お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏

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第293話 ゴミ処理とその他取扱考察

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10月󠄃11日の朝。自宅へ帰宅…。

スッキリした俺たちに対する待機班3人のジト目が突き刺さって痛い。

全部ダリアに読まれていた。
「済まない。どうしても耐え切れずに遠征組だけで拠点へ行ってしまった。
ダリアとファフには埋め合わせを今日明日でたっぷりとします。
シュルツとは明日プールに入って適度なスキンシップを図ります。後でハグを。それでどうかお許しを」
「お許しを」
遠征一同で一礼。
「「「許します」」」

シュルツは仕方無いなと肩を竦め。
「私は元々今月は我慢と決めて居ました故平気です。それよりも結果を教えて下さい。黒竜様が怖くてダリアさんは中身を覗いていないので」
「お願いします」
「出勤前に」

不満げな3人も。持ち帰った宿題を聞いて真顔で消沈。
「それで現実逃避を」
「そんなとこ。ルーナの火力上げはかなり進んだけどまだ試してない。
黒竜様との模擬も。予定メンバーでボッコボコだったし色々考える所も有ってさ。
今日は上に報告上げて明日まで休み。明後日ラザーリアから片付ける。俺とレイルで直ぐ終わる。
スフィンスラーはその後にゆっくりダリアの未来視で方法を探る。
神殺しは更に後。順番にね」
「後はオメアさんとサンガちゃんの所に遊びに行くのとアッテンハイムの未発見迷宮調査で年内は概ね終了。
こっちは何か有った?」

シュルツから。
「オリオンは上下水路の整備が予定設備分施工完了。工事共有仮宿舎などに適用し終了後は従業者用宿舎へと建て替えます。源泉路はまだ開通していません。
ラフドッグの自走車は試作七割完成。試運転走行予定地である王都東街道上に上の認可が取れ次第建設して国民と観光者の度肝を抜きます。一晩有れば余裕です。
チタン製ペンダント型のペースメーカーが人数分完成しましたので後で配布します。自分とダリアさんとファフ様では異常は有りません。
試着後違和感を感じたら申告お願いします。防御性は無いので戦闘向きではないかも知れません」
「おー自走車もう7割かぁ。楽しみだ」

続いてファフ。
「事務棟案件は特に進展有りません。フラジミゼールの二人もまだ。移住は年内目処で。
ミゼッタさんが五区の宿屋の下働きを始めました。セントバさんは別の宿で被らないように。執事と侍女仕事は来年から徐々に兼任移行予定です」
「ふむふむ。そちらも焦らず順調と」

最後にダリア。
「今月に入って内務仕事を一部再開。御父様の下にボレイスさんが正式就任され。私の持ち分も来年以降で担当して頂ける運び。就任に合わせクラリア姉さんと婚姻。身内式は年明け三日。スターレン様が確実に王都に居るであろう頃を見計らって行われます」
「ほぅほぅ良いですね。来年明けは大きな行事予定は無いから必ず参加します」
「遂にクラリアも結婚かぁ。時間掛けた分きっと上手く行きそうね」
「はい…。後お母さんが」
「エルラダさんが?」
「メメットさんと…」
「おぉ!」
「メメットさんだったんだ!」
「大変良い感じに成りました」
「「おぉ~」」

「目出度いな。まあ大丈夫だとは思ってたが」
「上手く行けばメメットさんをお父さんとお呼びする事に成る…のは実感が湧きませんが。
父が三人。母が二人。あ、マリカ母様にも男の子が産まれましたので…。えーっと姉が二人。兄?が一人。生れ立ての弟が一人で要は沢山増えます」
「端折っちゃった」
「家族が沢山。正解」

「ダリアの家系はもう既に賑やかだな」
「はい。幸せです。年内の何処かでラフドッグのお婆様への婚姻挨拶に伺うのでフィーネ様かアローマさんの転移同行をお願いします」
満面の笑みで。
「何時でもいいよ」
「毎月月末頃に伺って居りますので。合わせても別日でも」


報告会後にシュルツを精一杯優しく抱き締め愛情たっぷりのキスを交し。
「俺に飽きたら泣くぞ。本気で」
「飽きません。御爺様のお言葉で目が覚めました。必ず修正して大人の淑女に成って見せます。捨てないで下さいねお兄様」
「捨てない。絶対に。嫌でも連れ戻す」
暫く抱き締めてシュルツの優しい香りを一杯に補給した。

各員改良型ペースメーカーを受け取り解散。
健常者にはお守りのような位置付けだと思われた。

しかしそこは天才。これも只で終わる訳が無く。


城への報告はフィーネとアローマが向かったので何時もの3人(レイルとオメア)で防音室へ籠った。

オメアは愛用のハープ。レイルは金属弦ギター。自分は馬弦ギター。

時々フィーネの笛。シュルツのフルート。その他の人も好きな楽器で加わったりする。

何時もなら胸躍る楽器遊び。だがしかし…。
「何だか胸が凄い落ち着くのは気の所為?」
「私も。感情の起伏が全く平坦」
「このペースメーカーの所為ですね。鼓動ではなく感情そのものを穏やかにするような音色を発している。その様な気がします。これ自体が楽器みたいな」

「これも普通じゃなかった。寧ろシュルツは自分自身の為に作ったのかも」
「それ有りそう。女子会で何時も荒れてたから」
「どうして私だけがと。心で泣いて」
「やっぱそうだったんだ」
時間だけはどうしようも無い。後8ヶ月頑張れ。
それは俺にも言える事。

「レイル。こんな時になんだけど明後日のラザーリアの塵回収。ホントに拠点に持って行くだけでいいの?」
「えぇそうよ。誰も居ない場所で。昇霊門で送ると中域でヌンタークが再出現する可能性有るから私が燃やす。ヌンタークを葬った場所で」
「あぁそれでか」
超納得。

「それに溶液の中に世界樹の樹液入れたんでしょ?」
「うん」
「分離出来れば回収。それをグズルードの延命に使う。私や黒竜の生血じゃ駄目。化け物に成るから」
「おぉ成程」
ダメスの時みたいに。
「あなたや秘密の宴参加者とラメルには無害よ」
「そんな切り分け出来るんすか」
「だって散々唾液交換してるじゃない。固形化してない涙とか…。色々、あっちの方も」
「「あぁ…」」
3人で顔を朱く染め。

軽く咳払い。
「そ、それはとても良かった。でも分離か…結構難題だな。お隣の研究所の設備借りようか。思い切って天才2人に相談してみるか。塵成分除去した上で」
オメアが挙手。
「溶液を見てみないと難しいですが。浄化後の液体から万寿だけを抽出出来るかも知れません。私のイグニースの部分で」
「あ、専門家居たわここに」
「居たわね。目の前に」

「グズルードの方もかなり明るくなったな」
確かな道が見えて来た。

安心して楽器遊びを。昼は事務棟のランチ。
を挟み夕方まで。




-------------

10月12日。
久々ののんびり私用プール遊び。の筈だったのに…。

本日もお越しの王族3人娘。
「フィーネ!俺を怒らせたいのか?それともここを作ってくれたシュルツに喧嘩売ってんのか?」
「お嬢!好い加減にしろ。今日はエルラダさんがデート中で不在だから安心してたのに」
「ごめん。2人共怒らないで。大勢で泳いだ方が楽しいじゃない。ここ王宮よりも広いし」

「そんなもん女子組で王宮行けばいいじゃねえか」
「お嬢様は許可したのか?」
「私は何方でも。王族には逆らえませんし」

懲りもせず本日も際どい方の水着をお召しの3人。
「来てはいけないのですか?」
「不満なのですか?」
「悲しいです…。見て頂きたいだけなのに」

「不満はないですよ。光栄ですよそりゃもう」
「普通の!方を着て頂ければ。前回でかなり慣れましたがね」

それでも頑固な3人はそのまま遊泳。前回と同じペアで優しく指導。

ソプランは上手いが正直俺泳ぐの下手なんですが…。
初代の経験リセットされて。ホントに深海王だったんか!

