72 / 82
10話
6
しおりを挟む「それに、櫻子は好きな人がいるだろう? 僕の出る幕はないよ」
その空の言葉には、悔しさが込められているように聞こえる。
どこか無理をしていて、自分の気持ちをぎゅっと奥に押し込めて……。
その渋い顔は、ブラックコーヒーのせいなのか、それとも……。
「それより柑菜さん、あの人とうまくいきそうでよかったね」
「あ、うん、おかげさまで」
「はは、僕は何もしてないよ」
自分だけが幸せな気持ちでいると、みんなのそれぞれの思いを知っている柑菜は罪悪感で心がいっぱいになる。
もし仮に、櫻子と春樹が両思いでもそれは幸せになれるのだろうか。
そう柑菜は考えてしまう。
「渡辺くんにも櫻子にも、幸せになってほしいな」
「……ありがとう」
そう囁くように言った柑菜に、空は感謝の言葉を述べるのであった。
「ところで柑菜さんは、どんなプレゼント買うつもり?」
「うーん、今年は男の人もいるから男女兼用で使えるものを考えてるんだけど……」
なかなか思い浮かばない柑菜。
もういっそのこと、ネタになるプレゼントを買おうかとも考えたけれど、やっぱりちゃんとしたものを買いたいと思い直す。
「僕も迷ってるんだ、プレゼントって難しいよね」
「うん」
2人は、しばらくの間この暖かい店内で時間を過ごした。
「じゃあ、また明日」
「うん、明日楽しみに待ってるね」
それぞれプレゼントを買い終わった2人。
外はもう暗くなっており、2人は明日の準備もあるということで帰宅をすることに決めた。
柑菜は帰宅すると、櫻子のことについて考え始める。
自分が櫻子の家のように、昔からある由緒ある家なわけでもなければ、ましてや婚約者なども縁遠い話。
でも、櫻子の生活にはそれが普通で……。
どんなに窮屈な思いをしているのか、柑菜は想像してみたが、それは自分ならばきっと途中で逃げ出したくなってしまうだろうと思う。
もし、櫻子が空を好きで、空が今でも櫻子のことを好きなら、どれだけ幸せなことなのだろう。
そんな考えを巡らせていると、部屋の扉がノックされた。
「はーい」
開けると、そこには当たり前のように春樹が立っている。
というより、2人で暮らしている家で、春樹以外の人物が立っていたら、それはホラーでしかない。
「明日の準備って、明日の午前午後でいいんだよな?」
「うん、櫻子とかもくるよ」
「そう……か、分かった」
それだけを確認しに来たのか、春樹はすぐに自分の部屋へ戻っていった。
柑菜は、その春樹の背中をじっと見つめていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる