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5章 薄氷の上
30話 熱情(3)※※
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「すご……めっちゃ出たな」
手のひらで受けた僕の白濁を見て、トモミチがため息まじりに呟いた。
息を切らしながらその様子をぼんやり眺める。
さっきトモミチに言ったように、僕も1人でしたことはある。
が、それはあくまで生理現象。僕にとってはずっと、煩わしいものだった。
出すことは〝処理〟――いや、〝排泄〟とすら考えていたかもしれない。
気持ちがいいのは少しの間だけだ。終わったあとは必ず、言いようのない虚しさと脱力感に襲われる。
――相手がいると、こうも違うものなのか。
理性が完全に飛んだ。相手の立場も性別も忘れて、ただただ快楽をねだってしまった――。
「ゴメン。なんか拭くもんある?」
トモミチが上半身を起こし、手のひらを見ながら聞いてきた。
「拭く……? どうして」
ズボンと下穿きを上げながら上半身を起こし、彼の肩に額を寄せる。
「『どうして』って。そりゃ――」
「……トモミチは……?」
そう呟くと彼の喉がごくり、と上下した。
うつむく僕の視線の先には、トモミチの――……。
「……オレはいいよ」
「放っておくのか。そんなに……なってるのに」
ズボンを押し上げている膨らみに手をやろうとすると、上から「ロラン君」と声で制された。
「エエて、ほんまに」
「どうして」
「ロラン君――」
彼の両頬を持って唇を重ね、そのまま至近距離で彼の目を見つめる。
「僕だって、トモミチを気持ちよくしたい。気持ちよくなっている顔を見たいし、声も聞きたい」
「……すごいこと言うな」
「トモミチのせいだ」
言いながらトモミチのズボンに手を伸ばす。
彼はそれを止めない。動くと手についている白濁がこぼれてしまうからかもしれない。
……が、本当にやめてほしいならそんなことに構わず、僕の手をつかんで止めたはず。
そうしないのは、僕の行為を受け入れる気持ちがあるからだ――そう都合良く判断した。
シャツをめくり、ベルトの金具を外した。
「カチャカチャ」という金属音を聞くだけで、血が沸き立つような感覚を覚える。
早る心を抑えつつズボンの金具を下ろして下着をずり下げると、昂ぶった彼のものが露わになった。
「っ、……おおきい……」
「そうでもないよ」
上からトモミチの笑う声が聞こえる。
思わず彼の顔を見上げると、睫毛を伏せて顔をそらされてしまった。
さすがの彼も恥じらっているらしい。
「…………」
――この顔をもっと見たい。
知りたい。肉体的な快感で、彼がどんな風に乱れるのか……。
「……触っても?」
「いいけど。それよりあの……先にこれ、拭きたいんやけど――」
言葉の途中で彼の手に自分の手を重ねて白濁を拭い取り、その手で彼のものを握った。
「……マジか……」
「嫌だった?」
「嫌、っていうか……ビックリしてるっていうか」
「僕も自分で驚いてる……」
「そうなん?」
「トモミチのせいだから」
「えぇっ……ちょっと。そんな、なんでもかんでもオレのせいに、……っ」
手を上下に動かすと、彼の声が途切れた。
荒い息遣いに混じって小さく掠れた声が聞こえてくる。
僕は彼の肩に頬をつけ、彼の顔と、今僕の手の中にある昂ぶりを交互に見やる。
「トモミチ……気持ちいい?」
目が合ったので尋ねると、トモミチは目を閉じて小さくうなずき、手の甲を額に当てて天井を仰いだ。
「ん……気持ちいい。熱いし、ぬるぬるしてる……ヤバい」
先端から透明な液体がにじみ出ている。
ツツツ……と彼のものをつたって流れ、塗りつけた僕の白濁と混じり合う。
ここまでの流れで、言いようのない興奮を覚えている自分がいる。
トモミチ自身がここまで昂ぶっているのは、乱れる僕の姿態を見て興奮したから。
それで今、僕がトモミチのを刺激して、トモミチも乱れて、それで……。
「……ロラン君、もっと強く握っていいよ」
「えっ」
淫らな思考に意識を飛ばしていると、トモミチが声をかけてきた。
「強く? って……どれくらい」
「こんくらいかな」
彼が僕の手を上から包んで握る。
「この感じで、もっかい……」
そう言ってトモミチは僕の肩を抱き寄せ、頬に手を添えてキスをしてきた。すぐに舌で唇をこじ開け、そのまま入り込んでくる。
「んっ……」
――キスをするのが好きだ。
至近距離で茶色の瞳に見つめられながら舌を絡ませていると、心が満たされる。
気付くと、彼のものが最初に手にしたときよりも大きく、硬くなっていた。
トモミチも興奮しているんだろうか。僕と同じに……。
「ん……!」
キスの途中でトモミチの手が僕の股間に伸びてきたので、驚いて唇を離す。
「と……トモミチ」
「また、えらいことなってる」
「や、やめ……今は、僕が」
「『今は僕が』か。……ロラン君てさ、Sっ気もあるよな」
「え、えす……何?」
「いじめるのが好きな変態のこと」
「なっ……それ、自分のことじゃないか!」
カッとなって言い返すとトモミチは「大正解」と言ってニヤリと笑った。
「そういうわけでさ……」
トモミチが僕をベッドに押し倒し、上にのしかかってくる。
「ゴメンな。オレ、攻められんのあんま好きちゃうみたい。……やっぱ主導権は、こっちが」
言いながら僕のシャツの裾に手をやり、腹から胸を撫で上げつつシャツをめくる。
そうしたあと、その手がズボンの膨らみの方へ……。
「あ……!」
「なんで直してもうたん? アカンやん」
「だ……だって……」
指先で膨らみの先端を撫でながら耳元で囁かれ、あっという間に息が乱れる。
「脱いで、見せてーや」
「い、いやだ。恥ずかしい」
「恥ずかしいの、好きやろ?」
「……っ」
――ひどい決めつけをされているのに、否定や拒絶の言葉が出てこない。
彼の言うがままズボンと下穿きを太ももまでずり下げ、昂った自身を取り出した。
露わになった昂ぶりの先端からは、透明の液体がにじみ出ている。
それを見てトモミチは微笑を浮かべ、僕の頬にキスしたあと耳に唇を寄せた。
「すごいな、さっきあんな出たのに。……オレのこと見てこんなんなったん?」
「と……トモミチが、悪い」
「なんでもオレのせいにするやん。……でもさあ、それ言うんやったら、オレがこうなってんのもキミのせいやからな」
「あっ……!?」
トモミチが、自分のものを僕のものと密着させ、まとめて手で包んで握った。
「な、何、して……」
「こうした方が早いやろ? 一緒に気持ちよくなれるし」
「あ、あ……」
彼の〝熱〟を直で感じる。
少しでも動くと、お互いのものが擦れあってしまう。
――気持ちいい。
「や、いや……」
「『イヤ』とちゃうやろ?」
「だってこんなの、へんだ……、あっ!」
トモミチが手を上下させ始める。
「……確かに、変かもな。オレかて、こんなんしたことない。けど……さっきも言うたけど、オレがこんなんなったん、ロラン君のせいやからな」
「な、なんで、あ……っ」
手の速度を少し上げ、トモミチが僕の上に覆い被さる。
「オレ今まで、人にこんな無理強いとかしたことないねん。……なんつっても、〝倫理〟やしな。せやのに――」
「あっ……」
トモミチが胸の先端にキスをして舐め、吸い付いてきた。さっきはくすぐったいだけだったのに、なぜか身体が熱を帯びる。
下を扱かれているから、そこにも快感が生まれたのだろうか。
そんなところを舌や唇で弄ばれているという、視覚的な興奮があるからだろうか――。
「あぁ……っ」
「ほら。そうやってさ……最初抵抗すんのに、結局受け入れるやん。たまらんわ……めっちゃそそる。ホンマ、何してくれてんねやろ。責任とってほしいわ――」
そう言って彼が胸の突起を甘噛みする。
「あっ! い、や……っ」
「好きなくせに」
トモミチは胸から顔を離し、今度は耳にかぶりついてきた。
耳たぶを甘噛みしながら舌先で舐め、2人のものを持っている手をひねり上げるよう上下させ始める。
彼のものに付着していた僕の白濁が僕自身にも塗りつけられたため、滑りがよくなった。
彼が手を動かすたび、温かくぬるぬるとした感触が伝わってくる――。
「は、あ……っ、きもち、い……」
震える声でそう告げると、トモミチは息だけで笑った。
息が荒いし、眉間にシワが寄っている。最初の頃の余裕を失っているように見える。
彼も快感に耐えているのだろうか。僕と同じに――。
「ともみち、キス、したい……おねがい」
彼の背に手を回して、荒れる息で懇願する。
トモミチは耳から顔を離し、舌を出しながら僕の方へ。
僕も舌を出してそれを迎え入れる。最初から舌を思い切り突き出していたからか、駄目出しをされることはなかった。
「ん、ん……!」
お互いの大きく乱れた吐息と、快感に喘ぐ掠れ声が混ざり合う。
このときも、彼の手の動きは止まっていない。にゅるにゅる、と、粘液を擦り合わせる卑猥な音が耳に入ってくる。
――目の前が、霞む……。
「あ、あ、ともみち、また、また……!」
そのタイミングでなぜかトモミチが突然手を緩める。
「ともみち……っ、なんで、どうして……!」
今にも出そうなところで止められて、頭が混乱する。
何か言葉が足りなかったのだろうか、また何か、ねだる言葉を言わせる気だろうか……そう思ったが、どうやら違う。
トモミチは目を閉じ、手を緩く動かせながら深呼吸をしている。
「ともみち……?」
「ロラン君、あのさあ……お願いが、あんねんけど」
「お願い? なに……」
「オレをさあ、1人にせんといてほしいねん」
「え……?」
「キミがさ……扉を開けて、オレを迎え入れたんやん」
「とびら?」
「そう。扉を開けて、箱を開けて……そんで、川の底にオレを引きずり込んで――」
「…………?」
扉、箱、川――言意がいまひとつ読み取れない。さっき聞いた、夢の中の話だろうか?
「それやのに、1人で上がっていこうとしてさ。オレはそんなん、……許されへん……!」
「あ……っ」
手に力を込め、トモミチが再び昂ぶりを強く、速く上下させる。
「やっ、トモミチ……っ」
「イヤやなオレは、置いて行かれるのは……。なあロラン君、このままここに沈んどってや。オレと――」
「う、あ……!」
達しそうになったところでまた彼が手を緩めた。
彼は僕の内心を読むのがうまい。けれど、達する寸前かどうかまで読み取れるはずがない。
なのに、どうして……。
ゆるゆるとした手の動きに涙目で悶えていると、トモミチがベッドについた手で僕の顔を抱え込み、顔を至近距離まで近づけてくる。
「……ロラン君。オレと一緒に、ここで溺れてくれる?」
彼が何を言っているのか、何を望んでいるのか、全然分からない。夢と現実が混同しているのだろうか。
分からないまま、ただ「うん、うん」とうなずくが、その返答は彼の満足がいくものではなかったようだ。
無表情で僕の顔を見つめたまま、ゆるゆると手を動かし続けている。
――駄目だ。とても耐えられない。
お願いだから、もう……!
「っ……どこにも、行かない! トモミチと一緒にいるから、だから……!」
泣きながらそう宣言すると、トモミチは顔を傾け、ふっと柔らかく笑った。
普段なら好きな笑顔が、今この瞬間は場違いに思える――。
「ふふ、……よかった」
「あっ……!」
トモミチが手の動きを再開する。
吐息まじりに「ロラン」と呟きながら扱かれ、理性が吹き飛んだ。
また力を緩められたら嫌だと思ってトモミチの手に手を重ねてグッと握ると、彼は顔を歪めて小さく唸り声を上げ、扱く速度を速めた。
「あっ、あっ、トモミチ、気持ちいい……! おねがい、このまま……」
「ん、分かってる。……ごめんな。一緒にいこ」
「あ、あ……っ!!」
身体がのけぞり、目の前が白む。
ビクビクと身体が震え、僕は再び精を吐き出した。
「っ……ロラン、……ん……っ!!」
僕の少しあとにトモミチも達した。
今回は手で受けなかったため、飛び散った精が寝具にも服にも付着してしまった。
それに構うことなく、どちらからともなく顔を寄せ合い唇を重ねる。
(トモミチ……)
甘い痺れと充足感に包まれ、涙がこぼれる。
僕達がしていることは、よくないことかもしれない。
でも、それでもいい。
トモミチは僕のもの。僕はトモミチのもの。
お互いの気持ちが分かっただけで十分だ。
明日も明後日もその先も、ずっと2人で溺れていたい――。
――5章 終わり――
手のひらで受けた僕の白濁を見て、トモミチがため息まじりに呟いた。
息を切らしながらその様子をぼんやり眺める。
さっきトモミチに言ったように、僕も1人でしたことはある。
が、それはあくまで生理現象。僕にとってはずっと、煩わしいものだった。
出すことは〝処理〟――いや、〝排泄〟とすら考えていたかもしれない。
気持ちがいいのは少しの間だけだ。終わったあとは必ず、言いようのない虚しさと脱力感に襲われる。
――相手がいると、こうも違うものなのか。
理性が完全に飛んだ。相手の立場も性別も忘れて、ただただ快楽をねだってしまった――。
「ゴメン。なんか拭くもんある?」
トモミチが上半身を起こし、手のひらを見ながら聞いてきた。
「拭く……? どうして」
ズボンと下穿きを上げながら上半身を起こし、彼の肩に額を寄せる。
「『どうして』って。そりゃ――」
「……トモミチは……?」
そう呟くと彼の喉がごくり、と上下した。
うつむく僕の視線の先には、トモミチの――……。
「……オレはいいよ」
「放っておくのか。そんなに……なってるのに」
ズボンを押し上げている膨らみに手をやろうとすると、上から「ロラン君」と声で制された。
「エエて、ほんまに」
「どうして」
「ロラン君――」
彼の両頬を持って唇を重ね、そのまま至近距離で彼の目を見つめる。
「僕だって、トモミチを気持ちよくしたい。気持ちよくなっている顔を見たいし、声も聞きたい」
「……すごいこと言うな」
「トモミチのせいだ」
言いながらトモミチのズボンに手を伸ばす。
彼はそれを止めない。動くと手についている白濁がこぼれてしまうからかもしれない。
……が、本当にやめてほしいならそんなことに構わず、僕の手をつかんで止めたはず。
そうしないのは、僕の行為を受け入れる気持ちがあるからだ――そう都合良く判断した。
シャツをめくり、ベルトの金具を外した。
「カチャカチャ」という金属音を聞くだけで、血が沸き立つような感覚を覚える。
早る心を抑えつつズボンの金具を下ろして下着をずり下げると、昂ぶった彼のものが露わになった。
「っ、……おおきい……」
「そうでもないよ」
上からトモミチの笑う声が聞こえる。
思わず彼の顔を見上げると、睫毛を伏せて顔をそらされてしまった。
さすがの彼も恥じらっているらしい。
「…………」
――この顔をもっと見たい。
知りたい。肉体的な快感で、彼がどんな風に乱れるのか……。
「……触っても?」
「いいけど。それよりあの……先にこれ、拭きたいんやけど――」
言葉の途中で彼の手に自分の手を重ねて白濁を拭い取り、その手で彼のものを握った。
「……マジか……」
「嫌だった?」
「嫌、っていうか……ビックリしてるっていうか」
「僕も自分で驚いてる……」
「そうなん?」
「トモミチのせいだから」
「えぇっ……ちょっと。そんな、なんでもかんでもオレのせいに、……っ」
手を上下に動かすと、彼の声が途切れた。
荒い息遣いに混じって小さく掠れた声が聞こえてくる。
僕は彼の肩に頬をつけ、彼の顔と、今僕の手の中にある昂ぶりを交互に見やる。
「トモミチ……気持ちいい?」
目が合ったので尋ねると、トモミチは目を閉じて小さくうなずき、手の甲を額に当てて天井を仰いだ。
「ん……気持ちいい。熱いし、ぬるぬるしてる……ヤバい」
先端から透明な液体がにじみ出ている。
ツツツ……と彼のものをつたって流れ、塗りつけた僕の白濁と混じり合う。
ここまでの流れで、言いようのない興奮を覚えている自分がいる。
トモミチ自身がここまで昂ぶっているのは、乱れる僕の姿態を見て興奮したから。
それで今、僕がトモミチのを刺激して、トモミチも乱れて、それで……。
「……ロラン君、もっと強く握っていいよ」
「えっ」
淫らな思考に意識を飛ばしていると、トモミチが声をかけてきた。
「強く? って……どれくらい」
「こんくらいかな」
彼が僕の手を上から包んで握る。
「この感じで、もっかい……」
そう言ってトモミチは僕の肩を抱き寄せ、頬に手を添えてキスをしてきた。すぐに舌で唇をこじ開け、そのまま入り込んでくる。
「んっ……」
――キスをするのが好きだ。
至近距離で茶色の瞳に見つめられながら舌を絡ませていると、心が満たされる。
気付くと、彼のものが最初に手にしたときよりも大きく、硬くなっていた。
トモミチも興奮しているんだろうか。僕と同じに……。
「ん……!」
キスの途中でトモミチの手が僕の股間に伸びてきたので、驚いて唇を離す。
「と……トモミチ」
「また、えらいことなってる」
「や、やめ……今は、僕が」
「『今は僕が』か。……ロラン君てさ、Sっ気もあるよな」
「え、えす……何?」
「いじめるのが好きな変態のこと」
「なっ……それ、自分のことじゃないか!」
カッとなって言い返すとトモミチは「大正解」と言ってニヤリと笑った。
「そういうわけでさ……」
トモミチが僕をベッドに押し倒し、上にのしかかってくる。
「ゴメンな。オレ、攻められんのあんま好きちゃうみたい。……やっぱ主導権は、こっちが」
言いながら僕のシャツの裾に手をやり、腹から胸を撫で上げつつシャツをめくる。
そうしたあと、その手がズボンの膨らみの方へ……。
「あ……!」
「なんで直してもうたん? アカンやん」
「だ……だって……」
指先で膨らみの先端を撫でながら耳元で囁かれ、あっという間に息が乱れる。
「脱いで、見せてーや」
「い、いやだ。恥ずかしい」
「恥ずかしいの、好きやろ?」
「……っ」
――ひどい決めつけをされているのに、否定や拒絶の言葉が出てこない。
彼の言うがままズボンと下穿きを太ももまでずり下げ、昂った自身を取り出した。
露わになった昂ぶりの先端からは、透明の液体がにじみ出ている。
それを見てトモミチは微笑を浮かべ、僕の頬にキスしたあと耳に唇を寄せた。
「すごいな、さっきあんな出たのに。……オレのこと見てこんなんなったん?」
「と……トモミチが、悪い」
「なんでもオレのせいにするやん。……でもさあ、それ言うんやったら、オレがこうなってんのもキミのせいやからな」
「あっ……!?」
トモミチが、自分のものを僕のものと密着させ、まとめて手で包んで握った。
「な、何、して……」
「こうした方が早いやろ? 一緒に気持ちよくなれるし」
「あ、あ……」
彼の〝熱〟を直で感じる。
少しでも動くと、お互いのものが擦れあってしまう。
――気持ちいい。
「や、いや……」
「『イヤ』とちゃうやろ?」
「だってこんなの、へんだ……、あっ!」
トモミチが手を上下させ始める。
「……確かに、変かもな。オレかて、こんなんしたことない。けど……さっきも言うたけど、オレがこんなんなったん、ロラン君のせいやからな」
「な、なんで、あ……っ」
手の速度を少し上げ、トモミチが僕の上に覆い被さる。
「オレ今まで、人にこんな無理強いとかしたことないねん。……なんつっても、〝倫理〟やしな。せやのに――」
「あっ……」
トモミチが胸の先端にキスをして舐め、吸い付いてきた。さっきはくすぐったいだけだったのに、なぜか身体が熱を帯びる。
下を扱かれているから、そこにも快感が生まれたのだろうか。
そんなところを舌や唇で弄ばれているという、視覚的な興奮があるからだろうか――。
「あぁ……っ」
「ほら。そうやってさ……最初抵抗すんのに、結局受け入れるやん。たまらんわ……めっちゃそそる。ホンマ、何してくれてんねやろ。責任とってほしいわ――」
そう言って彼が胸の突起を甘噛みする。
「あっ! い、や……っ」
「好きなくせに」
トモミチは胸から顔を離し、今度は耳にかぶりついてきた。
耳たぶを甘噛みしながら舌先で舐め、2人のものを持っている手をひねり上げるよう上下させ始める。
彼のものに付着していた僕の白濁が僕自身にも塗りつけられたため、滑りがよくなった。
彼が手を動かすたび、温かくぬるぬるとした感触が伝わってくる――。
「は、あ……っ、きもち、い……」
震える声でそう告げると、トモミチは息だけで笑った。
息が荒いし、眉間にシワが寄っている。最初の頃の余裕を失っているように見える。
彼も快感に耐えているのだろうか。僕と同じに――。
「ともみち、キス、したい……おねがい」
彼の背に手を回して、荒れる息で懇願する。
トモミチは耳から顔を離し、舌を出しながら僕の方へ。
僕も舌を出してそれを迎え入れる。最初から舌を思い切り突き出していたからか、駄目出しをされることはなかった。
「ん、ん……!」
お互いの大きく乱れた吐息と、快感に喘ぐ掠れ声が混ざり合う。
このときも、彼の手の動きは止まっていない。にゅるにゅる、と、粘液を擦り合わせる卑猥な音が耳に入ってくる。
――目の前が、霞む……。
「あ、あ、ともみち、また、また……!」
そのタイミングでなぜかトモミチが突然手を緩める。
「ともみち……っ、なんで、どうして……!」
今にも出そうなところで止められて、頭が混乱する。
何か言葉が足りなかったのだろうか、また何か、ねだる言葉を言わせる気だろうか……そう思ったが、どうやら違う。
トモミチは目を閉じ、手を緩く動かせながら深呼吸をしている。
「ともみち……?」
「ロラン君、あのさあ……お願いが、あんねんけど」
「お願い? なに……」
「オレをさあ、1人にせんといてほしいねん」
「え……?」
「キミがさ……扉を開けて、オレを迎え入れたんやん」
「とびら?」
「そう。扉を開けて、箱を開けて……そんで、川の底にオレを引きずり込んで――」
「…………?」
扉、箱、川――言意がいまひとつ読み取れない。さっき聞いた、夢の中の話だろうか?
「それやのに、1人で上がっていこうとしてさ。オレはそんなん、……許されへん……!」
「あ……っ」
手に力を込め、トモミチが再び昂ぶりを強く、速く上下させる。
「やっ、トモミチ……っ」
「イヤやなオレは、置いて行かれるのは……。なあロラン君、このままここに沈んどってや。オレと――」
「う、あ……!」
達しそうになったところでまた彼が手を緩めた。
彼は僕の内心を読むのがうまい。けれど、達する寸前かどうかまで読み取れるはずがない。
なのに、どうして……。
ゆるゆるとした手の動きに涙目で悶えていると、トモミチがベッドについた手で僕の顔を抱え込み、顔を至近距離まで近づけてくる。
「……ロラン君。オレと一緒に、ここで溺れてくれる?」
彼が何を言っているのか、何を望んでいるのか、全然分からない。夢と現実が混同しているのだろうか。
分からないまま、ただ「うん、うん」とうなずくが、その返答は彼の満足がいくものではなかったようだ。
無表情で僕の顔を見つめたまま、ゆるゆると手を動かし続けている。
――駄目だ。とても耐えられない。
お願いだから、もう……!
「っ……どこにも、行かない! トモミチと一緒にいるから、だから……!」
泣きながらそう宣言すると、トモミチは顔を傾け、ふっと柔らかく笑った。
普段なら好きな笑顔が、今この瞬間は場違いに思える――。
「ふふ、……よかった」
「あっ……!」
トモミチが手の動きを再開する。
吐息まじりに「ロラン」と呟きながら扱かれ、理性が吹き飛んだ。
また力を緩められたら嫌だと思ってトモミチの手に手を重ねてグッと握ると、彼は顔を歪めて小さく唸り声を上げ、扱く速度を速めた。
「あっ、あっ、トモミチ、気持ちいい……! おねがい、このまま……」
「ん、分かってる。……ごめんな。一緒にいこ」
「あ、あ……っ!!」
身体がのけぞり、目の前が白む。
ビクビクと身体が震え、僕は再び精を吐き出した。
「っ……ロラン、……ん……っ!!」
僕の少しあとにトモミチも達した。
今回は手で受けなかったため、飛び散った精が寝具にも服にも付着してしまった。
それに構うことなく、どちらからともなく顔を寄せ合い唇を重ねる。
(トモミチ……)
甘い痺れと充足感に包まれ、涙がこぼれる。
僕達がしていることは、よくないことかもしれない。
でも、それでもいい。
トモミチは僕のもの。僕はトモミチのもの。
お互いの気持ちが分かっただけで十分だ。
明日も明後日もその先も、ずっと2人で溺れていたい――。
――5章 終わり――
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ろくな男はいません。
世界観がごちゃごちゃです。余り深く考えずに暖かい目で読んで頂けたら、と思います。
表紙はくま様からお借りしました。
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。
氷の檻に閉じ込められた月~兄上のすべては、私のもの~
春野ふぶき
BL
『兄上は私のものだ。魂も、肉体も。永遠に―—』
アーヴェント侯爵家の長男ライカは、妾腹として正妻に虐げられ続けてきた。
唯一の救いは、次期当主を目される異母弟カイエンの存在。
美しく聡明で、氷の騎士と呼ばれる彼だけは、常にライカの味方だった。
だが、その愛情は兄を守るものではなく、深く歪んだ執着だった。
母を排除し、兄を囲い込み、逃げれば鎖で捕らえる。
そしてついに、ライカの心身は限界に追い詰められていく。
——カイエンが下す「最後の選択」とは。
ふたりが辿る結末は、幸福か、それとも狂気の果てか。
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