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本編

24.悪神討つべし3

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 ドガーン!と部屋が震えるくらいのでっかい音がして、俺はそっちの方を振り返った。
 目に入ってきたのは、ズーニーが吹っ飛ばされて壁に突っ込むところだ。
 おいおい! あのズーニーがやられたのなんて初めてじゃないか。ガラガラ崩れる破片の中から起き上がった彼女の姿は、まだまだ余裕そうだけども。

「ふぅぅぅ……やってくれるな。楽には死なさんぞ」

「グハハハ、好キナダケホザケ」

 お互いの口調も相まって、俺とはかなり雰囲気の違うハードで古風な世界が展開されてるな。
 こっちはもうすぐ片付く。早く助太刀したほうがいいのかしらん。

「イヌイよ、こちらのことは気にするでない。見ておれよ」

 あ、そう。
 たった今もう一体をぶった斬って、こっちはいよいよ残り一体。でもまた増えないとも限らないし、警戒に当たるかね。

「ぬううぅぅ!」

「グオオオオオ!」

 怪獣大決戦みたいな大迫力の衝突が繰り返され、ズーニーもマリードも両者譲らぬ激しい戦いが続いている。
 この世界に来て見た中で最大最高の闘いぶりだな。これ、こっちの世界的にも相当上位の実力者同士なんじゃないの?
 ……ヤバい、こんなの見せられたら、我慢できんわ。なんとか俺も混ぜてもらいたい。
 でもズーニーは許してくんなさそうだし、後のことを考えるとこんなワガママで仲違いするのはな……
 お、閃いた。
 まずはイフリートとズーニーの間に位置取りして、と。それから、来た来た、迫り来る炎をサッと避けてーー

「ズーニー、危ない!」

「ん? ーーぬああああ!?」

 イフリートの放った炎が、ズバーンとズーニーの頭に炸裂する。さすがにこのレベルのモンスターの攻撃で急所を不意打ちされたら、いくらズーニーでも効くよね。
 ま、それだけだとちょっと不安だったから、俺も手元が狂ったふりして石を投げたんだけど。
 サクッと最後のイフリートを葬ってから、ズーニーに駆け寄る。マリードも近づけないようにしておかなきゃ。

【イヌイは 遠天打ち を放った!】

 マリードは俺のテクネを受けて吹っ飛んでいく。よしよし、今のうちに小芝居を完成させよう。

「ああ、ズーニー! なんてことだ、俺がイフリートを抑えきれなかったばっかりに……こうなっては仕方ない、後のことは任せとけ!」

「う、ううぅ、ま、待てーーあうっ……!」

 起き上がられる前に、抱えていたズーニーの体をちょっとだけ乱暴に地面に転がし、俺は右手で握った魔剣をマリードに向けて突きつける。

「不慮の事故で倒れたズーニーに代わり、やむなく俺がお前の相手になる! ズーニーの積年の恨み、晴らさでおくべきか!」

「グハハ、世迷言ヲ。貴様ナドガ我ノ相手ニナルト思ウテカ」

 剣を構えた俺は、高笑いしているマリードに向かって一歩で飛び込む。

「ナント安易ナ!」

 当然、超反応で拳が向かえ撃ってくるがーー

【イヌイは 秘術・裏街道抜き を使った】

 以前マキノにも使ったテクネで背後を取り、がら空きの背中に一閃お見舞いする。

「グオオオオオ⁈」

「はい残念! そんでこいつはオマケだ」

 マリードは精霊の一種らしく、肉の体を持たないこの種族に効果的な一撃を与えるには、特有の弱点を突いてやる必要がある。

【イヌイは 精霊斬り を放った!】

 その弱点とはズバリ、へその下あたり。首でも心臓でもなく、気の溜まる丹田というところだ。
 まあ、人間でもお腹ぶっ刺されたらダメなのは一緒だけども……

「グギャアアアアアァァァァァーーーー」

 断末魔を残して、マリードの体は消え去っていく。おいおい、もう終わりかい。
 ……あ、そうか。俺の魔剣は斬った相手の魔力を吸い取る。ということは、魔力で出来てる精霊なんかには致命的な効果のある武器なんだ。
 あー、失敗した。もっと楽し……もとい、激しい戦いになると予想してたのに、拍子抜け……もとい、肩の力が抜けちゃったなー。

「イ、イヌイ……やってくれたな……」

 地べたを這い、ズーニーがずりずり近寄ってくる。う、怖え。これは、さっき俺がわざと割り込んだのがバレてるか?

「さ、三度までだ。我輩への無礼は、三度までは許そう。そして、これが、一つ目だ……いいな……?」

「はあい……」

 バレてた。ま、しゃーない。
 ごめんなさい! 今後はズーニーを敵に回さないようにちゃんとします。誓います。

「起きられる? アビ達が待ってる。行こう」

「ぐ、だ、大丈夫だ」

 ズーニーを助け起こし、肩を貸してやって部屋から出ようと歩いていく。
 とにかく、目的はバッチリ果たせた。悪神退治はもとより、この栄光の腕環があればユーエスエイの怪獣問題の解決も楽になるかもしれないんだから、上々の出来だろ。

 ***

 アビ達と合流できたのは、それからすぐだった。分かれ道の所で待っていたのにこっちの戻りが遅いのを気にして、追ってきていたのだ。
 事情を話すとこっぴどく怒られたが、それも仕方ない。実際、あの場にいたら身の安全は保証できなかったかもだし。
 いや、当然、そんときゃそん時で全力で守ったけどね?

「ぐすっ……もう、もっと私達を信じてください。仲間なんですから……!」

 すまんな、アビ。
 アビに預けていた、休憩室になる指環の中にズーニーを入らせて、街へと帰る。
 さてさて、明日からいよいよ皆揃って冒険だ!
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