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第54話 出立準備01
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式典翌日。
パレード中の都内はウロウロせず、
家で大人しく出立までの予定を話し合った。
「まず1つ。
早い段階で、連絡無しで父上の所に飛ぼうと思います」
「そうね。ご挨拶もそうだし。あちらとこちらの情報共有は必要よね。早いに越した事はないね」
「ただ。行き成り全員で飛んで、超絶美人な嫁を見て
父上の心臓を止める訳には行かないので、初回は俺だけで様子を伺いに行きます」
「な、なるほど…。そんなにスタンにド直球で褒められると嬉しいです。その方針で行きましょう」
「次にお願いです!
3区の歓楽街に男だけで行かせて下さい!」
「な…なんですと…」
「あそこには、女の子たちと飲む場所が在り。そこで拾える情報も大変貴重なのであります!
なんも無い事も多々ありますが…」
「クッ…。わ、私も同席では」
「無理です!それでは女の子が貴女様の美貌に嫉妬にして情報を引き出す事が非常に困難になります!」
フィーネが頭を抱えて数分後。
「…この状況では仕方がありません。今回は特別に許しますが!早く帰って来ないと。店が物理的に潰れますので充分注意して下さい」
「有り難う御座います!なる早で帰って来ます!」
「善処して下さい!」
「次に。同じく3区のカジノに行ってみたいと思います」
「闘技場横の賭博場ですか…。それは何故に」
「闇のバザー程ではありませんが。
運が良ければ掘り出し物が景品として上がる事がありますのです!」
「現金の金貨をコインに替えるだけでは?」
「それが違うのです、フィーネ様。
目玉である、上位三品目は。カジノ内で稼いだコインでしか交換出来ないのです…。
正直1日だけで、届くかどうかも怪しく。
お財布から金貨が全逃亡する確率が高いです。
こればかりは現金しか使えないので」
「最初だけ現金をベットしてコインを稼ぎ、そのコインを増やして行く訳ですね」
「その通りで御座います」
「それは何日を予定していますか」
「無駄に終わる可能性があるので、最大で3日を予定しています」
「それ位なら許容範囲ですね。
ギャンブルに狂いそうになったら、私がスタンをボコボコにしますので頑張って対処するように」
「頑張ります!!」
ちょっとティーブレイク。
「真面目な話に戻すね。
戦いに向けて戦力を備えるのもそうなんだけど。
地下施設の糞野郎以外に、救える人が残ってるかも知れないんだ」
「…暴走しないように頑張るわ」
「ソラリマ装備して暴走されたら、もう誰にも止められないから、それは是非とも頑張って欲しい。
それではなくてカメノスさんの所で、
通常の医薬薬は調達出来る。
その序でに、未完成魔人対策で悪い方の薬も頼もうか悩んでるんだ」
「強力な、麻酔薬のこと?」
「それ。あっちに在るかも知れない麻酔薬は、全く効果と副作用が解らないから。全部施設内で破棄しようと思ってる。その代わりが欲しいなって」
「悪い作戦ではないと思うけど…。何を悩むの?」
「対象の数に依っては。
切り捨てなきゃいけない人も出て来る。
それに、フィーネが堪えられるのかが心配。
俺としては、申し訳ないけど。
1秒でも早く、下の掃除を済ませて。
地上部隊と合流したい考え」
「…救えるかも知れない人まで、切り捨てる、か…」
「端的に言うと。その状況も考えられる。
助けた人が直ぐに動けるとも思えない。
運び出せるかも解らない。
出来れば他の誰にも入らせずに、施設は出る寸前で全てを壊したい。
誰かが入れば、何かを持ち出される可能性が高くて。
それを避ける意味で」
「あぁもう!どうしてそんな施設作るのかな!
全く理解出来ない。
…考える事を放棄してるみたいで嫌だけど。
全て、スタンの判断に委ねる。
絶対に後で文句は言わない。
何をどう判断しても、スタンを嫌いになったりしない。
それだけは間違い無い」
「有り難う。辛い思いをさせて済まない」
「スタンと一緒に頑張るって決めたんだから。
私も同罪。あなた一人の所為にするもんですか」
「クワッ」
「ありがとな。2人とも」
少しの間。沈黙が流れた。
「作戦会議に戻ります。
あちらの状況次第で、武装が足りてない可能性があるので、一度に多く荷物を運ぶ為。
枯渇をお互いに後2回はやろうと思う」
「あれ…辛いよねぇ。
スタンの一度目を見た時。どうしてこんなにふにゃふにゃになるんだろうって思って、少し笑っちゃったけど。
いざやってみて凄く解った。
でも。あのシュルツも頑張ったんだし。
泣き言を言える状況じゃないもんね。
解った。交互にやりましょ」
「次に。通常武装の調達。
普通の店屋で購入してるのがバレたら一大事なので
ここはヘルメン陛下に協力を仰ぎます」
「異論はありません」
「今日は流石に無理だから、それは明日行きます」
「はい」
続けてフィーネが。
「スタンの御父様に会いに行くのは、何時なの?」
「フィーネがいいなら。今日の午後に行って来る。
父上が外出してる可能性もあるから、家にいる可能性の高いサン辺りを目標に。
先に謝っておくけど。彼女が入浴中だったらゴメン」
「その時間に入ってるとは思えないけど…。
驚かせるとは思うから、慰めてあげて。
それは許しま……」
「こんな非常時に浮気する訳ないだろ!
もう少し信用してよぉ」
「ごめんなさい。許します。
直ぐに帰って来てね」
信用してないじゃん。
---------------
昼下がりの落着いた時間に、
約半年振りの実家に飛んだ。
サンは以前と何も変わらない、実家の台所で普通に鼻歌を歌いながら下げたお皿を洗ってました。
遠目から声をそっと掛けた積もりだったが…。
「キャァァァーーー!!!」
だろうね。なるよね。
捕縛した上で抱き締めて、誠心誠意説得。
ロープの上からなら浮気じゃない。
無事に…でもなかったが。
父と弟の在宅予定を確認して、2時間後位に父に書斎に居てくれと言伝を頼んだ。
自宅に戻り、アローマさんをリビングに座らせ。
「今日は遅くなるから、残業頼める?」
胸を張った快い返事を聞いて、折り返し転移。
「眠たかったら寝室使っていいから」
「行って来まーす」
---------------
半年振りに見る父は、やはり変わらず格好良かった。
やや驚きつつも。
「本当に目の前に現われるもんなんだな。
久し振りだ。スターレン。そしてうし………」
素の状態のフィーネを見て固まっていた。
「お久し振りです。父上?」
「なんだ!!
そのリリーナを軽く凌駕する絶世の美女は!!!」
母ちゃん泣くぞおい。
「嫌ですわ。初めまして、御父様。
スターレンの妻。フィーネと申します。
お見知り置きを」
部屋の脇に居たスタルフがポカーン。
顔を知っているサンだけがウンウンと頷いていた。
椅子に座り直した父上が。
「あぁ、済まないな。初めまして、フィーネ嬢。
スターレンの父。ローレン・ガルダ・フリューゲルだ。
ここではなんだ。食堂でお茶でもしながら話そうか」
流石イケメン。復帰も早い。
食堂で薄い紅茶を頂きながら。
フィーネが心配そうに小声で。
「ここで全部話してもいいの?」
「大丈夫。この館内で知らないのは、スタルフだけ」
「そうなんだ」
ローレンが口を開いた。
「では聞こう。そちらの状況を」
その場全員の同意を得て、状況説明をした。
王城の地下施設への鍵を手に入れた事。
予定していた帝国との戦争は回避出来る事。
地下施設を自分たちだけで攻略出来そうだと言う事。
今現在で施設内の救助者を救えない可能性がある事。
何も知らない弟も含め、父もその驚きを隠さなかった。
「旅立ってたった半年で、そこまで出来るとは…。
充分な朗報だ。これなら抵抗勢力の士気も上がる。
で。その施設の全貌も解っていないのに。
二人だけで攻略可能だとは、いったい」
そこでソラリマを出して、肩まで装備して見せた。
驚く面々を前に。
「この世で、2本目の聖剣ソラリマです。
初代に比べれば能力は低いでしょうが。
これを前に、この大陸で生き残れる者は殆ど居ません」
「せい…けん…。今、聖剣だと、言ったのか?」
「はい、父上。これを装備出来るのは。
俺と、妻と…。2人だけです」
うっかりバラすとこだった。
フィーネに肘で脇を突かれた。ごめん…。
「ですので。地下施設は俺たちに任せて下さい。
必ず、殲滅してきます」
「よし!!これで活路が見えてきた。
正直、お前が戻らなければ。敗北は必至だった。
これならまだ挽回出来る」
「父上。こちらの勢力とマッハリア正規軍の対比は」
「こちら三千。軍が二万だ。
しかし地下を考慮しなくていいなら。局所で城を攻められる。立ち回り次第だが。
それでも希望はあるだろう。充分にな。
こちらに聖剣があるのは勿論口外はしないが。
事が起きるのは何時頃と考えているんだ。
こちらで集めた情報では、フレゼリカがお前が流した妙な薬を手にしたとか聞いたが」
スタルフが我慢出来ずに。
「父上!兄上!正直話に付いて行けません…。
何も知らなかったのは、僕だけみたいですが」
「落ち着け。私が後で最初から説明してやる。
お前だけに伏せていたのにも事情がある。
今は黙って聞いておけ。いいな」
「はい…」
仕切り直して。
「フレゼリカが手にしたのは。万寿の樹液です。
生き物の生命活動時間を異常に引き延ばす代物です。
しかしその用法用量は定かで無く。
あいつは慎重になり、
それを施設で使うかどうかの判断は。
俺の見立てでは、今から約一ヶ月後と見ています。
それが決起になるかと。
その手前辺りで地下へ突入します。
万が一にも、実験が成功してしまったら戦況が一変してしまうので、それを潰しに行きます。
でも。するわけないですけどね。あんな偽物の薬では」
「まぁいい。どの道、後数ヶ月で旗は振る積もりで居たからな。…後、一月か」
「タイラントから武装を運びたいと考えていますが。
足りない数量はどれ位ですか?」
「鈍含め、大体二千しか手に入っていない。
父として恥ずかしいが。そこまでお前に頼っていいのか」
「勿論です。母の敵を討つのですから。
金等幾らでも出せます。
俺には心強い後ろ盾も居ますし。
予備品含めて…2千人分は用意します。
明日には確認が取れますので、明後日のこの時間帯に書斎に居て下さい。
そこで保管場所などの擦り合わせをしましょう」
「何から何まで。押し付けて済まん。
明後日の午後は館内に居る。好きな時に来い」
「こんな不便な転移道具で済みません」
「何を言う。それを手に入れたからこその勝機だ。
改めて礼を言う。お前の噂はここまで届いているぞ。
全て終わったら、フィーネ嬢含めて酌み交わそう。
本心では今夜にでもやりたいが。
スタルフに説明せねばならん。それは事後としよう」
「ええ。是非とも。勝利の祝杯を挙げましょう」
「是非。勝利後に」
最後に。
フレゼリカのバックにいるアッテンハイムからの援軍の数量と、こちらが下手に手を出さなければ無視出来る事を付け加えた。
「何にしろ。お前たちが動いてからだ。
そこまで早くは城の中枢までは行けん。
どう足掻いてもな」
「ですね」
父に一礼して、俺たちは自宅へと帰還した。
---------------
アローマです。
スターレン様とフィーネ様の御自宅の担当主任と言う
輝かしい栄光を手にしたアローマです。
一生手放したくありません。
もし。この先、ソプラン様との子を授かったとしても
産休後に取り戻します。ええ必ずや。
今日は、お二人から残業を仰せつかり、
他の担当も本棟へと戻ったので。
御自宅に一人で居ます。
居るんです……。
居るんですよ!私だけで!!
済みません。興奮してしまいました。
日が沈む頃におトイレを拝借し、準備は万全です。
………
小腹が空きました。
お二人は料理までご自分たちで楽しまれるので、作ってしまっていいものかを悩みます。
しかしかなり遅いと聞いたので、本棟に戻って軽食を頂くかどうか…微妙な時間です。
スターレン様の転移道具は、移動先に知人が居ないと成立しない物だそうですので、
ここを離れる事は出来ません。
お二人の大切な冷蔵庫は勝手に漁れませんし…。
持って来れば良かったーーー。
と後悔してももう遅い。待ちましょう。
ま…、待っているのですが。
お腹が空いているのに、眠くなって来ました。
どうしてしまったのでしょう。
寝室を使って良いと仰せつかったので。
少しだけ仮眠を頂こうか…。
足が勝手に動き、お二人が使用されている寝室前にまで来てしまいました。
…いけない!これは、間違いです。
誘惑に負けてはいけません。
どうせ自分たちが清掃するのだから、少し位は…。
何を考えているんですか!
不埒な考えは捨てなさい、アローマ!
クビに成りたいのですか!
何時ものように。ソプラン様に
御自分を律しろと言っておきながら、
お二人のベッドに興味を持ってしまうだなんて。
…入ってしまった。無断で。
見渡す限り清潔なお部屋。
担当を仰せつかってから、一週間以上が経過しています。
しかし、ここへ清掃に入っても。
ベッドのシーツを取り替える程度で髪の毛一本落ちていないとは、何故だろうと不思議に思っていました。
そんな事より早く出なさい!!
…手が、勝手に、上布団を剥がしていました。
やはり綺麗なまま。
今日は清掃には入っていないのに…。
ご主人様たちは、王都で誰もが羨む程の仲の良さ。
…何も、していない…??
筈はない!!
いやいや早く出なくては。
こんな時に戻られてしまったら、何と言い訳を。
…靴を脱いで、侍女服のまま入っていた。
不思議です。
お二人の汗の匂いが全くしません…。
洗い立ての石鹸の香りがします。
これがお二人の温もり…。
何をしているんですか!!
心地良い睡魔に勝てず。仮眠を…。Zzzz
遠くの方で、お二人の声がする…。
「え?あれ?隣じゃなかったんだ」
「あー。お疲れみたいですねぇ」
「本棟で何か頂いて。今日は隣の部屋で寝るか」
「そうしよっか」
パレード中の都内はウロウロせず、
家で大人しく出立までの予定を話し合った。
「まず1つ。
早い段階で、連絡無しで父上の所に飛ぼうと思います」
「そうね。ご挨拶もそうだし。あちらとこちらの情報共有は必要よね。早いに越した事はないね」
「ただ。行き成り全員で飛んで、超絶美人な嫁を見て
父上の心臓を止める訳には行かないので、初回は俺だけで様子を伺いに行きます」
「な、なるほど…。そんなにスタンにド直球で褒められると嬉しいです。その方針で行きましょう」
「次にお願いです!
3区の歓楽街に男だけで行かせて下さい!」
「な…なんですと…」
「あそこには、女の子たちと飲む場所が在り。そこで拾える情報も大変貴重なのであります!
なんも無い事も多々ありますが…」
「クッ…。わ、私も同席では」
「無理です!それでは女の子が貴女様の美貌に嫉妬にして情報を引き出す事が非常に困難になります!」
フィーネが頭を抱えて数分後。
「…この状況では仕方がありません。今回は特別に許しますが!早く帰って来ないと。店が物理的に潰れますので充分注意して下さい」
「有り難う御座います!なる早で帰って来ます!」
「善処して下さい!」
「次に。同じく3区のカジノに行ってみたいと思います」
「闘技場横の賭博場ですか…。それは何故に」
「闇のバザー程ではありませんが。
運が良ければ掘り出し物が景品として上がる事がありますのです!」
「現金の金貨をコインに替えるだけでは?」
「それが違うのです、フィーネ様。
目玉である、上位三品目は。カジノ内で稼いだコインでしか交換出来ないのです…。
正直1日だけで、届くかどうかも怪しく。
お財布から金貨が全逃亡する確率が高いです。
こればかりは現金しか使えないので」
「最初だけ現金をベットしてコインを稼ぎ、そのコインを増やして行く訳ですね」
「その通りで御座います」
「それは何日を予定していますか」
「無駄に終わる可能性があるので、最大で3日を予定しています」
「それ位なら許容範囲ですね。
ギャンブルに狂いそうになったら、私がスタンをボコボコにしますので頑張って対処するように」
「頑張ります!!」
ちょっとティーブレイク。
「真面目な話に戻すね。
戦いに向けて戦力を備えるのもそうなんだけど。
地下施設の糞野郎以外に、救える人が残ってるかも知れないんだ」
「…暴走しないように頑張るわ」
「ソラリマ装備して暴走されたら、もう誰にも止められないから、それは是非とも頑張って欲しい。
それではなくてカメノスさんの所で、
通常の医薬薬は調達出来る。
その序でに、未完成魔人対策で悪い方の薬も頼もうか悩んでるんだ」
「強力な、麻酔薬のこと?」
「それ。あっちに在るかも知れない麻酔薬は、全く効果と副作用が解らないから。全部施設内で破棄しようと思ってる。その代わりが欲しいなって」
「悪い作戦ではないと思うけど…。何を悩むの?」
「対象の数に依っては。
切り捨てなきゃいけない人も出て来る。
それに、フィーネが堪えられるのかが心配。
俺としては、申し訳ないけど。
1秒でも早く、下の掃除を済ませて。
地上部隊と合流したい考え」
「…救えるかも知れない人まで、切り捨てる、か…」
「端的に言うと。その状況も考えられる。
助けた人が直ぐに動けるとも思えない。
運び出せるかも解らない。
出来れば他の誰にも入らせずに、施設は出る寸前で全てを壊したい。
誰かが入れば、何かを持ち出される可能性が高くて。
それを避ける意味で」
「あぁもう!どうしてそんな施設作るのかな!
全く理解出来ない。
…考える事を放棄してるみたいで嫌だけど。
全て、スタンの判断に委ねる。
絶対に後で文句は言わない。
何をどう判断しても、スタンを嫌いになったりしない。
それだけは間違い無い」
「有り難う。辛い思いをさせて済まない」
「スタンと一緒に頑張るって決めたんだから。
私も同罪。あなた一人の所為にするもんですか」
「クワッ」
「ありがとな。2人とも」
少しの間。沈黙が流れた。
「作戦会議に戻ります。
あちらの状況次第で、武装が足りてない可能性があるので、一度に多く荷物を運ぶ為。
枯渇をお互いに後2回はやろうと思う」
「あれ…辛いよねぇ。
スタンの一度目を見た時。どうしてこんなにふにゃふにゃになるんだろうって思って、少し笑っちゃったけど。
いざやってみて凄く解った。
でも。あのシュルツも頑張ったんだし。
泣き言を言える状況じゃないもんね。
解った。交互にやりましょ」
「次に。通常武装の調達。
普通の店屋で購入してるのがバレたら一大事なので
ここはヘルメン陛下に協力を仰ぎます」
「異論はありません」
「今日は流石に無理だから、それは明日行きます」
「はい」
続けてフィーネが。
「スタンの御父様に会いに行くのは、何時なの?」
「フィーネがいいなら。今日の午後に行って来る。
父上が外出してる可能性もあるから、家にいる可能性の高いサン辺りを目標に。
先に謝っておくけど。彼女が入浴中だったらゴメン」
「その時間に入ってるとは思えないけど…。
驚かせるとは思うから、慰めてあげて。
それは許しま……」
「こんな非常時に浮気する訳ないだろ!
もう少し信用してよぉ」
「ごめんなさい。許します。
直ぐに帰って来てね」
信用してないじゃん。
---------------
昼下がりの落着いた時間に、
約半年振りの実家に飛んだ。
サンは以前と何も変わらない、実家の台所で普通に鼻歌を歌いながら下げたお皿を洗ってました。
遠目から声をそっと掛けた積もりだったが…。
「キャァァァーーー!!!」
だろうね。なるよね。
捕縛した上で抱き締めて、誠心誠意説得。
ロープの上からなら浮気じゃない。
無事に…でもなかったが。
父と弟の在宅予定を確認して、2時間後位に父に書斎に居てくれと言伝を頼んだ。
自宅に戻り、アローマさんをリビングに座らせ。
「今日は遅くなるから、残業頼める?」
胸を張った快い返事を聞いて、折り返し転移。
「眠たかったら寝室使っていいから」
「行って来まーす」
---------------
半年振りに見る父は、やはり変わらず格好良かった。
やや驚きつつも。
「本当に目の前に現われるもんなんだな。
久し振りだ。スターレン。そしてうし………」
素の状態のフィーネを見て固まっていた。
「お久し振りです。父上?」
「なんだ!!
そのリリーナを軽く凌駕する絶世の美女は!!!」
母ちゃん泣くぞおい。
「嫌ですわ。初めまして、御父様。
スターレンの妻。フィーネと申します。
お見知り置きを」
部屋の脇に居たスタルフがポカーン。
顔を知っているサンだけがウンウンと頷いていた。
椅子に座り直した父上が。
「あぁ、済まないな。初めまして、フィーネ嬢。
スターレンの父。ローレン・ガルダ・フリューゲルだ。
ここではなんだ。食堂でお茶でもしながら話そうか」
流石イケメン。復帰も早い。
食堂で薄い紅茶を頂きながら。
フィーネが心配そうに小声で。
「ここで全部話してもいいの?」
「大丈夫。この館内で知らないのは、スタルフだけ」
「そうなんだ」
ローレンが口を開いた。
「では聞こう。そちらの状況を」
その場全員の同意を得て、状況説明をした。
王城の地下施設への鍵を手に入れた事。
予定していた帝国との戦争は回避出来る事。
地下施設を自分たちだけで攻略出来そうだと言う事。
今現在で施設内の救助者を救えない可能性がある事。
何も知らない弟も含め、父もその驚きを隠さなかった。
「旅立ってたった半年で、そこまで出来るとは…。
充分な朗報だ。これなら抵抗勢力の士気も上がる。
で。その施設の全貌も解っていないのに。
二人だけで攻略可能だとは、いったい」
そこでソラリマを出して、肩まで装備して見せた。
驚く面々を前に。
「この世で、2本目の聖剣ソラリマです。
初代に比べれば能力は低いでしょうが。
これを前に、この大陸で生き残れる者は殆ど居ません」
「せい…けん…。今、聖剣だと、言ったのか?」
「はい、父上。これを装備出来るのは。
俺と、妻と…。2人だけです」
うっかりバラすとこだった。
フィーネに肘で脇を突かれた。ごめん…。
「ですので。地下施設は俺たちに任せて下さい。
必ず、殲滅してきます」
「よし!!これで活路が見えてきた。
正直、お前が戻らなければ。敗北は必至だった。
これならまだ挽回出来る」
「父上。こちらの勢力とマッハリア正規軍の対比は」
「こちら三千。軍が二万だ。
しかし地下を考慮しなくていいなら。局所で城を攻められる。立ち回り次第だが。
それでも希望はあるだろう。充分にな。
こちらに聖剣があるのは勿論口外はしないが。
事が起きるのは何時頃と考えているんだ。
こちらで集めた情報では、フレゼリカがお前が流した妙な薬を手にしたとか聞いたが」
スタルフが我慢出来ずに。
「父上!兄上!正直話に付いて行けません…。
何も知らなかったのは、僕だけみたいですが」
「落ち着け。私が後で最初から説明してやる。
お前だけに伏せていたのにも事情がある。
今は黙って聞いておけ。いいな」
「はい…」
仕切り直して。
「フレゼリカが手にしたのは。万寿の樹液です。
生き物の生命活動時間を異常に引き延ばす代物です。
しかしその用法用量は定かで無く。
あいつは慎重になり、
それを施設で使うかどうかの判断は。
俺の見立てでは、今から約一ヶ月後と見ています。
それが決起になるかと。
その手前辺りで地下へ突入します。
万が一にも、実験が成功してしまったら戦況が一変してしまうので、それを潰しに行きます。
でも。するわけないですけどね。あんな偽物の薬では」
「まぁいい。どの道、後数ヶ月で旗は振る積もりで居たからな。…後、一月か」
「タイラントから武装を運びたいと考えていますが。
足りない数量はどれ位ですか?」
「鈍含め、大体二千しか手に入っていない。
父として恥ずかしいが。そこまでお前に頼っていいのか」
「勿論です。母の敵を討つのですから。
金等幾らでも出せます。
俺には心強い後ろ盾も居ますし。
予備品含めて…2千人分は用意します。
明日には確認が取れますので、明後日のこの時間帯に書斎に居て下さい。
そこで保管場所などの擦り合わせをしましょう」
「何から何まで。押し付けて済まん。
明後日の午後は館内に居る。好きな時に来い」
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「何を言う。それを手に入れたからこその勝機だ。
改めて礼を言う。お前の噂はここまで届いているぞ。
全て終わったら、フィーネ嬢含めて酌み交わそう。
本心では今夜にでもやりたいが。
スタルフに説明せねばならん。それは事後としよう」
「ええ。是非とも。勝利の祝杯を挙げましょう」
「是非。勝利後に」
最後に。
フレゼリカのバックにいるアッテンハイムからの援軍の数量と、こちらが下手に手を出さなければ無視出来る事を付け加えた。
「何にしろ。お前たちが動いてからだ。
そこまで早くは城の中枢までは行けん。
どう足掻いてもな」
「ですね」
父に一礼して、俺たちは自宅へと帰還した。
---------------
アローマです。
スターレン様とフィーネ様の御自宅の担当主任と言う
輝かしい栄光を手にしたアローマです。
一生手放したくありません。
もし。この先、ソプラン様との子を授かったとしても
産休後に取り戻します。ええ必ずや。
今日は、お二人から残業を仰せつかり、
他の担当も本棟へと戻ったので。
御自宅に一人で居ます。
居るんです……。
居るんですよ!私だけで!!
済みません。興奮してしまいました。
日が沈む頃におトイレを拝借し、準備は万全です。
………
小腹が空きました。
お二人は料理までご自分たちで楽しまれるので、作ってしまっていいものかを悩みます。
しかしかなり遅いと聞いたので、本棟に戻って軽食を頂くかどうか…微妙な時間です。
スターレン様の転移道具は、移動先に知人が居ないと成立しない物だそうですので、
ここを離れる事は出来ません。
お二人の大切な冷蔵庫は勝手に漁れませんし…。
持って来れば良かったーーー。
と後悔してももう遅い。待ちましょう。
ま…、待っているのですが。
お腹が空いているのに、眠くなって来ました。
どうしてしまったのでしょう。
寝室を使って良いと仰せつかったので。
少しだけ仮眠を頂こうか…。
足が勝手に動き、お二人が使用されている寝室前にまで来てしまいました。
…いけない!これは、間違いです。
誘惑に負けてはいけません。
どうせ自分たちが清掃するのだから、少し位は…。
何を考えているんですか!
不埒な考えは捨てなさい、アローマ!
クビに成りたいのですか!
何時ものように。ソプラン様に
御自分を律しろと言っておきながら、
お二人のベッドに興味を持ってしまうだなんて。
…入ってしまった。無断で。
見渡す限り清潔なお部屋。
担当を仰せつかってから、一週間以上が経過しています。
しかし、ここへ清掃に入っても。
ベッドのシーツを取り替える程度で髪の毛一本落ちていないとは、何故だろうと不思議に思っていました。
そんな事より早く出なさい!!
…手が、勝手に、上布団を剥がしていました。
やはり綺麗なまま。
今日は清掃には入っていないのに…。
ご主人様たちは、王都で誰もが羨む程の仲の良さ。
…何も、していない…??
筈はない!!
いやいや早く出なくては。
こんな時に戻られてしまったら、何と言い訳を。
…靴を脱いで、侍女服のまま入っていた。
不思議です。
お二人の汗の匂いが全くしません…。
洗い立ての石鹸の香りがします。
これがお二人の温もり…。
何をしているんですか!!
心地良い睡魔に勝てず。仮眠を…。Zzzz
遠くの方で、お二人の声がする…。
「え?あれ?隣じゃなかったんだ」
「あー。お疲れみたいですねぇ」
「本棟で何か頂いて。今日は隣の部屋で寝るか」
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