のっぺら無双

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記録二十二:関所〜裏町鍛冶屋

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 もうじき都の関所が見えてくるところまで来ました。

 時刻は午後15時です。

 キノクニの思っていたよりも遅くなりましたが、竜狩りはなんとか1日でおわりました。

 あとは、鱗を裏町鍛冶屋に持って行くだけです。

 「あら…?様子がおかしいですわ!!」

 関所が見えたところで、マリアンが異変に気付き、声を上げます。

 キノクニも関所に目を向けると、何やら大勢の人…格好からして、冒険者達でしょう…が、集まっています。

 「魔導師よ。私はここで待つ。お前は何があったか聞いてくるのだ。」

 「分かりましたわ!」

 マリアンは駆け足で関所に近付いていきます。

 キノクニは担いでいた主の死体を下ろし、腰掛けました。

 「なーー!ええやろ?なーあ!黒龍でオレのブックカバー作ってやー!なー!なー!なーて!なー!」

 「…黙れ…貴重な素材を、無駄にはできん…」

 「むっ…無駄てなんや無駄て!?オレの守りが固くなれば、黒龍戦の時みたいに、わざわざオレを投げ逃す手間が省けんねんで!?」

 「ならばもっと有意義なことに使う…装備を新調してもいいかも知れんな…」

 「えー!嫌や嫌や嫌や!オレブックカバー欲しー!かっこええ奴ー!なあ!なあー!」

 グリモアは懇願し続けますが、キノクニはまともに取り合いません。

 そうこうしている時でした。

 「離してくださいませ!!」

 マリアンの叫び声です。

 キノクニはそれに気付き、身を屈めて様子を伺いに、関所に近付きました。

 そこには、冒険者達を従えたルークが居り、マリアンの腕を無理矢理掴んで離さないという光景が広がっていました。

 「さあ!僕が連れて行ってあげるから…早く治癒院に…」

 「怪我なんかありませんわ!
 それよりどう言うことですの?!
 キノクニ様が指名手配だなんて!!」

 「あいつは君をさらっただろう?!
 それにギルドの許可なくドラゴンを大量に殺したじゃないか!」

 「さらわれてませんし、正当防衛ですわ!全て向こうから襲って来たから殺したのです!
 それにギルドの許可がなければ狩ってはいけないなどと言う法律は、聞いたことかまありませんわ!」

 「とにかくアイツはどこにいるんだ!?捕まえないと!!」

 「止めてくださいませっ…離して!!」

 ルークは何やら冒険者達に指示を出すと、マリアンを強引に引っ張って、関所をくぐって行ってしまいました。

 「おいっ…キノクニどうすんねん?!
 マリアンちゃん連れてかれてもうたで!」

 「あの魔導師ならば心配あるまい。奴らの身内だからな。寧ろ危ないのは私達だぞ。」

 「えっ…あっ!!」

 「あの男はお前を欲しがっていたからな。もし私が捕まればお前もどうなるか分かったものではない。
 それ以前に…私の編笠もマントも、フードまでも、あの龍に燃やされた。
 今の私を見れば、一般人すら私を殺そうとするだろうな。」

 「あちゃー…どないすんねん…」

 「お前を捨て、無垢の旅人の振りをする…」

 「ええっ?!」

 「…冗談だ。」

 「お前が…冗談……?!てか冗談やないし!こんな時に言うとる場合か!?」

 「…こうする。」

 キノクニは思い切り腕を振りかぶり、手刀を防壁に突き立てました。

 ズガンッ!

 破壊音と共に、手刀は深く突き刺さります。

 「ふん!」

 ズガン!

 「ふん!」

 ズガン!

 キノクニはそれを繰り返し、ついには防壁を登り切ってしまいました。

 「お前にかかれば防壁も全くの無意味やな…」

 「ふん。容易いことだ。」

 「いやいや。そう容易くはあるまい。」

 「?!」

 知らぬ声がし、そちらを見ると、そこには黒い長衣を纏った髪の赤い男が座っていました。
 額には赤い宝石の装飾品が輝いています。

 「貴様は…」

 「私はギルド長のエドガード。君の指名手配を実行させた張本人だよ。」

 「なんやと…」

 キノクニの目に情報が映ります。

__________________
 名前:エドガード・カノン・ノアル
__________________

 「名前しか見えへん…」

 「おや?今鑑定をしたな?…それが噂のグリモアくんか。ルークが君を欲しがっていたぞ。」

 「…」

 「だんまりか。まぁ分かる。…そんなことより君だ。キノクニくん。まさか顔無しとはな…何故都に来た?」

 「…貴様には関係の無いことだ。」
 
 「話に聞いた通りの無礼漢だな。私はただ話をしようとしているだけなんだがな。」

 「…ふん。それほどの殺意を放っておいて、どの口がほざく。」

 キノクニの言った通り、エドガードは武器こそ持っていないものの、殺気を漲らせていました。

 「…分かるか?ハハッ…私は戦闘狂でな……強い者を見ると自然とこうなる。だが私はギルド長でもある…
 指名手配をした手前、君と殺し合いをする訳にはいかん…」

 「大変そうだな。」

 「ハハハハハ…大変どころじゃ無い。辛くてたまらん…ふんっ!」

 キィン…!!

 エドガードは突然手元に現れた長刀で、キノクニの首をはねようとしました。
 キノクニはすかさず戦鎚をわずかに抜き、柄の部分で防御します。

 「…ハハハハハ!!やはり素晴らしい!!私の初撃を初見で防ぐ者は久々だ!!!」

 「…ぬぅ…」

 ギチギチと音を立てて刃が競り寄ってきます。
 エドガードの腕力は、キノクニの防御を押すほどに強大です。

 「さあ!どうする?!さあ!!」

 「……ぬえりゃ!!!」

 ズブシュッ!!

 防壁を鮮血が染めます。

 キノクニは防御を解き、防壁に向かって拳打を放っていました。

 しゃがんだため、そこまで深手ではありませんが、長刀が首を掠めて血が流れてしまいました。

 「なにをっ…?」

 ビシビシビキィ!!

 キノクニはしゃがんだ状態から一気に跳躍し、近くの建物の屋根に飛び移ります。

 残ったエドガードの足元からは、破壊音が響き、エドガードがハッとした時には…

 ガラガラガラガラガラ!!!!

 防壁は縦に崩れ落ち、その崩壊にエドガードを巻き込みました。

 「なんや?!お前、光る拳を使ったんか?!」

 「違う。あの光は武器を使うと消える。素手でで殴った。元々登ってきた際の手刀で、脆くなっていたのだ。」

 「あったまええなー!これであいつ、死んだかな?」

 「生きている。虚は突いただろうがな。今のうちに逃げるぞ。」

 キノクニは首の傷に集中し、止血します。
 血を辿られないようにです。

 そして素早く身を翻すと、屋根から屋根へ飛び移り、あっという間に見えなくなってしまいました。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ガラガラガラッ…

 崩れ落ちた防壁の瓦礫から、男が1人立ち上がります。

 エドガードです。

 埃だらけで、髪も乱れています。

 「…ふぅ。どうやらあの男は戦闘狂ではなかったようだ。
 同じ者同士なら、少なからず惹かれるはずだからな。」

 エドガードは、防壁の上で見せた戦闘狂の目とは違う、理知的な光を目に宿し、埃をはたきます。

 「しかし考えたな…自分が登ってきた跡を利用するとは…
 頭がいいし何より環境利用能力がズバ抜けている。」

 「ガハハハハ!だから言っただろ?!戦えねえってさ!」

 いつの間にか、副ギルド長・オルドガが、瓦礫に腰掛けています。

 どうやら一部始終を見ていたようです。

 「私との殺し合いにも耐えられそうな男だったんだが…見事に逃げられた。」

 「お前の力を使えば良かったじゃねーのか?」

 「私の力は日に一度しか使えない…
 あの男の現れる場所を予測するのに、使ってしまったからな。」

 「ガハハ!そら仕方ねーな!」

 「…ともかく、アレは悪戯に誘拐をしたり、戦闘を繰り広げる危険人物では無い。指名手配は解いておけ。」

 「…"顔無し"なのはいいのかよ?」

 「アレは…おそらく元は顔があったはずだ…
 ざっと見た骨格が、顔無し族の物ではなかった。…お前も悪戯に、顔無しなどと触れ回るなよ。
 アレは敵に回せば無駄な死者が増える。」

 「了解だぜ。ギルド長。」

 こうして、キノクニの指名手配は解かれたのですが、キノクニには知る由もありませんでした。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 「冷や冷やしたなー。ギルド長直々にお出ましとは…
 オレ、ちびるかと思ったわ~。」

 「何をだ。」

 「心の小便。」

 「…」

 「いや、無言派止めて?」

 キノクニは今、裏町の路地に潜んでいました。もう少し進むと、アモンの鍛冶屋につくはずです。

 「…あ!アレやで!オープンってなっとるわ!」

 カランカラン…

 キノクニは扉を無造作に開きました。

 前に来た時とは変わらず、マスターが皿を磨いています。

 「ウヘヘ…ようにいちゃん。今や都一の有名人だな…歓迎するぜ…」

 トントンッ

 マスターが床を蹴ると、ガパリと床が開きます。

 「勝手に入りな…ウヘヘ。」

 キノクニはゆっくりと階段を降り、行き止まりにある扉を開けます。

 ガチャリッ…

 カン!カン!カン!カン!キィン!

 「おらカナン!最終調整だ!しっかりシゴいてやれや!」

 「やー!」

 カン!カン!カン!カン!キィン!

 中では小気味よい金槌の音が響き、キノクニの武器が洗練されていました。

 「戻ったぞ…」
 
 カン!カン!カン!カン!カン!

 「…はぁ…」

 キノクニは音魔法で話しかける手間より、グリモアを掲げる方を選びました。

 「よしゃ!…おーい!爺ちゃん!!戻ったでー!!」

 「んがっ!?がっがっがっ!早かったなのっぺらぼうの恩人!ちっと待て!もうすぐ完成だぜ!!」

 カィン!カィン!カィン!カァァァン!!!

 「やー!出来たよ爺ちゃん!やったねー!完璧ー!」

 「ふうい。まあ、上出来じゃろうて。」

 キノクニがカウンターに腰掛けると、アモンが布に包まれた剣を持ってきました。

 「大分姿が変わっちまったが…こりゃ確かな逸品だぜ!見てやってくれ!」

 バサッ!

 そこには、黒い持ち手に金色の鎖が絡み、金の鍔から短くも分厚く、金色のギザギザ刃をたたえる剣が、2つ並んでいました。

 「これは…」

 「すげぇだろ?!こいつの希望でなぁ!!お前さんの役に立つには、もっと頑強に、かつ広範囲の武器になりたかったらしくてな!
 少々形は変だが、そんな剣になったぜ!!…刃は黒い方が良かったらしいが、金色になっちまった!許せ!」

 キノクニは、剣を両手に持ち、感触を確かめます。

 しっかりと手に馴染んで、持ちやすくなっていました。

 「この籠手をつけな。今のと交換だ!」

 アモンが出した前腕を覆う形の籠手をキノクニが付けると、剣の柄についていた金の鎖が固定に絡みつきます。

 「がっがっがっ!そいつはあの骨で出来た鎖だぜ!
 竜鱗粉って研磨剤で磨いたら、呪いが取れて金色になりやがった!
 今までの鎖より遥かに使いやすいはずだ!
 もちろん取り外しも出来るから、用途によって使い分けな!!」

 「わたしのデザインなんだよー。」

 「そうか…」

 「そいつのすげえ所は任意でお前の腕力そのままに振り回せるってこった!
 鎖のお陰だな!」

 「本よ…」

 「ほいよー!キチンと鑑定すんでー!」

__________________
 名前:双金剛剣" "

 分類:双剣
   :特殊装備"所有者選定"

 数値:攻 3800
   :魔 1500
   :運 250
   :???(鑑定Lv.6以上) 

 特性:再生
   :???(鑑定Lv.6以上)

 説明
 魔鍛治師の腕により、双剣となった再
 生剣。再生能力はそのままに、刃が分
 厚く、短くなった。双金鎖との併用に
 より、凄まじい攻撃範囲をほこる。
 所有者と認めていない者が持つと、凄     
 まじい重量を帯び、拒絶の意を示す。
__________________

__________________
 名前:双金鎖ツイン

 分類:神器
   :特殊装備"所有者選定"

 数値:攻 1800
   :魔 1900
   :運 50
   :???(鑑定Lv.6以上)

 特性:任意操作可能
   :再生
   :???(鑑定Lv.6以上)

 説明
 魔鍛冶師の腕により、呪いが解け、神
 器となった双竜の骨で出来た鎖。
 所有者と認めていない者が持つと、凄
 まじい不運を呼び寄せ、拒絶の意を示
 す。
__________________

 「凄まじいな…オレの鑑定やと見きれん所もあんで…」

 「もう一度24時間アイテム鑑定でもしてこい…」

 「もう二度とやらへん…」

 「何故剣に名が無い。」

 「がっがっがっ!そりゃ後のお楽しみだ!品質は折り紙付きだぜ!それより鱗は取ってきたか?」

 「これで足りるか。」

 キノクニは赤い主の鱗と、黒龍の死体を出しました。

 「がっがっがっ!飛竜の物と…こりゃなんだ?子竜の死体か?!がっがっがっ!…いや、待てオイ…こいつぁ…」

 続きは次回のお楽しみです。

 

 
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