好きになっちゃ、ダメでしたか?

みー

文字の大きさ
5 / 5
告白される。

しおりを挟む
 記憶を猛スピードで遡る。

 幼い頃、男の子、蒼とはよく遊んでいたけれど、もしかしてそのときに一緒に遊んでいた子?

 でも、顔も名前も全然覚えていない。

「えっと、その……」

「やっぱり、覚えてないよね。でも、気持ちだけは伝えたくて。すぐじゃなくても、返事をくれないかな。初恋の人に会えて、嬉しくて、ごめん、本当。上野さんの気持ちも考えずに。でも、考えて欲しい」

 そう言ってわたしのことを見つめる神山君の目を、逸らすことができなかった。

 わたしは本当に、神山君の言う『留衣ちゃん』なのだろうか。

 全然覚えていない。

「じゃあ、戻ろうか」

「あ、えっと。うん、そうだね」

 行きと同じように、神山君の背中を見つめながら歩く。

 こんなにかっこいい人がわたしのことを好き?
 
 いやいや、そんなことあるわけない。

 って思うのに、高揚した気持ちはなかなか治まってくれない。

 もし、こんなにかっこいい人がわたしの彼氏になってくれるなら……。

 幼い頃の記憶がなくたっていいんじゃないかなって思ってしまう。

 教室に着くと神山君は「じゃあ」と言って席に座った。

「留衣ー。どこ行ってたの?」

「あ、ごめん」

「なんか顔赤い?」

「え、いや、そんなことないって」

 絶対に赤いって分かっているけれど、ばれないように嘘を吐いた。小さな嘘だった。

「で、なにがあったのよ?」

 帰宅途中、観察眼の鋭い一華に捕まったら最後。

 逃げられるわけもなく。

「あのね、神山君に告白された」

「ああ、告白……って、告白!? しかも神山春樹に!?」

 盛大な声で電車の中で彼の名前を口にする一華の背中を思わず叩く。

「って、ごめん。え、なんで? 全然話が読めないんだけど」

「あのね、なんか幼い頃の初恋の人らしいの、わたしが。それで、ずっと好きで」

「へえ、留衣やるじゃん」

「でも、わたし全然記憶がないの。蒼とずっと一緒に遊んでた記憶ならあるんだけど、神山君みたいな人と遊んだ記憶がなくて。もしかしたら、別の人かも」

「でも、本人が留衣だって言うならいいんじゃない? で、なんて返事したの?」

「えっと、まだしてなくて。考えて欲しいって」

 あのときの神山君の表情からは、ふざけた様子なんて僅かでも感じ取られなかった。

 必死に自分の思いをぶつけてきて、だからこそわたしもちゃんと返事をしなきゃなって思って。

 きっと、とても大切な思いのはずだから。

「いいじゃん、付き合ったら絶対留衣、神山春樹のこと好きになると思う。あの顔だし。なんか優しい雰囲気出してるし?」

「そ、そうだけど……」
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

離婚すると夫に告げる

tartan321
恋愛
タイトル通りです

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔女見習いの義妹が、私の婚約者に魅了の魔法をかけてしまいました。

星空 金平糖
恋愛
「……お姉様、ごめんなさい。間違えて……ジル様に魅了の魔法をかけてしまいました」 涙を流す魔女見習いの義妹─ミラ。 だけど私は知っている。ミラは私の婚約者のことが好きだから、わざと魅了の魔法をかけたのだと。 それからというものジルはミラに夢中になり、私には見向きもしない。 「愛しているよ、ミラ。君だけだ。君だけを永遠に愛すると誓うよ」 「ジル様、本当に?魅了の魔法を掛けられたからそんなことを言っているのではない?」 「違うよ、ミラ。例え魅了の魔法が解けたとしても君を愛することを誓うよ」 毎日、毎日飽きもせずに愛を囁き、むつみ合う2人。それでも私は耐えていた。魅了の魔法は2年すればいずれ解ける。その日まで、絶対に愛する人を諦めたくない。 必死に耐え続けて、2年。 魅了の魔法がついに解けた。やっと苦痛から解放される。そう安堵したのも束の間、涙を流すミラを抱きしめたジルに「すまない。本当にミラのことが好きになってしまったんだ」と告げられる。 「ごめんなさい、お姉様。本当にごめんなさい」 涙を流すミラ。しかしその瞳には隠しきれない愉悦が滲んでいた──……。

お久しぶりです旦那様。そろそろ離婚ですか?

奏千歌
恋愛
[イヌネコ] 「奥様、旦那様がお見えです」 「はい?」 ベッドの上でゴロゴロしながら猫と戯れていると、侍女が部屋を訪れて告げたことだった。

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

妹の身代わりに殺戮の王太子に嫁がされた忌み子王女、実は妖精の愛し子でした。嫁ぎ先でじゃがいもを育てていたら、殿下の溺愛が始まりました・長編版

まほりろ
恋愛
 国王の愛人の娘であるアリアベルタは、母親の死後、王宮内で放置されていた。  食事は一日に一回、カビたパンやまふ腐った果物、生のじゃがいもなどが届くだけだった。  しかしアリアベルタはそれでもなんとか暮らしていた。  アリアベルタの母親は妖精の村の出身で、彼女には妖精がついていたのだ。  その妖精はアリアベルタに引き継がれ、彼女に加護の力を与えてくれていた。  ある日、数年ぶりに国王に呼び出されたアリアベルタは、異母妹の代わりに殺戮の王子と二つ名のある隣国の王太子に嫁ぐことになり……。 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※小説家になろうとカクヨムにも投稿しています。 ※中編を大幅に改稿し、長編化しました。2025年1月20日 ※長編版と差し替えました。2025年7月2日 ※コミカライズ化が決定しました。商業化した際はアルファポリス版は非公開に致します。

処理中です...