妖の木漏れ日カフェ

みー

文字の大きさ
21 / 74
始まりの夏

20

しおりを挟む
「カイさんはどうしてカフェをやろうと思ったんですか?」

 夜のほっとする時間に、カイさんはディナーを食べていて私はハーブティーを飲む。

「ハーブティーって、それぞれの効能がすごいんだ。だから、それを人に伝えないのは勿体ないと考えた。それで、まあ料理も好きだったし、カフェをやろうと思ったんだよ」

「いいですね」

「真由はなんか好きなことあるのか?」

「好きなこと、ですか……」

 歌が好きで中学では合唱部に入っていたけれど、将来を考えるというほどかと考えるとそうでもない。

 そもそも、そんなに歌が上手と言うわけでもないし……。

 考えれば、私にはまだ、これ、といったものがない。

 夏休み明けの3者面談でも、理系か文系かを決めなければならないのにまだそれすら迷っているし……。

 私も、カイさんみたいにこれといったものを早く探したい。

 自分のしたいことを見つけたい。

「どうした?」

「いえ、私にはまだカイさんのように誇れるものや好きなものがないなあと」

「そうだな……。それならとりあえずここにいる間はハーブについて学べばいいさ。きっと何かの役には立つ」

「はいっ、そうですね」

 カモミールティーを飲むと、ほっと心が落ち着いて夜の睡眠前にはちょうどいい。カイさんの言う通り、とりあえずはハーブのことについてちゃんと勉強していこう。











「こんにちは」

「この前の……」

「今日ね、新作のお菓子を持ってきたの。それで、食べて欲しくて」

 その人は、可愛らしい箱をカイさんに渡す。早速その中身をカイさんが確認すると、中にはパウンドケーキのようなものが入っていた。

「これは?」

「甘くないケーキ。あなたのところのバジルを使って作ってみたの」

「ケーク・サレですね」

「そう、まさに」

「ケーク・サレ?」

 初めて聞く名前に、一体どんなものだろうと想像するけれど、甘くないケーキというのがなかなか思い浮かばない。

 バジル味のケーキ?

「かぼちゃとさつまいもを混ぜて甘めにしてるんだけれど、そこにさっぱりとバジルの風味を合わせたのよ」

「真由、食べるか?」

「いいんですか?」

「ええもちろん。ぜひ食べてみて。美味しいか、率直な感想が欲しいの」

 一口サイズに切ってくれたそれを口の中に入れると、バジルのいい香りとかぼちゃとさつまいもの優しい甘みが口の中に広まる。

 ケーキなのに、甘さはほとんどその2つの野菜からで、とても風味が良い。

 それに、スポンジケーキがしっとしりとしていて口の中の水分を奪わないから、すごく食べやすい。

「美味しいですっ」

「うん、確かに」

「よかったわ。これ、うちで売ってもいいかしら?」

「ああ、バジルなら結構大量にあるし、ちょうどいい」

「そうね、ちゃんとここの宣伝もするわ」

「ありがとうございます」

 その人は、私にお店の地図をくれた。あとで行って、絶対このケーキを買おうと心に誓った。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた

しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。 すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。 早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。 この案に王太子の返事は?   王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...