25 / 39
本編
25.白医者
しおりを挟む
なんとか宿まで連れて帰ったズーニーは、思ったよりも重傷だった。
あ、俺のせいじゃないよ? 全身にくまなく受けていたマリード戦のダメージが深かったのである。よくこんな状態で戦っていたなってくらいボロボロだ。
うーん、これだとさすがに一緒にユーエスエイに旅立つのは無理だな。けど治るのをただ待ってるのはあまりに時間がかかる。
「治療師を探しましょう。この島にいるかは分かりませんが……」
アビが言うには、回復系魔術を使える人は相当レアらしく、かなり高額のギャランティで有力者に雇われてる場合がほとんどだとか。
見つかるかどうか分からんし、いても来てくれるか分からん、それに出発も遅れるが、もちろん仲間をほっぽり出すわけにはいかん。
「じゃ、手分けして探しにいくか。マナはズーニーについていてくれ。幽霊が来たんじゃみんな驚いちまうからな」
「しょーがないわね。任しときなさい」
ここで、熱にうなされていた当のズーニーがガバリと起きてこう言う。
「これしきの傷、寝ておれば治るわ。先を急ぐなら置いて行け。我輩の力を持ってすれば、ユーエスエイなどひとっ飛びよ。さあ、グズグズするでない」
強がっちゃってまぁ。いつもはあれだけど、こういうのは可愛く思えるね。
「いーんだよ、俺らが勝手にやることなんだから。それにズーニーの力が必要になるかもだし、一緒にいてくれなきゃ困るんだ。チャチャっと済ましてくるからよ、待っててくれやい」
隣に立つアビも、笑顔で俺の言葉に頷いている。いい子だよホント。
そんなわけで俺とアビは宿を出て、まずは街の中で情報収集することにした。一応宿の人にも聞いたけど、傷病はいつも薬草を採ってくるか寝て治すということで、お礼を言って終わりだった。
さあ、地球なら病院とか治療施設を探すところだけど、そんなのがあるなら苦労しない。次に思いついたのは案内所とか冒険者ギルドとかの情報が集まる所。
案内所より冒険者ギルドの方がすぐ見つかったので、そこへアビと連れ立って行く。第一情報を探してる段階の今は、まだ二手に分かれるべきじゃない。
「ごめんくださいなっと」
レンガを積んで作られたギルドの建物に入ると、手前にはやっぱり定番の酒場、奥に受付カウンターがある。
とりあえず受付かな。
「こんちは、ちょっと聞きたいことがあるんだけど、いいかな」
「はい、どうぞ~。私が伺いますねぇ」
白黒の毛が生えた耳の獣人ガールは、長閑なこの島らしいのんびり具合で応えてくれる。
ちなみになんの獣人だろ……分かった、牛だな。ある種の特徴で分かるよね。
「この島に、回復魔法の使い手っています?」
俺がそう言うと、受付嬢の顔色がさーっと青くなった。ふと気付くと、酒場にいる人達の雰囲気も変わっている。
「えーっと、どんな御用でしょうか~。内容によってはーー」
「逮捕ってことになるんですがね……!」
受付嬢の言葉を引き継いだのは、いつの間にか俺の背後に立っていた大男だった。
こいつも牛の獣人か。やたらとイカツいので、獣人ってか地獄の獄卒、牛頭みたいだ。
見た感じ、ここの警備役かな?
「いや、単に仲間が怪我でダウンしててさ、助けてほしいんだけど」
素直にこっちの状況を伝えても、あまり雰囲気は変わらない。張り詰めた空気ってヤな感じ。
牛頭さん(と呼ぶことにする)は金棒でポンポンと手を叩きながら、尋問を続ける。
「あー、そういう要件なら諦めた方がいいんではないかな。ほら、帰りな。それとも、どうしても治療師に会いたい理由でもあるのかな? うん?」
目つき悪いぞ、この牛頭さん。それに仲間を助けるのに必要だっつってんだろがいや。
「どうしても必要なんだなーこれが。邪魔しないでくれるか?」
俺と牛頭さんの間にピリピリした空気が流れる。なかなかの腕前っぽいが、仲間の為とあっちゃこっちも引けない。
「お待ちなさい、ゴズ。その方は本件と無関係のようです。私が対応しましょう」
ここで割って入ってきたのは、髪をポニーテールにした女性だった。今の空気にも動じないとはいい度胸してるぜ。
てか、ホントにゴズって名前であってるんかい。
「私はこのギルドのマスターを務めております、メズと申します。ゴスのご無礼、お許しください。ですが、今はそうするのも致し方ないだけの事情があるのです。その理由をお話しさせていただきますので、どうぞこちらへ」
ここのトップってわけか。道理で堂々としてる。
ゴズも殺気を収めて苦笑いを浮かべている。俺も肩をすくめて、これでチャラ。
さて、気を取り直していくかね。
***
ギルドマスターの執務室に案内された俺とアビは、テーブルを挟んでメズと向かい合う。
一緒についてきたゴズもメズの後ろに立っている。まだ警護役がいるって思ってんのか?
