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3話
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朝から十分すぎる朝食を大好きな友人と共に楽しんで部屋に帰ると、ちょうど電話が鳴った。
涼かな? なんて軽い気持ちで出るとそれは意外な人物で、ただの朝が春のひと時のような爽やかな朝に変換される。
「桜さん? 今電話いいかな?」
奏多さんから、いいかな、なんて聞かれてそれを断る選択肢がどこにあるだろうか。
「はい、大丈夫ですっ」
朝から、心癒される声が耳元で聞けるなんてなんて幸せなのだろう。
好きな人だと、声を聞いただけでも心が満たされる。
「今日、散歩しない? 天気もちょうどいいし」
「も、もちろんです」
「じゃあ、午後の授業が終わったら、1階の受付前に」
「はいっ」
奏多さんと2人で、夕陽でオレンジ色に染まるノスタルジックな雰囲気の自然の中で散歩……考えただけでも顔がとろけてしまいそう。
まるで、映画のワンシーンのようだわ。
その時、ふと浮かんだのは現実味溢れる『婚約者』の文字。
一応、と思い涼に初の電話をする。
「はい」
耳に0センチの声で、涼の声が入ってくるのがなんだかくすぐったい。十数年も一緒にいて聞き慣れた声なのに、妙にむずむずとする。
「涼? あの、今日の午後の授業終わった後、奏多さんとお散歩に行ってもいい?」
「うん、もちろんだよ」
もちろんだよ、なんていつもと変わらない口調でなんの躊躇いもなく受け入れる涼に物足りなさを感じてしまい、「本当にいいの?」と、再度同じことを聞いてしまう。
そんな自分が馬鹿みたいだと思い、涼になんと言われたら気が済むの? なんて自問するけれど、どこからも答えは返ってこない。
「うん、桜がそうしたいなら。楽しんできて」
「……分かったわ」
涼が電話を切る前に、自分の方から断ち切る。
政略結婚。
そこには愛なんて1ミリもなくて、だからこんなにも簡単に他の男の人と出掛けることを許す。
分かってはいるし、そもそも涼が私のことを好きではないことだって知っている。
「だからって……少しは妬いてくれてもいいじゃないっ」
心の片隅にあった本音が、漏れた。
「涼のばーか」
電話に向かって言うも、もちろん返事なんてあるわけもなく余計に虚しくなってきた。
もう、せっかく奏多さんとの約束があるんだから、つまらない涼のことを考えるのは止めにしよう。
午前中の授業は何にしようか迷った結果、料理にすることにした。
どんな料理を作るのかなと心をうきうきとさせながらキッチンに行くと、そこには涼の姿があった。
「あ、桜」
どきんと、心臓が大きく跳ねる。
だけど、それは気のせいだと言い聞かせて冷静を装う。
「涼も、料理?」
「うん、そうだね。今日はフルーツタルトを作るみたいだよ」
「そっか、失敗しないといいな」
なんでだろう、いつものように涼の顔が見られない。ドキドキするとかそんなんじゃなくて、なんだか妙に寂しくて、ムカつくんだ。顔を合わせたら何か余計なことを言ってしまいそうで、なるべく涼の目を見ないように視線を外す。
「そうだ、ランチ、一緒に食べないか?」
「え、あ、うん、そうだね」
分かりやすいくらい動揺する自分。こんなんじゃあ、涼に変に思われてしまう。もっと、自然体でいかないと。
涼かな? なんて軽い気持ちで出るとそれは意外な人物で、ただの朝が春のひと時のような爽やかな朝に変換される。
「桜さん? 今電話いいかな?」
奏多さんから、いいかな、なんて聞かれてそれを断る選択肢がどこにあるだろうか。
「はい、大丈夫ですっ」
朝から、心癒される声が耳元で聞けるなんてなんて幸せなのだろう。
好きな人だと、声を聞いただけでも心が満たされる。
「今日、散歩しない? 天気もちょうどいいし」
「も、もちろんです」
「じゃあ、午後の授業が終わったら、1階の受付前に」
「はいっ」
奏多さんと2人で、夕陽でオレンジ色に染まるノスタルジックな雰囲気の自然の中で散歩……考えただけでも顔がとろけてしまいそう。
まるで、映画のワンシーンのようだわ。
その時、ふと浮かんだのは現実味溢れる『婚約者』の文字。
一応、と思い涼に初の電話をする。
「はい」
耳に0センチの声で、涼の声が入ってくるのがなんだかくすぐったい。十数年も一緒にいて聞き慣れた声なのに、妙にむずむずとする。
「涼? あの、今日の午後の授業終わった後、奏多さんとお散歩に行ってもいい?」
「うん、もちろんだよ」
もちろんだよ、なんていつもと変わらない口調でなんの躊躇いもなく受け入れる涼に物足りなさを感じてしまい、「本当にいいの?」と、再度同じことを聞いてしまう。
そんな自分が馬鹿みたいだと思い、涼になんと言われたら気が済むの? なんて自問するけれど、どこからも答えは返ってこない。
「うん、桜がそうしたいなら。楽しんできて」
「……分かったわ」
涼が電話を切る前に、自分の方から断ち切る。
政略結婚。
そこには愛なんて1ミリもなくて、だからこんなにも簡単に他の男の人と出掛けることを許す。
分かってはいるし、そもそも涼が私のことを好きではないことだって知っている。
「だからって……少しは妬いてくれてもいいじゃないっ」
心の片隅にあった本音が、漏れた。
「涼のばーか」
電話に向かって言うも、もちろん返事なんてあるわけもなく余計に虚しくなってきた。
もう、せっかく奏多さんとの約束があるんだから、つまらない涼のことを考えるのは止めにしよう。
午前中の授業は何にしようか迷った結果、料理にすることにした。
どんな料理を作るのかなと心をうきうきとさせながらキッチンに行くと、そこには涼の姿があった。
「あ、桜」
どきんと、心臓が大きく跳ねる。
だけど、それは気のせいだと言い聞かせて冷静を装う。
「涼も、料理?」
「うん、そうだね。今日はフルーツタルトを作るみたいだよ」
「そっか、失敗しないといいな」
なんでだろう、いつものように涼の顔が見られない。ドキドキするとかそんなんじゃなくて、なんだか妙に寂しくて、ムカつくんだ。顔を合わせたら何か余計なことを言ってしまいそうで、なるべく涼の目を見ないように視線を外す。
「そうだ、ランチ、一緒に食べないか?」
「え、あ、うん、そうだね」
分かりやすいくらい動揺する自分。こんなんじゃあ、涼に変に思われてしまう。もっと、自然体でいかないと。
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