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~ドグマ大陸の争乱篇~

~皇国レミアム争乱編~ 走牙

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 白き竜王ズフタフとは、竜族の故郷である覇界の一部分を支配する竜王である。正式名称は、聖竜王ズフタフ…覇界の勢力の一つの法天空の長。ズフタフは人の言葉を正しく理解し、将軍アイゼンとは深い絆で結ばれていた。その力は壮絶なまでに、誰一人寄せ付ける事のないものがあった。将軍アイゼンの苛烈な性格と、ズフタフの聖なる力を足せば、それだけでなく神聖ザカルデウィス帝国の技術力さえあればドグマ大陸など簡単に火の海に変える事など容易い。そう考えていた、しかし、ドグマ大陸の将軍たちによる軍略と戦闘能力は想像を絶するものがあった。戦線は分断され、魔導巨神は隙を突かれて破壊され、戦力的にはまだ勝っていても油断できない状況であった。将軍アイゼンは、元帥ギルバートからこういった指示を受けていた。まずは、ドグマ大陸はいずれにしても自分たちの領土にするのだから、あまり荒らさない事。勝利した暁には、生き残った者を屈服させて自分たちの戦力として登用する事。この二つである。戦艦からの援護射撃を検討しても、それを使ったら最後、ドグマ大陸は火の海になり、人が住めなくなる大地になってしまう。さっさと殲滅して、さっさと支配したかった将軍アイゼンは、ズフタフに乗りながら苛立ちを隠せなかった。神聖ザカルデウィス帝国の戦争はもっと凄絶であるべきだと考えているので、元帥ギルバートの勅諚に従うのは正直嫌でもあったが、将軍アイゼンは元帥ギルバートの力に屈服し、崇拝しているので逆らえなかった。神聖ザカルデウィス帝国の威を示すいい機会だったが、帝国としては急性な攻撃は避けたかったのである。ドグマ大陸を無傷で手に入れたい神聖ザカルデウィス帝国の思惑は、確実に決定打を与えられない状況にあった。上陸した戦艦を空に浮かばせると、本陣を空中に置いた。地上戦になるとドグマ大陸の軍勢には勝てないと思った将軍アイゼンは、ズフタフと会話していた。状況は制空権を握った時点で優勢なのは確実だが、どうやらそれも終わりを告げるらしい事を、ズフタフは将軍アイゼンに語った。何か、神聖ザカルデウィス帝国にとって良くない事が起こる…それは間違いではなかった。

 そう、間違いなく、何の矛盾もなく、皇国レミアムで新たな戦艦が完成した。ガドラムと原理の力を掛け合わせた究極の戦艦である。その姿形を見た軍師メルアーラは、巨神艦ミカエラと名付けた。その巨大さは、五百メートルから千メートルと倍になり、性能は桁違いに上がり、出力においても同じ事が言えた。ゼイフォゾンと総帥ゼウレアー、将軍エミリエルが搭乗した。その他に皇国レミアムの上級魔神たちと准将たちが乗り込んだ。操縦席の仕様は、錬金学が用いられた魔術的要素がふんだんに用いられ、動かすのは問題なかった。砲撃戦の能力も、神聖ザカルデウィス帝国の旗艦型の戦艦の中でもトップクラスである。将軍アイゼンが乗ってきた二千メートル級の戦艦の砲撃能力を突き放すレベルで、動力である炉心には魔力ではなく、原理の力が流れていた。浮上し、移動する速度も凄まじく、アリアドネの広陵までは数分で辿り着く予定であった。その影に驚いた神聖ザカルデウィス帝国の正規軍の兵士たちが、浮上した戦艦のブリッジで焦っていた。その焦りが過熱して、ゼイフォゾンの搭乗している戦艦に砲撃し始めた。その砲撃は、巨神艦ミカエラには届かなかった。原理の力はミカエラの全体を覆うように結界を張り、その強度は魔力を由来としている結界など問題ではなかった。その砲撃を受けきると、ミカエラの砲撃が始まった。そのエネルギーも原理の力が熱線となって放たれているものであり、威力は段違いであった。二千メートル級の戦艦はたまらず旋回し、回避行動を取っていた。それを見たゼイフォゾンはとにかく前へと号令を出すと、そのスピードで敵陣の奥深くまで食い込み、本陣まで容易く辿り着いた。その様子を見ていた将軍アイゼンは、まさかと思って、一時退却と命令したが、ミカエラの性能の前ではどうにもならず、空中での決戦が開始された。ズフタフはこの戦艦を見て、皇国レミアムの錬金術の恐ろしさを改めて知った。神の領域に達している錬金術で完成されたミカエラは原理の力で動き、攻撃し、結界を張り、そればかりか、装甲はガドラムである。これだけ完璧な戦艦は、神聖ザカルデウィス帝国の最新技術を駆使してもできない。

