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第3章 大狼討伐戦
第34話 人狼討伐、作戦会議
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マルゼ。南西方面で戦闘中?の鷲尾班をさて置き、以外のメンバーが再び集結した。
場は中央部に在る合同大会議室。
議題は勿論、今回の討伐対象のワーウルフ。
首領はSランクに匹敵する人狼集団。
端的に狼男。今戦いの舞台とした時期が好ましくない。
彼らの力が最も発揮される満月期。だとしても日取りを遅らせる事は困難。移動に要する時間で少しは月が欠けてくれるのを期待する。
狩猟を主とする戦闘スタイル。縄張に接近する全ての生物を狩り、糧としていた。
束と成ればオーガイアさえも捕食してしまう凶暴性。
時折人里に現われる分を潰したとしても、自己繁殖で着実に群れの数を増やしていた。
南部のオーガ。南西部のユニコーン。
西部のワーウルフ。北部のヴァンパイヤ。
北西部のウィンドウルフ。北東部のゴーレム。
東部のフランケン。紹介はしてこなかったが有名過ぎる人造魔獣。何者かがゴーレム製造の技術を応用し、生体化させた物。皆自己の意志を持たず、本能で動いていると聞いた。時代の流れと共に、人型だけでなくキメラ(混種)も目撃されるようになった。
そして、北山脈奥のフェンリル。
長きに渡り名だたる強敵たちと命を削り合いながら、それでもベンジャムは国として成り立っていた。
武としてベンジャム軍は他の追随を許さず、大陸最強と称される。真っ当な位置付けだ。
今現在で潰せているのは、先の8つの内未だ2つだけ。
フェンリル討伐までどれ程の長い道のりと成るのか、先が思い遣られる。
説得の余地を残したユニコーン群は除外したい。
ミストは峰岸君が生存している限りはこちらの味方。どちらも失いたくない。
プリシラベート付近の動きも怪しい。離れ過ぎていて必要精度が保てない。グラテクス大陸限定マップに重ね映し出したのは、情報を元にしたイメージに留める。
地図はマルゼの中央広場に一つ。両国軍の司令部。冒険者ギルド総代のオートにそれぞれ配布。
「凄いね、これは。これだけで一生遊んで暮らせちゃうよ」
戯けて見せるオートさんの目は、半分本気だった。
大陸西側はカルバンとジェシカの知識。
大陸東側。
ベンジャム部は城島君の下見と国軍部の合作。
クイーズブラン部は僕らと国軍部の合作。
プリシラベート部は鷲尾班の情報から。
これ程の精密なマップは他では手に入らない。
映し出せる魔道具を売れば、かなりの額に上る。
広場のは大判の紙に城島君が起こして書き上げた物。
優秀な諜報員や冒険者たちは、一目見て重要性を理解し何度も見に来ては頭に刷り込んでいた。
模写するのも自由。但し持ち逃げされないように細工は施した。あの紙だけでも価値は在るから。
それらを集約した地図の魔道具は、挨拶代わりに上納品として収めた。
軍の幹部、冒険者のリーダー候補者たち。皆掌の返しが凄まじかった。その現金さに若干引いたが、掴みは上々。
更に両国王家の献上用で1つずつオマケしたら、今討伐作戦に口出ししようとしてた人らが口を閉ざした。
「筆が武に勝る。情報こそ正義!」
城島氏がみんなの前で豪語したのが印象的だった。
彼もこちらに来てから変わったんだな。少し時代を先取りしてる感はあるけど…。と思っていたら、ジョルディさんに後頭部を叩かれていた。
頬を真っ赤に染め、恥ずかしそうに。叩かれた城島氏だけが気付いてない。へぇ、結構いいコンビになりそ。
彼の描く精密な地図を前に、誰も反論する者無し。後衛部隊の指揮者が本決まりになった瞬間だった。
懸念材料の一つ。目の上のたんこぶのワーウルフ討伐戦は、小規模精鋭部隊を編成して執り行う。
独断ではマルゼをガラ空きには出来ないのと、非常時に即時撤収が出来るように。要は危なくなったらみんなで逃げる為。
尚且つ東部のフランケン群への対応。何でも最近になってマルゼ近郊部で動きが活発化している模様。
僕ら異世界組の選出メンバーは。僕、ヒオシ、キュリオ、ジェシカ、メイリダ、キョウヤ、ユウコ、ミスト。それ以外は居残り残留。
リンジー、ジョルディ両名は、ギルド総代のオートさんの身に不測の事態が起きた時の代理要員。そんな事には絶対させない。リンジーの知名度と実力評価は折り紙付き。
その他4名は…、コメント無し。ここだって安全地帯じゃない事位は解ってるはずだ。町は任せた。
「以上が異世界組から提示されたメンバーだ。ギルド隊の前線指揮は引き続き俺が執るが、彼らは遊軍として自由に動いて貰う。本作戦での働き如何で、ギルド内部隊編成時のリーダーを選出させて貰う。それらは先に説明した通りだ。マクベス殿と両国王の許可は既に降りている。後で文句は垂れるな。異議有る者は大人しく故郷に帰るか、突撃して討ち死ね。以上、質問は?」
「面白ぇ。要は人狼の首領の首を取った奴の好きな様にギルドを動かせるってんだろ?解り易くていいじゃねぇか」
勇ましいスキンヘッドが唱えれば。
「異世界人の実力も間近で見られる、絶好の機会。胸が躍るわね」
踊る程の持ち合わせの無いセクシー姉さんが呼応した。
「選出の観点から、君らの動きも特別制限はしない。足の引っ張り合い、不正行為、闇討ち。そんな愚かな輩は居ないとは思うが、念の為監視として両国軍からも兵の一部を借り受ける。緊急時以外は当てにはするな」
「ふん。軍に救われたとあっては、冒険者の名折れ。今回の報酬は、栄誉だけですかな」
妙齢の口髭男爵がゆさゆさ揺れた。ただのデブ。
「それだけだ。不満か?」
「不満までではないが、今回の討伐が成功しても得をするのはベンジャムだけでは?骨を折るのは我らだけと言うのも少々頂けん」
一理ある。命を賭ける割に、対価が安くはないかと。
会議室の影でヒオシと密談。それから提案を打ち出した。
「対価報酬については僕らが上乗せします」
「俺らより早く討伐出来た最優秀の組に」
僕がサファイヤの塊。ヒオシがアメジストの塊を出した。
室内全体が響めく。コレが元世界に持って行けたら、あっちでも孫の代まで遊んで暮らせるよ。ダイヤの結晶体だったりしたら間違いないね。
「これはまた、見事な…」
自然と机上に置かれた石に手を伸ばす男爵。
速攻でヒオシが回収。離れた場所の男爵が舌打ち。あれは何らかのスキル持ってるな。スティール?要注意だ。
「サラサラ渡す気は無いんで」
推定万引き犯が居るのが解ったので追加提案。
「小粒のなら腐る程持ってるから。参加、未参加問わず。町の全員に配給する予定。将来の為に取っておくのをお勧めするよ。だから死にそうになったら、みんなで助け合おう。僕らが死んだら、BOXも消えるでしょ」
たった今。藤原君を救う方法の一つが見えた気がした。
この場では全く関係が無いので敢えて流す。
キュリオが涙目で睨む。例え話だから落着いて。
「それ、私にくれるって…」
そっちですかーーーい。
もっと大きいのが在るからそれで許してね。
「その細い太っ腹。気に入ったわ。私たちに背中は任せてね。不届き者が居たら消し炭に変えたげる」
心強いぜ、セクシー姉さん。
「方向性が変わってしまうね。全員配布は正直嬉しい特典だね。いったい何処で手に入れたの?」
オートの疑問はご尤も。ここで一つの情報を開示する。
僕は机上のマップのゴーレムルートを指し示す。
「ちょっと前。試しに入口付近のゴーレムたちを討伐した際に手に入れました」
「そ、そこは俺たちが狙っていた!」
怒れる男爵。上位の盗賊系スキル確定。
「奥にはまだ居るって。倒せるなら頑張れば?」
返しはまた舌打ち。
「成程。通りで北東方面だけポッカリ大人しかった訳だ。既に先行されていたのか。どの道皆の目標は更に奥だからね。今回活躍すれば君の隊を北東方面に割り当てる。主足る魔石や宝石類以外は分配してくれると嬉しい。鉱石類は幾ら在っても困らない。報酬よりは武装の供給に回したいな」
オートさんは頭が切れる。明確な目的と結果を示して男爵の追撃を封じてしまった。総代に抜擢されたのも納得。
男爵の狙いは大体解る。ゴレキンを数体狩った所で離脱する気だ。
最前線に出なければ狩れない。出れば簡単には逃げられなくなる。希望の前に行く為には、今回頑張らないと不本意な後ろに回される。見事な詰め。
男爵は無口な芋と化しました。
強引な倒し方を知ってしまうと試したくなるよねぇ。
