13 / 43
記録十三:ゼド邸〜決闘
しおりを挟む
ゼドの屋敷に着いたキノクニ達ですが、何やら門前で揉め事が起きているようです。
「おや…?すいませんキノクニ様…少々失礼しますよ…」
ゼドが馬車から降り、門前に向かいます。
その隙にグリモアがキノクニに話しかけてきました。
「キノクニ、もう気づいとるやろうけど、オレは他人がオレの声を聞けるか聞けへんか任意で切り替えられる。」
「気づいてはいた。それが何だ。」
「でもな、他のグリモアを持っとる奴はこの限りでは無いんや。オレの声の意思に関係無く、オレの声を聞ける。…つまりや、あのゼドっちゅうおっちゃんは、地図の反応的にも、オレとの受け答え的にも、グリモアの所有者では無いっちゅうこっちゃ。」
「…なるほどな。それは有益な情報だ。」
「お、そか?グリモアの中にはグリモアの反応を消すことが出来る奴も居るから、一応な。」
「わかった。」
「それと、これや。」
グリモアが何か呟くと、キノクニの目に突然字が写り込んで来ました。
「?!」
__________________
名前:ゼド・フォーデン
性別:男
種族:人間
職業:大商人 Lv.5
__________________
「何だこれは…」
「オレの鑑定はまだまだレベルが低くくて、この程度しか分からへんけど、オレを開かんくても、お前はオレの鑑定結果を見ることができる。勿論地図とかもや。…なんか色々あって、説明をしとらんかったさかい、今更やけどな。」
「ほう…魔法本らしいこともできたのか…喋り騒ぐだけで無く…」
「まぁ…他のグリモアはもっと凄いねんけどなぁ…」
「何を鑑定し、私に見せるかはお前に任せる。それと…」
「…ん?なんや?」
「一々しょぼくれるな。お前はお前のできることを全力でやれ。」
「お…おう…!!…なんやお前、時々優しいな…ツンデレかいな!?」
「優しくなど無い…当たり前のことを言ったまでだ。」
キノクニとグリモアの会話がひと段落したちょうどその時、外の騒ぎが一際大きくなります。
「なんだ…?」
「面倒そうやな…見に行った方がええんとちゃう?」
キノクニは馬車の扉を開け、地面に降り立ちます。
門の方を見ると、ゼドが揃いのコスチュームを着た冒険者達に囲まれていました。
「…ですから!当店では動向は存じかねます故…」
「そんな事は知りませんわ!あの者はあなたの店の所属でしょう?!」
かなり激しく口論しているようです。
「あちゃー…面倒くさそうやな…なんや納品ミスかなんかか?」
「…馬車に戻るか、このまま商店街の方へ戻るか…」
すると、ゼドに怒鳴り散らしていた女性が、こちらに気が付き、近寄ってきました。ゼドは他の冒険者が、逃げないように取り囲んでいます。
「あなたは誰ですかしら?何者?ゼド商会の馬車から降りて来ましたわね!何をしに来たの?!」
「貴様には関係無かろう。」
「まっ…貴様ですって?!あなた…失礼ですけど、わたくしのことを知らないんですの?!」
「知らん。」
「~~~?!…あなた、ランクはいくつかしら!?見たところ旅人のようですが…」
「ランク…?」
「多分やけど…冒険者ギルドのランクちゃう?見せたるわ。」
グリモアがキノクニの目に情報を映し出します。
__________________
名前:マリアン・ステュー・グレイシア
性別:女
種族:人間
職業:SSS級冒険者 Lv.3
:魔導師
__________________
「冒険者ギルド…私は所属していない。」
「あらあらあら!この国では冒険者ギルドに加入していない者は武器を持つ事はできませんのよ?!余程田舎者なのかしら?!…あなた達!この者の武器を取り上げなさい!」
マリアンの号令で、ゼドを取り囲んでいた冒険者達がキノクニに迫って来ます。
「あわわわ!ヤバない?!てかそんな法律知らんで?!」
「…」
「キャハハハハ!!往生なさいませ!」
手下の冒険者達は、まずキノクニの剣を外します。
しかし…
「うわぁ!!」
ドズンッ!!
ボスゴブリンの目を貫き、大きな成木をも切り裂く剣は、並みの重さではありません。
冒険者1人では持てず、地面に落としてしまい、剣が地面にめり込んでしまいました。
「ぐぐっ…マリアン様…この剣…とても重く……持てるような物ではありませんっ……!!」
「何をやっているの?!その斧も取り上げなさい!!」
続いて手下達は、キノクニの背後に回り、自在斧コアトルを腰のホルダーから外そうとしますが、ビクともしません。
ホルダーの金具は解いてあるにも関わらずです。
「くっ…何だこの斧は……取れない!!」
「何を手間取っているの?!見せなさい…ああっ?!それよりあなた!このポーチは!!」
「やかましい。なんだ。」
「なんだじゃありませんわ!!これは"アルノルドの懐袋"ではありませんか!!?ど、どこでこれを手に入れ…いや!盗みましたの?!それはわたくしが頼んだ物ですのよ!!」
「ドワーフの商人から貰ったものだ。命を助けた報酬にな。」
「そんなことは知りませんわ!!それは紛れも無くわたくしの頼んだ品物!そのドワーフの商人はどこに行きましたの!?」
「死んだ。」
「はあ?!」
マリアンは苛立ちで真っ赤になっています。
まるで茹で蛸のようです。
「どいてください!貴方達!…はあ!キノクニ様!大丈夫ですか!?」
冒険者達をかき分けて、ゼドがキノクニに近寄ってきます。
キノクニは剣をしまい、ゼドに向き直ります。
「他愛ない。それより聞きたいことがある。この国には冒険者ギルドに所属しなければ武器を所持できないという法があるのか?」
「い、いえ…たしかにそのような法案が提出された話は聞いていますが…まだ決まっていないはずでございます。」
「キイイイイ!わたくしが法律なのです!!わたくしの言う事は絶対なのです…」
「おい!ゼドはいるか?!」
今度は大きな声の男が、冒険者達を押し退け入ってきました。
「おお!ゼド!急に呼ばれて驚いたぞ!何事だ?」
「ああ!オルドガ殿!実はこちらのマリアン殿に難癖をつけられていまして…」
「オルドガ様っ…?!…というか難癖とはなんですの?!わたくしはただ頼んだ品物を取りに来ただけですわ!そしたら何故かその得体の知れない男がわたくしのポーチを持っていて…わたくしは悪くありませんわ!」
「まあまあ落ち着け…ええと、お前さんは?」
「…お前こそ誰だ?」
「あぁ?…ああ、そうか、すまんな。先に名乗るべきだったな。俺はオルドガ。冒険者ギルド本部の副ギルド長をやっている。改めて名を聞こう。」
「…キノクニだ。」
「そうか。ではキノクニ。お前さんは冒険者ギルドには所属していないよな?」
「していない。」
「そうか…何故ここに?」
「そこのゼドという商人に呼ばれてここへ来た。」
「ほお!ゼドが!?お前が気にいるなんざ珍しいなあ?」
「キノクニ様には至らない者を排除していただき、胸がすきましたから…それに興味もありますし、彼にも、彼の武器にも。」
「武器…?ほおほお!そいつはまさか…"再生剣ヘリオス"か?どこで手に入れた!?」
「名は知らん…昔、冒険者ギルドの依頼で立ち寄った砦で、敵から奪った。」
「昔?…昔はギルドに所属してたのか…まぁ、それなら構わんがな!」
「構いますわ!ギルドに属していない者は、武器を所持することはできないはずですわ!!」
マリアンがキイキイ叫びます。
「マリアン。その法は却下されたばかりだろう。この物騒な世の中に、丸腰で生きていける者などいない。」
「そんなっ…でもそのポーチはわたくしの物ですのよ!」
「ふむ…受注証は?」
「それは…ありませんわ。ドワーフの商人は受注証は書けないと言いました…特別な品で、手に入るかわからないと…」
「お前…そりゃ闇商人じゃないのか?」
「違う…はずですわ!彼はこの"フォーデン商会"の会員証を見せてくれましたもの!」
「…と言っているが?ゼド。」
「ウチにはドワーフの商人はいません。覚えもございません。」
「だそうだ。マリアン。」
「でもでもでも!」
いくら話し合おうと、イタチごっこです。
そこで、オルドガはパンと柏手を打ちました。
「よし!分かった!決闘だ!」
「……あら。」
「なんだと?」
「キノクニ。お前さんはそのポーチは自分の物だと主張する。そうだな?」
「そうだ。」
「対してマリアン。お前は自分の物だと主張する。」
「ええ!神に誓って!」
「では決闘だ。キノクニ。お前は腕に覚えがあるから、1人で旅などしているのだろう?かまわんな?」
「受ける道理がない。」
「おおっと。だが、受けないといつまでたってもこの令嬢が引っ込まねえぜ?」
「殿方が…こんなにか弱いわたくしに恐れをなすのかしら…?」
「…」
「それに、受けないと争いの種であるそのポーチを、副ギルド長権限で取り上げなきゃならなくなる。それは互いに嫌だろう?」
「嫌ですわ!あなた!逃げずに受けなさいよ!!」
「ああっ、キノクニ様!彼女は…」
「さあ!どうする?!キノクニ!受けるか、受けないか?!」
「………ふぅぅう…分かった…受けよう。」
「決まりですわ!」
「キノクニ様!」
「よし決まりだ!大規模な破壊魔法や技は禁止!それ以外は何をしても良い!生殺与奪も禁止だ!」
「生温い…」
「大丈夫かいな…」
キノクニはグリモアをゼドに押し付け、マントだけを外します。
「持っていろ。盗もうなどとは思うな。盗めば貴様を斬り裂き、二度と蘇れぬよう消し炭にする。」
「そんな!私を信用してください!それよりキノクニ様…彼女はSSS級の冒険者!魔導師ですよ?!命は取られないとはいえ危険では…」
「問題無い。」
「魔法ポーチならばウチにもありますから…はっ…えっ?!」
「まあまあ。大丈夫やてゼドちゃん。肩の力抜いて気軽に見ときや。」
「場所を空けろ!決闘だあああ!!」
「粉々にして差し上げますわ…」
「不毛だ。」
そして、ゼドの屋敷前で、円状に場所が空けられ、舞台が整いました。
両端にキノクニとマリアンが立ちます。
マリアンは手下に持たせていた杖を持っています。
「ではこれより!冒険者マリアンと旅人キノクニの決闘を始める!!両者、準備はいいか?!」
「キャハハハハ!いつでも万全ですわ!!」
「…構わん。」
「それでは用意…始めぃ!!」
ドォン!!!
オルドガが決闘開始を宣言したその瞬間、勝敗は決しました。
キノクニがマリアンを殴りつけ、地面にめり込ませることで。
「………は?」
「これで良いのだろう。時間が惜しい。屋敷へ入るぞ。商人。」
「えっ…いや…は????」
ゼドは何が起きたか分からず、あたふたしています。
手下の冒険者達も、野次馬の人々も、オルドガも…口をあんぐりと開け、呆けています。
「「「「なにぃいいいいいいい?!?!」」」」
やっと声が上がったのは、キノクニ達が屋敷に入って、しばらく経った後でした。
続きは次回のお楽しみです。
「おや…?すいませんキノクニ様…少々失礼しますよ…」
ゼドが馬車から降り、門前に向かいます。
その隙にグリモアがキノクニに話しかけてきました。
「キノクニ、もう気づいとるやろうけど、オレは他人がオレの声を聞けるか聞けへんか任意で切り替えられる。」
「気づいてはいた。それが何だ。」
「でもな、他のグリモアを持っとる奴はこの限りでは無いんや。オレの声の意思に関係無く、オレの声を聞ける。…つまりや、あのゼドっちゅうおっちゃんは、地図の反応的にも、オレとの受け答え的にも、グリモアの所有者では無いっちゅうこっちゃ。」
「…なるほどな。それは有益な情報だ。」
「お、そか?グリモアの中にはグリモアの反応を消すことが出来る奴も居るから、一応な。」
「わかった。」
「それと、これや。」
グリモアが何か呟くと、キノクニの目に突然字が写り込んで来ました。
「?!」
__________________
名前:ゼド・フォーデン
性別:男
種族:人間
職業:大商人 Lv.5
__________________
「何だこれは…」
「オレの鑑定はまだまだレベルが低くくて、この程度しか分からへんけど、オレを開かんくても、お前はオレの鑑定結果を見ることができる。勿論地図とかもや。…なんか色々あって、説明をしとらんかったさかい、今更やけどな。」
「ほう…魔法本らしいこともできたのか…喋り騒ぐだけで無く…」
「まぁ…他のグリモアはもっと凄いねんけどなぁ…」
「何を鑑定し、私に見せるかはお前に任せる。それと…」
「…ん?なんや?」
「一々しょぼくれるな。お前はお前のできることを全力でやれ。」
「お…おう…!!…なんやお前、時々優しいな…ツンデレかいな!?」
「優しくなど無い…当たり前のことを言ったまでだ。」
キノクニとグリモアの会話がひと段落したちょうどその時、外の騒ぎが一際大きくなります。
「なんだ…?」
「面倒そうやな…見に行った方がええんとちゃう?」
キノクニは馬車の扉を開け、地面に降り立ちます。
門の方を見ると、ゼドが揃いのコスチュームを着た冒険者達に囲まれていました。
「…ですから!当店では動向は存じかねます故…」
「そんな事は知りませんわ!あの者はあなたの店の所属でしょう?!」
かなり激しく口論しているようです。
「あちゃー…面倒くさそうやな…なんや納品ミスかなんかか?」
「…馬車に戻るか、このまま商店街の方へ戻るか…」
すると、ゼドに怒鳴り散らしていた女性が、こちらに気が付き、近寄ってきました。ゼドは他の冒険者が、逃げないように取り囲んでいます。
「あなたは誰ですかしら?何者?ゼド商会の馬車から降りて来ましたわね!何をしに来たの?!」
「貴様には関係無かろう。」
「まっ…貴様ですって?!あなた…失礼ですけど、わたくしのことを知らないんですの?!」
「知らん。」
「~~~?!…あなた、ランクはいくつかしら!?見たところ旅人のようですが…」
「ランク…?」
「多分やけど…冒険者ギルドのランクちゃう?見せたるわ。」
グリモアがキノクニの目に情報を映し出します。
__________________
名前:マリアン・ステュー・グレイシア
性別:女
種族:人間
職業:SSS級冒険者 Lv.3
:魔導師
__________________
「冒険者ギルド…私は所属していない。」
「あらあらあら!この国では冒険者ギルドに加入していない者は武器を持つ事はできませんのよ?!余程田舎者なのかしら?!…あなた達!この者の武器を取り上げなさい!」
マリアンの号令で、ゼドを取り囲んでいた冒険者達がキノクニに迫って来ます。
「あわわわ!ヤバない?!てかそんな法律知らんで?!」
「…」
「キャハハハハ!!往生なさいませ!」
手下の冒険者達は、まずキノクニの剣を外します。
しかし…
「うわぁ!!」
ドズンッ!!
ボスゴブリンの目を貫き、大きな成木をも切り裂く剣は、並みの重さではありません。
冒険者1人では持てず、地面に落としてしまい、剣が地面にめり込んでしまいました。
「ぐぐっ…マリアン様…この剣…とても重く……持てるような物ではありませんっ……!!」
「何をやっているの?!その斧も取り上げなさい!!」
続いて手下達は、キノクニの背後に回り、自在斧コアトルを腰のホルダーから外そうとしますが、ビクともしません。
ホルダーの金具は解いてあるにも関わらずです。
「くっ…何だこの斧は……取れない!!」
「何を手間取っているの?!見せなさい…ああっ?!それよりあなた!このポーチは!!」
「やかましい。なんだ。」
「なんだじゃありませんわ!!これは"アルノルドの懐袋"ではありませんか!!?ど、どこでこれを手に入れ…いや!盗みましたの?!それはわたくしが頼んだ物ですのよ!!」
「ドワーフの商人から貰ったものだ。命を助けた報酬にな。」
「そんなことは知りませんわ!!それは紛れも無くわたくしの頼んだ品物!そのドワーフの商人はどこに行きましたの!?」
「死んだ。」
「はあ?!」
マリアンは苛立ちで真っ赤になっています。
まるで茹で蛸のようです。
「どいてください!貴方達!…はあ!キノクニ様!大丈夫ですか!?」
冒険者達をかき分けて、ゼドがキノクニに近寄ってきます。
キノクニは剣をしまい、ゼドに向き直ります。
「他愛ない。それより聞きたいことがある。この国には冒険者ギルドに所属しなければ武器を所持できないという法があるのか?」
「い、いえ…たしかにそのような法案が提出された話は聞いていますが…まだ決まっていないはずでございます。」
「キイイイイ!わたくしが法律なのです!!わたくしの言う事は絶対なのです…」
「おい!ゼドはいるか?!」
今度は大きな声の男が、冒険者達を押し退け入ってきました。
「おお!ゼド!急に呼ばれて驚いたぞ!何事だ?」
「ああ!オルドガ殿!実はこちらのマリアン殿に難癖をつけられていまして…」
「オルドガ様っ…?!…というか難癖とはなんですの?!わたくしはただ頼んだ品物を取りに来ただけですわ!そしたら何故かその得体の知れない男がわたくしのポーチを持っていて…わたくしは悪くありませんわ!」
「まあまあ落ち着け…ええと、お前さんは?」
「…お前こそ誰だ?」
「あぁ?…ああ、そうか、すまんな。先に名乗るべきだったな。俺はオルドガ。冒険者ギルド本部の副ギルド長をやっている。改めて名を聞こう。」
「…キノクニだ。」
「そうか。ではキノクニ。お前さんは冒険者ギルドには所属していないよな?」
「していない。」
「そうか…何故ここに?」
「そこのゼドという商人に呼ばれてここへ来た。」
「ほお!ゼドが!?お前が気にいるなんざ珍しいなあ?」
「キノクニ様には至らない者を排除していただき、胸がすきましたから…それに興味もありますし、彼にも、彼の武器にも。」
「武器…?ほおほお!そいつはまさか…"再生剣ヘリオス"か?どこで手に入れた!?」
「名は知らん…昔、冒険者ギルドの依頼で立ち寄った砦で、敵から奪った。」
「昔?…昔はギルドに所属してたのか…まぁ、それなら構わんがな!」
「構いますわ!ギルドに属していない者は、武器を所持することはできないはずですわ!!」
マリアンがキイキイ叫びます。
「マリアン。その法は却下されたばかりだろう。この物騒な世の中に、丸腰で生きていける者などいない。」
「そんなっ…でもそのポーチはわたくしの物ですのよ!」
「ふむ…受注証は?」
「それは…ありませんわ。ドワーフの商人は受注証は書けないと言いました…特別な品で、手に入るかわからないと…」
「お前…そりゃ闇商人じゃないのか?」
「違う…はずですわ!彼はこの"フォーデン商会"の会員証を見せてくれましたもの!」
「…と言っているが?ゼド。」
「ウチにはドワーフの商人はいません。覚えもございません。」
「だそうだ。マリアン。」
「でもでもでも!」
いくら話し合おうと、イタチごっこです。
そこで、オルドガはパンと柏手を打ちました。
「よし!分かった!決闘だ!」
「……あら。」
「なんだと?」
「キノクニ。お前さんはそのポーチは自分の物だと主張する。そうだな?」
「そうだ。」
「対してマリアン。お前は自分の物だと主張する。」
「ええ!神に誓って!」
「では決闘だ。キノクニ。お前は腕に覚えがあるから、1人で旅などしているのだろう?かまわんな?」
「受ける道理がない。」
「おおっと。だが、受けないといつまでたってもこの令嬢が引っ込まねえぜ?」
「殿方が…こんなにか弱いわたくしに恐れをなすのかしら…?」
「…」
「それに、受けないと争いの種であるそのポーチを、副ギルド長権限で取り上げなきゃならなくなる。それは互いに嫌だろう?」
「嫌ですわ!あなた!逃げずに受けなさいよ!!」
「ああっ、キノクニ様!彼女は…」
「さあ!どうする?!キノクニ!受けるか、受けないか?!」
「………ふぅぅう…分かった…受けよう。」
「決まりですわ!」
「キノクニ様!」
「よし決まりだ!大規模な破壊魔法や技は禁止!それ以外は何をしても良い!生殺与奪も禁止だ!」
「生温い…」
「大丈夫かいな…」
キノクニはグリモアをゼドに押し付け、マントだけを外します。
「持っていろ。盗もうなどとは思うな。盗めば貴様を斬り裂き、二度と蘇れぬよう消し炭にする。」
「そんな!私を信用してください!それよりキノクニ様…彼女はSSS級の冒険者!魔導師ですよ?!命は取られないとはいえ危険では…」
「問題無い。」
「魔法ポーチならばウチにもありますから…はっ…えっ?!」
「まあまあ。大丈夫やてゼドちゃん。肩の力抜いて気軽に見ときや。」
「場所を空けろ!決闘だあああ!!」
「粉々にして差し上げますわ…」
「不毛だ。」
そして、ゼドの屋敷前で、円状に場所が空けられ、舞台が整いました。
両端にキノクニとマリアンが立ちます。
マリアンは手下に持たせていた杖を持っています。
「ではこれより!冒険者マリアンと旅人キノクニの決闘を始める!!両者、準備はいいか?!」
「キャハハハハ!いつでも万全ですわ!!」
「…構わん。」
「それでは用意…始めぃ!!」
ドォン!!!
オルドガが決闘開始を宣言したその瞬間、勝敗は決しました。
キノクニがマリアンを殴りつけ、地面にめり込ませることで。
「………は?」
「これで良いのだろう。時間が惜しい。屋敷へ入るぞ。商人。」
「えっ…いや…は????」
ゼドは何が起きたか分からず、あたふたしています。
手下の冒険者達も、野次馬の人々も、オルドガも…口をあんぐりと開け、呆けています。
「「「「なにぃいいいいいいい?!?!」」」」
やっと声が上がったのは、キノクニ達が屋敷に入って、しばらく経った後でした。
続きは次回のお楽しみです。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる