ラスボス・カラミティ

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4.興味

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 プラエドが自分のスキルを確認してはしゃぐ中、自分はステータスのある部分がちょっと気になった。

「このスキル、どうやって使うんだ?」

 自我がなかった時は何となく使っていた気がする。特に操作することなく、まるで息をするかのように。
 だが、自我を得た今、どのようにしてスキルを発動させればいいのかわからない。
 そんな自分の質問に、マコは丁寧に答えてくれる。

「ゲームの時はウィンドウからコマンド操作で魔法もスキルも使っていたんだが……今はスキルも魔法もスキルのイメージを持って詠唱するだけで発動するようになっている。スキルの中には無詠唱のもあるし、常時発動型のもあるがな。例えば《セージⅠ》とかな。まるで魔法が現実になったようだな。」

「ふぅん、なるほど……」

 ちょっと使ってみたくなるが、自分のスキルがどれだけの威力を持つか不明な為、躊躇ってしまう。
 あまり『法廷バシリカ』を傷つけたくない。
 なので使用確認は後回しだ。
 とすると、気になるのはあと一つ。

「その、『プレイヤー』の拠点ってのはなんだい?」
「ん? 気になるか?」
「ああ、すごく。」
「ふぅん、『世界神ワールドゴッズ』のNPCもこの世界についてよく知らない事があるのか。……いや、この『世界神ワールドゴッズ』の立ち位置がアレだからか? まぁいい。」

 なにやらよくわからない事を呟いた後、マコはまた紙に書いて説明を始める。

「まず、世界は全て空に浮かぶ空島で構成されている。確か設定では神々の大戦争で星が砕けたその残骸だとかなんだか。それで、主にプレイヤーがいるのが『アース』。その上方にある、主な神々が住まうとされる場所が『ヘヴン』。『アース』の下にある、悪の神々の住まう空島が『ヘル』。『アース』の隣にある火山の空島が『ムスペル』。『アース』の隣の、少し上方にある海の空島が『ミズガル』。その下方にあるのが凍てつく空島『ニブル』。様々な『迷宮ダンジョン』が無数に存在し、それを占拠してプレイヤーの集まりである『ギルド』の拠点にする事もできる。鉱山もあり、そこから希少な鉱石を採掘する事もできる。ま、とにかく非常に自由度の高いゲームだな。俺のこの姿も、装備も、俺が一から作ったものだしな。」
「なるほど……」

 自分の知らない世界。未知の世界。自我がない故に外に出ようとせず、見ようともしなかった世界。
 『未知』というものが、今自分の目の前にある。それがわかった瞬間、それを見てみたいという強烈な『欲求』が湧き上がる。
 ついに耐えきれず、自分はマコに提案してみる。

「自分はそこに行く事はできるか?」
「……は? え、お前が? 『世界神ワールドゴッズ』のお前が?」
「ああ、そうだが。」
「ちょっと待て冗談じゃ-ーー」
「いいじゃない! 行こう! 行きましょう! マコ、早速案内して頂戴!」
「ーーーえ、いや、え? 待て待て待て。そんな巨体でプレイヤーの拠点なぞ行ったら大混乱になるって! 」

 ううむ、確かに。それは言える。
 自我のなかった時、挑戦してきた『プレイヤー』はどれも2メートルに満たない者ばかりだった。それが『プレイヤー』の平均値ならば、10メートルほどある自分や、頭から脚のない腰までの長さが3メートルほどある上に、船のパーツが周囲に繋がれ浮いているプラエドなど、目立ってしょうがないだろう。
 とはいえ、諦めるのはあまりに惜しい。何か、そう、自分のサイズを小さくするようなモノはないのだろうか?

「……どうしても無理かい? 自分が小さくなる方法はあるかい?」
「……まぁない事もないな。恒久的に【縮小化ミニマム】の魔法を発動させるアイテムを作れん事はないな。」
「それじゃあ私もそれを!」
「あー……お前は【縮小化ミニマム】じゃ違和感ありすぎる。どう見ても偉業だもの。そっちのユーデクスならゴーレムとして押し通せるだろうがな。」
「じゃあどうするのよぉ! 私もそこに行ってみたいの!」
「うおっ、ちょ、やめろぉ! 振り回すなぁ!」

 ちょっと癇癪を起こしたプラエドがマコを掴んで振り回し始めた。
 あっ、首がガクンガクンなってる。
 これ本当にまずいやつじゃ……

 大慌てでプラエドを宥め、気絶したマコを起こし、何か方法を模索してもらう。
 じゃないと、多分マコがもっと酷い目に遭う。ちょっと見るに堪えない。というかかわいそうだ。

「う、う~ん……【種族変化チェンジスピーシーズ】の魔法を恒久的に発動させるアイテムを作れば、何とか……言っておくが、【縮小化ミニマム】も【種族変化チェンジスピーシーズ】も発動すると弱体化するぞ? 『世界神ワールドゴッズ』のお前達ならプレイヤー……よりは強いかな。』
「よし。じゃあそのアイテムちょうだい。」
「は? いや、持ってないけど。」
「じゃあ持ってきて。」
「え……俺が?」
「決まってるじゃん。」
「え~……なんで俺がそんな事を……『アース』に戻ってそのアイテムを作らなきゃいけないじゃん。」
「……『他界他界たかいたかい』。」
「喜んでやらせていただきます。」
「逃げたら地の果てまで追いかけて『他界他界たかいたかい』ね。」
「サー、イエッサー!」
「……うわぁ。」

 プラエドがマコを手懐けた。というか、完全に支配下に置いた。
 怖い。プラエド怖い。上機嫌でニッコニコしているプラエドが余計に怖い。
 戦慄する自分を尻目に、マコは乗ってきていた『空船』に乗り、プラエドはどこから取り出したのか、ハンカチを振って『アース』へと向かうマコを笑顔で見送っていた。
 まぁ、彼女のお陰で、見たいものが観れるのだから……必要な犠牲……なのだろうか?

 ……ん? 『彼女』?


 俺、佐藤誠は大いに悩んでいた。

 なぜだ……なぜ俺は……こんな所で『世界神ワールドゴッズ』のために働いているんだ?
 神の使徒と言えば聞こえはいい。だがNPCの使いっ走りと言い換えると何とも情けない。
 そればかりじゃない。五感を操作することにより、ゲーム世界に入り込んで遊べる人気ゲームハード『VRMMO』。その中でも大人気VRMMO『アポカリプス・ワールド』でプレイしていたら、突如ログアウトが効かなくなったのだ。その上、システムも消滅したのか、ウィンドウすら開けないという始末。更になぜだかアイテムや魔法、スキルは使え、街人のNPC達が意志を持って動き始めるなどの異常事態に。最早プログラミングで再現できる度合いを超えた空間が広がっており、その時ログインしていた五万人ものプレイヤーが『アポカリプス・ワールド』そっくりな異世界に飛ばされ閉じ込められるという衝撃的事実が明らかになってしまった。
 つまり、まるでよくある異世界転移小説のような状態である。
 これでチートできれば完璧だが、残念ながら『アポカリプス・ワールド』において俺のような100レベルプレイヤーというのは珍しくない。
 というのも、100レベルまで上がるための経験値は他のゲームに比べて格段に上がりやすいからだ。
 『アポカリプス・ワールド』ランクⅠからランクExの四段階のジョブの数は凄まじく、一千は超えているとされている。その中でも特にランクExジョブなどのレア度などは大きくばらけており、ジョブ編成次第で同じ100レベルでも強さに差があった。
 製作者側の『試行錯誤を繰り返して自分にあったジョブ編成を見つけて欲しい』という願い故の成長速度だろう。
 そして俺は学者系統や錬金術士系統、職人系統のジョブを取った、いわば生産職、または支援職である。そのため直接戦闘能力は低い。
 確かにチートクラスのレアなジョブは持ってはいるが……それも直接戦闘向きではない。極少数とはいえ自分だけが持っているオンリーワンのジョブではない。
 だからこそ、俺もまたこの異常事態にゲームそっくりな異世界でビクビクと過ごさざるを得ない被害者の一人でしかなかった。そのストレスは計り知れない。

 そしてもう一つ、俺のストレスに拍車をかけるものがある。

「誰かと思えば、マコちゃんか。マコちゃんも巻き込まれたのかい?」
「うん……そうなの……。」
「そうかい? もしよかったらうちのギルドで面倒みようかい?」
「大丈夫! お兄さんに迷惑かけられないから! あたし一人で大丈夫だよ!」
「そ、そう? 本当に?」
「うん!」
「そ、そうか……じゃあね。」

 さっきの少し舌足らずな、可愛らしい幼女の声は俺のものだ。
 もうわかっているとは思うが、俺の『アポカリプス・ワールド』におけるプレイヤーキャラクターデザインは金髪蒼眼の幼女なのだ。つまるところネカマ(ネット内でのみ女として振舞う男の事)である。

 断じて趣味ではない。効率を考えての作戦である。

 『アポカリプス・ワールド』は老若男女問わず楽しめるよう、古いネタや腐ネタもチラホラと見かけられるゲームであった。そのためかゲーム内の男女の差は他のゲームと比べ少なかったが、それでもやはり若干男性の方が多い。
 なので女性プレイヤーは半分以上を占める男共に人気であった。

 それに俺は目をつけた。
 最初のキャラメイキングを女性にし、ついでに男性より少ないとはいえ四割ほどいる女性ウケもとるために、外見設定を幼く……つまり幼女にしたのだ。その上、職人系のジョブもとって露出度の高い装備をデザインして作り上げ、あざとさを上げた。

 結果的に、俺の目論見は成功した。変声機まで使用した俺に死角などなかった。完璧に大多数の男性プレイヤーを魅了し、他の女性プレイヤーの母性本能を刺激し、優先的に臨時パーティーや軍団トループに入れてもらった。
 そのパワーレベリングの結果、俺は幾つものレアアイテムを手に入れ、幾つものレアジョブを習得し、『世界神ワールドゴッズ』の討伐にも成功し、チートクラスのジョブも手に入れ、トッププレイヤーの一人となっていた。
 この高速成長ぶりに「人類皆ロリコンか」とも思ったものだが、そのロリコンに助けられたのだから何も言えない。
 とにかく、このプレイヤーの外装のおかげで俺はこの『アポカリプス・ワールド』で成功したと言ってもいい。

 だが、今はどうか?
 ゲーム世界が現実となるこの現象の結果、俺の体はこの幼女の体になってしまった。
 結果、体の小ささ故に色々と生活にペナルティを受ける事となった。単純な例を挙げれば、高いところに手が届かない、といったところか。

 だが、最も大きなペナルティ……というか障害は、今まで助けられてきたロリコン達だ。
 『アポカリプス・ワールド』は全年齢対象であるため、R指定の行為は禁止。なのでロリコンがこの容姿に惹かれて手を出そうものなら即通報され、ロリコンはアカウントを停止されるだろう。でなくとも、仮想の体なのだからそもそも一線を越えるような事は起こり得なかった。
 だがそれもゲームだった時の話。魔法やスキルなどは使えるが、ウィンドウは表示されない。当然GMゲームマスターへの連絡、通報はできない。以前のゲームだった時のシステムがどこまで残っているかも不明。と、いうより、今まで起きた事を鑑みるに、『アポカリプス・ワールド』という剣と魔法の世界が現実になったと考えたほうが正しい。

 と、いう事は、だ。
 ……お世話になったロリコン共にリアルで犯される可能性がある。

 嫌だ。絶対嫌だ! 体は女でも心は男なのだ。
 
 想像される最悪な未来に気分が悪くなり、吐き気を何度も覚えながらも、ようやく目的の場所へとたどり着く。
 その建物はちょっと古臭く、石材もカビや苔が生え、痛んでいるように見える。
 そんな建物が掲げるのは『ブラウン武具店』という率直で渋いタイル製の看板だった。
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