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しおりを挟む「美鈴先輩、先輩ってもしかして、あのケーキ屋のパティシエのこと好きなんですか?」
授業が終わったあと、チューターとして授業に出席していた美鈴に、春樹は疑問を投げかけた。
教室にはもう誰もいないし、今が5限の授業だったため、次に使うこともなく、静かだ。
空も暗くなりつつあり、静寂さに拍車をかける。
その沈黙の中待つ答えは、春樹にとっても、そして柑菜にとっても、返答次第では複雑な心境になる。
自分よりもずっと仲が良くて、ずっと大人で、近くにいることができて、そんな人が好きな人の周辺にいると知ったら、穏やかな気持ちではいられないはず。
「……うん、って言ったら、何か困る?」
意地悪くそう言う美鈴に、どう返事したら良いか、すぐに答えが出ず、春樹は黙ってしまう。
美鈴は春樹の眉の下がった顔を見て視線を一度彼から逸らした。
そして沈黙を、美鈴から破った。
「柑菜さんに関係あるとか?」
「それは……ただ、俺が聞きたいだけですよ」
嘘ではない、だけど、質問には答えていない。
「そっかあ、……うん、そうだよ、春樹くんの言う通り、ずっと片思いしてる」
春樹が質問に答えなくても、美鈴はなんとなく分かっていた。
乾いた風が、2人の間を通ったように、春樹は感じた。
「柑菜さんも、惚れてるでしょ?」
美鈴の言葉に、春樹は真っ直ぐな視線で美鈴を見た。
それは、「そうです」と言っているも同然だった。
「大丈夫よ、別に意地悪なんてしないし」
「そうですか」
ーー柑菜の気持ちには気がつくくせに、俺の気持ちは一切感じ取ろうとしないんだな、いや、わざと……なのかもしれない。
美鈴は、「あ、そうだ」と言うと、鞄から紙袋を1つ取り出した。
「これね、秋斗から、あ、パティシエね。柑菜さんにだって……褒めてくれたお礼」
春樹は、複雑な気持ちですそれを受け取る。
お菓子よりも2人の関係が気になる春樹は、さらなる質問をした。
「彼は、美鈴先輩の思い、知ってるんですか?」
「どうかしら……知っているかもしれないし、知らないかもしれない」
はっきりとしない美鈴の答えに、春樹はもやもやする。
「何年間、好きなんですか?」
嫌われるかもと思いながらも、質問することをやめられない。
好きな人のことをもっと知りたい気持ちが前面に出る。
「そうね……10年くらいかしら」
それに、あくまでも平静で答える美鈴に、なぜだか春樹の方が感情的になる。
「なら……! もうそろそろ、新しい恋、してもいいんじゃないんですか?」
「誰と?」
「え?」
思いもよらぬ質問に、春樹は言葉が詰まる。
なんと答えれば良いのか、考えても考えても答えは出てこない。
ーー俺と、なんて言ってもきっと今は駄目だ。
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