正直面倒でやる気が無いなら、満足するまで持たせてささっと消えて貰った方が、こちらサイドは安心して戦える。
ゴレキンの上位種に同じ手が通用するとも思えないし。実力が伴わなければ、勝手に潰れてくれるだろう。
なんか有知有能に進化してから、僕もかなりドライな方向にシフトして来たなぁ。ちょっと悲しい。
城島氏が指摘した走力の違い。これは今回の遠征に必要分の馬車を、整備改造し直し部隊横並びとした。
今回の目的は僕らの力量をアピールするのがメイン。
先行逃げ切りで討伐しても殆ど無意味。
赤竜を数人で突破した何て、大半が信じちゃいない。
こんな時の為にユニコーン部隊を作りたかった。
それらは全部こちらの勝手な都合。何でもかんでも上手く行く何て思い上がりは捨ててしまおう。
失敗から得られる教訓もきっとある。
行程として片道5日の見込み。往復で10日前後。加算は討伐時間。普通の人間と同等の知能を有し、単純な腕力は3倍以上。脚力はお解りでしょう。すんなり終わるワキャ無い。
先日置き逃げした嵐の効果に期待大。
移動に数日を要するので、僕ら3人は途中抜け予定。
鷲尾班の様子見と、鴉州さんと岸川さんを学校まで連れて行く用事を済ます。
僕らの結婚式に呼ばなかったのをブチキレられた。
そんなに仲良くなかったじゃんと思いつつも、罪滅ぼしと慰安の為の温泉ツアーに送り込む。
戦いになってたら、ゆっくりしてられるの?巻き込まれちゃうよと、幾ら脅しても怒りを収めてくれなかったんで。どうなっても知らんよ。
主に食料運びと何か手伝えれば、時間の限りお手伝い。
本格的な人間同士の戦争。
同じ目標を持つなら手を取り合えばいいのに…。どうしてこうも拗れて争い、奪い合うのか。
人間の本能。全ては独占欲の為せる業、なのかなぁ。
マルゼ出発直前。
リンジーが馬車に乗り込む寸前のメイリダを捕まえ、徐ろに抱き締めた。
「誰も死なない戦は無い。ヒオシと同じくメイリダにも生きて欲しい。私はここで待ち、傍に居れないのが辛い。メイは私の大切な家族だ。忘れないで」
「まだ割り切れていない私が、子供なだけよ。戻る頃には綺麗にしてくるから。大人しく待ってて、リン姉さん。行って来ます」
「気を付けて」
最後まで握り合う手が、名残惜しそうに見えた。
場は中央部に在る合同大会議室。
議題は勿論、今回の討伐対象のワーウルフ。
首領はSランクに匹敵する人狼集団。
端的に狼男。今戦いの舞台とした時期が好ましくない。
彼らの力が最も発揮される満月期。だとしても日取りを遅らせる事は困難。移動に要する時間で少しは月が欠けてくれるのを期待する。
狩猟を主とする戦闘スタイル。縄張に接近する全ての生物を狩り、糧としていた。
束と成ればオーガイアさえも捕食してしまう凶暴性。
時折人里に現われる分を潰したとしても、自己繁殖で着実に群れの数を増やしていた。
南部のオーガ。南西部のユニコーン。
西部のワーウルフ。北部のヴァンパイヤ。
北西部のウィンドウルフ。北東部のゴーレム。
東部のフランケン。紹介はしてこなかったが有名過ぎる人造魔獣。何者かがゴーレム製造の技術を応用し、生体化させた物。皆自己の意志を持たず、本能で動いていると聞いた。時代の流れと共に、人型だけでなくキメラ(混種)も目撃されるようになった。
そして、北山脈奥のフェンリル。
長きに渡り名だたる強敵たちと命を削り合いながら、それでもベンジャムは国として成り立っていた。
武としてベンジャム軍は他の追随を許さず、大陸最強と称される。真っ当な位置付けだ。
今現在で潰せているのは、先の8つの内未だ2つだけ。
フェンリル討伐までどれ程の長い道のりと成るのか、先が思い遣られる。
説得の余地を残したユニコーン群は除外したい。
ミストは峰岸君が生存している限りはこちらの味方。どちらも失いたくない。
プリシラベート付近の動きも怪しい。離れ過ぎていて必要精度が保てない。グラテクス大陸限定マップに重ね映し出したのは、情報を元にしたイメージに留める。
地図はマルゼの中央広場に一つ。両国軍の司令部。冒険者ギルド総代のオートにそれぞれ配布。
「凄いね、これは。これだけで一生遊んで暮らせちゃうよ」
戯けて見せるオートさんの目は、半分本気だった。
大陸西側はカルバンとジェシカの知識。
大陸東側。
ベンジャム部は城島君の下見と国軍部の合作。
クイーズブラン部は僕らと国軍部の合作。
プリシラベート部は鷲尾班の情報から。
これ程の精密なマップは他では手に入らない。
映し出せる魔道具を売れば、かなりの額に上る。
広場のは大判の紙に城島君が起こして書き上げた物。
優秀な諜報員や冒険者たちは、一目見て重要性を理解し何度も見に来ては頭に刷り込んでいた。
模写するのも自由。但し持ち逃げされないように細工は施した。あの紙だけでも価値は在るから。
それらを集約した地図の魔道具は、挨拶代わりに上納品として収めた。
軍の幹部、冒険者のリーダー候補者たち。皆掌の返しが凄まじかった。その現金さに若干引いたが、掴みは上々。
更に両国王家の献上用で1つずつオマケしたら、今討伐作戦に口出ししようとしてた人らが口を閉ざした。
「筆が武に勝る。情報こそ正義!」
城島氏がみんなの前で豪語したのが印象的だった。
彼もこちらに来てから変わったんだな。少し時代を先取りしてる感はあるけど…。と思っていたら、ジョルディさんに後頭部を叩かれていた。
頬を真っ赤に染め、恥ずかしそうに。叩かれた城島氏だけが気付いてない。へぇ、結構いいコンビになりそ。
彼の描く精密な地図を前に、誰も反論する者無し。後衛部隊の指揮者が本決まりになった瞬間だった。
懸念材料の一つ。目の上のたんこぶのワーウルフ討伐戦は、小規模精鋭部隊を編成して執り行う。
独断ではマルゼをガラ空きには出来ないのと、非常時に即時撤収が出来るように。要は危なくなったらみんなで逃げる為。
尚且つ東部のフランケン群への対応。何でも最近になってマルゼ近郊部で動きが活発化している模様。
僕ら異世界組の選出メンバーは。僕、ヒオシ、キュリオ、ジェシカ、メイリダ、キョウヤ、ユウコ、ミスト。それ以外は居残り残留。
リンジー、ジョルディ両名は、ギルド総代のオートさんの身に不測の事態が起きた時の代理要員。そんな事には絶対させない。リンジーの知名度と実力評価は折り紙付き。
その他4名は…、コメント無し。ここだって安全地帯じゃない事位は解ってるはずだ。町は任せた。
「以上が異世界組から提示されたメンバーだ。ギルド隊の前線指揮は引き続き俺が執るが、彼らは遊軍として自由に動いて貰う。本作戦での働き如何で、ギルド内部隊編成時のリーダーを選出させて貰う。それらは先に説明した通りだ。マクベス殿と両国王の許可は既に降りている。後で文句は垂れるな。異議有る者は大人しく故郷に帰るか、突撃して討ち死ね。以上、質問は?」
「面白ぇ。要は人狼の首領の首を取った奴の好きな様にギルドを動かせるってんだろ?解り易くていいじゃねぇか」
勇ましいスキンヘッドが唱えれば。
「異世界人の実力も間近で見られる、絶好の機会。胸が躍るわね」
踊る程の持ち合わせの無いセクシー姉さんが呼応した。
「選出の観点から、君らの動きも特別制限はしない。足の引っ張り合い、不正行為、闇討ち。そんな愚かな輩は居ないとは思うが、念の為監視として両国軍からも兵の一部を借り受ける。緊急時以外は当てにはするな」
「ふん。軍に救われたとあっては、冒険者の名折れ。今回の報酬は、栄誉だけですかな」
妙齢の口髭男爵がゆさゆさ揺れた。ただのデブ。
「それだけだ。不満か?」
「不満までではないが、今回の討伐が成功しても得をするのはベンジャムだけでは?骨を折るのは我らだけと言うのも少々頂けん」
一理ある。命を賭ける割に、対価が安くはないかと。
会議室の影でヒオシと密談。それから提案を打ち出した。
「対価報酬については僕らが上乗せします」
「俺らより早く討伐出来た最優秀の組に」
僕がサファイヤの塊。ヒオシがアメジストの塊を出した。
室内全体が響めく。コレが元世界に持って行けたら、あっちでも孫の代まで遊んで暮らせるよ。ダイヤの結晶体だったりしたら間違いないね。
「これはまた、見事な…」
自然と机上に置かれた石に手を伸ばす男爵。
速攻でヒオシが回収。離れた場所の男爵が舌打ち。あれは何らかのスキル持ってるな。スティール?要注意だ。
「サラサラ渡す気は無いんで」
推定万引き犯が居るのが解ったので追加提案。
「小粒のなら腐る程持ってるから。参加、未参加問わず。町の全員に配給する予定。将来の為に取っておくのをお勧めするよ。だから死にそうになったら、みんなで助け合おう。僕らが死んだら、BOXも消えるでしょ」
たった今。藤原君を救う方法の一つが見えた気がした。
この場では全く関係が無いので敢えて流す。
キュリオが涙目で睨む。例え話だから落着いて。
「それ、私にくれるって…」
そっちですかーーーい。
もっと大きいのが在るからそれで許してね。
「その細い太っ腹。気に入ったわ。私たちに背中は任せてね。不届き者が居たら消し炭に変えたげる」
心強いぜ、セクシー姉さん。
「方向性が変わってしまうね。全員配布は正直嬉しい特典だね。いったい何処で手に入れたの?」
オートの疑問はご尤も。ここで一つの情報を開示する。
僕は机上のマップのゴーレムルートを指し示す。
「ちょっと前。試しに入口付近のゴーレムたちを討伐した際に手に入れました」
「そ、そこは俺たちが狙っていた!」
怒れる男爵。上位の盗賊系スキル確定。
「奥にはまだ居るって。倒せるなら頑張れば?」
返しはまた舌打ち。
「成程。通りで北東方面だけポッカリ大人しかった訳だ。既に先行されていたのか。どの道皆の目標は更に奥だからね。今回活躍すれば君の隊を北東方面に割り当てる。主足る魔石や宝石類以外は分配してくれると嬉しい。鉱石類は幾ら在っても困らない。報酬よりは武装の供給に回したいな」
オートさんは頭が切れる。明確な目的と結果を示して男爵の追撃を封じてしまった。総代に抜擢されたのも納得。
男爵の狙いは大体解る。ゴレキンを数体狩った所で離脱する気だ。
最前線に出なければ狩れない。出れば簡単には逃げられなくなる。希望の前に行く為には、今回頑張らないと不本意な後ろに回される。見事な詰め。
男爵は無口な芋と化しました。
強引な倒し方を知ってしまうと試したくなるよねぇ。
正直面倒でやる気が無いなら、満足するまで持たせてささっと消えて貰った方が、こちらサイドは安心して戦える。
ゴレキンの上位種に同じ手が通用するとも思えないし。実力が伴わなければ、勝手に潰れてくれるだろう。
なんか有知有能に進化してから、僕もかなりドライな方向にシフトして来たなぁ。ちょっと悲しい。
城島氏が指摘した走力の違い。これは今回の遠征に必要分の馬車を、整備改造し直し部隊横並びとした。
今回の目的は僕らの力量をアピールするのがメイン。
先行逃げ切りで討伐しても殆ど無意味。
赤竜を数人で突破した何て、大半が信じちゃいない。
こんな時の為にユニコーン部隊を作りたかった。
それらは全部こちらの勝手な都合。何でもかんでも上手く行く何て思い上がりは捨ててしまおう。
失敗から得られる教訓もきっとある。
行程として片道5日の見込み。往復で10日前後。加算は討伐時間。普通の人間と同等の知能を有し、単純な腕力は3倍以上。脚力はお解りでしょう。すんなり終わるワキャ無い。
先日置き逃げした嵐の効果に期待大。
移動に数日を要するので、僕ら3人は途中抜け予定。
鷲尾班の様子見と、鴉州さんと岸川さんを学校まで連れて行く用事を済ます。
僕らの結婚式に呼ばなかったのをブチキレられた。
そんなに仲良くなかったじゃんと思いつつも、罪滅ぼしと慰安の為の温泉ツアーに送り込む。
戦いになってたら、ゆっくりしてられるの?巻き込まれちゃうよと、幾ら脅しても怒りを収めてくれなかったんで。どうなっても知らんよ。
主に食料運びと何か手伝えれば、時間の限りお手伝い。
本格的な人間同士の戦争。
同じ目標を持つなら手を取り合えばいいのに…。どうしてこうも拗れて争い、奪い合うのか。
人間の本能。全ては独占欲の為せる業、なのかなぁ。
マルゼ出発直前。
リンジーが馬車に乗り込む寸前のメイリダを捕まえ、徐ろに抱き締めた。
「誰も死なない戦は無い。ヒオシと同じくメイリダにも生きて欲しい。私はここで待ち、傍に居れないのが辛い。メイは私の大切な家族だ。忘れないで」
「まだ割り切れていない私が、子供なだけよ。戻る頃には綺麗にしてくるから。大人しく待ってて、リン姉さん。行って来ます」
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