2 / 20
「異世界の楽園」編
1.二時間後
しおりを挟む
「ここはどこなんだ……」
俺は今、さんさんと太陽の照りつける砂浜をさまよっていた。
あれから気が付いたらこんな南の楽園みたいな場所にいて、新たな体の軽さや筋肉美を喜んでいたのも束の間。何をしたらいいのか分からず、延々と歩き続けている。
幸い目の前が海なので、暑くなったら水の中に飛び込んで体を冷やすことができる。ひんやりして透明度の高い水は気持ちよく、こんな状況でもこれはこれで楽しい。
「お、あれは!」
ようやく、人の手によるものらしき建造物が見えた。ここからだと、小屋のように見えるが……
「……船? 小屋? なんなんだ、これ」
近づいてみると、砂浜に半ば埋まったような状態にあるそれは、船とも家ともつかないなんとも中途半端な形をしていた。
木のような材料で出来ているものの、相当長い間放置されていた様子なのに腐った様子もなく、結構しっかりと原型を保っている。
扉を見つけたので開けてみると、中からは意外とひんやりした空気が流れてきた。
「おお、た、助かった……」
暑い中を長いこと歩き、いい加減喉の乾きも限界だったところ、なんとそこには瓶詰めの飲み物が。
いつからあるのか知らないが、ワインとかなら数百年腐らないと聞いたし、早速栓を開けて飲んでみる。
「うおおぉぉぉ、甘露甘露」
まさに天の恵み給う雫とはこのこと。心なしか空腹まで癒され、体力も戻ってきた。
「酒じゃないみたいだが、なんだこれ」
瓶に貼ってあったラベルを見てみると、知らない文字が書いてある。が、俺にはちゃんと読むことができた。神様から貰った特典のおかげだな。
「『楽園の泉の水』? 大層な名前だな。とにかく、これだけあればしばらくは大丈夫だろう」
棚には同じ瓶が山ほどある。これで脱水症状の危険はなくなった。
とりあえずここを拠点にして、いろいろ調べてみることにした。
***
まずはこの家(と呼ぶことにした)の中にあるものをチェックする。
広さは一般的な1LDKのマンションくらいで、それが三階分。一階は入り口と食料庫、二階は机とか寝台とかごちゃごちゃ家具があり、そして三階には壁いっぱいの本やら地図やらが置いてあった。また、短剣と弓矢、貫頭衣と和服の中間みたいなデザインの服も見つけている。
現状だと、本はある意味で宝の山より価値がある。この世界のことや今いる場所についてなど、生きていく上で大切な情報を知ることができるからだ。
一冊手にとって目を通し、続いて次の一冊、そしてまた一冊と、読み始めると止まらなくなってしまった。
というのも、歴史や生物、果ては呪文的な学問など、いわゆるファンタジーな話が多くて、俺の趣味にピッタリだったからだ。
「お、もう暗くなる時間か」
そうして夢中になっていると、気が付けばすっかり夜を迎えていた。
分かったことは色々ある。例えば、ここが絶海の孤島で、この家の持ち主だった魔術士は、ここにある泉の水(さっき飲んだやつだ)を求める旅の果てに辿り着いたこと、なのに帰る手段がなくなってしまったこと、などなどだ。その魔術士も、今頃はどこかで土に還っているのかもな……
それから、この世界独特のエネルギーである魔力と、その使い方について。簡単に言えば、基本的に魔力は土地から発生するもので、それを魔法言語によって特定の現象に変換するのが魔術だそうだ。
どうやったら人が土地の持つ魔力を利用できるのかというと、その土地に所有者としての印を刻む必要がある。
また、土地は地形によって生み出す魔力の色が違う。
森林:緑
山岳:赤
湿地:黒
河川:青
平野:白
といった具合だ。他にも、ここに当てはまらない特殊な地形もあるらしい。
そして、この魔力の色はそれぞれ、五系統存在する魔術の色に対応する。
緑魔術:創造を司る、荒ぶる地の力
赤魔術:破壊を司る、荒ぶる地の力
黒魔術:破壊を司る、鎮まる地の力
青魔術:破壊を司る、鎮まる天の力
白魔術:創造を司る、鎮まる天の力
魔術を使うには、それぞれの色に応じた魔力が必要となる。当然、土地を一つ手に入れるのも相当大変であり、多くの魔術士は使える色が限定的になるものなのだが……
「しかし、この島は……」
なんとこの島は、世にも珍しい五色全ての魔力を生み出す土地らしい。島を覆う森、その中央に鎮座する火山、底なしの沼、地下水の湧く湖から海へと流れ出す川、そして森と砂浜の間を繋ぐ平地と、あらゆる地形が揃っているからだ。
「もしかして、ここに送り込まれたのは、この島を俺のものにしていいっていうメッセージなのかもな……」
神様とやらの粋な計らいに感謝しつつ、まずは島中を巡ってみようと決め、今日のところは眠りにつくのだった。
***
翌朝、また一本瓶を開けて飲み干し、昨日見つけた装備と瓶を一本持って、島の探索に向かった。
これからの目的は、まず食料の確保。それから、この島の魔力を使えるようになるために各地形を訪れることだ。
と思っていたら、食料問題はあっという間に解決した。食べられる木の実がわんさか生っている場所を、家のすぐ近くに見つけたのだ。また、川魚や鹿みたいな草食動物も見かけたので、そのうち獲ろうと思う。
