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17. 天才錬金術師の手腕で無敵のゴーレムが誕生する
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ゴーレム制作の契約から幾日かの後。
この間、グライクたちは第一階層と第二階層に幾度か潜ったり、色々な人に頼まれて予想外の冒険をしたりの毎日を過ごしていた。それについて語るのは後日に譲り、割愛する。
「いやー、まさか四つのクリスタルの塔の楽園伝説は、あの塔の主人が冒険者を集めるために撒いた餌だったとは」
「竜に拐われた姫の救出も大変でした」
「なんだか何度も世界を救った気がするニャン」
ここ何日かの出来事を話し合いながら、グライクたちとショーニンはジーの家までやってきた。ゴーレムが完成したという一報がショーニンを通じて届けられたのだ。
しかし、ジーの家は静まり返っており、扉を叩いても返事はない。怪訝に思いながら、四人は家の中に入っていく。
「ごめんくださ~い」
「出てきませんね」
「……なんか変な音がするニャン」
「奥の方に行ってみるか」
四人が四人とも何か尋常ではない気配を感じつつ、待っていても仕方がないと奥へと進む。そして目にしたのは、予想もしていなかった奇妙な光景だった。
「お、おいジー! 大丈夫かよ!」
「う……ああ、ショーニンか。それにグライク殿たちも……ふふふ、ご依頼のゴーレムはついに完成したぞ……! ご覧あれ!」
そこにいたのは、机に倒れ伏していびきをかくジーと、グライクの倍を超える大きさのゴーレムであった。
オリハルコン製であると一目で分かる黄金のボディ。頑強さと重厚さが溢れんばかりに伝わる堂々たる雰囲気。確かにグライクの注文に応える出来栄えに、四人は息を呑む。
「デカいね! これなら俺たちの盾として十分に役立ってくれそうだ」
「そうですね。しかし、これだけ大きいと、狭い通路を通り抜けられない恐れが……」
「ふはは、心配ご無用! 我が閃いた機能は、まさにそこを解決するものであった。まずは起動させましょうぞ。このゴーレムの主となるグライク殿に、額にある呪文を完成させていただく」
ジーの指示に従い、グライクがゴーレム作りの秘術の最後を締め括る。呪文はほとんど書込み終わっており、残るは最後の一文字だけだった。
「このように……そう、そうです。上手く書けましたな」
「ありがとうございます――おっ!」
書き終えた呪文が煌めき、魔力の奔流が部屋中を駆け巡った後、ゴーレムの目に光が宿った。
「ゴ・ゴ・ゴ・ゴー」
「よろしく……ええと、魔神丸」
名を付けてやると、ゴーレムは強く震えて喜びを表した。
「あれ? 喜んでる? ゴーレムってそういうものなの?」
「いや……感情などあるはずはないのであるが……ま、気にせんでもよいでしょう!」
制作者のジーにしても全容が掴めず、混乱しつつグライクの疑問をはぐらかす。
なにしろオリハルコンと漆黒の水蓮で作られたゴーレムなので、常識が通じないのも当然と言えた。
「と、とにかく! これでこのゴーレムはグライク殿の従順な僕となりました! そして我が考案した機能をお見せしましょう――言葉に魔力を乗せて、こう唱えてくだされ――こしょこしょこしょ」
言葉に魔力を乗せる――すなわち言霊を用いることで発動するという特能。
グライクは、教わった通りの呪文を唱えた。
「向壁虚造」
すると、マシンマルはジリジリと小刻みに震えながら、なんとどんどん縮んでいく。数秒後、最終的にグライクの半分ほどの大きさとなった。
「こりゃすごい! とんでもないものを作ったな、ジーよ?」
「カッコいいニャン! ただのクズエルフじゃなかったのニャ!」
「なんと……」
三者三様に驚きを示すショーニン、ファムファとヤマトナ。
「ふふふ、どうです? サイズは最大九百六十セメルから最小ニ十四セメルまで、重さは変わらず常に八百四十キグムです。それから体の一部を武具に変えることもできます」
「すごい……一体どうなってるんです!?」
「それは我が閃きと秘術の為せる技というところでしてな。簡単に言うと、体は数十万のブロックを組み上げて構成しているのですが、その一つひとつのブロックが展開又は縮小が可能であり、配置を相互に変動することにより――ー」
「あ、もう結構です。ありがとうございました」
エルフの秘術など到底理解できそうにないので、グライクは自分から聞いておきながら途中で説明を遮った。ジーは多少不満そうではあったが、疲れと眠気が勝ったのか、それ以上は口を閉じる。
「そうそう、ニ十四セメルまで縮めるには、さすがに複数に分裂させる必要があります。最少で二体、最大で百二十体です。ま、行動を共にするうちに色々分かってくるでしょう。先程の儀式でグライク殿の指示に必ず従うようになっております」
そうして、ついに限界が来たのか、ジーは四人に早口でこう告げた。
「ではこれにて、引き渡しは終了と致しますぞ。また何かありましたらば!」
マシンマルごと追い出された四人は、家の前で顔を見合わせる。
「ま、やることはやってくれたし、寝かせてあげよう」
「さすが若様、懐が広うございますね」
「なんだかんだいい奴だったニャン」
「いつもはもっと扱いにくいんだがな。よっぽど与えてやった物が良かったんだな」
常識外の性能を持つゴーレムをありがたく受け取り、グライクたちは宿へと戻っていくのだった。
この間、グライクたちは第一階層と第二階層に幾度か潜ったり、色々な人に頼まれて予想外の冒険をしたりの毎日を過ごしていた。それについて語るのは後日に譲り、割愛する。
「いやー、まさか四つのクリスタルの塔の楽園伝説は、あの塔の主人が冒険者を集めるために撒いた餌だったとは」
「竜に拐われた姫の救出も大変でした」
「なんだか何度も世界を救った気がするニャン」
ここ何日かの出来事を話し合いながら、グライクたちとショーニンはジーの家までやってきた。ゴーレムが完成したという一報がショーニンを通じて届けられたのだ。
しかし、ジーの家は静まり返っており、扉を叩いても返事はない。怪訝に思いながら、四人は家の中に入っていく。
「ごめんくださ~い」
「出てきませんね」
「……なんか変な音がするニャン」
「奥の方に行ってみるか」
四人が四人とも何か尋常ではない気配を感じつつ、待っていても仕方がないと奥へと進む。そして目にしたのは、予想もしていなかった奇妙な光景だった。
「お、おいジー! 大丈夫かよ!」
「う……ああ、ショーニンか。それにグライク殿たちも……ふふふ、ご依頼のゴーレムはついに完成したぞ……! ご覧あれ!」
そこにいたのは、机に倒れ伏していびきをかくジーと、グライクの倍を超える大きさのゴーレムであった。
オリハルコン製であると一目で分かる黄金のボディ。頑強さと重厚さが溢れんばかりに伝わる堂々たる雰囲気。確かにグライクの注文に応える出来栄えに、四人は息を呑む。
「デカいね! これなら俺たちの盾として十分に役立ってくれそうだ」
「そうですね。しかし、これだけ大きいと、狭い通路を通り抜けられない恐れが……」
「ふはは、心配ご無用! 我が閃いた機能は、まさにそこを解決するものであった。まずは起動させましょうぞ。このゴーレムの主となるグライク殿に、額にある呪文を完成させていただく」
ジーの指示に従い、グライクがゴーレム作りの秘術の最後を締め括る。呪文はほとんど書込み終わっており、残るは最後の一文字だけだった。
「このように……そう、そうです。上手く書けましたな」
「ありがとうございます――おっ!」
書き終えた呪文が煌めき、魔力の奔流が部屋中を駆け巡った後、ゴーレムの目に光が宿った。
「ゴ・ゴ・ゴ・ゴー」
「よろしく……ええと、魔神丸」
名を付けてやると、ゴーレムは強く震えて喜びを表した。
「あれ? 喜んでる? ゴーレムってそういうものなの?」
「いや……感情などあるはずはないのであるが……ま、気にせんでもよいでしょう!」
制作者のジーにしても全容が掴めず、混乱しつつグライクの疑問をはぐらかす。
なにしろオリハルコンと漆黒の水蓮で作られたゴーレムなので、常識が通じないのも当然と言えた。
「と、とにかく! これでこのゴーレムはグライク殿の従順な僕となりました! そして我が考案した機能をお見せしましょう――言葉に魔力を乗せて、こう唱えてくだされ――こしょこしょこしょ」
言葉に魔力を乗せる――すなわち言霊を用いることで発動するという特能。
グライクは、教わった通りの呪文を唱えた。
「向壁虚造」
すると、マシンマルはジリジリと小刻みに震えながら、なんとどんどん縮んでいく。数秒後、最終的にグライクの半分ほどの大きさとなった。
「こりゃすごい! とんでもないものを作ったな、ジーよ?」
「カッコいいニャン! ただのクズエルフじゃなかったのニャ!」
「なんと……」
三者三様に驚きを示すショーニン、ファムファとヤマトナ。
「ふふふ、どうです? サイズは最大九百六十セメルから最小ニ十四セメルまで、重さは変わらず常に八百四十キグムです。それから体の一部を武具に変えることもできます」
「すごい……一体どうなってるんです!?」
「それは我が閃きと秘術の為せる技というところでしてな。簡単に言うと、体は数十万のブロックを組み上げて構成しているのですが、その一つひとつのブロックが展開又は縮小が可能であり、配置を相互に変動することにより――ー」
「あ、もう結構です。ありがとうございました」
エルフの秘術など到底理解できそうにないので、グライクは自分から聞いておきながら途中で説明を遮った。ジーは多少不満そうではあったが、疲れと眠気が勝ったのか、それ以上は口を閉じる。
「そうそう、ニ十四セメルまで縮めるには、さすがに複数に分裂させる必要があります。最少で二体、最大で百二十体です。ま、行動を共にするうちに色々分かってくるでしょう。先程の儀式でグライク殿の指示に必ず従うようになっております」
そうして、ついに限界が来たのか、ジーは四人に早口でこう告げた。
「ではこれにて、引き渡しは終了と致しますぞ。また何かありましたらば!」
マシンマルごと追い出された四人は、家の前で顔を見合わせる。
「ま、やることはやってくれたし、寝かせてあげよう」
「さすが若様、懐が広うございますね」
「なんだかんだいい奴だったニャン」
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