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第五話 気合の入る日
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さぁ、今日は気合を入れていこう。
久しぶりに女友達と一緒にランチを予定している。
家にいるといつもおんなじような恰好で、適当にファンデーションと口紅だけをつけて過ごす。まぁ、どこにもいかない日にはほぼすっぴんだけれど。
でも今日はそうはいかない。
昨日の晩にはしっかりと美容パックをして、朝からしっかりと潤いコーティングジェルを塗っている。
化粧品を並べて、化粧水、乳液、クリームを練りこみ、下地をいつになく丁寧に塗ってからファンデーション、ビューラーでまつ毛を上げて、アイシャドウ、アイライン、マスカラと塗っていく。ハッキリ言ってどれから順番に塗ればいいのかいまいち分かっていないけれど、どうにかなっている。そして眉毛を書いてチークを引いていく。
顔をじっと見つめて、塗りむらはないかとか、派手すぎないかとか、チェックをしていく。
髪の毛だって、いつもは適当に結んですごしているが今日はそうはいかない。
アイロンでクルリとまいて、ゆるふわヘアーを作り上げる。
この日の為にワンピースを買ってあるし、それにカーディガンを羽織る。靴は去年買ったものだけれど、まあいいだろう。
バックはとっておきの日に使う用の、誕生日プレゼントでもらったバッグ。
よし、気合は入っているけれど頑張りすぎていない感じだ。
鏡の前でくるりと少し回ってみて、なんだか結婚前の頃を思い出す。
新しい服やおしゃれは手間はかかるがテンションは上がる。
何となくもう一度鏡の前でクルリとまわって決めポーズをしてみる。
「なかなか、可愛いんじゃない?あら、なんか、いい感じじゃない?」
自分を褒め称えて士気を挙げる。
よし、これならいける。
時間に余裕をもって、靴を履いて家を出る。
ふふふ。今日はランチを楽しむぞー。
玄関を開けると、今日も異世界に繋がっていた。しかもどこかのおしゃれな会場らしく、いつものだらりとした服じゃなくて本当に良かったと心底ほっとする。
「これはこれは美しい御嬢さん。こんにちは。」
声を掛けられ振り返ると、そこにはきらきらとしたオーラを放つ美青年がいて思わず目を細めてしまう。
髪の毛は金色だし瞳は青色だしなんだこの美しい姿は。
神様不公平だろう。ええい。今はそんな事なんて言っていられない。こんな美青年と会話するなんて私には絶対に無理だ。よし、笑って切り抜けよう。
「ふふ。失礼いたします。」
「あぁ、待って。」
声を掛けられたが、あんな美青年と会話何て私には無理だ。
そそくさとその場を離れて、会場を進んでいくとやたらと自分に視線が集まっているのを感じる。
何故だ?
そう思い少し冷静に辺りを見回してみて気が付いた。
この国は女性がおしゃれをしない文化なのか、女性達はとても地味な色のワンピースを身にまとい、髪の毛はしっかりと頭に撫でつけるようにして一つに結んでいる。
皆が私を見て驚いたような顔をしていた。
文化が違うのかと焦っていると、あっという間に男性達に囲まれ二進も三進もいかなくなる。
やめてくれ。私は美形には耐性がないんだ。もう恐怖の対象でしかない。こんなおばさんほっといてくれ。頼むから、あぁ、手何て握らないでくれ。恐ろしいわ!
