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第四話 ギルド
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「こっち…」
ギルドハウスに入り、朔真は舞に案内されて奥へとついていく。
「朔真、またあとでね!」
「またね」
ギルドハウスに入ったあと、美羽と信輔は朔真たちと分かれ、別の部屋に向かった。
入り口からまっすぐに廊下を進み、一番奥の部屋のドアの前で舞が立ち止まる。
「ここ…」
そう言って、振り返り朔真の顔を見てから、
「準備は……いい?」
「いつでもいいですよ」
舞の問いに朔真が答える。
そして、舞はドアを開けた。
「さゆり…連れてきた」
「ありがとうございます!舞ちゃん」
舞の静かな声に対して、おしとやかではあるが、ハキハキとした声が奥から返ってくる。
「失礼します」
その部屋はいくつかのデスクが置かれ、小さな事務所の様相だったが、堅苦しい雰囲気はなく窓からの木漏れ日が穏やかな雰囲気にしていた。
その部屋の奥のデスクに座る、橙色の腰までの長い髪の女が、
「お待ちしておりました…朔真さん」
穏やかな表情で朔真を迎え入れた。
「…あなたがここのギルドマスターのさゆりさん?」
朔真が女、さゆりの前まで来て訊く。
「そうです……私がマスターの古河さゆりです。月城朔真さんですね」
「はい」
朔真の返事にさゆりがにこっと笑顔になる。
「朔真さんに来てもらったのは、このギルドの説明と勧誘です」
いつの間にかさゆりの横に移動していた舞を見てから、
「舞ちゃんから話は聞いています。魔法が使えなくても強いって!」
そう言って、朔真を見る。
舞もうんうんと頷く。
「……簡単な討伐依頼とかはやれますけど、調査とかは得意じゃないですよ」
「私達が調査しているのは、特殊魔法物に関するものです」
「……本気ですか?」
さゆりが真剣な顔で朔真の目を見て頷く。
特殊魔法物とは、その名の通り“特殊”な“魔法”に関するもの全般を指す。
それには別世界のもの、古代遺物なども含めて幅広くあり、それを調査する機関、研究所、ギルドが存在する。
扱いが不明で危険なものが多く、扱いが分かっても用途が危険視され、封印が必要なものもある。
それ故に特殊魔法物を調査するには専門の知識、技術が必要となる上に国からの承認も必要となってくる。
「その資格を持つ人がこのギルドにはいるってことですね」
そもそも、先日の軍隊鼠も異常ではあった。
夕闇の森のダンジョンのマガツグモも本来より大型で強力な個体だった。
「……ダンジョンのやつは試験というか実は依頼だったのか」
朔真が舞を見ると舞が目線をそらし、
「……ちょうど良かった…」
ボソッと言った。
「試験にしてはハードだと思ったら……」
朔真がため息を吐く。
「舞ちゃんが連れていっても問題ないと判断したんですよね?」
さゆりの言葉に舞が頷く。
「ん~……朔真さんのことは話を聞いて知ってましたから、分からなくはないですが、今度からはやめてくださいね」
「朔真じゃなければ…連れていかない」
「俺のことを前から知っていたんですか?」
驚いている朔真にさゆりが微笑む。
「実は1ヶ月くらい前から『こもれび』のマスターさんに話は聞いていました」
「……マスターを信用したら負けだな」
「そう言わないであげてください…マスターも貴方のことが心配で、私に相談したみたいです」
朔真のブスッとした顔を見て、さゆりがフォローの言葉を伝える。
「元々…マスターは口固い」
舞も言葉少なくフォローする。
「それに、マスターさんからの相談を詳しく聞いて、私から頼んで教えてもらいました」
さゆりが真面目な顔で朔真の目を見て言う。
朔真は頭をかき、
「まぁ、別に怒ることでもないですし、気にしてませんよ……でも、そんなに俺のことを聞いていたということは、この前の依頼での鉢合わせも……」
まさかと思い、さゆりを見る。
さゆりは笑顔を見せ、
「はい!わざとです!」
はっきりと答えたのだった。
「つまり、美羽も信輔も分かってて勧誘したってことか……」
「美羽と信輔は知らない…」
朔真の呆れた言葉に舞が首を横に振り答える。
「朔真さんのことを前から調べて知っていたのは、私と舞ちゃんだけですよ」
さゆりが笑顔のまま言う。
「あいつらが俺をギルドに誘わなかったら、どうするつもりだったんです?」
元々、勧誘予定だったにしても、美羽と信輔が誘わなかったら朔真はここにはいない。
「その時はその時です!……と言いたいところですが、美羽さんと信輔さんから学園の時に三人チームで授業をこなしていて、さらに幼馴染みというのも聞いていたので、誘わないとは考えなかったですね!」
朔真が少し驚いた顔をする。
(そこまで考えた上でのギルドへの勧誘ってことか)
「やれやれ……あなたの掌の上だったってことですね」
ニコニコ笑顔を見せるさゆりにいたずらっぽく、肩を落としてみせる朔真。
「朔真さんは【シンフォニア】に入っていただけますか?」
「これは……うまいな!」
回鍋肉を食べた朔真が舌鼓を打つ。
「アリスさんの中華料理はどれも絶品だよ!」
朔真の隣に座っている信輔が言う。
「アリスは中華以外は普通だけどなぁ」
アゴヒゲを生やした、ぼさっとした茶髪の30歳くらいの男がボソッと呟く。
「レオはキャンプ飯しか作れないじゃない!」
レオと呼ばれた男の対面に座っていた、金髪のミドルヘアで碧眼の女、アリスがムッとした顔で、言い返す。
レオナルド・筧、【シンフォニア】のオペレーターをしている。
言動はものぐさだが、仕事はきっちりこなす。
アリス・キュアハート、医療のスペシャリスト。
明るい振る舞いでギルドのお姉さん的な感じである。
「いつもこんな感じなのか?」
朔真が自己紹介された二人のやり取りを見ながら、信輔に聞く。
「大体そうだね!あと二人いるけど、今は依頼で出てるんだ」
「……ギルドを創設して半年とはいえ、ずいぶん少人数なんだな」
ギルドの調査内容からして、もっと人数がいると思っていた朔真が意外な顔をする。
10人にも満たない少人数ギルドでありながら、特殊魔法物の調査をメインとした依頼を受ける。
それが意味することは……
「皆さんが優秀だから、助かってます」
さゆりが言う通り、少数精鋭のギルドということ。
「まぁ、人数がいれば良いということでもないからな」
そう言いながら、朔真は内心、ホッとする。
(人数だけいても、ろくなことにならないからな)
「それより!月城はうちに加入するってことだよな?」
レオナルドが朔真を見て言う。
「今は仮加入ですね」
正式に加入すると、このギルドハウスに住み込みとなる。
部屋は空いてるし、最低限の家具も揃ってはいる。
その気になれば即日加入も可能だが、朔真は二週間の仮加入をしてから決めるとさゆりに告げた。
「それでも、依頼とかは皆さんと同じようにこなしてもらう予定です」
さゆりが微笑みながら告げる。
「それなら、明日にでもアリスに一度診てもらっておけ!」
「なんで、レオが偉そうに言うのよ?朔真君は明日は朝イチで医療室に来てね!」
レオを睨んだ後に朔真に笑顔で言う。
「何かするんですか?」
「健康診断みたいなことだよ!」
朔真の質問に美羽が答える。
朔真が魔法を使えないことに関しては、食事前に全員に伝えてある。
レオナルドとアリスは多少驚いた顔をしたが、ただそれだけで差別することも見下すこともなく朔真を受け入れた。
この場にはいない二人にも、朔真のことについては連絡済みとのことだ。
「まぁ…ギルドとか初めて加入するので、迷惑掛けるかもしれませんが、よろしくお願いします!」
食事も片付き、一段落したタイミングで朔真は改めて、ギルド【シンフォニア】のメンバーに挨拶をした。
ギルドハウスに入り、朔真は舞に案内されて奥へとついていく。
「朔真、またあとでね!」
「またね」
ギルドハウスに入ったあと、美羽と信輔は朔真たちと分かれ、別の部屋に向かった。
入り口からまっすぐに廊下を進み、一番奥の部屋のドアの前で舞が立ち止まる。
「ここ…」
そう言って、振り返り朔真の顔を見てから、
「準備は……いい?」
「いつでもいいですよ」
舞の問いに朔真が答える。
そして、舞はドアを開けた。
「さゆり…連れてきた」
「ありがとうございます!舞ちゃん」
舞の静かな声に対して、おしとやかではあるが、ハキハキとした声が奥から返ってくる。
「失礼します」
その部屋はいくつかのデスクが置かれ、小さな事務所の様相だったが、堅苦しい雰囲気はなく窓からの木漏れ日が穏やかな雰囲気にしていた。
その部屋の奥のデスクに座る、橙色の腰までの長い髪の女が、
「お待ちしておりました…朔真さん」
穏やかな表情で朔真を迎え入れた。
「…あなたがここのギルドマスターのさゆりさん?」
朔真が女、さゆりの前まで来て訊く。
「そうです……私がマスターの古河さゆりです。月城朔真さんですね」
「はい」
朔真の返事にさゆりがにこっと笑顔になる。
「朔真さんに来てもらったのは、このギルドの説明と勧誘です」
いつの間にかさゆりの横に移動していた舞を見てから、
「舞ちゃんから話は聞いています。魔法が使えなくても強いって!」
そう言って、朔真を見る。
舞もうんうんと頷く。
「……簡単な討伐依頼とかはやれますけど、調査とかは得意じゃないですよ」
「私達が調査しているのは、特殊魔法物に関するものです」
「……本気ですか?」
さゆりが真剣な顔で朔真の目を見て頷く。
特殊魔法物とは、その名の通り“特殊”な“魔法”に関するもの全般を指す。
それには別世界のもの、古代遺物なども含めて幅広くあり、それを調査する機関、研究所、ギルドが存在する。
扱いが不明で危険なものが多く、扱いが分かっても用途が危険視され、封印が必要なものもある。
それ故に特殊魔法物を調査するには専門の知識、技術が必要となる上に国からの承認も必要となってくる。
「その資格を持つ人がこのギルドにはいるってことですね」
そもそも、先日の軍隊鼠も異常ではあった。
夕闇の森のダンジョンのマガツグモも本来より大型で強力な個体だった。
「……ダンジョンのやつは試験というか実は依頼だったのか」
朔真が舞を見ると舞が目線をそらし、
「……ちょうど良かった…」
ボソッと言った。
「試験にしてはハードだと思ったら……」
朔真がため息を吐く。
「舞ちゃんが連れていっても問題ないと判断したんですよね?」
さゆりの言葉に舞が頷く。
「ん~……朔真さんのことは話を聞いて知ってましたから、分からなくはないですが、今度からはやめてくださいね」
「朔真じゃなければ…連れていかない」
「俺のことを前から知っていたんですか?」
驚いている朔真にさゆりが微笑む。
「実は1ヶ月くらい前から『こもれび』のマスターさんに話は聞いていました」
「……マスターを信用したら負けだな」
「そう言わないであげてください…マスターも貴方のことが心配で、私に相談したみたいです」
朔真のブスッとした顔を見て、さゆりがフォローの言葉を伝える。
「元々…マスターは口固い」
舞も言葉少なくフォローする。
「それに、マスターさんからの相談を詳しく聞いて、私から頼んで教えてもらいました」
さゆりが真面目な顔で朔真の目を見て言う。
朔真は頭をかき、
「まぁ、別に怒ることでもないですし、気にしてませんよ……でも、そんなに俺のことを聞いていたということは、この前の依頼での鉢合わせも……」
まさかと思い、さゆりを見る。
さゆりは笑顔を見せ、
「はい!わざとです!」
はっきりと答えたのだった。
「つまり、美羽も信輔も分かってて勧誘したってことか……」
「美羽と信輔は知らない…」
朔真の呆れた言葉に舞が首を横に振り答える。
「朔真さんのことを前から調べて知っていたのは、私と舞ちゃんだけですよ」
さゆりが笑顔のまま言う。
「あいつらが俺をギルドに誘わなかったら、どうするつもりだったんです?」
元々、勧誘予定だったにしても、美羽と信輔が誘わなかったら朔真はここにはいない。
「その時はその時です!……と言いたいところですが、美羽さんと信輔さんから学園の時に三人チームで授業をこなしていて、さらに幼馴染みというのも聞いていたので、誘わないとは考えなかったですね!」
朔真が少し驚いた顔をする。
(そこまで考えた上でのギルドへの勧誘ってことか)
「やれやれ……あなたの掌の上だったってことですね」
ニコニコ笑顔を見せるさゆりにいたずらっぽく、肩を落としてみせる朔真。
「朔真さんは【シンフォニア】に入っていただけますか?」
「これは……うまいな!」
回鍋肉を食べた朔真が舌鼓を打つ。
「アリスさんの中華料理はどれも絶品だよ!」
朔真の隣に座っている信輔が言う。
「アリスは中華以外は普通だけどなぁ」
アゴヒゲを生やした、ぼさっとした茶髪の30歳くらいの男がボソッと呟く。
「レオはキャンプ飯しか作れないじゃない!」
レオと呼ばれた男の対面に座っていた、金髪のミドルヘアで碧眼の女、アリスがムッとした顔で、言い返す。
レオナルド・筧、【シンフォニア】のオペレーターをしている。
言動はものぐさだが、仕事はきっちりこなす。
アリス・キュアハート、医療のスペシャリスト。
明るい振る舞いでギルドのお姉さん的な感じである。
「いつもこんな感じなのか?」
朔真が自己紹介された二人のやり取りを見ながら、信輔に聞く。
「大体そうだね!あと二人いるけど、今は依頼で出てるんだ」
「……ギルドを創設して半年とはいえ、ずいぶん少人数なんだな」
ギルドの調査内容からして、もっと人数がいると思っていた朔真が意外な顔をする。
10人にも満たない少人数ギルドでありながら、特殊魔法物の調査をメインとした依頼を受ける。
それが意味することは……
「皆さんが優秀だから、助かってます」
さゆりが言う通り、少数精鋭のギルドということ。
「まぁ、人数がいれば良いということでもないからな」
そう言いながら、朔真は内心、ホッとする。
(人数だけいても、ろくなことにならないからな)
「それより!月城はうちに加入するってことだよな?」
レオナルドが朔真を見て言う。
「今は仮加入ですね」
正式に加入すると、このギルドハウスに住み込みとなる。
部屋は空いてるし、最低限の家具も揃ってはいる。
その気になれば即日加入も可能だが、朔真は二週間の仮加入をしてから決めるとさゆりに告げた。
「それでも、依頼とかは皆さんと同じようにこなしてもらう予定です」
さゆりが微笑みながら告げる。
「それなら、明日にでもアリスに一度診てもらっておけ!」
「なんで、レオが偉そうに言うのよ?朔真君は明日は朝イチで医療室に来てね!」
レオを睨んだ後に朔真に笑顔で言う。
「何かするんですか?」
「健康診断みたいなことだよ!」
朔真の質問に美羽が答える。
朔真が魔法を使えないことに関しては、食事前に全員に伝えてある。
レオナルドとアリスは多少驚いた顔をしたが、ただそれだけで差別することも見下すこともなく朔真を受け入れた。
この場にはいない二人にも、朔真のことについては連絡済みとのことだ。
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