27 / 39
本編
27.白医者3
しおりを挟む
森のだいぶ奥まで行くと、そこにあったのは一軒のログハウスだった。手作り感があるけどなかなか立派なもんで、こんな家に住みたいなーと思わせる良い家だ。
「ここに、その治療師が住んでるだな?」
当然そう思って俺が尋ねると、ゴズは鼻を鳴らして答える。なんじゃ、いちいち気分の悪い反応を。
「いいや、ここにはいない。用心深い奴でな。目的の家はもうもうちょっと奥に行ったところにある。まだ歩くから、一旦ここで休憩しようではないか」
それだけ言って、ゴズはログハウスの中に入っていく。あん? じゃあここはなんなんだ?
それにメズも続き、アビと俺もそうする。
家の中は外見同様立派なもんだったが、あんまり使われていないしく、少し埃っぽくて残念な感じだ。ま、綺麗好きな現代地球と違うこの世界じゃフツーの範疇だけど。
「適当にかけてくれ。茶を淹れてくる」
ギルドマスターのメズに気を遣ったのか、ゴスが雑用をやるようだ。俺とアビも遠慮なく座らせてもらい、待つことにする。
見回してみると、飾られているものから得られる特段の情報もなく、ここがなんなのか益々よく分からなくなってくる。
「ここのことが気になっているようですね。説明もせず、失礼しました」
俺が首を傾げているのを察したのか、声をかけてきたのはメズだ。おう、聞かせてもらおうやんけ。
「ここは我々がセーフハウスと呼んでいる、冒険者ギルドの施設です。匿う必要のある人や隔離したい人などをここで保護するのです」
「じゃあ今回狙われている治療師とやらもここにいるべきだなんじゃないの?」
俺の当然の疑問に、メズは首を横に振って答える。
「普段ならそうするのですが、彼女の家の方がずっと奥にあるんです。なので、むしろそのまま家にいてもらった方が安全と考えまして」
「無論、向こうには我々の護衛が付いている。そう簡単にやられはせんだろう」
奥からティーポッドを運んできたゴスが補足する。やたら淹れるの早いな。
手早く四人分のカップに注いで、それを回してひと息入れる……あん? 何か違和感が……これは……
「お味はいかがですか? ゴズはいれるのが上手と評判なんです。人は見かけによらないものですね?」
「いやいや、褒められるほどじゃありません」
妙な感じに微笑みながら言ったメズに、ゴスが嫌そうに答える。こんなゴツいのに手先は器用なんかしらん? 確かになかなかのお味だ。
ふと横のアビを見ると、やっぱりなんか違和感があったようで変な顔をしていた。だよね? これ、なんだろか。
しばらくそうして休んで、俺達は出発することにする。この先数時間だそうで、日のあるうちに着きたいし、モンスターが出ることも考えると急いだ方がいい。
***
「おらよっと!」
前後から挟んで襲ってきた猿のモンスター・ダークモンキーズを、前はゴズの斧が、後ろは俺が魔剣でぶった斬る。素早さと攻撃力はまずまずだが、防御はさっぱりなんで片付けるのも軽いもんだわ。
てか、この森のモンスターって、攻め全振りで守りは紙なのばっかだな。
森を行く途中で何度か、こんな感じでモンスターに襲われたが、北海岸の洞窟でイフリートのマリードを斬り伏せてきた俺には、まるで相手にならん。
ゴズも相変わらず全く危なげない戦いぶりだったけど、俺の戦いを見る目はかなりビビりが入ってた。冒険者なりたてのD級ライセンスの俺がこんなとは思わなかったんだろう。へん、見たかってんだ。
「素晴らしい腕前ですね。これほどまでとは思いませんでしたよ……本当に」
それにしても、メズの褒め方は気持ちいいね。すっと心に入ってくるよ。なんてことない言葉なのに、ちょっとおかしいくらいだ……うん、なんかおかしい。やっぱおかしい。
「いやいやそれほどでも。アビもなかなかのもんなんだけどね」
そう言ってアビを見ると、なんだか顔色が青くて具合が悪そうだ。そういえばさっきから全然戦いに参加してないし、フラフラしてる。
「おいおい、大丈夫か? 水飲む?」
そう言って近づくと、アビはちょっとだけこっちに首を向けて、それから崩れ落ちるように倒れてしまった。
「アビ? アビ! おい、しっかりしろ!」
慌てて抱き止めると、汗びっしょりでかなり体温が高い。おいおい、まじでヤバそうだ。
「おい、一回戻ろう! なんか変な病気になったかも!」
「その必要はありません。目的地はもうすぐそこですから」
やけに落ち着いた声でメズは言った。あん? なんだ、この態度は。こちとら大事なパーティメンバーが倒れてんだぞ。
イラっとして声を出そうとした時、俺の心臓がバクンと強く鳴った……あれ?
