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リュカが寝ている間が勝負だ。徹夜で作業をした。
フレバリーにも手伝ってもらいながら、何度も配合を変えて作り直す。最終的にできあがったものが正しく働くことを確かめるため、リュカの香りをビーカーに垂らして、それから作り上げたばかりの液を混ぜる。
「……おお。何か、むずむずする感じがなくなったな」
フレバリーがひゅう、と口笛を吹く。この幼馴染みはマシレの仕事を褒めないが、感心しているのは知っている。
「そうだな。成功のようだ」
実験室では打ち消しができた。後は、本人に試すだけだ。
フレバリーと共に寝室へ急いだ。抱いた痕跡の残っているのをフレバリーに見られるのはいただけないが、それでも、ベータの彼を寄せ付けなくなることも証明したかった。
「リュカ。起き上がれるか」
「マシレさま……」
ずっと眠っていたらしいリュカを無理矢理起こし、放たれている香りに耐えながら、香水ができたことを彼に告げる。リュカは目を見開いたが、嬉しそうな顔をしてくれなかった。少し傷つく。
だが「試させてもらっていいか」と尋ねると、彼はそっと頷いた。
作ったのは、マシレの香り、つまりアルファから分泌されるフェロモンの香水だ。オメガが番を持てば、フェロモンは他の者には感じられなくなることから発想したものだ。アルファのフェロモンでうなじを覆ってしまえば、番を持ったときと同じようにならないかという着想だった。
香水瓶に入れた金色の液体をリュカのうなじに塗りつける。念入りに、だがそっと。
しばらくすると、リュカの香りが感じられなくなった。フレバリーを向いても、笑って首を振る。
成功だ。
これでリュカの強すぎるフェロモンも、彼自身を困らせることはなくなった。
香りの途切れる八時間以内には香水の付け直しが必要だが、これで他の男を意図せず誘うことはなくなったはずだ。
「ありがとうございました、マシレ様」
そう微笑むリュカの悩みは解消されたし、ヒートに苦しむオメガも救える。王子の脅威ももうないことだし、リュカがこの城に居る必要はなくなった。
元々が、香水の依頼が終わるまでと約束した期日だ。リュカは出て行ってしまうだろう。
リュカが居なくなると思うと、寂しさが胸を軋ませる。好きな男のところにでも行くのかもしれないのが、やるせなくてならなかった。しあわせになって欲しいと思うのは、本当なのに。
フレバリーにも手伝ってもらいながら、何度も配合を変えて作り直す。最終的にできあがったものが正しく働くことを確かめるため、リュカの香りをビーカーに垂らして、それから作り上げたばかりの液を混ぜる。
「……おお。何か、むずむずする感じがなくなったな」
フレバリーがひゅう、と口笛を吹く。この幼馴染みはマシレの仕事を褒めないが、感心しているのは知っている。
「そうだな。成功のようだ」
実験室では打ち消しができた。後は、本人に試すだけだ。
フレバリーと共に寝室へ急いだ。抱いた痕跡の残っているのをフレバリーに見られるのはいただけないが、それでも、ベータの彼を寄せ付けなくなることも証明したかった。
「リュカ。起き上がれるか」
「マシレさま……」
ずっと眠っていたらしいリュカを無理矢理起こし、放たれている香りに耐えながら、香水ができたことを彼に告げる。リュカは目を見開いたが、嬉しそうな顔をしてくれなかった。少し傷つく。
だが「試させてもらっていいか」と尋ねると、彼はそっと頷いた。
作ったのは、マシレの香り、つまりアルファから分泌されるフェロモンの香水だ。オメガが番を持てば、フェロモンは他の者には感じられなくなることから発想したものだ。アルファのフェロモンでうなじを覆ってしまえば、番を持ったときと同じようにならないかという着想だった。
香水瓶に入れた金色の液体をリュカのうなじに塗りつける。念入りに、だがそっと。
しばらくすると、リュカの香りが感じられなくなった。フレバリーを向いても、笑って首を振る。
成功だ。
これでリュカの強すぎるフェロモンも、彼自身を困らせることはなくなった。
香りの途切れる八時間以内には香水の付け直しが必要だが、これで他の男を意図せず誘うことはなくなったはずだ。
「ありがとうございました、マシレ様」
そう微笑むリュカの悩みは解消されたし、ヒートに苦しむオメガも救える。王子の脅威ももうないことだし、リュカがこの城に居る必要はなくなった。
元々が、香水の依頼が終わるまでと約束した期日だ。リュカは出て行ってしまうだろう。
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