前回のメニューと違ったのはフィーネが一部竜鱗化して3人にペタペタ触らせていた。序でに皆でお触り会。

本物の水竜様にも触りました。とは口が裂けても言えず。

お昼は事務棟ランチ。3人娘の目当てはこっちの方がウエイト高め。

執務室空っぽでいいのか?セントバ氏が居る日なのでOKで且つ緊急時はプールサイドのベルが鳴る。食堂に居れば下りて来ると言う神対応。

来客は多少待たせる方が良かったりする。途中で帰るのは大した用事は無い。その場合ティンダーが門前で弾く。

食堂に居る間は当然普段着を上に着て。

「ここの食堂。ラメル君もホントは秘密なんですよ。広めるのが嫌だから入って貰ってるのに。こう言うのを職権乱用て言うんです。知ってますよねミラン様」
「存じて居りますとも。ですから護衛は本棟側で」
暖簾に腕押しとはこの事。

かなりの上達振りを見せる3人。全部が全部冷やかしではないと安心した。本人たちも楽しそうで少し長めに15時前まで。

今日のお見送りは無いだろうと一人でジャバジャバ遊んでいたら…正妻の蔦鞭に釣り上げられた。
「何しとん?」
「お見送りよ」
「この後の展開は?」
「お見送りのチューね」
「何故に許可を下ろしてしまうの?」
「ここなら安全だから」
こちらも暖簾に腕押し状態。

俺が言っているのはそれではない。

期待の眼差しを向ける3人娘。1人はフィーネを見てるのが安心材料。

「恒例行事よ」
「ここまでが一セット」
「フィーネ様のキスを頂かないと眠れぬ身体に」
どんな状況や!

「こんな事続けてたら拙いって。俺は遊びではしない主義なんだぞ。解ってんの?」
「充分に理解して居ります。次の実りが来るまでの期間限定です。アネモネは専属侍女に預けて若干心苦しさは御座います」
「へぇ。俺とキスしてる間は本気だと?」
「…」
「それは浮気ではないと?」
「う、浮気の内には入りませんわ」
まあ良いのか。線引きが出来てるなら。

今回からは遠慮せず。思い切り抱き締めて半分固い股間を下腹部に押し当てながらの貪りキスに切り替えた。
「ううっ!?うぅ…」
僅かな拒絶を腰と背中から押さえ付け更に深く10分間。柔らかいお胸の感触もしっかり堪能。

骨抜きメルシャンを壁際に寄せバスタオルを掛け。

次のミラン様の前に立つ。
「今のが良いですか?前のが良いですか?」
「い、今の」
頂きます!遠慮はしない主義。

情熱的な抱擁とキスを有り難く頂戴した。

リシャーノを骨抜きにしたフィーネが3人娘を更衣室内までご案内。

ロイドとペリーニャが流石に心配し。
「少々遣り過ぎ、では?」
「もう少し柔らかくても。前回までのような」
「止めるのが遅い。キスを恒例行事にしない。俺のキスはそんなにも安い物なのか?世間に広めたいのか?」
「「…」」

「こうなる前にフィーネを止めろ!何度やれば気が済むんだお前らは!!」
「「済み」」
「謝るな!相手は正真正銘の王族だ。遊びに来るなら普通の水着。次からはキスはしない。フィーネとロイドとペリーニャで説得して来い!!」
「「はい!」」

「アローマはどうしてフィーネを止めないんだ?止める役目はお前じゃなかったのか!」
「そこまでお怒りに成られるとは…」
「ふざけるな!次で俺は一線を越えるぞ。誰かから避妊具借りて。それでもいいのか!」
「駄目です!」
「アローマも行け!間違いでした。これ以上は危険ですと伝えろ!!」
「はい!直ちに!」

ペースメーカーを首から提げて。
「あぁ安らぐ…。今の怒りも何処へやら。これありがとなシュルツ」
「いいえ。早速お役に立てて光栄です」
「シュルツが一番大人だよ」
抱き締めて飛び切りの感謝のキスを進呈。
「お姉様方も偶には怒られて頂かないと不公平です」
「その通りだ」

「まあ現代の生まれ付き貴族令嬢はお嬢様だけだしな」
「だな。今日はダリア連れてファフの部屋に泊まる。オメアは悪いけど自宅でフィーネとロイドにお説教お願い」
「承知をば」

「暫く自宅には帰らない。反省文書かせても意味無いんだから腹が立つ。ファフの部屋とレイルの自宅往復。レイルのとこへはソプランも付き合って。アローマ抜きで」
「おけ。アローマは俺の言葉じゃ通じない時有るから良い機会だ」

「ダリアとペリーニャの時は拠点かな。シュルツとは事務棟でお茶。ダリアの未来視やる時も事務棟の会議室で」
「はい。お母さんも来易いですし。事務棟の方が」
色々有ったもんね…(泣)
今はメメットさんとの幸せ応援。

「スターレンのマジ怒り初めてかも」
「本気ですねぇ」
「偶には怒らんと何も伝わらない。最近のロイドは逆上せ気味だし」
謝るな!
す…はい…。しっかり反省致します…。




-------------

10月19日。プール事件から1週間。
今夜も愛するスタンさんは自宅に帰って来ない…。

13日のラザーリア遺品回収はレイルとオメアさんの3人で完結した。

遺品処理と万寿の樹液の抽出も成功。

14日の会議室にも呼ばれなかった。
私とカルとアローマの3人は。

その時行われた未来視も私たちは抜き。
レイルとプレマーレを本筋に置き。グズルードの対応はファフが代打。本来なら私とカルが行く筈だったのに。

未来視の結果を基に。撃破昏倒後に抽出した樹液で延命。
勇者装備とマントと武具を没収し。東大陸の南端。
ルーナが封印されていた溶岩洞窟最奥へ。元々設置されていた封印具を改良した道具でグズルードの身体を封じた。縁切りは後日ゆっくり解析。

洞窟を出る際にルーナが蒼炎で何重にも蓋をして。

次は神殺し案件だったが。私が行けないので保留。
一切喋っても貰えない。会いに行っても逃げられる。

この1週間で我が家のペリーニャとダリアは南極拠点へ2回招かれた。今日がその2回目の日。

別居生活で使用する為女子会は不可。

アローマは自部屋で反省中。ソプランもレイルの自宅に行った切り戻ってないと聞いた。

縋れるのは隣に居てくれるカルだけだった。
ソラリマ経由でレイルに呼び掛けても返事無し。

クワンティーとグーニャもファフの部屋かレイルの自宅をスタンさんと一緒に往復している。

シュルツは事務棟と自室を往復。
私とカルはスタンさんの怒りが収まるまで事務棟とプール出禁。

メルとミラン様は危険だと理解し了承。リシャーノと3人でスタンさんに謝罪し和解。事無きを得て思い出に昇華。
私とカル抜きで普通の安全水着でプール遊びをした。

カルの胸を借りて号泣する毎日。
「今日も返事無いの…?」
「有りません。徹底的に無視されます。あぁまた涙が」
「泣いても意味無いけど涙が止まらない」
「同じ過ちをこれで4度目。誰であろうと怒ります。謝罪の場は必ず来ます。信じて待ちましょう」
「うん。傍に居てカル。お願い」
「大丈夫。私はここに居ます。私もフィーネが支えです」
「有り難う」

私たちが事務棟の会議室へ招かれたのはその翌日。


午前9時過ぎ。フルメンバーが集まる小会議室。
端にはエルラダさんの姿まで。

「スタンさん…」
「許してスターレン」
「いいから空いてる席に座れ」
全く怒りが鎮まっていない愛する夫。

重苦しい空気の中でスタンさんが口を開いた。
「フィーネとロイドとアローマ。これで何度目だ」
「4度目…です」
「4度目?それは確かか」
4度目で間違い無いのに。大きな溜息。
「ミゼッタは断った。クルシュもフィーネが自分で。ならモーランゼアのニドレアとメルシャンは何故許容したんだ」
「え…」

「キスまでならいい?ふざけてるのかロイド」
「いいえ。許してはいけないと」
「キスまでならいい?どうして止めなかったアローマ」
「スターレン様がお喜びに成るかと…」
「じゃあスタフィー号の上。部外者が誰も居ないのに。レイルとプレマーレ。俺とフィーネがキスした時。何故殴って止めた?」
「それは…。シュルツお嬢様の…」
「なら!メルシャンとミラン様なら良いのか!地位が高いから。シュルツが何も言えないから良かったのか!」
「違います。違うのですが…結果的に…」

「グチャグチャだよ。3人。言ってる事とやってる事が」
「「「…」」」
何も言えない。

「片や俺とソプランに浮気をするな許さないと言って置きながら。深い知人や友人には許容する。
意味が解らん。どうすればいいんだ俺たちは。好き放題浮気してもいいのか?」
「違う!それは違います」
「何が違うのか教えてくれ!俺たちのキスでは何も伝わらないのか?どうして守ってくれないんだ。どうして広めようとしてしまうんだよ」
「ちが…うの…」
「将来自分が浮気する時の為の布石じゃないのか!」
「ちが…」
二の句が出ない…。出さなくちゃ…。口から出てくれない。

「やっぱりそうなのか…。俺が8人も迎えたから。何時か自分もやってやろう。適度に俺たちの子供を作れば後は自由だと」
「違います!」
やっと言葉が出てくれた。
「ニドレアは一晩限りだと言ったから適当な理由付け。
メルとミラン様はキスだけで良いと言ったからそれを信じて許容したの。
ミゼッタはのめり込むと思ったから断った。クルシュの時もそう。一晩では済まないと思ったから全否定したの」

「その違いが解らないんだよフィーネ」
「意味不明だお嬢。全部一晩だけなら良いって聞こえる。ロイド様は解らんがアローマもだ。俺に飽きたのか?主が一番に成ったのか?」

「違います。私たちにも弁明をさせて下さい。矢継ぎ早に否定されても困ります。
布石を打ちたい訳でも浮気をしたい訳でもなく。まして広めたいとも思って居りません。
特にスターレン様とのキスは幸せな気分に成れる。優劣ではなく。メルシャン様とは一度交されてしまった。幸福感を覚えられてしまってからでは強く否定は出来ず。結果的にミラン様とリシャーノ様まで巻き込んでしまいました。
その面は謝罪します。ですが一度目を踏み込まれたのと水着の購入をお勧めされたのはスターレン様です」
「それは否定出来ないな」
「水着問わず種類豊富な衣服が売られていれば手に取り身体に当て誰に見て頂こうかと考えてしまうのが女性の心理です。
店に入ってしまっては購入をお止めする事は不可能。誰に見せるかを想像したお相手様はスターレン様。従者で腹心のソプランはオマケです。信用に足る人物なら良しと。
ご披露される場所が城には無いとお聞きし。それでしたら外部と遮断出来る私用プールでは如何でしょうかとお勧めしました。
ご褒美のキスまで要求されるとは考えて居りませんでしたがこの結果。最上のお二人からの直接指名では従者の私ではお止め出来ません。
ご友人で有らせられるフィーネ様もキスまでなら大丈夫だと咄嗟にお許しされました。
リシャーノ様は危険だと阻止。ロイド様はスターレン様とフィーネ様の判断を信用されたのが全て。それ以上でも以下でも有りません。
そして二度目に踏み込まれたのもスターレン様です!お立場的に否定や拒否が可能だったのは何方でしょうか」
「俺…です」
「自制心が足りないのは何方でしょうか!」
「俺、でした」
「柔らかくお断り出来たのは!」
「済みません…」
「私たちに非を押し付け。情熱的なキスに踏み込んでやろうと欲を出されたのは誰ですか!」
「私めに御座います」
「以上に御座います。私は兎も角。この様な不当な仕打ち。別居生活は即刻中止して下さい。フィーネ様とロイド様が毎晩泣いて居られます」
「はい。この後直ぐに帰ります。謝罪はその時に」

「良かったぁ。有り難うアローマ」
「全て任せてしまって御免為さい」
「いいえ事実です故。平民風情ではこれが限界なのですソプラン。お願いですから許して下さい」
最後には真実の涙が零れた。私たち2人も。
「悪かった。俺も宿舎に帰る」

伝わってくれて本当に良かった。アローマが居てくれなかったらと思うと背筋が寒い。
正しく事実と意思を伝えられる話術も勉強しなくては。


その夜。1週間以上振りの謝罪のご褒美をたっぷりと2人で貰い3人で幸せな添寝。

カルと2人でスタンさんの唇を交互に奪い。
「スタンさんとソプランが居たら浮気なんて欠片も考えられないよ。スタンさんがずっとずっと1番です」
「微塵も。スターレンに捨てられたら死んでしまいます」
「御免2人共。自分の弱さを人の所為にしちゃって」

「今度はアローマもちゃんと愛してあげてね」
「うん。それは必ず宴の時に」

やっぱり愛するスタンさんの腕枕が最高で最上です!
カルともキスを交して安心安眠。




-------------

10月21日朝9時。事務棟はお休みでも小会議室にて。
フルメンバーとメメットさんが出張中で暇をしてたエルラダさんも同席。前日の仕切り直し会議。

フィーネさんに取りに行って貰った神殺しをテーブルの真ん中にドンと据え置き。

「昨日までの1週間。己の欲望を御せていなかった事実を棚上げし。全部人の所為にしてしまった愚かな男2人をお許し下さい」
「お許し下さい」
2人で皆に一礼。

レイルとプレマーレは上機嫌。
「私は楽しかったわ。来年の同居生活先取り出来て」
「大変に良い物でした。私が入るのはソプランとアローマの部屋ですが満腹です」

「アローマへの埋め合わせは後日に必ず。
本日目の前の本題に入る前にエルラダさん。定期検査の結果は如何でしたか」
「全て良好で順調です。私用の方も」

「安心しました。本題の前にもう1つ。
東大陸南端洞窟へ封印したグズルード。縁切りの方法を色々考えましたがこれ以上何もしなくても良いのではと結論に至りました。
所詮空っぽの器。俺の使命の完遂。詰りはこちらの世界に魂が定着しさえすれば勝手に縁は切れるからです。
例え洞窟を丸ごと吹き飛ばされても必ず一部は残る細工を施してあるので超安心。

では本題。
本日この後直ぐに。クワン監修の元。格段に性能が上昇したルーナの蒼炎でこの目の前の化け物大剣。神殺しを時間を掛けてじっくりコトコト溶かしてみようと思います。
想定ではブランに桶と成って貰い。蒼炎を溜め込み投入する流れ。
場所は南極拠点から遠く離れた大陸東端の岩場。氷山も凍土も無い平場。
ダリアの未来視で溶けるか溶けないか。将又何か邪魔者が出現するのか否か。
時間はたっぷり有るので落ち着いてお願いします」
「はい」
神殺しを一瞥して目を閉じた。

「予定地に変更無し。出発メンバーは遠征組全員。
桶の設置には数秒。ルーナの蒼炎充填まで更に数秒。
近距離だと激しく熱いのでルーナ以外は遠方に退避。

一日…二日…。七日後。投入開始より丁度一週間後から溶解が始り鞘から溶け…。ん?溶け…出し…。
え…?え?そんな…馬鹿な」
「どした?」

「既に…。この大剣の中に…。劣化魔神が。封印されています」
「え!?」
ダリア以外全員驚愕。

「キエナブレストコ…。駄目です。正式名称を全て唱えるとこの場で復活します」
「止めましょう」
皆で一呼吸。

「今想定されている桶の大きさでは簡単に乗り越えられて蒼炎を全て奪われます。
読み直します…。
桶の上面面積を十倍…。高さを二倍…。いえ三倍。
蒼炎を半分の高さまで充填。足元から溶解。
魔神は両翼を展開。スターレン様とロイド様の聖属性空刃で翼を裁断…。手数不足です。ファフ様も参戦。
遠距離三方向からの空刃。ルーナが更に蒼炎を充填。
魔力不足…。ルーナが退避しフィーネ様よりソプランさんが魔力供給。追加を補充。その繰り返し。
グーニャの最大火球を魔神頭上落下。ソラリマクワンティの一点突破で横から貫き…。まだ足らない。
オーラの聖属性ブレスを序盤から追加攻撃。そこでやっと崩れ始めます。
他の攻撃手段。金属類の投擲。弓。ロイド様の骨槍。フィーネ様の円月輪などは吸収され。ポセラの槍は所有権が剥奪され奪われます。
闇属性は吸収確実。シュピナードとナーディは丸飲み。ダメスでも同じ。レイル様の組に削減手段は皆無です。
四方向からの聖属性攻撃…。まだ足らない。魔神の再生能力向上力が上…。
ふぅー…。ソプランさん。フィーネ様から魔力供給を。枯渇しそうな勢いです」
暑くもないのにダリアだけが汗だく。

2人からの供給で持ち直し。タオルで汗を拭った。

その休憩中にエルラダさんが助言。
「ニーダ。落ち着いて。まだまだ味方戦力は盛れます。
例えばオメアニス様のハープ干渉。レイル様の笛干渉。
ピーカー君の無属性攻撃。フィーネ様とペリーニャ様の聖属性局所領域浄化。
ロイド様の破邪剣をファフ様へ返却。代わりにラーハジットの何方かに聖と風魔石を貼付し空刃など」
「はい。有り難うお母さん。全然抜けてましたね」

温くなった紅茶で一息入れ。
「母の意見も取り入れ見直します。準備段階から…。
破邪剣の返却でロイド様とファフ様の力量バランスが同一に。上空の五者は整い…。
いえまだスターレン様が盛れます。所持している勇者装備とグズルードから押収した過去物をフィーネ様が合成。
マントも獄炎竜の…薄皮を合成すれば強化可能。アローマさんの赤マントでは勿体無い」
「成程。俺も忘れてた同一合成」
「後で合成類全部やるわ」

「はい。実施日を明日に変更。の七日後。
上空四者の空刃とブレス班。
スターレン様とオーラが対極。
ロイド様とファフ様が対極。菱形の力量バランス領域が完成します。
クワンティは構わず縦横無尽に突破。
ルーナの行動順は先程と変更無し。
グーニャの火球は地上班と同じ場所から放出。
その火球にレイル様とオメア様の音域干渉を上乗せ。
魔神の鼓膜から侵入。頭部の中身を食い破れます。
序盤からピーカー君がクワンティに乗り。魔神の口内から内蔵へと侵入。手当たり次第挽肉に」
「おぉエッグいな」
「敵に回したら全滅よね」
戦闘員全員冷や汗。

「ピーカー君が魔神コアを捜索…しますが当然無し。本物は星々の彼方なので気にせず挽肉加工作業を続行。
フィーネ様とペリーニャ様の局所浄化が最適なのは…。蒼炎で熔解した箇所。片足ずつ集中。魔神の体勢を崩さぬように交互に攻める。
約三時間で討伐完了。背中側から飛び出たピーカー君をブランちゃんが弾き出して完遂。自己転移で地上班と合流しても同じです。
討伐と同時に神殺しも消滅します。何れか一つでも欠けると討伐まで辿り着けません。以上です」
汗を拭うダリアを拍手で讃えた。

クワンが元気に。
「間の六日間はあたしが桶を監視しますのでご安心を」
「何時も助かります」

フィーネが笛をレイルへ返却。受け取ったレイルとオメアが早速グーニャを連れスフィンスラーへと向かった。

1日掛け各員の装備の見直しと合成。
勇者装備のブーツを天翔ブーツの上に装着可能にシュルツとフィーネが改造してくれた。
他も着易いように改造。これでフルセット装備可能に。


10月29日。タイラント時間10時過ぎ。

現われた劣化魔神は。立派な黒い羽翼を背負った大男。
太古の巨人族の原祖。50m級の大青鬼の姿。

見るに堪えない巨大な逸物は最初に空刃で去勢。してみたが直ぐに再生したので皆で無視。

腹痛に苦しみ藻掻く魔神の反撃は破壊光線と突風だったが黒竜様とのお手合わせを乗り越えた俺たちには鈍速光線と微風でしか無かった。

光線自体も3km程で消滅する雑魚具合。
地上班はナーディ騎乗のアローマとオメアが全て反射して魔神に返却する始末。

弱かった…。単なる耐久力バカで。
俺たちの無限魔力の前に劣化魔神は為す術無く敗北。

13時半にはお片付けして拠点で一っ風呂浴びて帰国。

フィーネから黒竜様へお礼の念話を送って貰い。
お返事は「うむ。苦しゅう無いぞ」の一言。

改めて有り難う御座います黒竜様。
色々と勉強に成る10月でした。
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