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1話
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しおりを挟むあっという間に放課後になった。
柑菜は、櫻子を連れて、あの坂を登っている。
空を見ると、今日の空は青空の中に白い雲が浮かんでいて、またそれもポップな感じがして楽しいと、柑菜は思った。
それに、雲は見るたびに形が変わっていて面白い。
その時、見たことのある女性、というより見たことのある帽子を被った女性が、今度は坂を下ってきた。
ーーやっぱり、あのケーキ屋と何か関係がある人……?
櫻子を間に挟み、すれ違う。
それと同時に、あの甘い香りが漂ってくる。
「あら、今の方、すごく甘い香りがしていたわ、もしかして、柑菜ちゃんが今から行こうとしているケーキ屋から来たのかしら?」
「うん、……そうかもしれない」
あの女性は、やはり柑菜の心を乱す存在であるようだ。
変に思われないよう柑菜は必死に笑顔になろうとするも、どこか表情が固く、不自然なものになってしまう。
柑菜は、2つの相反する感情を抱えながら、ケーキ屋に続く道を曲がった。
「まあ、可愛らしい」
目の前に見える建物を見て、櫻子はため息をつきながらそう言った。
それは、柑菜が初めてこのケーキ屋を見つけた時と同じ感想。
友達というものは、やはりどこか似た者同士。
「きっと、お菓子も可愛らしいはずね」
まだケーキを見ていない櫻子は、確信を持ったようにそう話す。
そんな櫻子に微笑みかけ、柑菜はゆっくりとその扉を開けた。
ーーいつもよりも重く感じるのは、きっとあの人のせいだわ。
柑菜は、心の中で大きな深呼吸をした。
そして、心の中で渦巻く負の感情を押さえつけ、いつもの明るい表情で店内へと足を運んだ。
「美味しそうね」
ショーケースに並べられたケーキ、机の上に飾られているクッキー類、それらは一瞬で櫻子の心を掴んだ。
まるで、芸術と言わんばかりの美しさを持つケーキに、目を奪われる。
数あるお菓子の中でも、ここのケーキ屋で人気なものは、タルトだ。
甘さ控えめのタルト生地に、チョコやフルーツが綺麗に飾られている。
柑菜がこの前食べたタルトオシトロンは、レモンの酸味が効いて、甘いのが苦手な人にも食べられると人気の一品だ。
「なにを買おうかしら」
様々なケーキに視線を動かしながら、櫻子はどれにしようかと迷っていた。
「その前に、バースデーケーキを決めないとね」
「そうだったわね、私ったらつい」
櫻子と柑菜の視線は、ホールケーキに向けられた。
「誕生日ケーキ、お探しなんですか?」
柑菜たちの話を聞いていたのだろう、目の前にいた柑菜の片思いの相手が、2人にそう尋ねた。
「はい、友達に」
「それでしたら、三種のベリータルトなんていかがですか? 今若い方が結構お求めになるんですよ」
ショーケースの上段の真ん中にある、ベリーの散りばめられたタルト。
「まあ、いいわね」
柑菜は、先に言葉を発した櫻子に少しだけジェラシーを感じる。
一言でも多く、会話のキャッチボールをしたい、その思いをもちろん櫻子は知るはずもない。
そんな櫻子は、柑菜の方を向く。
「柑菜ちゃん、タルトにしましょ?」
鶴の一声、とでも言うのか、ケーキ選びは一瞬で終わってしまった。
そのことに、少しだけ残念がる柑菜は、いつもよりほんの少し低いトーンで「うん、そうだね」と返事をする。
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