」
「え…」「は?」
「は、母上も出席されるお積りで?」
「当然です。他は知られていなくとも、異世界人キョーヤはベンジャムからの国賓。私や夫の参列無くして婚挙を催すなどあってはならぬ」
確かに。そこまで頭回ってなかった。
峰岸君たちを組み込んでしまっている時点で回避不能。
今更無かった事にも出来ん。きっと楽しみに待ってる。
「盛大な宴としましょう。ご配慮感謝します。宛ら僕らはキョーヤの友人枠。主賓はキョーヤで参ります。してツヴァイス殿にお目通りの許可を頂きたく思います」
「なぜ?私では役不足とでも?」
しまった!一気に真っ赤に沸騰する王女のお顔。
「ば、バカタッチー。謝れ、直ぐに!」
「これは手付けに御座います!」
慌てて取出し差し出したのは…。出してしまったのは。
「おい、そっちは…」遅いぜヒオシ先生。
うっかりダイヤの結晶石の方でした。テヘッ。
出しちゃったら戻せませんなぁ。
「何ですか?それは」
「会の手数料、慰安料、慰謝料、御挨拶。複数婚の手続きその他諸々含めたダイヤモンド結石にて御座います。どうかお納め下さい」
「だ、ダダダダダダ!!??」
うっさいぞアムール。口には出さんけど。
「北方の山の麓の一角にて。散歩中のゴーレムを運良く倒した所の出物。高度な鑑定にも掛けました、紛う事なき本物でございます」
カルバンと山査子さん合作の魔道具。中でも鑑定具は超便利。ここでは命を救われた。
もしも、多分ダイヤですのでどーぞ。なんて出したら王女様の沸点は軽く振り切っていたでしょう。
フラついた王女の身体をアムールが支えた。手にした石はしっかり胸に抱いてるから意外に大丈夫だと思う。
「こ、国宝を軽々凌駕する品が手付けとは…。恐れ入りました。異世界の住人たちよ。ゴルザ殿に私恨あれど、貴殿らには関係は薄い」
無い訳じゃないからね。
「数日内で行えるように手配させよう」
やばいです。何が?
どんどん話が大きくなってる所でしょ。こりゃ式で異世界人の一員ですと発表されても否定出来ん。
その後は話はトントン拍子に進む。率先して仕切るフレーゼ様。遅れて現われたツヴァイス郷(禿げたおじさん)が床に平伏し。泣く泣くアムールが主催の任を得た。
悠然と退出された王女様をお見送り。
「ああなっては、もう誰にも止められんぞ」
「そこを何とか、宜しく頼むよアムール」
「軌道修正は頼んだ。出来るだけ…」
「仕事が増える。こうなっては兄上にも雑務を負担して貰おう。この期に及んでツーザサの件まで押し付けようとする帰来が窺えたからな。それでは次代の王は務まらん」
「王選から降りるの?」
「元より王の器ではないわ。貴族院の支持も大半、既に兄上に傾いている。何もせずとも、人望と徳だけは高い。父上と本人の前で宣言もした。面倒だからと言う理由だけで逃しはせぬぞ」
エムール様自身が乗り気じゃなかったのかぁ。だから本来不要な王選が展開されていたと。意外っちゃ意外。
んなお家事情は知ったこっちゃない。
「僕らローレンライを引き続き借りてるから。日程詳細決まったら連絡頂戴」
「あの感じだと、思ったより早そう」
指輪の作成も大事。それ以前にやらなくてはならない行事の数々。プロポーズ。愛の告白。
自分の気持ちを伝えるのって、こんなにも苦しいなんて。
最後の最後で断られない保証は無い。
ご挨拶すべき親御さんも、残念ながらロンジーさんのみ。ヒオシはそちらのハードルがある。
お互い、今夜は頑張り時だな。
宿への帰り道。外はすっかり夜の風景。
男同士。2人だけなのも、随分と久々。王都では初かも知れないな。酒場の誘惑が凄い。漂う焼き物の香ばしい匂いが帰る足を鈍らせる。
「気が重いよなぁ」
「告白が?」
「違う。順位付けの方だよ。自分で決めなくちゃいけない事ではあるけど。タッチーはどうやって決めた?」
「何となく、決まってた。優劣なんて失礼だし、最初から決めてた。そこで迷いたくなかった。迷ってたらさ…」
「2人とも居なくなりそうだから、か」
二兎を追う者は一兎をも得ず、て言葉もある。
軽いノリで結婚は出来ない。余計な迷いは要らぬ誤解も生み易い。自信が無ければ、最初から複数婚を願う資格は無いのだと思う。そこから逃げるような軟弱者が、誰かを幸せに出来るとは思えない。
だから今夜告げるんだ。心を込めた指輪と共に。
夜だけ開店してる変わったお店。変な如何わしい店じゃないよ。祭事用品店。冠婚葬祭用の専門店です。
店名エバンチュード。エチュードなら意味合い的にバッチリだったね。
デザインに全く自信の無い僕らが、最後に頼るべきはやはりプロ。目当ては宝飾品。指輪コーナー。
「ど、同性婚でしょうか?」
何言ってんの店員さん。
「普通に違います。今夜それぞれのお嫁さん候補に手渡す品を選ぼうかと」
「ったく。邪魔しないでくれるかなぁ。こっちは他事でも悩んでんだからさ」
「し、失礼しました。ごゆっくりどうぞ」
ヒオシに睨まれ、汗汗しながら退散する店員さん。ちょっと可哀想。
選んで買い、それをベースに山査子さんに地金で複製して貰って仕上げを自分たちで行う予定。
サイズ合わせは告白時に。要するに、もう時間が無いのです。言い訳です!
キュリオのイメージ。猫好き。希発で活発。少し気紛れ。虎柄縞模様やゼブラ柄では建前が良くない。選んだのは格子模様。流線型に造り変えれば∞の形にもなる。
ジェシカのイメージ。几帳面。色々な目線で影で支えてくれる奥ゆかしさ。螺旋模様がいい。∞の意味とも繋がる。芯の部分に一本筋を通す形とすればピッタリだと思う。
メイリダさんのイメージ。情に厚くて義理堅い。六角形を数珠繋ぎにしたようなデザインを選んでいた。無骨な中にもしっかりとした愛情を感じる。
リンジーさんのイメージ。冷静で思慮深い。何時まで経っても男っぽい喋り方が抜けないのは、玉に瑕。騎士団時代の責任感の強さが窺える。ヒオシとの間に何も無ければ元の席に戻っていたと思えた。
長楕円が連なったデザインを選んでいた。
それぞれを2つずつ。自分の分が無いと変でしょ?
常時指に着けない場面を想定し、細身のネックレスチェーンも6本購入した。
「お相手様は2人…いらっしゃるのですか?それとサイズ合わせは」
「そうそう。お金なら有るから心配しないで」
「サイズ合わせ程度なら自分たちで出来る。ちゃっちゃと包んでくれ」
「左様で御座いましたか。これは無粋な事を」
提示された代金を支払い、白い布で包まれた商品を受け取った。
「今後とも御贔屓に~」めげない店員さん。
贔屓も何も無いだろと思いつつ。お店を出ていざ戦場へ。
「何気に高かったね」
「材質的には銀っぽい。デザインと加工費かぁ。俺らが生きてる内に平和な時代が来たら、アクセSHOPでも開こうぜ」
「…デザイナースキルでも在れば…」
深い溜息を吐き出し、足取り軽く走り出す。
ヒオシも答えを出したみたい。宿に到着した頃には、スッキリとした表情に変わっていた。
平和な時代か。本当に来ればいいし、そうなれるように努力もするけど。先ずはウィード師匠たちに、弟子入りし直そう。デザイン能力も努力で何とかなる、かな…。
-----
遅い夕食後。それぞれの部屋。
來須磨組の部屋の3人は、他とは違い、少しだけ重苦しい雰囲気を醸し出していた。
「序列に関しては理解した。その上で2人に話しておきたい事がある…」
「…」
「辞退される、お積りですか?」
「いいや。受け取りたい気持ちに変わりは無い。話したいのは、私の過去。昔話。今は亡き、元婚約者の話だ。それを聞いた上で、本当に渡すのかをヒオシに決めて貰いたいのだ」
リンジーの口から初めて語られた、元婚約者キルギスとの馴れ初めと、訪れた終わりの話。
「うん。おれの気持ちは変わらない。何よりも大切だと思えた人なんだろ?今でも好きで忘れられない部分も在るって聞くと、おれの気持ちもモヤモヤもするし嫉妬もする。でも逆に忘れないで欲しいとも思う。昔愛した人を月日が経ったからって、綺麗さっぱり忘れるような人じゃなくて安心した。おれもその人と同じ位。それ以上にリンジーが好きだし、愛してると断言する」
「…ありがとう」
「メイリダも同じだ。序列なんて無ければいいとさえ思う。おれは何方かを選ばなければならない時が来て、例え腕が一本しか無くても。必ず2人とも救う」
「ええ。私もそうならない様努力する。でもそれは、至極卑怯な答えだね」
「だな。本当に卑怯で、欲張りな答えだ」
「優柔不断だからさ、おれ。だから迷うなら2つとも選ぶ。何方かを選ぶのを捨てる。強欲で我が儘なおれだけど。これからも出来損ないのおれを2人で導いてくれ」
2人の左手が差し出された。
ヒオシは自分の決めた序列に従い、薬指に出来たてのリングを通した。本式で再度通す事になろうとも。
改めて2人と愛の誓いを囁き合い、長い長いキスをした。
幻のような異世界。彷徨うだけだった冒険の日々。
辿り着いた王都。ツーザサの惨劇。これからも予想される激戦。怖くもあり心が折れそうでもあった。
集う仲間。肩を並べられる親友。そして愛する2人。
あやふやな出来事の中で掴んだ確かな温もり。
だからこそ誓う。共に果てるまで生き抜くと。
-----
鼻水を啜上げる、女性の姿が別室に在った。
「泣いてるの?」
「泣いてないもん。悔しくないったらない!」
「いいじゃんアビは、サリス君が居るんだし。私なんて何も無いんだよ」
「私もです…」
「フウには愛しのアルバ様が居るじゃん。カルは…、もっとガンガン攻めよう」
「励ましの言葉が痛い…」
「アルバ様はね。本気じゃなかったよ。状況を見て和ませようとしただけ。だって英雄の一人だよ。多少言葉遣いが変でも、強くて格好いい人がだよ?何も無くて、誰も想う人が居ないワケないじゃん」
「確かに。そうかも」
「かもじゃないよ。これは確信だよ」
「じゃあ私以外」
「彼氏候補も居ないまんま」
「辛い。辛すぎる…」
構図の逆転に戸惑う鷲尾。現状を嘆く山査子とカルバンの恨み節。女だけの夜はこうして流れて行った。
-----
ツーザサの南の山嶺中腹。
轟々と流れ落ちる大瀑布の袂に、2人の裸の男の姿が在った。
「あ、アルバ師匠。こ、この滝に打たれる行為に意味があるのでしょうか!!」
「さ、さっびいよぉさっびいよ。知らねえっぺ」
「し、知らないって何ですか師匠!短期間で強くなれるって聞いて来たのに」
「し、心頭滅却ぅ。技術の神髄ぃ。さぶぁばばばば」
勢いに押されて深い滝壺に飲まれるアルバ。
「師匠ぉーーー」
未来あるサリス少年には、少々厳しく前途は多難。
自らも滝壺に飛び込み、師匠の後を追う。
少年は一抹の不安を抱かずには居られなかった。
0
あなたにおすすめの小説
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~
専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。
ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました
グミ食べたい
ファンタジー
現実に疲れ果てた俺がたどり着いたのは、圧倒的な自由度を誇るVRMMORPG『アナザーワールド・オンライン』。
選んだ職業は、幼い頃から密かに憧れていた“料理人”。しかし戦闘とは無縁のその職業は、目立つこともなく、ゲーム内でも完全に負け組。素材を集めては料理を作るだけの、地味で退屈な日々が続いていた。
だが、ある日突然――運命は動き出す。
フレンドに誘われて参加したレベル上げの最中、突如として現れたネームドモンスター「猛き猪」。本来なら三パーティ十八人で挑むべき強敵に対し、俺たちはたった六人。しかも、頼みの綱であるアタッカーたちはログアウトし、残されたのは熊型獣人のタンク・クマサン、ヒーラーのミコトさん、そして非戦闘職の俺だけ。
「逃げろ」と言われても、仲間を見捨てるわけにはいかない。
死を覚悟し、包丁を構えたその瞬間――料理スキルがまさかの効果を発揮し、常識外のダメージがモンスターに突き刺さる。
この予想外の一撃が、俺の運命を一変させた。
孤独だった俺がギルドを立ち上げ、仲間と出会い、ひょんなことからクマサンの意外すぎる正体を知り、ついにはVチューバーとしての活動まで始めることに。
リアルでは無職、ゲームでは負け組職業。
そんな俺が、仲間と共にゲームと現実の垣根を越えて奇跡を起こしていく物語が、いま始まる。
ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~
楠富 つかさ
ファンタジー
ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。
そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。
「やばい……これ、動けない……」
怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。
「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」
異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!
おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。
ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。
過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。
ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。
世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。
やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。
至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる