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1、転んで牢獄
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「もういい!!母ちゃん父ちゃんのあほー!!」
拝 謙信はそう叫ぶと、家から勢いよく飛び出して行った。
「ケン!待ちなさい!!」
「はははは!!反抗期か!良いな!やらせとけ洋子!!」
父親である拝 勘助は快活に笑うと妻の洋子にそう言い止めた。
「でもカンちゃん…」
「男はそんくらいの気概がなきゃやってけねえよ。なー?ミチカー?」
「だぁー…チュパチュパ…」
洋子の腕の中でおしゃぶりをくわえて瞳を泳がせる美智香には、まだ何も理解できていない。そもそも五ヶ月前に生まれたばかりで、おしゃぶりをねだり始めたのもつい最近のことなのだ。
もっぱら、洋子の乳かおしゃぶりに吸い付くのが、今の美智香の主な日常である。
「おー、可愛いな~。可愛いな~。ミチカは強くならなくて良いからな~?お父ちゃんがずっと守ってやる~。」
「もう!カンちゃん!ここのところケンに構ってあげてなかったから、あの子飛び出したんですよ!ミチカは私が見てますから、早く追いかけて上げてください!」
「…分かったよ。ったく、しょうがねえなぁ、謙信のヤツァ。そんなことで拗ねやがって…」
そう言いつつ、自分も幼い頃に同じ理由で家を飛び出したことがあるのを思い出し、バツの悪くなる勘助だった。
ーーーーー
「へんだ!もう知らねーや!あほあほ父ちゃんにあほあほ母ちゃんめ!」
謙信はいつもとは違う知らない道をずんずん進んでいた。
家を飛び出してもう30分は経つ。
謙信は洋子や勘助にそっくりな子供だった。
こうと決めたことは頑として譲らず必ずやり遂げると言う気概を、赤ん坊の頃から持ち合わせていた。
まぁ、大抵のことは子供の力でどうにかなる、取るに足らないことばかりだったが…
今回は違った。
勘助の探している地域とは全く違う地点を、謙信は歩いている。
本気で家出を実行していた。
背中にはリュックを背負い、ありったけのお菓子をつめこんでいた。
「へくしゅっ!!寒くなってきたな…でも帰らねー!」
そう毒づきつつ、謙信は上着のジッパーを首元まで上げた。
時刻はすでに夕方の6時。
季節は秋と冬のちょうど中間。
寒くなって当然だった。
「ずずっ…そろそろ…どっか寝るところ探さないと…」
「おや?!どうしたんだぼうや?」
「…?」
後ろから呼びかけられ、謙信が振り向くと、警察官だった。
絵本や保育園のお勉強の時間によく見る姿だ。
父親も警察官だし、正義の味方の象徴。
いつもなら喜んで纏わりつきにいくところだが、今の謙信には具合が悪い。
何せ、家出中なのだ。悪いことをしていると言う自覚は十二分にある。
「…っ!!」
「あっ!こら!」
謙信は一目散に逃げ出していた。
保育園では一番早い謙信だが、大人の男、しかも警察官にかなう訳もない。
「待て待て。」
「いやだっ…!!」
すぐそこまで大きな手が迫っていた。
ずるっ…
「あっ…!?」
「あっ!!危ないぞぼうやっ…!!」
どてんっ!!
どうやら転んでしまったらしい謙信は、そのまま気絶した。
ーーーーー
「まさか…拝み巡査長のお子さんだったとは…申し訳ありませんっ…」
「謝るな…俺たちが悪りぃんだ…」
「ケン…目を覚まして…うぅ…」
「だぁぁ…あぶふ…」
それから丸一日が経った。
目を覚さない謙信の様子をおかしく思い、警察官が救急車の出動を要請。
病院に運ばれた謙信だったが、いつまで経っても起きる様子はない。
勘助や洋子、美智香が駆けつけた頃には、集中治療室で点滴や心電図などの管に巻かれ放題になっていた。
「うううう…ごめん…ごめんだから…起きてよケン……」
「ケンシン…バカヤロウが…多めに見てやるからとっとと起きやがれ…うう…」
「だー…あー…」
父親と母親の泣き声と、赤ん坊の無邪気な声が、病院の廊下に虚しく響いた。
ーーーーー
「………うわああああっ!!!」
謙信は慌てて飛び起きた。
警察官に追われている。逃げなければ捕まって家に連れ戻されてしまう。
「……はぁっ…はぁっ…あれ…?!」
しかし、目を開けてまず目に入ったのは警察官の姿ではなかった。
「ケケケケ…どうしたよ急に飛び起きて…バケモンの夢でも見たか?ケケケケケ…」
「ここは…どこ…?」
「はぁ?ケケケケ…アンポンタン。ここが何処かだと?…見て分からなねえかい?」
自分に話しかける小さな男…その背後には鉄格子…
「…牢屋?え、おれ…捕まったのか…?」
「今頃気づいたのか…ケケケ…全く、ここに来て初めて喋りやがったかと思ったら、とんだ頭のネジ飛びだ。」
「ここに来て…って、おれ、いま警察官の人から逃げて…飛び起きたらここにいたから、知らねーよ。」
「何が言いてえのか分からねえが、お前さんはここに来てもう十晩ほど経ってるぜ。それを知らねーってんなら、お前は頭のネジ飛びな上に心の栓抜けだなぁ。」
「うそだ…うそだっ!」
段々と視覚や嗅覚、聴覚がはっきりしてきた。
今まで嗅いだこともないようなひどい匂いに、遠く暗闇の中から聞こえてくる悲鳴。
何より鉄格子の外には闇以外の何も見えないと言うのがさらに混乱と不安、恐怖をかき立てた。
「おれ…家出しただけなんだ!父ちゃん言ってた!家出ぐらいお前ぐらいの歳なら何回でもするって…だからおれもしてやったんだ!悪かったよ!謝るからここから出してよ!!」
「ケケケケ…それ、ワシに言ってるのか?」
「だって!お前がおれをここに閉じ込めたんだろ!?」
「んな訳ねーだろ。だったらなんでお前と一緒にこんな臭え場所にいるんだよ。」
「そんなの…お前が変態だからだろ!!」
「ケケケケケ!変態とはな!!確かにこの牢獄にゃあそんな変態も五万といるだろうがな!!」
「ううううう…」
謙信は馬鹿ではない。本当は気付いていた。
目の前の男に何を頼もうが叶うはずがない。
それに、つい今しがた気付いたこともある。
自分の声が変だ。大人のような低い声…
「え…あれ…おれ…なんで……?!」
そういえば目の前の男も大人のくせに小さく見える。
「なんでお前大人なのに小さいんだよ…!?」
「うるせぇ!!背丈をいじるな!!ブチ殺すぞ!!」
「訳わかんねえ…!!」
混乱極まる謙信だったが、その混乱もかき消された。
ガンガンガン!!!
「うるさいぞ105号!106号!!懲罰房行きにされたいか!!!?」
いつの間にか鉄格子の外に男が現れた。思い切り棒で鉄格子を叩いている。
その音の方がうるさいくらいだ。
「ケケケケ…すんませんねぇ、看守の旦那…この同房が突然叫び出すもんで…」
「おれは…むぐっ!!」
小さな男は精一杯背伸びをして謙信の口を塞いだ。
腐った卵のような臭いに涙が出た。
「…とっとと寝ろ!もう一度騒がしくしてみろ…容赦はせんぞ!!」
「へぇ…本当にすんません…ケケケ…」
「あと貴様は気持ち悪いから笑うな!」
「……すんません…」
看守と呼ばれた男は、一通り謙信と小男を罵ると鉄格子から離れていった。
「あっ…まっ…」
ズンッ!!
「かはっ…!?」
小男は素早く謙信の口から手を離すと、そのまま謙信の鳩尾を思い切り殴り上げた。
「お前さんふざけるのも大概にしろよ…ワシャ懲罰房行きになんざなりたくねぇからな…看守が言ってたろぉが?とっとと寝ろ…」
「お前っ…なにすんだよ…」
「……ここは第六共同監獄って呼ばれてる。監獄だよ。わかるか?増える一方の罪人を、ある程度まとめてぶち込んどく場所だよ。」
「…なんでおれ…牢獄になんか…」
「知らんよ。ケケケ。まぁ独房にぶち込まれてねぇんだ。大した罪じゃねぇんだろうが。ワシも…ケケケ…スリの罪で懲役100年だ。軽いもんだ。」
「ひゃくねん!?お前…死んじゃうじゃんか!」
「はぁ?ワシャそんな短命じゃねぇわ!!バカにすんなよ!ワシャ誇り高き"鬼人だ!!人間の尺度で舐め腐って話すなよ!!」
「ごぶりな!?なんだそれ…お前幼稚だな!!」
「なんだとてめぇ…!!」
「105号!106号!!出ろ!!」
「うげっ!!しまった!!!」
「え?!出れるの!?」
「貴様らは懲罰房行きだ!!」
「勘弁してくれぇ!!ワシは悪くない!!このぶっ飛び野郎のせいなんだよぉ!」
「か、かんしゅさん!!おれ家出のことなら謝るから出してよ!頼むよ!!」
「やかましい!!ふざけるな106号!!貴様、いまさらになって自らの罪を欺くつもりか!?」
「そ、そりゃ父ちゃんや母ちゃんにあほって言ったりしたけど…」
「貴様の罪は殺人だ!!なんの罪も無い少女を…奴隷の分際で貴族の令嬢を殺害した罪!!はなはだ悍ましい!!」
「なんだとぉ…お前…」
「さつじん…!?おれ、殺しなんかしないよ!!父ちゃんと約束したんだ!!虫だって殺さないって!ゴキブリだって外に逃すって!約束…」
「黙れ!!とにかく貴様らは懲罰房行きだ!!電撃責めだ!!」
「嫌だ!!助けてくれよぉ!看守の旦那ぁ!!」
「うそだ!!やってない!!おれは殺しなんか…!!」
泣き喚く二人の声などお構いなしに、看守は懲罰房へと引き立てて行った。
拝 謙信はそう叫ぶと、家から勢いよく飛び出して行った。
「ケン!待ちなさい!!」
「はははは!!反抗期か!良いな!やらせとけ洋子!!」
父親である拝 勘助は快活に笑うと妻の洋子にそう言い止めた。
「でもカンちゃん…」
「男はそんくらいの気概がなきゃやってけねえよ。なー?ミチカー?」
「だぁー…チュパチュパ…」
洋子の腕の中でおしゃぶりをくわえて瞳を泳がせる美智香には、まだ何も理解できていない。そもそも五ヶ月前に生まれたばかりで、おしゃぶりをねだり始めたのもつい最近のことなのだ。
もっぱら、洋子の乳かおしゃぶりに吸い付くのが、今の美智香の主な日常である。
「おー、可愛いな~。可愛いな~。ミチカは強くならなくて良いからな~?お父ちゃんがずっと守ってやる~。」
「もう!カンちゃん!ここのところケンに構ってあげてなかったから、あの子飛び出したんですよ!ミチカは私が見てますから、早く追いかけて上げてください!」
「…分かったよ。ったく、しょうがねえなぁ、謙信のヤツァ。そんなことで拗ねやがって…」
そう言いつつ、自分も幼い頃に同じ理由で家を飛び出したことがあるのを思い出し、バツの悪くなる勘助だった。
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「へんだ!もう知らねーや!あほあほ父ちゃんにあほあほ母ちゃんめ!」
謙信はいつもとは違う知らない道をずんずん進んでいた。
家を飛び出してもう30分は経つ。
謙信は洋子や勘助にそっくりな子供だった。
こうと決めたことは頑として譲らず必ずやり遂げると言う気概を、赤ん坊の頃から持ち合わせていた。
まぁ、大抵のことは子供の力でどうにかなる、取るに足らないことばかりだったが…
今回は違った。
勘助の探している地域とは全く違う地点を、謙信は歩いている。
本気で家出を実行していた。
背中にはリュックを背負い、ありったけのお菓子をつめこんでいた。
「へくしゅっ!!寒くなってきたな…でも帰らねー!」
そう毒づきつつ、謙信は上着のジッパーを首元まで上げた。
時刻はすでに夕方の6時。
季節は秋と冬のちょうど中間。
寒くなって当然だった。
「ずずっ…そろそろ…どっか寝るところ探さないと…」
「おや?!どうしたんだぼうや?」
「…?」
後ろから呼びかけられ、謙信が振り向くと、警察官だった。
絵本や保育園のお勉強の時間によく見る姿だ。
父親も警察官だし、正義の味方の象徴。
いつもなら喜んで纏わりつきにいくところだが、今の謙信には具合が悪い。
何せ、家出中なのだ。悪いことをしていると言う自覚は十二分にある。
「…っ!!」
「あっ!こら!」
謙信は一目散に逃げ出していた。
保育園では一番早い謙信だが、大人の男、しかも警察官にかなう訳もない。
「待て待て。」
「いやだっ…!!」
すぐそこまで大きな手が迫っていた。
ずるっ…
「あっ…!?」
「あっ!!危ないぞぼうやっ…!!」
どてんっ!!
どうやら転んでしまったらしい謙信は、そのまま気絶した。
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「まさか…拝み巡査長のお子さんだったとは…申し訳ありませんっ…」
「謝るな…俺たちが悪りぃんだ…」
「ケン…目を覚まして…うぅ…」
「だぁぁ…あぶふ…」
それから丸一日が経った。
目を覚さない謙信の様子をおかしく思い、警察官が救急車の出動を要請。
病院に運ばれた謙信だったが、いつまで経っても起きる様子はない。
勘助や洋子、美智香が駆けつけた頃には、集中治療室で点滴や心電図などの管に巻かれ放題になっていた。
「うううう…ごめん…ごめんだから…起きてよケン……」
「ケンシン…バカヤロウが…多めに見てやるからとっとと起きやがれ…うう…」
「だー…あー…」
父親と母親の泣き声と、赤ん坊の無邪気な声が、病院の廊下に虚しく響いた。
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「………うわああああっ!!!」
謙信は慌てて飛び起きた。
警察官に追われている。逃げなければ捕まって家に連れ戻されてしまう。
「……はぁっ…はぁっ…あれ…?!」
しかし、目を開けてまず目に入ったのは警察官の姿ではなかった。
「ケケケケ…どうしたよ急に飛び起きて…バケモンの夢でも見たか?ケケケケケ…」
「ここは…どこ…?」
「はぁ?ケケケケ…アンポンタン。ここが何処かだと?…見て分からなねえかい?」
自分に話しかける小さな男…その背後には鉄格子…
「…牢屋?え、おれ…捕まったのか…?」
「今頃気づいたのか…ケケケ…全く、ここに来て初めて喋りやがったかと思ったら、とんだ頭のネジ飛びだ。」
「ここに来て…って、おれ、いま警察官の人から逃げて…飛び起きたらここにいたから、知らねーよ。」
「何が言いてえのか分からねえが、お前さんはここに来てもう十晩ほど経ってるぜ。それを知らねーってんなら、お前は頭のネジ飛びな上に心の栓抜けだなぁ。」
「うそだ…うそだっ!」
段々と視覚や嗅覚、聴覚がはっきりしてきた。
今まで嗅いだこともないようなひどい匂いに、遠く暗闇の中から聞こえてくる悲鳴。
何より鉄格子の外には闇以外の何も見えないと言うのがさらに混乱と不安、恐怖をかき立てた。
「おれ…家出しただけなんだ!父ちゃん言ってた!家出ぐらいお前ぐらいの歳なら何回でもするって…だからおれもしてやったんだ!悪かったよ!謝るからここから出してよ!!」
「ケケケケ…それ、ワシに言ってるのか?」
「だって!お前がおれをここに閉じ込めたんだろ!?」
「んな訳ねーだろ。だったらなんでお前と一緒にこんな臭え場所にいるんだよ。」
「そんなの…お前が変態だからだろ!!」
「ケケケケケ!変態とはな!!確かにこの牢獄にゃあそんな変態も五万といるだろうがな!!」
「ううううう…」
謙信は馬鹿ではない。本当は気付いていた。
目の前の男に何を頼もうが叶うはずがない。
それに、つい今しがた気付いたこともある。
自分の声が変だ。大人のような低い声…
「え…あれ…おれ…なんで……?!」
そういえば目の前の男も大人のくせに小さく見える。
「なんでお前大人なのに小さいんだよ…!?」
「うるせぇ!!背丈をいじるな!!ブチ殺すぞ!!」
「訳わかんねえ…!!」
混乱極まる謙信だったが、その混乱もかき消された。
ガンガンガン!!!
「うるさいぞ105号!106号!!懲罰房行きにされたいか!!!?」
いつの間にか鉄格子の外に男が現れた。思い切り棒で鉄格子を叩いている。
その音の方がうるさいくらいだ。
「ケケケケ…すんませんねぇ、看守の旦那…この同房が突然叫び出すもんで…」
「おれは…むぐっ!!」
小さな男は精一杯背伸びをして謙信の口を塞いだ。
腐った卵のような臭いに涙が出た。
「…とっとと寝ろ!もう一度騒がしくしてみろ…容赦はせんぞ!!」
「へぇ…本当にすんません…ケケケ…」
「あと貴様は気持ち悪いから笑うな!」
「……すんません…」
看守と呼ばれた男は、一通り謙信と小男を罵ると鉄格子から離れていった。
「あっ…まっ…」
ズンッ!!
「かはっ…!?」
小男は素早く謙信の口から手を離すと、そのまま謙信の鳩尾を思い切り殴り上げた。
「お前さんふざけるのも大概にしろよ…ワシャ懲罰房行きになんざなりたくねぇからな…看守が言ってたろぉが?とっとと寝ろ…」
「お前っ…なにすんだよ…」
「……ここは第六共同監獄って呼ばれてる。監獄だよ。わかるか?増える一方の罪人を、ある程度まとめてぶち込んどく場所だよ。」
「…なんでおれ…牢獄になんか…」
「知らんよ。ケケケ。まぁ独房にぶち込まれてねぇんだ。大した罪じゃねぇんだろうが。ワシも…ケケケ…スリの罪で懲役100年だ。軽いもんだ。」
「ひゃくねん!?お前…死んじゃうじゃんか!」
「はぁ?ワシャそんな短命じゃねぇわ!!バカにすんなよ!ワシャ誇り高き"鬼人だ!!人間の尺度で舐め腐って話すなよ!!」
「ごぶりな!?なんだそれ…お前幼稚だな!!」
「なんだとてめぇ…!!」
「105号!106号!!出ろ!!」
「うげっ!!しまった!!!」
「え?!出れるの!?」
「貴様らは懲罰房行きだ!!」
「勘弁してくれぇ!!ワシは悪くない!!このぶっ飛び野郎のせいなんだよぉ!」
「か、かんしゅさん!!おれ家出のことなら謝るから出してよ!頼むよ!!」
「やかましい!!ふざけるな106号!!貴様、いまさらになって自らの罪を欺くつもりか!?」
「そ、そりゃ父ちゃんや母ちゃんにあほって言ったりしたけど…」
「貴様の罪は殺人だ!!なんの罪も無い少女を…奴隷の分際で貴族の令嬢を殺害した罪!!はなはだ悍ましい!!」
「なんだとぉ…お前…」
「さつじん…!?おれ、殺しなんかしないよ!!父ちゃんと約束したんだ!!虫だって殺さないって!ゴキブリだって外に逃すって!約束…」
「黙れ!!とにかく貴様らは懲罰房行きだ!!電撃責めだ!!」
「嫌だ!!助けてくれよぉ!看守の旦那ぁ!!」
「うそだ!!やってない!!おれは殺しなんか…!!」
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