魔法が使えない魔女は、侯爵令嬢に拾われてメイドになりました ~結婚を嫌がるお嬢様を攫って旅に出ます!~

響城藍

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【ep.11】みんなが幸せになる為の魔法

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「エマ……君が僕達の事を……」

 私はノアの顔を見れなくなって俯いてしまった。
 私はよくない事をしてしまった気がしたから。だって、私がここに来なければ2人は一緒にいれたし、私が2人を守れたのならどちらかがいなくならなくて済んだのに。
 ノアからの視線を感じていて俯いたまま私は口を開ける。
 
「ノア……その、ごめんなさい」
「……顔を上げて?」

 ノアは私の頬に手を添える。私が顔を上げると、周りに花が浮かんでいる様なノアの笑顔に私は目が離せなかった。

「エマは悪い事をしたと思っているみたいだけど、僕はとても嬉しいよ。もうリュシーと一緒に過ごせないはずだったのに、リュシーはとても温かくて……姿は見えなくてもちゃんといるんだって感じるんだ」

 胸の宝石を包む様に触りながらノアは目をつむって何かを感じていた。それがリュシーなのだと伝わって来る様な微笑みを私に向ける。

「それに、僕達と出会わなくてもいずれエマはここに来る事になったはず……ですよね?」
『その通りで御座います。エマ様の力と我々の力は惹かれ合います。ですが貴方はまだ全ての力を持っておりません』
「私の……すべての力……?」

 ドラゴンに視線を向けると慈愛に満ちた瞳と目が合った。子供を見守る様な優しい瞳。

『エマ様、貴方には我々四大精霊と契約し、神様になって頂きたいのです』
「わ、私が神様に!?」
『はい。貴方は神様のご息女で御座います故。神様になれば何でも願いを叶える事が出来ますし、神様になったからと言って特別な事をする必要はありません。ただ存在して頂ければ良いのです』
「……それは永遠に存在し続けるってこと?」
『それも貴方の望むままに。ご両親の様にお子様に託すという方法もあります』

 すべてを理解するには難しくて、どう答えを出せばいいのか解らなくて私は地面を見て考える。やっぱりすぐに答えが出る問題でもなくて、少し不安になって私は自然とマリアを見ていた。
 マリアも不安そうな顔をしていて、私の顔を見ると手を握ってくれた。不安な表情はお互いに残ったまま、繋がる手が温かくてこのまま手を繋いでいたくなってしまう。でもこのまま立ち止まっていてはダメだ。
 ゆっくりとマリアの手を離して、私はドラゴンの尻尾から降りた後ドラゴンを見上げた。

「私、きみと契約します」

 不安な表情は隠し切れなかったと思う。だけど今はこれが正しいと思ったの。
 力を手に入れれば強くなれる気がして、そうすればマリアの事もノアの事も守れるから。
 もう絶対に仲間を傷つけたくない。だから私は力を手に入れて強くなりたい。

『エマ様、貴方はお強いですね』

 ドラゴンが私の頭を撫でる様に指先で触れた。その瞬間に私の全身に花が咲き誇った様な不思議な感覚がして、ドラゴンを見上げると嬉しそうな瞳を向けられていた。

『貴方に地属性の力を授けました。地属性の魔法は使えます。あちらに向かって念じてみて下さい』
「えっと……こう?」

 ――ドドドドドドドド! ドガンッ!!

 私が壁に向かって手を向けて念じると、勢いよく地面が裂けて行って壁に大きな穴が開いた。穴からは草原が見えて、分厚いダンジョンの壁を開けてしまった事に慌てていれば、ドラゴンの尻尾が私の背中に移動した。
 尻尾に乗っていたマリアとノアが私の両隣に降りて来て、ドラゴンの尻尾が背中を押す様に触れた。

『ご武運をお祈りしております』

 その言葉にも背中を押されて、私は振り向かずに歩き出す。開いた穴から外に出て、眩しく照らされる草原を歩いて行く。後ろを歩くマリアとノアを守る様に。

 *

 歩きながら私は神様になる事について考えた。神様になる事がどういう事なのかはまだ解らない。四大精霊と契約するという事は地水火風の四属性の魔法が使える様になるという事で、それだけで私は十分だった。
 神様になれば何でも願いを叶えられるとも言っていた。何でもの範囲は無限の可能性にも感じられて、私はある願いを思いついた。

「私が神様になれば、ノアとリュシーを元に戻すことができるかもしれない!?」
 
 私は立ち止まって後ろを向く。驚いた2人の顔を交互に見ながら笑顔になった。

「え……?」

 驚いて小さく声を漏らしたノアは信じられない様な瞳を私に向けていた。
 
「だって何でも叶えられるならできるんじゃないかな!? 今の状態にしたのも私だし、絶対にできる! ううん叶えてみせるよ!」
「リュシーとまた会える……?」

 ノアの顔がくしゃくしゃに歪んで行くのを見て、私は思わずノアを抱きしめていた。震えて声を我慢するノアは泣いているのだと判って、私は強く抱きしめ続けた。
 
「ノア、ごめんね。私はきみを悲しませてばかりだね」

 ノアはまだ震えていて、こんなに不安な姿は初めてだから少し驚いているけれど、不安にさせた原因が私な事実は変えられない。絶対にノアの事も幸せにするよ。

「違うんだ……僕は、今のままでも十分なんだ。僕はリュシーと共に永遠を生きられるだろうから」

 リュシーは不老不死だ。その心臓がノアに移植されたという事はノアも不老不死になったという事。
 ノアは私から離れて涙を拭って微笑んだ。

「大丈夫、だって僕はヒーローだからね」

 王子様の様な笑顔はどこか可憐に見えて、私はそんなノアの手を握ってマリアの隣へ歩いた。マリアの手も握って私は二人に笑顔を向ける。

「私はきみたちの騎士ナイトになるよ! だから安心して!」
「エマ……わたくしは……」
「絶対に守るよ」

 私の言葉でマリアの不安そうな顔が少し綻んだ。でもまだ不安な気持ちは理解できる。いきなり神様になる為の旅に巻き込んでしまっているんだ。
 マリアが安心できる旅にするよ。だからまた太陽の様な笑顔を向けて欲しい。私はそれだけで強くなれるから。
 
 手を繋いだまま、2人の歩幅に合わせて歩いて行く。
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