異世界ワンルームは家賃19,000円

寺場 糸

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腐れ大学生の異文化交流編

第22話 ここでは現世のマナーを守ってもらおう

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 翌日。

 翌々日は雨がしとしとと降り、バイリィは『監獄』に姿を表さなかった。

 約束をしたのに来てくれないのかと、根っからの疑心暗鬼が頭をもたげたが、そういえば具体的な日時は何も決めていなかったのだと思い直し、私は彼女の来訪を大人しく待つことにした。

 幸いにして、暇を潰せるだけのタスクはあった。

 バイリィと会話をすることで実践的に異世界語は学べたものの、まだ、多くの語彙、あるいは文脈のニュアンスなどは教材を見ながらでないと理解できない。

 私は教科書を読み進め、辞書を開き、重要だと思う単語には別途メモを残し、単語帳の合間に設けられたコラムには残らず目を通した。

 私は大学受験の時よりも集中力を発揮して、異世界語の学習に取り組んだ。

 人間、尻に火が付けば、性根にこびりついた怠惰を払い除けることが可能らしい。

 認めるのも癪だが、このヴィーナス教材が驚くほどにわかりやすく、学習意欲が高まる仕組みが施されていた、というのも意欲向上の一助となっていた。

 教材とのにらめっこを続ける日が続き、いい加減、学習の成果を会話で試したいと思ったその日は晴れていて、天球が昇りだしてすぐ、バイリィが『監獄』にやってきた。

 彼女は窓からではなく、きちんとドアを開けてやってきた。

 今日も今日とて、黄色地の浴衣のような服を着ていた。

「おはよ。来たわ」

「……ようこそ」

 私はその時、朝食のソーセージドッグをもっしゃもっしゃと食べている最中であり、何も心の準備ができていなかったので、彼女の来訪には少なからず驚いた。

 まだ朝のシャワーも浴びておらず、髪の毛はボサボサ、目は半開き、およそ客人をもてなせる格好ではなかった。

 ごくんとソーセージを飲み下して、私は言った。

「バイリィ。あなたに教えなくてはならないことが1つある」

 ドアを開ける前には、ノックをしろと、伝えなくてはならなかった。
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