木の実をいくつか回収して家に置いてから、再度出発。次の目的は、森の魔力を得ることだ。方法は昨日読んだ本に書いてあった。
どうやるかといえば、まずじっと目を凝らすと見えてくる魔力の流れを追い、それらが最も多く合流している場所まで行く。そして、いわばその土地のへそとも呼ぶべきそこに、俺の血を垂らせばいいらしい。
「こっちかな、っと」
魔力の流れは少しずつ、でも確かに集まりつつある。やがて見えてきたのは、他のどれよりも太く高い、一本の巨木だった。
「なるほど、見るからに分かりやすい」
もはや数え切れないほどの魔力の流れが、その木を中心に渦巻いている。これは間違いないだろう。
近づいていって、短剣で手のひらを切り、滴るままに血で濡れた手を木につく。
その手と触れた部分がパアッと輝いたかと思うと、何かが俺の中に流れ込んでくる感触があった。これが魔力なのか。
こうして、俺はまず一つ目となる緑の魔力を手に入れたのだった。
さて、お次は……
俺は今、さんさんと太陽の照りつける砂浜をさまよっていた。
あれから気が付いたらこんな南の楽園みたいな場所にいて、新たな体の軽さや筋肉美を喜んでいたのも束の間。何をしたらいいのか分からず、延々と歩き続けている。
幸い目の前が海なので、暑くなったら水の中に飛び込んで体を冷やすことができる。ひんやりして透明度の高い水は気持ちよく、こんな状況でもこれはこれで楽しい。
「お、あれは!」
ようやく、人の手によるものらしき建造物が見えた。ここからだと、小屋のように見えるが……
「……船? 小屋? なんなんだ、これ」
近づいてみると、砂浜に半ば埋まったような状態にあるそれは、船とも家ともつかないなんとも中途半端な形をしていた。
木のような材料で出来ているものの、相当長い間放置されていた様子なのに腐った様子もなく、結構しっかりと原型を保っている。
扉を見つけたので開けてみると、中からは意外とひんやりした空気が流れてきた。
「おお、た、助かった……」
暑い中を長いこと歩き、いい加減喉の乾きも限界だったところ、なんとそこには瓶詰めの飲み物が。
いつからあるのか知らないが、ワインとかなら数百年腐らないと聞いたし、早速栓を開けて飲んでみる。
「うおおぉぉぉ、甘露甘露」
まさに天の恵み給う雫とはこのこと。心なしか空腹まで癒され、体力も戻ってきた。
「酒じゃないみたいだが、なんだこれ」
瓶に貼ってあったラベルを見てみると、知らない文字が書いてある。が、俺にはちゃんと読むことができた。神様から貰った特典のおかげだな。
「『楽園の泉の水』? 大層な名前だな。とにかく、これだけあればしばらくは大丈夫だろう」
棚には同じ瓶が山ほどある。これで脱水症状の危険はなくなった。
とりあえずここを拠点にして、いろいろ調べてみることにした。
***
まずはこの家(と呼ぶことにした)の中にあるものをチェックする。
広さは一般的な1LDKのマンションくらいで、それが三階分。一階は入り口と食料庫、二階は机とか寝台とかごちゃごちゃ家具があり、そして三階には壁いっぱいの本やら地図やらが置いてあった。また、短剣と弓矢、貫頭衣と和服の中間みたいなデザインの服も見つけている。
現状だと、本はある意味で宝の山より価値がある。この世界のことや今いる場所についてなど、生きていく上で大切な情報を知ることができるからだ。
一冊手にとって目を通し、続いて次の一冊、そしてまた一冊と、読み始めると止まらなくなってしまった。
というのも、歴史や生物、果ては呪文的な学問など、いわゆるファンタジーな話が多くて、俺の趣味にピッタリだったからだ。
「お、もう暗くなる時間か」
そうして夢中になっていると、気が付けばすっかり夜を迎えていた。
分かったことは色々ある。例えば、ここが絶海の孤島で、この家の持ち主だった魔術士は、ここにある泉の水(さっき飲んだやつだ)を求める旅の果てに辿り着いたこと、なのに帰る手段がなくなってしまったこと、などなどだ。その魔術士も、今頃はどこかで土に還っているのかもな……
それから、この世界独特のエネルギーである魔力と、その使い方について。簡単に言えば、基本的に魔力は土地から発生するもので、それを魔法言語によって特定の現象に変換するのが魔術だそうだ。
どうやったら人が土地の持つ魔力を利用できるのかというと、その土地に所有者としての印を刻む必要がある。
また、土地は地形によって生み出す魔力の色が違う。
森林:緑
山岳:赤
湿地:黒
河川:青
平野:白
といった具合だ。他にも、ここに当てはまらない特殊な地形もあるらしい。
そして、この魔力の色はそれぞれ、五系統存在する魔術の色に対応する。
緑魔術:創造を司る、荒ぶる地の力
赤魔術:破壊を司る、荒ぶる地の力
黒魔術:破壊を司る、鎮まる地の力
青魔術:破壊を司る、鎮まる天の力
白魔術:創造を司る、鎮まる天の力
魔術を使うには、それぞれの色に応じた魔力が必要となる。当然、土地を一つ手に入れるのも相当大変であり、多くの魔術士は使える色が限定的になるものなのだが……
「しかし、この島は……」
なんとこの島は、世にも珍しい五色全ての魔力を生み出す土地らしい。島を覆う森、その中央に鎮座する火山、底なしの沼、地下水の湧く湖から海へと流れ出す川、そして森と砂浜の間を繋ぐ平地と、あらゆる地形が揃っているからだ。
「もしかして、ここに送り込まれたのは、この島を俺のものにしていいっていうメッセージなのかもな……」
神様とやらの粋な計らいに感謝しつつ、まずは島中を巡ってみようと決め、今日のところは眠りにつくのだった。
***
翌朝、また一本瓶を開けて飲み干し、昨日見つけた装備と瓶を一本持って、島の探索に向かった。
これからの目的は、まず食料の確保。それから、この島の魔力を使えるようになるために各地形を訪れることだ。
と思っていたら、食料問題はあっという間に解決した。食べられる木の実がわんさか生っている場所を、家のすぐ近くに見つけたのだ。また、川魚や鹿みたいな草食動物も見かけたので、そのうち獲ろうと思う。
木の実をいくつか回収して家に置いてから、再度出発。次の目的は、森の魔力を得ることだ。方法は昨日読んだ本に書いてあった。
どうやるかといえば、まずじっと目を凝らすと見えてくる魔力の流れを追い、それらが最も多く合流している場所まで行く。そして、いわばその土地のへそとも呼ぶべきそこに、俺の血を垂らせばいいらしい。
「こっちかな、っと」
魔力の流れは少しずつ、でも確かに集まりつつある。やがて見えてきたのは、他のどれよりも太く高い、一本の巨木だった。
「なるほど、見るからに分かりやすい」
もはや数え切れないほどの魔力の流れが、その木を中心に渦巻いている。これは間違いないだろう。
近づいていって、短剣で手のひらを切り、滴るままに血で濡れた手を木につく。
その手と触れた部分がパアッと輝いたかと思うと、何かが俺の中に流れ込んでくる感触があった。これが魔力なのか。
こうして、俺はまず一つ目となる緑の魔力を手に入れたのだった。
さて、お次は……
0
あなたにおすすめの小説
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
【完結】異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました
小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。
しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!?
助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、
「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。
幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。
ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく!
ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー
剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜
みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。
…しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた!
「元気に育ってねぇクロウ」
(…クロウ…ってまさか!?)
そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム
「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ
そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが
「クロウ•チューリア」だ
ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う
運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる
"バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う
「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と!
その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ
剣ぺろと言う「バグ技」は
"剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ
この物語は
剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語
(自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!)
しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる