我が魂よ最強を求むることなかれ。ただ自由の限界を汲み尽くせ!

横山剛衛門

文字の大きさ
7 / 39
本編

7.彼女の秘密

しおりを挟む
「イヤァァァ!」

 朝、俺を起こしたのはそんな絶叫だった。
 ベッドを取られてソファで寝てたんだけど、結構硬くてあんまりよく眠れなかったのに、この目覚めは辛すぎる。

「あ、おはよー、アビちゃん。よく眠れーー」
 
「あ、あ、あなたは昨日の……! せ、せ、責任、取ってもらいますからね!」

 布団を体に巻きつけながら、顔を真っ赤にしてもう一度叫ぶエルフ娘。

「えと、別になんもなかったよ? 君、部屋に着いた途端に寝ちゃったし」

「じゃあなんで裸なんですか私! おかしいじゃないですか! は、初めてだったのに……」

 大丈夫、まだ初めてだから。つっても全然信じないので、マジで困ってしまった。
 とりあえず朝ごはんを食べようと宿から出る時も、「昨夜はお楽しみでしたね!」的なことを受付で言われる始末。
 うおいやめろ、「やっぱり!」みたいな目でアビゲイルに超睨まれるから。

 朝食を食べさせてくれる食堂だかカフェだかみたいな店に腰を落ち着けると、アビゲイルは開口一番こう言った。

「とにかく、責任を取ってもらいます。今日から私とパーティを組んで、最終的にはある依頼を達成してもらいますから」

 そういう持ってき方は予想してた。もしかして、もともとそういうつもりだった? ……違うか、本気でなんかあったと思い込んでる顔だよこれは。

 「分かったよ。なんもしてないってのは本当だけど、そもそもそっちの話を聞こうとしてああなったんだし」

 適当に注文しつつそう答えると、アビゲイルの顔はパッと明るくなった。

「あ、ありがとうございます……! 実は、自分じゃどうにもならない問題があって、しばらくヤケになってたんです。覚えてないんですけど、ご迷惑とかおかけしてしまってたりします? ごめんなさい」

 素直な良い子じゃん。酔ってる時と大違い。

「いやまあ、お互い過去は忘れて仲良くしてやってこ。これからは運命を共にするパーティなんだし」

「う、運命を……共に……そんなぁ。あ、過去は忘れないですけど、よろしくお願いします」
 
「結構アレだね、いい度胸だよね君。とにかく、まずは何があったかから聞かせてくれるかな」

 そうして、俺はアビゲイルーーアビと呼ぶことになった初めてのパーティメンバーの事情を聞いていった。

 ***

 アビは元々、出身国のユーエスエイ帝国をホームにして活動する冒険者だったらしい。
 B級まで昇格しただけあってそれなりの実力で知られてたんだけど、そんなある日、ある依頼が舞い込んだという。
 それは、ユーエスエイ領各地で発生するようになった巨大なモンスター、通称「怪獣」の討伐と、そのための情報収集だった。

「まずは直接この目で確認しようと、怪獣が出現したという話を聞いてすぐ見にいったんですけど……倒せるとはとても思えないくらい大きすぎて……それで文献を当たったところ、ここジャーポネでも過去に怪獣が出現したことがあったっていう記録を見つけたんです」

 怪獣。ジャーポネ。なんか馴染みがある。嫌いじゃないよ。

「それで、単身海を渡って来たんですが……怪獣が出たのは相当昔のことだけあって、まだあまり情報を掴めていません。こうしている間に、故国の民草に被害が出ていると思うと気が気じゃなくて」

 それで呑んだくれてしまったと。よろしくないよ、酒に逃げるのはさ。

「じゃあ、俺も一緒に記録を探す? あんまりっつうか全然アテはないんだけど」

「いえ、実は一つだけ、手がかりになりそうなことが分かってるんです。でも、それは私一人の手には負えなくて。イヌイさんには、ある迷宮に一緒に行ってもらいたいのです」

 にゃるほど? 迷宮とかダンジョンとか、異世界ファンダジーの王道として俺も興味はある。お互いwin-winじゃん。

「分かった、そこに行こう。でも、なんで他の人じゃダメだったの?」

「それはですね、その迷宮……かなり難度が高いのに、全然実入りがないんです。普通なら、何かしらの財宝が置かれてるとか倒したモンスターから素材が取れるとかのメリットがあるんですけど」

 それがサッパリだから、誰も誘いに乗らなかったと。アビはこっちに知り合いもいないだろうしね。
 目的の迷宮はこの街のすぐ近くだそうで、徒歩で行く半日かからないらしい。
 なので、今日は一日準備に当てて、明日朝から出発することにする。迷宮攻略にはおそらく二、三日かかるのでは、という見込みだそうだ。

「じゃ、まずは先立つ物がないとね」

「それが、私はもうほとんどお金を使ってしまっていて……」

 大丈夫、俺には前に村で手に入れた商業ギルド手形があるのだ。
 朝飯を食べ終わった後、半信半疑のアビを連れて商業ギルド支部に行き、窓口で現金化してもらう。
 と思ったらにわかに職員さんがバタバタし始め、俺達は奥の部屋に通されて、しばらく待たされることとなった。

「大変お待たせいたしました、当商業ギルド支部長のトードウと申します。お持ちになった手形は確かに承りましたが、なにぶん額が額なものでして、こちらでご確認いただきたく思います。では」

 後から部屋に入ってきた偉めな感じの男がそう言うと、続いて職員さんがお盆に山盛りの金貨銀貨を持ってきた。
 げ、手形見てもよく分からんかったけど、こんなになるの? 

「わ、これならなんとか必要物資の購入分は足りそうですね。よかったー、ありがとうございます!」

 そして、こんだけあってもなんとか間に合うってレベルなの、アビちゃん? 冒険者用のアイテムってどんだけ高いんだろうか。

 商業ギルドを出て、アビちゃんの案内でいくつか店を回る。
 魔術仕立ての飲み薬ポーションや毒消し草その他回復関係、松明など消耗品、食料に飲み水、武器防具といった装備品、エトセトラエトセトラ。
 なるほど、こりゃ金がかかるわけだ。
 仲間になるので、アイテムボックスがあることを伝えると、アビちゃんは大いに驚きつつ、とても喜んだ。
 うんうん、こんなに人力で運ぶのは辛いからね。
 そんなこんなで日も暮れて、明日への活力を備えるべく美味しいお店でいいものを食べた後、ぐっすり寝たのでした。
 あとやっぱ、異世界料理は最高っす。特に、牛と山羊を足して割ったような味だったウギとかいう動物の骨付き肉焼き、好き。大好き。
 帰ってきたらまた行こっと。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...