我が魂よ最強を求むることなかれ。ただ自由の限界を汲み尽くせ!

横山剛衛門

文字の大きさ
26 / 39
本編

26.白医者2

しおりを挟む
 それからメズは、自分達冒険者ギルドが抱える事情を詳しく教えてくれた。
 まず、最近になってこの島に住む回復魔法の使い手が次々姿を消し始めた。彼らの家などに血痕やもみ合いの跡があった為、これは人為的なものだと思われる。
 元々これら治療師の数は少なかった為、残るは街の近くの森に住む一人だけ。彼女を保護すべく一時的な街への移住を要求したが、断られてしまい、現在ギルド職員及び依頼を受けた冒険者が近辺警備中。
 そうして犯人のアテもないところに俺達が現れ、回復魔法の使い手について話を持ち出した為、思いっきり警戒された、というわけだそうだ。

「そんな所に正面からのこのこ犯人が来るこたないでしょ。我々はシロですよシロ」

「ええ、そう思います。それに、私にはあなた達が無関係だと分かるのです。先ほどは奥にいて、ゴズを止めるのが遅れてしまいました。申し訳ありません」

 ふーん。ま、犯人じゃないって信じてくれるならいいけどさ。てか、俺達が違うって分かるのは、どういう理由なんだ?
 アビを見てみると、同じ疑問は感じつつも、心当たりはあるようだ。それとなく目線で説明を促すと、彼女からメズに聞いてくれる。

「判断の理由というのは、あなたはテレパシストなんでしょうか? あるいは『心眼』系のテクネの使い手とか? それとも……」

「残念ながらそれは明かせませんが、そのようなものと思ってくださって結構ですよ」

 顔はニコリと微笑みながら、しかしハッキリとした拒絶の態度で、メズは答えた。
 アビとしても必ずしも答えをもらえるとは思っていなかったようで、仕方ない、というように肩をすくめて俺を見る。
 そういう個人の能力ってのは、プライベート情報的なもんなのかもな。地球だって知らない人にズバズバ自分のこと教えたりしないし。
 さて、あちらの事情は分かったが、それをわざわざ俺達に話した理由はまだだ。そこんとこ、ヨロシク。

「それで、私達にどうしてほしいのですか?」

「冒険者ギルドからの指名依頼を発行します。森の治療師を守り、犯人を捕らえてください」

 そこで一度言葉を区切って、メズはニコリと微笑む。

「北の洞窟に潜んでいた邪悪な精霊を打ち破ったあなた方にならば、この依頼を果たしていただけると見込んでおります。いかがでしょう?」

 おお、そこまで分かっているのか。
 俺達が犯人じゃないと分かるっていうのは、正直なところ口ではなんとでも言えることであり、半信半疑だった。
 しかし、北の洞窟の話はまだ誰にもしていない。それを知っているなら、メズには真実を見抜く何かしらのチカラがあるってのは本当何なんだろう。

「じゃあ、報酬として回復術を俺の仲間にかけるようにしてくれ。できれば前払いで」
 
「はい、承りました」

 またニコリと微笑んで、メズが右手を差し出す。俺もまた右手を差し出して、ガッチリ握手する。交渉成立。やってやりましょう。

 ***

 そんなわけで、まずは治療師の所へ連れて行ってもらうことになった。
 ゴズ、メズ、マナ、俺の順で付かず離れずの距離を保ちながら森の獣道を行く。
 これは、不意のモンスターとの遭遇に対応しつつ、各人が一挙に罠などにハマらないようにする基本陣形だ。
 一番危険な先頭は、案内役のギルド側二人のうちゴズが受け持ってくれた。また、奇襲を真っ先に受けるし襲われた時に気付かれにくい一番後ろ、殿しんがりは俺が担当する。
 メズも立候補してくれたが、そこはある理由で断っている。向こうも分かっていて引き下がったのかもな。
 後ろからふと見ると、ゴズとメズ共に白い腕環を身に付けている。これまでは袖とかで隠れてて気付かなかった。ギルド職員の印は指環だし、なんだろな。

「敵だ。気を付けろ」

 と、先頭のゴズから声がかかる。そのゴスは得物の戦斧を構えて、既に戦闘態勢に入っている。
 ほどなくして木の上に現れたのは、鋭い牙と爪を持つ猫系のモンスター、ホワイトピューマだ。しなやかな体つきからして、スピードが最大の武器だな。
 まずアビが矢を放って先制攻撃する。それは見事太ももに突き刺さって機動力を奪うことに成功。痛みに怒りの咆哮を上げたモンスターは、木の枝を伝って近づいてくる。
 そして飛び降りて襲いかかってきたところを、ゴズの斧が迎え撃った。
 ズバンと景気のいい音がして、猫の首が転がる。それであっという間に決着がついた。
 いやいや、そんな正面から来たって無理だろ。やるなら、肉食動物らしく奇襲しないと。

「一発で決めるなんて、やるじゃん」

「ふん、こう見えてB級ライセンス持ちなんでな」

 俺の上から目線のコメントにややイラついた様子で答えるゴズ。ふーん、B級ね。俺がD級だってのは知ってるから、メズに頼られてるのもあってなおさら面白くないんだろうな。
 なんとなく不協和音を感じつつ、俺は森の更に奥へと向かうのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...