「ようやく効いてきたようですね。まったく、私の【魅了】も効かないようですし、冷や冷やしましたよ」
頭がガンガンしてきて、メズから何を言われているのか理解できない。あ、俺もかなり汗だくになってる。
「一服……盛った……な……」
そこまで言って、俺の意識は途絶えた。
「ここに、その治療師が住んでるだな?」
当然そう思って俺が尋ねると、ゴズは鼻を鳴らして答える。なんじゃ、いちいち気分の悪い反応を。
「いいや、ここにはいない。用心深い奴でな。目的の家はもうもうちょっと奥に行ったところにある。まだ歩くから、一旦ここで休憩しようではないか」
それだけ言って、ゴズはログハウスの中に入っていく。あん? じゃあここはなんなんだ?
それにメズも続き、アビと俺もそうする。
家の中は外見同様立派なもんだったが、あんまり使われていないしく、少し埃っぽくて残念な感じだ。ま、綺麗好きな現代地球と違うこの世界じゃフツーの範疇だけど。
「適当にかけてくれ。茶を淹れてくる」
ギルドマスターのメズに気を遣ったのか、ゴスが雑用をやるようだ。俺とアビも遠慮なく座らせてもらい、待つことにする。
見回してみると、飾られているものから得られる特段の情報もなく、ここがなんなのか益々よく分からなくなってくる。
「ここのことが気になっているようですね。説明もせず、失礼しました」
俺が首を傾げているのを察したのか、声をかけてきたのはメズだ。おう、聞かせてもらおうやんけ。
「ここは我々がセーフハウスと呼んでいる、冒険者ギルドの施設です。匿う必要のある人や隔離したい人などをここで保護するのです」
「じゃあ今回狙われている治療師とやらもここにいるべきだなんじゃないの?」
俺の当然の疑問に、メズは首を横に振って答える。
「普段ならそうするのですが、彼女の家の方がずっと奥にあるんです。なので、むしろそのまま家にいてもらった方が安全と考えまして」
「無論、向こうには我々の護衛が付いている。そう簡単にやられはせんだろう」
奥からティーポッドを運んできたゴスが補足する。やたら淹れるの早いな。
手早く四人分のカップに注いで、それを回してひと息入れる……あん? 何か違和感が……これは……
「お味はいかがですか? ゴズはいれるのが上手と評判なんです。人は見かけによらないものですね?」
「いやいや、褒められるほどじゃありません」
妙な感じに微笑みながら言ったメズに、ゴスが嫌そうに答える。こんなゴツいのに手先は器用なんかしらん? 確かになかなかのお味だ。
ふと横のアビを見ると、やっぱりなんか違和感があったようで変な顔をしていた。だよね? これ、なんだろか。
しばらくそうして休んで、俺達は出発することにする。この先数時間だそうで、日のあるうちに着きたいし、モンスターが出ることも考えると急いだ方がいい。
***
「おらよっと!」
前後から挟んで襲ってきた猿のモンスター・ダークモンキーズを、前はゴズの斧が、後ろは俺が魔剣でぶった斬る。素早さと攻撃力はまずまずだが、防御はさっぱりなんで片付けるのも軽いもんだわ。
てか、この森のモンスターって、攻め全振りで守りは紙なのばっかだな。
森を行く途中で何度か、こんな感じでモンスターに襲われたが、北海岸の洞窟でイフリートのマリードを斬り伏せてきた俺には、まるで相手にならん。
ゴズも相変わらず全く危なげない戦いぶりだったけど、俺の戦いを見る目はかなりビビりが入ってた。冒険者なりたてのD級ライセンスの俺がこんなとは思わなかったんだろう。へん、見たかってんだ。
「素晴らしい腕前ですね。これほどまでとは思いませんでしたよ……本当に」
それにしても、メズの褒め方は気持ちいいね。すっと心に入ってくるよ。なんてことない言葉なのに、ちょっとおかしいくらいだ……うん、なんかおかしい。やっぱおかしい。
「いやいやそれほどでも。アビもなかなかのもんなんだけどね」
そう言ってアビを見ると、なんだか顔色が青くて具合が悪そうだ。そういえばさっきから全然戦いに参加してないし、フラフラしてる。
「おいおい、大丈夫か? 水飲む?」
そう言って近づくと、アビはちょっとだけこっちに首を向けて、それから崩れ落ちるように倒れてしまった。
「アビ? アビ! おい、しっかりしろ!」
慌てて抱き止めると、汗びっしょりでかなり体温が高い。おいおい、まじでヤバそうだ。
「おい、一回戻ろう! なんか変な病気になったかも!」
「その必要はありません。目的地はもうすぐそこですから」
やけに落ち着いた声でメズは言った。あん? なんだ、この態度は。こちとら大事なパーティメンバーが倒れてんだぞ。
イラっとして声を出そうとした時、俺の心臓がバクンと強く鳴った……あれ?
「ようやく効いてきたようですね。まったく、私の【魅了】も効かないようですし、冷や冷やしましたよ」
頭がガンガンしてきて、メズから何を言われているのか理解できない。あ、俺もかなり汗だくになってる。
「一服……盛った……な……」
そこまで言って、俺の意識は途絶えた。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる