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進みゆく秋
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「お待たせしたね。さあ、和菓子を楽しもう」
見た目に麗しい金色とオレンジ色の蜜のかかったお団子が運ばれてくる。
それと、これはほうじ茶の匂い? とても香ばしくて緑茶とはまた違った甘みのあるお茶。
奇麗な琥珀色。
「さあ、遠慮なさらず」
蜜が垂れないように、上手に十文字を使って食べていく指導さんの姿は、高雅で隙がない。
どの瞬間、場面を切り取っても完璧で、まるでその様は貴族のようだった。
「ところで真由さん」
話し方に圧は無くむしろ穏やかだけれど、感じる冷たさ。
「は、はい」
名前を呼ばれるだけで、緊張で全身に力が入る。
「……宴の準備はどんな感じかな?」
「心満足いくお料理が提供できると、思います」
「そう、それは楽しみね。今年で最後の宴にならないように……しないと」
シドウさんは妖しく口元をにやつかせた。
「私は、この街もこの街の皆も大好きです」
「そう、それはよかった」
どうしたら、この人の信頼を得られるの? 私の運命を握るのはシドウさんで、シドウさんに認められるしか他ない。
「楽しみにしているよ、宴」
「はい、ぜひ」
「いいねえ、僕も宴に参加してみたいよ」
ハトリさんが、会話に入ってくる。
「それでは、来年、お招きしよう」
「ええ、ありがとうございます」
会話が終わり、ようやくお団子を口の中に入れた。
「お、美味しい」
みたらしが甘くてほんのりと塩っ気もあって、中にはサツマイモの餡が入っている。
オレンジ色の蜜の方はカボチャの味がして、中にカボチャの餡が。
「そうだろう? ああ、そうだ。ディナーも食べて行かないかい? せっかくなのだから。専属のシェフに作らせよう」
私はハトリさんを見た。
「せっかくですが、この後用事がありまして。またの機会ということでどうでしょうか?」
「そうね……。今日はいきなりだったし、次にしましょう」
その言葉に、ほっと胸を撫で下ろす。正直、これ以上この空気の中に身を置いておくのは息が詰まりそうでどうしようかと思っていたから。
「それじゃあ、失礼します」
「じゃあ、次は宴の日に」
シドウさんはわざわざ門まで私たちを見送ってくれる。
その横に無表情で立つキキョウさんになんだか申し訳なさを感じて、門から出た時にもう1度頭を深く下げてお辞儀をした。
暫く歩いて街の中に来た時、ハトリさんが大きく息を吐く。
「いやあ、緊張したね」
「は、はい」
「でもあの様子じゃあ多分バレてるだろうねえ。まあ宴まではとりあえず大丈夫そうだけど……」
普段は鈍感な私でさえ感じたシドウさんの鋭いオーラに、何度も逃げたくなった。
「必ず、どうにかします。だから安心してくださいっ」
「頼もしいけど……絶対に無理はしないように」
「はい……」
少し暗くなってきている空の下、ハトリさんの下駄と石がぶつかる音を聞きながら家路についた。
見た目に麗しい金色とオレンジ色の蜜のかかったお団子が運ばれてくる。
それと、これはほうじ茶の匂い? とても香ばしくて緑茶とはまた違った甘みのあるお茶。
奇麗な琥珀色。
「さあ、遠慮なさらず」
蜜が垂れないように、上手に十文字を使って食べていく指導さんの姿は、高雅で隙がない。
どの瞬間、場面を切り取っても完璧で、まるでその様は貴族のようだった。
「ところで真由さん」
話し方に圧は無くむしろ穏やかだけれど、感じる冷たさ。
「は、はい」
名前を呼ばれるだけで、緊張で全身に力が入る。
「……宴の準備はどんな感じかな?」
「心満足いくお料理が提供できると、思います」
「そう、それは楽しみね。今年で最後の宴にならないように……しないと」
シドウさんは妖しく口元をにやつかせた。
「私は、この街もこの街の皆も大好きです」
「そう、それはよかった」
どうしたら、この人の信頼を得られるの? 私の運命を握るのはシドウさんで、シドウさんに認められるしか他ない。
「楽しみにしているよ、宴」
「はい、ぜひ」
「いいねえ、僕も宴に参加してみたいよ」
ハトリさんが、会話に入ってくる。
「それでは、来年、お招きしよう」
「ええ、ありがとうございます」
会話が終わり、ようやくお団子を口の中に入れた。
「お、美味しい」
みたらしが甘くてほんのりと塩っ気もあって、中にはサツマイモの餡が入っている。
オレンジ色の蜜の方はカボチャの味がして、中にカボチャの餡が。
「そうだろう? ああ、そうだ。ディナーも食べて行かないかい? せっかくなのだから。専属のシェフに作らせよう」
私はハトリさんを見た。
「せっかくですが、この後用事がありまして。またの機会ということでどうでしょうか?」
「そうね……。今日はいきなりだったし、次にしましょう」
その言葉に、ほっと胸を撫で下ろす。正直、これ以上この空気の中に身を置いておくのは息が詰まりそうでどうしようかと思っていたから。
「それじゃあ、失礼します」
「じゃあ、次は宴の日に」
シドウさんはわざわざ門まで私たちを見送ってくれる。
その横に無表情で立つキキョウさんになんだか申し訳なさを感じて、門から出た時にもう1度頭を深く下げてお辞儀をした。
暫く歩いて街の中に来た時、ハトリさんが大きく息を吐く。
「いやあ、緊張したね」
「は、はい」
「でもあの様子じゃあ多分バレてるだろうねえ。まあ宴まではとりあえず大丈夫そうだけど……」
普段は鈍感な私でさえ感じたシドウさんの鋭いオーラに、何度も逃げたくなった。
「必ず、どうにかします。だから安心してくださいっ」
「頼もしいけど……絶対に無理はしないように」
「はい……」
少し暗くなってきている空の下、ハトリさんの下駄と石がぶつかる音を聞きながら家路についた。
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