神様ごっこ

2：高校生デビュー

高校生デビュー

　秀太は結局時間ギリギリに校門をくぐり学校の中へと入った。入学式の会場である体育館に向かうと中へ入る前に席の見取り図が渡された。クラス毎に席が並べられそこには生徒の名前が書かれていた。秀太はB組の前から6番目だった。苗字の50音順で並べられているらしい。見取り図を頼りに席にたどり着くと隣には紗季が座っていた。来る途中に挨拶をしてから一緒に来るでもなく先を歩いていた筈なのに、いつの間に来てたんだと秀太は少し不思議に思ったが、それには構わず、

「やあまた会ったね。同じクラスなんだね。」

　勇気を振り絞って声をかけてみたら、自分でも驚くぐらい自然に声を発することができた。
そんな秀太の努力を知ってかしらずか、紗季はよろしくねとそっけない返事をしたっきり秀太から視線を外し前を向いて黙ってしまった。


　席に座ってそこで落ち着くと、秀太は自分の前後左右にいる人がどんな人なのか緊張しながら眺めていた。式の前と本番中は同じ中学校から来ているのか、元からの知り合いらしい人がちらほら談笑する姿を見かけたが、概ね緊張からか顔を強張らせた人が多いことに気付き秀太は少し安心した。と同時に教室に散らばってからが勝負だと心に誓っていた。
　入学式が終わるとクラス毎に並べられた席の列の前にそれぞれ教師らしき人が立っていた。彼らはそれぞれの目の前にいる自分がクラスの担任となることを発表していた。秀太と紗季のいるB組の担任は亀山先生という優しそうな国語の女性の先生だった。
　体育館から教室に向かう際、秀太は自分の前後にいるこれから1年間クラスメイトとなる男女4人に生徒に話しかけた。
　

「俺は篠木秀太っていうんだ。よろしくね。」


過剰気味の自己アピールの入った挨拶だったが、吃らず自然に声に乗せて言葉が出せたことに秀太自身が1番驚いていた。


「よろしくね。」
「よろしく。」


　秀太の高校生活は入学式当日に挨拶し、仲良くなった出席番号の近い男女4人を中心に友達関係を広げていった。その後部活に入ったり、別々のグループに属してもおかしくないのだが、不思議と4人と秀太、そして口数が少ないがいつもそばにいた鈴木紗季の6人で行動することが多くなっていった。