深い森の彼方に

とも茶

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第十六章 様々な侵入者

16-5

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事実上、私はこの世界の指導者的立場になっていたようだ。
この世界自体が私の妄想の産物だということなのだから、当然といえば当然なのだが、実質的には本部の美少女の総裁と地下街管理人の司令官にこの世界の運営は任せているようなものだった。
気になるのは生活費だ。この世界から、生活費を支給されているわけではない。あの「お仕事」もできなくなってしまった。あとは、元の世界と共通と思われる預金口座頼みだ。しかし、元の世界の自分はごく平凡なサラリーマンだ。双方の世界に存在する自分を両方賄うだけの給料など貰っていないはずだ。
「私の生活費は大丈夫なのですか?」
本部に行ったとき総裁に確認した。
「気にしないでください。」
「とは言っても、私には何の収入もないのですから。」
「通帳に残高があるはずですが。」
「でも二人分も賄えるのでしょうか。」
「私には向こうの世界の仕組みはよくわかりません。でも、常に残高はほぼ一定額入っているようです。」
「いくらこちらでおろしても?」
「そうです。」
「無尽蔵に収入があるとは思えないのですが。」
「収入が無限にはないですね。収入でカバーしているのではなく、どうも下ろす前の状態に戻っているようなのです。」
「・・・」
「ここのところが不思議なのですが、預金を10万円引き出すと残高は10万円減りますが、暫くすると引出前の日付に戻っていて、要するに引き出す前の残高に復活しています。」
「下ろした後に、前の日付になって金額が復活する? でも、下ろしたお金はなくならない・・・」
「そこが不思議です。その原因を探るため向こうとこちらの世界の関係を色々と考えてみたのですが、どうも時間の動きが一致していないようなのです。」
「時間が一致しない?」
「時折逆転しているようなのです。」
「逆転?」
「私たちは永遠に時が進んでいく世界で暮らしています。向こうの世界でもそうでしょう。しかし、こちらの世界の今日と向こうの世界の今日が同時とは限らない。いえ、進行のスピードが同じなら、向こうとこちらが違っても特に困らない。時差のようなものですから。しかし、どうもスピードが違う、時に逆進していると思われることもあるのです。」
「どうしてそんなことがわかるのですか?」
「あなたのお仕事の手配など、向こうの世界と連絡の際、時折不可解なことがあるのです。昨日連絡したことを向こうでは全く知らなかったり、あるいはこちらでは全く分からないことをお互いに合意したことのように言ったりすることがあります。どうも勘違いだけではすまないような気がします。」
「そのようなことは誰でもわかるのですか?」
「そもそも、向こうの世界と連絡できるのは私だけです。司令官も連絡できません。だからこれに気付いたのは私だけです。」
「誰と連絡を取っているのですか?」
「わかりません。」
「どのように連絡を・・・」
「具体的な器具を使っているわけではないのです。何と説明したらいいのか・・・」
「察する ということですか?」
「そうかもしれません。」
「運転手が私の行動を察して迎えに来てくれるような・・・」
「たぶん、そうだと思います。」
「でも、私は向こうの世界に何度も通った。」
「城門を通りぬけた記憶がありますか?」
「・・・」
「最初に来られたときは城郭内に連れ込まれたのでしょうけど、城郭前にどうやって来たのか。」
「記憶がないのです。」
「おそらく、時間の進行がずれている狭間を意識のある状態で超えるのが不可能なのではないかと。」
「運転手も見ていないのですね。」
「運転手は、城門までお送りするとすぐ城門にある軍用車で直ちに引き返します。引き返さない限り何もおこりません。車が到着したことを察して軍用車で城門に向かいます。」
「・・・」
「向こうの世界が城門からどのように見えるのか、誰も見たことはありません。誰も向こうの世界を知ろうともしないのです。その城門を境に、時間の進行スピードが違っていたり、逆転していたりしているのではないかと、私が想像するだけなのです。」
「それで貯金は・・・」
「時間は相対的にはプラスマイナスしているのですが、トータルすると逆進しているのではないかと思います。だから、預金残高が復活しているのです。」
「・・・」
「要するに、お金のことは気にすることはないということでいいのではないでしょうか。」
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