ケーキ屋の彼

みー

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10話

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「それに、櫻子は好きな人がいるだろう?    僕の出る幕はないよ」
 
 その空の言葉には、悔しさが込められているように聞こえる。

 どこか無理をしていて、自分の気持ちをぎゅっと奥に押し込めて……。

 その渋い顔は、ブラックコーヒーのせいなのか、それとも……。

「それより柑菜さん、あの人とうまくいきそうでよかったね」

「あ、うん、おかげさまで」

「はは、僕は何もしてないよ」

 自分だけが幸せな気持ちでいると、みんなのそれぞれの思いを知っている柑菜は罪悪感で心がいっぱいになる。

 もし仮に、櫻子と春樹が両思いでもそれは幸せになれるのだろうか。

 そう柑菜は考えてしまう。

「渡辺くんにも櫻子にも、幸せになってほしいな」

「……ありがとう」

 そう囁くように言った柑菜に、空は感謝の言葉を述べるのであった。

「ところで柑菜さんは、どんなプレゼント買うつもり?」

「うーん、今年は男の人もいるから男女兼用で使えるものを考えてるんだけど……」

 なかなか思い浮かばない柑菜。

 もういっそのこと、ネタになるプレゼントを買おうかとも考えたけれど、やっぱりちゃんとしたものを買いたいと思い直す。

「僕も迷ってるんだ、プレゼントって難しいよね」

「うん」

 2人は、しばらくの間この暖かい店内で時間を過ごした。















「じゃあ、また明日」

「うん、明日楽しみに待ってるね」

 それぞれプレゼントを買い終わった2人。

 外はもう暗くなっており、2人は明日の準備もあるということで帰宅をすることに決めた。

 柑菜は帰宅すると、櫻子のことについて考え始める。

 自分が櫻子の家のように、昔からある由緒ある家なわけでもなければ、ましてや婚約者なども縁遠い話。

 でも、櫻子の生活にはそれが普通で……。

 どんなに窮屈な思いをしているのか、柑菜は想像してみたが、それは自分ならばきっと途中で逃げ出したくなってしまうだろうと思う。

 もし、櫻子が空を好きで、空が今でも櫻子のことを好きなら、どれだけ幸せなことなのだろう。

 そんな考えを巡らせていると、部屋の扉がノックされた。

「はーい」

 開けると、そこには当たり前のように春樹が立っている。

 というより、2人で暮らしている家で、春樹以外の人物が立っていたら、それはホラーでしかない。

「明日の準備って、明日の午前午後でいいんだよな?」

「うん、櫻子とかもくるよ」

「そう……か、分かった」

 それだけを確認しに来たのか、春樹はすぐに自分の部屋へ戻っていった。

 柑菜は、その春樹の背中をじっと見つめていた。
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