「あなた達は島の住人ではないですね。もしそうなら、今のような状況にはなっていないはずですから」
「俺達はユーエスエイ本土に行く旅の途中で、島に来たのは数日前だ。ここの事情なんか知らん。さっきも言ったけど、仲間が怪我したんで治してもらいたいだけだ」
メズは俺の言うことを信じているらしい。微笑みながら頷くので、こっちも素直に話の続きを待つ。
「今この島では、回復系魔術の使い手が次々と姿を消しているのです。残るは、森に住む"白医者"のみ。彼女はどうあっても守らねばなりません」
ほう、なんか物騒な話が出てきたぞ。
あ、俺のせいじゃないよ? 全身にくまなく受けていたマリード戦のダメージが深かったのである。よくこんな状態で戦っていたなってくらいボロボロだ。
うーん、これだとさすがに一緒にユーエスエイに旅立つのは無理だな。けど治るのをただ待ってるのはあまりに時間がかかる。
「治療師を探しましょう。この島にいるかは分かりませんが……」
アビが言うには、回復系魔術を使える人は相当レアらしく、かなり高額のギャランティで有力者に雇われてる場合がほとんどだとか。
見つかるかどうか分からんし、いても来てくれるか分からん、それに出発も遅れるが、もちろん仲間をほっぽり出すわけにはいかん。
「じゃ、手分けして探しにいくか。マナはズーニーについていてくれ。幽霊が来たんじゃみんな驚いちまうからな」
「しょーがないわね。任しときなさい」
ここで、熱にうなされていた当のズーニーがガバリと起きてこう言う。
「これしきの傷、寝ておれば治るわ。先を急ぐなら置いて行け。我輩の力を持ってすれば、ユーエスエイなどひとっ飛びよ。さあ、グズグズするでない」
強がっちゃってまぁ。いつもはあれだけど、こういうのは可愛く思えるね。
「いーんだよ、俺らが勝手にやることなんだから。それにズーニーの力が必要になるかもだし、一緒にいてくれなきゃ困るんだ。チャチャっと済ましてくるからよ、待っててくれやい」
隣に立つアビも、笑顔で俺の言葉に頷いている。いい子だよホント。
そんなわけで俺とアビは宿を出て、まずは街の中で情報収集することにした。一応宿の人にも聞いたけど、傷病はいつも薬草を採ってくるか寝て治すということで、お礼を言って終わりだった。
さあ、地球なら病院とか治療施設を探すところだけど、そんなのがあるなら苦労しない。次に思いついたのは案内所とか冒険者ギルドとかの情報が集まる所。
案内所より冒険者ギルドの方がすぐ見つかったので、そこへアビと連れ立って行く。第一情報を探してる段階の今は、まだ二手に分かれるべきじゃない。
「ごめんくださいなっと」
レンガを積んで作られたギルドの建物に入ると、手前にはやっぱり定番の酒場、奥に受付カウンターがある。
とりあえず受付かな。
「こんちは、ちょっと聞きたいことがあるんだけど、いいかな」
「はい、どうぞ~。私が伺いますねぇ」
白黒の毛が生えた耳の獣人ガールは、長閑なこの島らしいのんびり具合で応えてくれる。
ちなみになんの獣人だろ……分かった、牛だな。ある種の特徴で分かるよね。
「この島に、回復魔法の使い手っています?」
俺がそう言うと、受付嬢の顔色がさーっと青くなった。ふと気付くと、酒場にいる人達の雰囲気も変わっている。
「えーっと、どんな御用でしょうか~。内容によってはーー」
「逮捕ってことになるんですがね……!」
受付嬢の言葉を引き継いだのは、いつの間にか俺の背後に立っていた大男だった。
こいつも牛の獣人か。やたらとイカツいので、獣人ってか地獄の獄卒、牛頭みたいだ。
見た感じ、ここの警備役かな?
「いや、単に仲間が怪我でダウンしててさ、助けてほしいんだけど」
素直にこっちの状況を伝えても、あまり雰囲気は変わらない。張り詰めた空気ってヤな感じ。
牛頭さん(と呼ぶことにする)は金棒でポンポンと手を叩きながら、尋問を続ける。
「あー、そういう要件なら諦めた方がいいんではないかな。ほら、帰りな。それとも、どうしても治療師に会いたい理由でもあるのかな? うん?」
目つき悪いぞ、この牛頭さん。それに仲間を助けるのに必要だっつってんだろがいや。
「どうしても必要なんだなーこれが。邪魔しないでくれるか?」
俺と牛頭さんの間にピリピリした空気が流れる。なかなかの腕前っぽいが、仲間の為とあっちゃこっちも引けない。
「お待ちなさい、ゴズ。その方は本件と無関係のようです。私が対応しましょう」
ここで割って入ってきたのは、髪をポニーテールにした女性だった。今の空気にも動じないとはいい度胸してるぜ。
てか、ホントにゴズって名前であってるんかい。
「私はこのギルドのマスターを務めております、メズと申します。ゴスのご無礼、お許しください。ですが、今はそうするのも致し方ないだけの事情があるのです。その理由をお話しさせていただきますので、どうぞこちらへ」
ここのトップってわけか。道理で堂々としてる。
ゴズも殺気を収めて苦笑いを浮かべている。俺も肩をすくめて、これでチャラ。
さて、気を取り直していくかね。
***
ギルドマスターの執務室に案内された俺とアビは、テーブルを挟んでメズと向かい合う。
一緒についてきたゴズもメズの後ろに立っている。まだ警護役がいるって思ってんのか?
「あなた達は島の住人ではないですね。もしそうなら、今のような状況にはなっていないはずですから」
「俺達はユーエスエイ本土に行く旅の途中で、島に来たのは数日前だ。ここの事情なんか知らん。さっきも言ったけど、仲間が怪我したんで治してもらいたいだけだ」
メズは俺の言うことを信じているらしい。微笑みながら頷くので、こっちも素直に話の続きを待つ。
「今この島では、回復系魔術の使い手が次々と姿を消しているのです。残るは、森に住む"白医者"のみ。彼女はどうあっても守らねばなりません」
ほう、なんか物騒な話が出てきたぞ。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる