「落ちこぼれ扱い」だった新人冒険者、悪魔の商人からぶっ壊れ性能アイテムを手に入れて無双する/ロー・グライクの奇妙な迷宮探索記

横山剛衛門

文字の大きさ
30 / 39

26.死の軍勢と戦いながら進み、絶体絶命に陥る

しおりを挟む

 銃弾を撃ち切る寸前ギリギリで、ようやく静寂が訪れた。しばらくその場に留まって創造の壺で補充を続け、銃弾を十分に確保しておく。

「かなり危ないところでした。遠距離で戦えるこの武器が手に入っていたのは僥倖でしたね」
「それに、ヤマトナがその武器を扱えたこともね。俺とファムファだけなら、ここで一巻の終わりだったよ」
「いやいや、正直、この中の誰が欠けてもダメだったニャ。こんな幸運なこと、滅多にないニャン」
「ゴ!」

 苦難を乗り越えた後で互いを褒め合い、でへへっと照れ合う三人と一体。
 ゾンビは強さこそそれほどではないものの、一発でも貰えばアウトという異常な緊張感がある。その中にあって、グライクたちにはこれまでにない仲間意識が芽生えつつあった。

「じゃあ、そろそろ行こうか。慎重に、ゆっくり行こう。戦いは極力避けて、もし戦うにしても作戦としては、ほらあれ、有名な『いのちだいじに』だ」
「ええ、そうしましょう」
「警戒は任せるニャ。ゾンビがいたらあたしの毛にビンビンくるニャ」

 またマシンマルが先頭となりゆっくり進んでいく。味方への流れ弾を避けるべくヤマトナがその次、ついでファムファときて、盾をつけていて三人の中では最も堅牢なグライクが危険な殿を務める。
 やはりゾンビが現れることはあったが、先ほどのように大群としてではなく、一体、または二、三体であったので、ゆっくり落ち着いて的確に対処できた。
 しかしその中で、ある懸念が浮かび上がった。

「ゾンビの種類が、どんどん増えていますね……」

 また一体を片付け終えたヤマトナが呟く。そう、ゾンビは人や犬の死体だけでなく、熊やゴブリン、キメラといった魔物の成れの果ても出現するようになっていた。
 魔物のゾンビは同時に現れる数こそ少ないものの、基本的に人とは比べ物にならないほどタフで、一発では倒れない。単発式のみでは危うく、六連発をフルに撃ち込むことも多くなってきていた。

「今度はミノタウルスのゾンビ……第一階層ならボスじゃないか」
「ゾンビは知能が失われる分、そう単純に強さを比べられる話ではないけどニャ」

 ミノタウルスゾンビにはミスリルの弾丸を六発撃ち込んでもまだ足りず、マシンマルが押さえつけたところに動きが鈍ったところを至近距離から散弾で頭を吹き飛ばした。
 この階層は迷宮の名に恥じず、扉を開けるのに仕掛けが必要だったり、釣り天井の罠が仕掛けられた部屋があったり、はたまた行き先に迷う複雑な通路の作りだったりと、一行は存分に苦労を味わわされている。

「なんか、さすがに第四階層って感じだね。これまでも決して楽じゃなかったけど、ここは消耗度が段違いだ」
「一度戻って、態勢を立て直しましょうか?」
「いや、一度出たら次来たときにはまた迷宮の形が変わっていて、最初からやり直しになる。帰るにしても、その前に何かしらの手応えが欲しい」
「手応えって何だニャ?」
「たとえば、ボスの情報とか」

 グライクにとって、この迷宮の攻略はある種の試金石だ。かなりの財宝を得たとはいえ、彼の真の目的からすれば大したことはない。
 足踏みすることはなるべく避けたく、いわばグライクは焦っていた。

「若様、ヤマトナは力を尽くします。ですが、若様のお命は何物にも代えられません。どうか、いざというときにはご自重を」
「ああ、分かってる。それに、みんなの命もおろそかにするつもりはないよ」
「あたしは勝手に助かるから、お構いニャく~」

 束の間の休息を経て、再び一行は足を踏み出した。いくつかの通路と部屋を越えて扉を開くと、そこはこれまでの雰囲気とは異なり、かなり広い空間となっていた。
 ジメジメした土の地面に、岩肌の壁。その壁には蝋燭がかけられていて視界は利くが、どこか禍々しい空気に満ちている。
 そして、その理由はすぐに分かった。

「ここ……地下墓地だ」
「げえええ……あたしのセンサーにビンビン来てるニャ」

 墓地といえば--

「ウウゥゥゥ」
「オオオォォォ」

 地面の下から何本もの手が突き出され、続いて土が盛り上がってゾンビの顔と体が起き上がる。
 それだけでなく、毒々しい色合いの大蜘蛛や半透明のゴーストなど、地下墓地にふさわしい魔物が続々と現れた。

「モンスターハウスニャ!」
「この数、銃弾が足りません!」
「くそ、この数相手じゃどうしようもない! 引き返そう!」

 が、入ってきた扉はバタリと音を立て、堅く閉ざされてしまった。

「しまった、罠か……! くそ、何か手はないか……何か……」

 グライクが考えに没頭する中、ヤマトナの火筒が火を吹き、近くのゾンビを吹き飛ばす。ゴーストには銃弾も剣も効かないので、ファムファが火の玉や聖水を使って成仏させていく。そしてマシンマルが大蜘蛛を叩き潰すが--所詮は多勢に無勢。圧倒的に手数が足りなかった。

「考えろ、考えろ! 持っているアイテムでどうにか切り抜けるんだ--そうだ、今こそアレを使うしかない!」

 そうして顔を上げたグライクの目が捉えていたのは、彼の右手の人差し指に嵌められた、一つの指環--強力な魔精を呼び出すアイテムだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル 異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった 孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。 5レベルになったら世界が変わりました

俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」 主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。 気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。 「あなたに、お願いがあります。どうか…」 そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。 「やべ…失敗した。」 女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

処理中です...