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8話
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しおりを挟む「うん、分かった」
春樹は、少し考えた後にそう答える。
「楽しみだね、今日も美味しいチョコ食べたんだけど、2人っきりっていうのに緊張してさ……。明日ならいつものメンバーだしきっと今日より楽しめるはず」
「……なんかあった?」
「…………」
何かを話していれば、今日のことを考えなくて済む、そうしたら少しだけ楽になれる。
嫌なことや泣きたくなるようなことがあると、いつもよりも口数が多くなるのは幼い頃からの柑菜の癖。
双子の春樹には、それがすぐに分かる。
言葉を聞かなくても、柑菜の表情や声から春樹には分かってしまう。
柑菜の目から流れる涙の量は、きっと今までずっと我慢してきたものが溢れたもので、それは止まることなく静かに流れ続ける。
「フランス……行っちゃうんだ、秋斗さん」
「…………」
「でも、フランスに行ってもっとお菓子の勉強して、私に美味しいお菓子食べさせてくれるんだって」
柑菜は涙を流しながら、羨ましいでしょ? と笑っている。
春樹は何も言わずに、泣いている柑菜を置いてリビングを出た。
そして、ある人に電話をかける。
「西音寺?」
「あら、どうしたの?」
「柑菜がさーー」
一通り話し終えると、春樹は電話を切って、再びリビングに戻る。
柑菜の心が少しでも落ち着くように、ホットミルクを作った春樹は、それを柑菜の元に置いた。
「ありがとう……」
それを飲む柑菜の顔には、少しだけ落ち着きを取り戻したような表情が浮かんでいた。
数十分後、インターホンが家に鳴り響いた。
「……誰かな?」
「俺行くよ」
玄関の扉が開く音が柑菜の耳に聞こえる。
すると、「柑菜ちゃん、大丈夫?」と、柑菜のよく知っている人の声がした。
「櫻子……?」
「春樹くんに電話で話聞いたの。それで、私心配で……」
柑菜は櫻子の姿が見えると、その姿に安心感を覚えぎゅっと抱きついた。
その友達の胸の中で思いっきり涙を流す。
「春樹くん、私今日泊ってもいいかしら?柑菜ちゃん、きっと1人じゃ心細いと思うの」
柑菜を思うと、櫻子は彼女を1人にはしておけなかった。
「うん……西音寺って、優しいんだな」
「柑菜ちゃんは、大事な友達だもの」
ニコッと笑いながら言うその言葉を聞いた春樹は、櫻子の顔をじっと見つめる。
そして櫻子に対し「ありがとう」と一言言った。
櫻子の、純粋に友人を思う気持ちに、春樹は少しずつその人柄に惹かれていく。
「柑菜ちゃん、お部屋行きましょう」
「うん……」
だいぶ落ち着いたように見える柑菜は、櫻子の腕を掴んでリビングを後にした。
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