 しかし、流石は神聖ザカルデウィス帝国の本陣である。小型戦艦が無数に飛んでいる。多数のドラゴンナイトもいる。空中戦専用の魔導巨神までも存在し、この軍勢をミカエラだけで崩すのは容易ではなかった。なので、甲板に出たゼイフォゾンと総帥ゼウレアー、将軍エミリエルは、ミカエラの援護を頼りに、空中戦を展開した。容赦なく襲い掛かるドラゴンナイトと魔導巨神をことごとく駆逐していった。ゼイフォゾンと総帥ゼウレアーはより圧倒的な力で向かい討ち、将軍エミリエルはそれを援護するように斬馬刀で応戦、未来を改変しながらより優勢になるように事を運んでいった。ドラゴンロードたる将軍アイゼンも三人の戦力を前にしてはどうにもならなかった。あまりにも出鱈目で、異常で、絶望的な力を見せつける。三人の総力は国が二つあっても足りないほど強大であった。この状況は明らかに自分の、神聖ザカルデウィス帝国の慢心が招いた失態である。将軍アイゼンは本格的に退却命令を下し、残っている軍勢を回収するように通達を出した。ミカエラの砲撃は続いていた。それによって制空権はドグマ大陸が握っているのも同然になった。神聖ザカルデウィス帝国軍は戦力の回収を始め、将軍アイゼンは何か武勲を挙げなければいけないと判断し、ゲイオス王国の陣営に向って凄まじいスピードで飛んだ。その突拍子もない行動には、ミカエラは対応できなかった。将軍アイゼンが向っていった場所、そこにはガトランがいた。ゼイフォゾンはそれを止める事ができなかった。無論、ゼハートとゼイオンも予測していなかった。そして、無慈悲にも、将軍アイゼンの凶刃がガトランに迫っていた。ガトランは自身の魔剣エルハザードを召喚して、待ち構えていた。

 ゼイフォゾンはミカエラの針路をゲイオス王国陣営に向かうように命じ、全速で移動した。ズフタフのスピードに難なく追従できるほどでもあったが、時間差で追いつく事はできなかった。しかし、ガトランのいる場所まで目視できる状態であったので、ゼイフォゾンは見たくないものを見てしまう結果となった。目の前で、将軍アイゼンがガトランの心臓を一突きしたのだ。


「ガトラン?」

「ははっ……まさか、この将軍ガトランともあろう者が」

「ふざけるなぁぁぁぁ!!」

「ゼイフォゾン、俺たちは……勝ったんだぞ」

「ザカルデウィスの将軍……貴様、貴様……!」

「手ぶらで帰るわけにはいかなかったんだよ。そいつが死ぬのを見届けて消えろ!一振りの剣!」

「ガトラン、今私が奇跡を起こしてやる。死すらも乗り越えてやろう!」

「それは……もう遅いな。俺は……知っているぞ、その剣は奇跡を起こせるが、定められた死を前にしては、無力な事も」

「情けない事を言うな!オーガンとイゼベルを失い、お前まで失ってしまったら……それにこのドグマ大陸にはお前という存在が必要なのだ!」

「嬉しい事を……言うじゃないか」


 神聖ザカルデウィス帝国の軍勢は、将軍アイゼンが追従する形で退却していった。ミカエラはアリアドネの広陵に上陸して、ゼイフォゾンがガトランのもとへ駆け寄った。心臓を一突きされた傷は背中まで貫通していて、どのような回復魔術を行使しても効果がないように思えた。神剣エデンズフューリーの起こす奇跡も、ダメだった。ゼイフォゾンは倒れたガトランを抱きかかえた。ガトランは血を吐き、目の焦点も合っていないようだった。そこに、ゼハートとゼイオン、ラーディアウス、アルティス、エミリエル、ゼウレアーが揃い、ガトランの最期の時を共に過ごす事になった。ゼイフォゾンは諦めていなかった。全員の願いを神剣エデンズフューリーに集約し、奇跡を起こして、ガトランの死を回避する事に。しかし、それは逃れられない宿命であった。そして、やっと起こした奇跡が、ガトランの魂を地獄ではなく、天界に導く事であった。ガトランはゼイフォゾンに感謝していた。この場にいる全ての戦士と国民に感謝していた。そして、オーガンとイゼベルにまた会える事に感謝していた。もうすぐ、死がやってくる。ガトランはそれを静かに受け入れていた。ゼイフォゾンはそれが一番納得していなかった。これが宿命ならば、今すぐ神聖ザカルデウィス帝国に復讐したい。また会おうと言ったのはガトランではないか、何故、そのガトランが犠牲になって、神聖ザカルデウィス帝国のあの将軍はのうのうと生きているのだ。全く納得いかなかった。だが、時間は無情にも過ぎていく。


「あぁ、見えるな。あれが天界って場所か」

「ガトラン……私を置いていくな!私にはお前が最初の友なのだ!私をひとりにするな!」

「お前はひとりじゃ……ないだろうが。俺はお前が現れた時、正直言って、怖かったんだ。でも、優しくしてくれたお前の事が放っておけなかったんだ。でもよ、お前は確実に成長して、今はもう、ソード・オブ・オーダーじゃないか」

「お前がいなかったら、ソード・オブ・オーダーにもなれていない。私の旅は、お前から始まったのだ。私はお前だけは失いたくない!」

「泣くなよ、ゼイフォゾン。お前は泣いちゃいけない。笑顔で見送れ、ドグマ大陸の救世主が、こんな場所で泣くな……」

「だが……」

「じゃあな、ゼイフォゾン。俺は……先に逝くぞ」

「ガトラン!ダメだ!目を開けろ!ガトラン!」

「父よ、母よ……今……帰る……」


 ガトランはこうして息を引き取った。そして、肉体が光となって天に上昇していった。それを見ていた全員が泣いていた。この戦争の代償が、ガトランの死である。あまりにも惨くないか、こんな悲しみだけが広がっていくのが戦争なら、いらない。死ななければいけない命などない。誰かが死んでいいこの世の摂理などあっていいはずがない。ゼイフォゾンはガトランの光を見送ると、あるものが見えた気がした。オーガンとイゼベルである。あの二人は、ちゃんと天界に昇ったのだ。そして、今、最愛の息子と再会を果たしたのだ。それが分かった今、ゼイフォゾンは心の中で、二人に語り掛けた。ガトランは、間違いなく戦士として、男として、人間として、偉大な息子だった…と。そして、天に帰ったガトランは、しっかりとオーガンとイゼベルと再会した。


「父さん、母さん。ただいま」

「よく来たな。よく耐えたな。見守っていたぞ。お前の活躍も全てな」

「ちょっと……早かったかな。でも、会いたかったよ」

「ゼイフォゾンに導かれて、強くなったわね。私にとってあなたは誇りです。こんなに大きくなって……今でも信じられないの。だって将軍なのでしょう?」

「死んだら、将軍なんて関係ないさ。母さん……親不孝者だったよな。俺って、だって……」

「いいのよ……あなたは私たちのもとに帰ってきてくれた。誇りある偉大な息子、私たちの愛している変わらない息子、ガトラン……お帰りなさい」

「今度は三人で、ゼイフォゾンを見守るぞ」

「俺は……良かった。ベネトナーシュの家に産まれてきて……良かった。父さん、母さん……このガトランは、今なら全てを許せる気がする。ゼイフォゾンは家族だ。天から見守ろう、この世界を」

「そうだな……」

「聞かせてガトラン、あなたが歩んできた道を」

「分かったよ、母さん。俺さ……」


 神聖ザカルデウィス帝国の侵攻は、ドグマ大陸の、皇国レミアムの争乱はこれで終結した。神聖ザカルデウィス帝国の騎士団を相手にするのに、これだけの戦力を出さなければいけなかった。大陸全土を巻き込んで、これだけの戦争をしなければいけなかった。それだけではない、ゲイオス王国将軍、ゼイフォゾンの無二の親友であるガトランという大き過ぎる犠牲を払わなければいけなかった戦争であった。神聖ザカルデウィス帝国の侵攻は決して消えない爪痕を残した。ゼイフォゾンは、部屋にこもり、一晩中泣いていた。まだ受け入れられない、親友の死だけはゼイフォゾンの心には耐えられないほどの傷を与えた。その傷を癒せる者はいなかった。ソード・オブ・オーダーだから、軍議には参加していたが、誰の目にも分かるように無理して参加していたように見えた。ゼイフォゾンが搭乗していたミカエラは、一時、帝王ゴーデリウス一世の座乗艦にしようという話が出ていたが、帝王ゴーデリウス一世はそれを拒否し、ミカエラはゼイフォゾンの座乗艦にしようという話でまとまった。ゼイフォゾンは必要最低限の事しか話さないので、それを心配した皇国レミアムの将軍たちは、どうやって心のケアをしていくかを話し合った。こればかりは、ゼイフォゾン自身が乗り越えなければいけないのだが、ただずっと孤独を味わっているようなソード・オブ・オーダーでは、皇国レミアムは救われないと判断したためである。ドグマ大陸はいつも通りのゼイフォゾンを欲していた。その心のケアを任されたのは、何と帝王ゴーデリウス一世であった。それは帝王ゴーデリウス一世の独断であった。ゼイフォゾンの事を一番心配していたのは、皇国レミアムの帝王であった。帝王ゴーデリウス一世は、ゼイフォゾンの部屋の前に立っていた。ゼイフォゾンは瞑想していた。何とか心の平常を保つために、誰にも相談せずに、ただじっとひとりで耐えていた。帝王ゴーデリウス一世は、その扉を開けた。

 ゼイフォゾンは目を開くと、驚いた表情をしていた。まさか自分のもとに帝王ゴーデリウス一世が自ら出向くとは思っていなかったのである。帝王ゴーデリウス一世はゼイフォゾンがいつも座っている椅子に腰かけた。喋りはしなかったが、ただゼイフォゾンを見ていた。ゼイフォゾンは自分がどれだけ見透かされているのか不安になっていた。この帝王は、未来を予見できるが、ガトランの未来に死が待ち受けているとは一言も言わなかった。だが、それはどうでもいい。ゼイフォゾンは納得したかった。自分の軍略とガトランの軍略を掛け合わせた作戦で、自分だけが生き残り、ガトランが死んだ。何故か…それを知るべく色々と考えていたのだが、どれも納得のいく結論は出なかった。無理もないだろう、起こってしまった出来事は変えられないのだから。だが、ひとつだけ分かったのは、ガトランはきっと、最期までゼイフォゾンの、自分の唯一無二の親友のまま死んだのだという真実だけである。帝王ゴーデリウス一世は、ゼイフォゾンの考え方は理解していたが、ゼイフォゾンとガトランの友情の真の深さまでは把握できていなかった。ガトランの死が、ゼイフォゾンの心に大きな穴を作ってしまうとは思っていなかった。だが、思い返せば、ゼイフォゾンはガトランの話になるといつも明るい表情をしていた。軍議の時もそうであった。ガトランがどんな活躍をして、どう動いていたかを聞けば、ゼイフォゾンはいつもそれについて興味を示していた。帝王ゴーデリウス一世も親友たちを奪われた経験はある。これからも永遠に生き続けるであろう自分の命、その半生の中で、出会いと別れは繰り返し起きた。その度に、戦争に対して強い疑問を抱くようになった。帝王ゴーデリウス一世は、ゼイフォゾンの心を完全に理解はしていなかったが、これから永遠を生きるであろう者の宿命については誰よりも強く理解していた。ゼイフォゾンは瞑想から覚めて、椅子に座った。帝王ゴーデリウス一世に目を向けた。だが、何も喋ってはこなかった。何を考えているのかを考えていた。しばしの沈黙を破ったのは、帝王ゴーデリウス一世であった。


「ゼイフォゾン・ディア・ミレニア、余は汝をただ見ていただけであった。人外として。だが、その悲しみ方は人間よりも遥かに人間らしい。汝はどうしたい?どうやってこの世界から戦争を取り除きたい?余は何もできなかった。国を作ったのはいいが、国民に課したのは苦痛だけであった。現に皇国レミアムは神聖ザカルデウィス帝国の侵攻を許した。汝は何を求める?真の平穏をこのコル・カロリの世界でどうやって示す?余は汝の考えを訊きたい」

「私は……分からないのです。私は何度ガトランを失って、何度絶望するのでしょうか。友を失うと、何故このように苦しまなければいけないのでしょうか。戦争がそうさせたのならば、神聖ザカルデウィス帝国に復讐すればよい。だが、それでは……ガトランの望んだ平穏とはかけ離れてしまう。争いは争いを生み、復讐は復讐を生む。神聖ザカルデウィス帝国にも善き人間がいるのでしょう。それを根絶やしにしては、コル・カロリの世界に平穏は訪れない。私の永遠の命は、私の力は、どのような意味を持つのでしょう。納得いく理由も見つけられないのは、きっと私が未熟なせいです。皇国レミアムのソード・オブ・オーダーにもなった私は、救世主などではなく、惰弱な童と同類です。帝王ゴーデリウス一世、私は自身の命が軽く思えるのです」

「そうか……そこまで考えていたか。ガトランの命と世界を背負う苦しみを、汝に全て押し付けてしまった余が愚かであった。そうだな、皆で考えるべき問題であった。余は世界を旅してきたが、汝はドグマ大陸の事しか知らぬであろう。どうだ、また旅に出てみないか?ミカエラを使えばいい、世界のどこへでも行けるであろう。余は、汝を皇国レミアムのソード・オブ・オーダーとしていつでも帰ってよいと伝えよう。それとも、ここで腐って、ガトランの望まぬ世界をただ見届けるか?」

「私は世界が見たい。また旅ができるなら、そうさせて頂きたい。このコル・カロリの世界の未来を導くべく、動きたい」

「よく言った。では余は戻ろう。余の国の玉座に。汝はソード・オブ・オーダー、自由の象徴である。忘れるでないぞ」


 帝王ゴーデリウス一世はこう言い残して、部屋を出た。ゼイフォゾンは納得するべく、世界に対しての疑問を解消させるべく、世界の真の平穏とは何かを探すべく旅に、再びの旅に出向く事を決めた。それを支えるのはミカエラ、そして旅の相棒としてアルティスが選ばれた。兵士たちはこのミカエラに搭乗しなかった。あくまでも操縦はアルティスに任せる事にした。ゼイフォゾンは艦長席に座って、アルティスと話をしながら航行する事とした。帝王ゴーデリウス一世は、新たな救世主としてソード・オブ・オーダーが旅立ったと国民に説明した。その相棒にジ・オードの弟が出向いた事も。そして、二人がいなくとも、この皇国レミアムの歴史は続いていくと言った。

 ミカエラが向かう先、そこは先に侵攻を始めた神聖ザカルデウィス帝国であった。そこで二人はどのような出会いを果たすのか。その未来は、誰にも予見できない、新鮮なものになる。そしてこの旅が、新たなる宿命の幕開けになる。終わりのない旅、これは終着の見えない旅の始まりに過ぎなかった。


ディア・ミレニア~皇国レミアム争乱篇~


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