ケーキ屋の彼

みー

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3話

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「美鈴先輩、先輩ってもしかして、あのケーキ屋のパティシエのこと好きなんですか?」

 授業が終わったあと、チューターとして授業に出席していた美鈴に、春樹は疑問を投げかけた。

 教室にはもう誰もいないし、今が5限の授業だったため、次に使うこともなく、静かだ。

 空も暗くなりつつあり、静寂さに拍車をかける。

 その沈黙の中待つ答えは、春樹にとっても、そして柑菜にとっても、返答次第では複雑な心境になる。

 自分よりもずっと仲が良くて、ずっと大人で、近くにいることができて、そんな人が好きな人の周辺にいると知ったら、穏やかな気持ちではいられないはず。

「……うん、って言ったら、何か困る?」

 意地悪くそう言う美鈴に、どう返事したら良いか、すぐに答えが出ず、春樹は黙ってしまう。

 美鈴は春樹の眉の下がった顔を見て視線を一度彼から逸らした。

 そして沈黙を、美鈴から破った。

「柑菜さんに関係あるとか?」

「それは……ただ、俺が聞きたいだけですよ」

 嘘ではない、だけど、質問には答えていない。

「そっかあ、……うん、そうだよ、春樹くんの言う通り、ずっと片思いしてる」

 春樹が質問に答えなくても、美鈴はなんとなく分かっていた。

 乾いた風が、2人の間を通ったように、春樹は感じた。

「柑菜さんも、惚れてるでしょ?」

 美鈴の言葉に、春樹は真っ直ぐな視線で美鈴を見た。

 それは、「そうです」と言っているも同然だった。

「大丈夫よ、別に意地悪なんてしないし」

「そうですか」

 ーー柑菜の気持ちには気がつくくせに、俺の気持ちは一切感じ取ろうとしないんだな、いや、わざと……なのかもしれない。

 美鈴は、「あ、そうだ」と言うと、鞄から紙袋を1つ取り出した。

「これね、秋斗から、あ、パティシエね。柑菜さんにだって……褒めてくれたお礼」

 春樹は、複雑な気持ちですそれを受け取る。

 お菓子よりも2人の関係が気になる春樹は、さらなる質問をした。

「彼は、美鈴先輩の思い、知ってるんですか?」

「どうかしら……知っているかもしれないし、知らないかもしれない」

 はっきりとしない美鈴の答えに、春樹はもやもやする。

「何年間、好きなんですか?」

 嫌われるかもと思いながらも、質問することをやめられない。

 好きな人のことをもっと知りたい気持ちが前面に出る。

「そうね……10年くらいかしら」

 それに、あくまでも平静で答える美鈴に、なぜだか春樹の方が感情的になる。

「なら……!  もうそろそろ、新しい恋、してもいいんじゃないんですか?」

「誰と?」

「え?」

 思いもよらぬ質問に、春樹は言葉が詰まる。

 なんと答えれば良いのか、考えても考えても答えは出てこない。

 ーー俺と、なんて言ってもきっと今は駄目だ。


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