なので私は一喝。
「トイレに行きたいんです。」
恥ずかしいです。はい。でも、これが一番。ついでにお腹を押さえてみせると、男性達が引いていく。
その隙にトイレに駆け込んで大きく息を吐くと次は女性達に囲まれた。あ、でも女の人に囲まれるのは好きです。何となく幸せな気持ちになれます。
「あ、あの、その髪どうやるのですか?」
「そのワンピースはどこで売っているの?」
「お化粧がお上手ね?」
たくさん質問を受けまして、女性たちの持っている化粧品を見せてもらいました。
そうするとある程度はそろっています。私も化粧は得意なほうではないけれど、人の化粧って楽しいですよね。
「簡単でよければしましょうか?」
そう言うとすぐに行列ができたので、急いで仕上げていきます。そこまで細かなものではないけれど、人数がいるから仕方がないです。
上方はハーフアップにしたり、編みこみをしたり、横に流したり、色々とバリエーションを変えます。
お化粧はアイシャドウの使い方を主に変えていきました。
口紅もその人の印象に合わせて色を変えていきます。
一人にそんなに時間をかけるわけにはいかないので、出来るだけ早く仕上げていき、仕上げ終わったお嬢さんには仕方を見てもらって他の方の者を手伝ってもらいます。
ほおら、皆さん私よりもちょっと手を加えただけで何倍も可愛い。あ、ちょっと自信がなくなってきましたが気合で堪えます。
印象の変わったお嬢さん方が会場に戻ると、男性達からどよめきが起こりました。
ふう。
いい仕事をした気がします。
お嬢さん方にはお礼と言って、ブローチやイヤリングや髪飾りなど様々な物をもらって袋に入れてもらいました。いえ、いらないって断ったんですけれど、どんどん袋に詰められていって、もう断るに断れなくって仕方なく持っています。
取りあえずやっと帰ると、時間は出発時間と同じ。
少し疲れましたが、ランチ会場へと急ぎます。
どの子も私同様おしゃれをしていて可愛くて、なんだか学生時代に戻ったようです。
「え?その袋何?」
「いや、、、フリーマーケット、、かな?」
その後、もらったものを並べて内輪フリーマーケットを開きました。
飛ぶように売れて、私はホクホクです。
家に帰って、本当はすぐに化粧とか落として自由になりたいけれど今日はその恰好のまま旦那さんを待ちます。
「ただいまぁって、何?可愛いね。」
はい。いただきました。
あぁ、旦那さんの顔が一番落ち着きますね。まあ、美形は好きなんですけどね。
今日もお仕事お疲れ様です。
フリマで稼いだお金で今日はデパートの美味しいちょっとお高め料理です。
ふふ。異世界飯とどっちが美味しいかしらね。
久しぶりに女友達と一緒にランチを予定している。
家にいるといつもおんなじような恰好で、適当にファンデーションと口紅だけをつけて過ごす。まぁ、どこにもいかない日にはほぼすっぴんだけれど。
でも今日はそうはいかない。
昨日の晩にはしっかりと美容パックをして、朝からしっかりと潤いコーティングジェルを塗っている。
化粧品を並べて、化粧水、乳液、クリームを練りこみ、下地をいつになく丁寧に塗ってからファンデーション、ビューラーでまつ毛を上げて、アイシャドウ、アイライン、マスカラと塗っていく。ハッキリ言ってどれから順番に塗ればいいのかいまいち分かっていないけれど、どうにかなっている。そして眉毛を書いてチークを引いていく。
顔をじっと見つめて、塗りむらはないかとか、派手すぎないかとか、チェックをしていく。
髪の毛だって、いつもは適当に結んですごしているが今日はそうはいかない。
アイロンでクルリとまいて、ゆるふわヘアーを作り上げる。
この日の為にワンピースを買ってあるし、それにカーディガンを羽織る。靴は去年買ったものだけれど、まあいいだろう。
バックはとっておきの日に使う用の、誕生日プレゼントでもらったバッグ。
よし、気合は入っているけれど頑張りすぎていない感じだ。
鏡の前でくるりと少し回ってみて、なんだか結婚前の頃を思い出す。
新しい服やおしゃれは手間はかかるがテンションは上がる。
何となくもう一度鏡の前でクルリとまわって決めポーズをしてみる。
「なかなか、可愛いんじゃない?あら、なんか、いい感じじゃない?」
自分を褒め称えて士気を挙げる。
よし、これならいける。
時間に余裕をもって、靴を履いて家を出る。
ふふふ。今日はランチを楽しむぞー。
玄関を開けると、今日も異世界に繋がっていた。しかもどこかのおしゃれな会場らしく、いつものだらりとした服じゃなくて本当に良かったと心底ほっとする。
「これはこれは美しい御嬢さん。こんにちは。」
声を掛けられ振り返ると、そこにはきらきらとしたオーラを放つ美青年がいて思わず目を細めてしまう。
髪の毛は金色だし瞳は青色だしなんだこの美しい姿は。
神様不公平だろう。ええい。今はそんな事なんて言っていられない。こんな美青年と会話するなんて私には絶対に無理だ。よし、笑って切り抜けよう。
「ふふ。失礼いたします。」
「あぁ、待って。」
声を掛けられたが、あんな美青年と会話何て私には無理だ。
そそくさとその場を離れて、会場を進んでいくとやたらと自分に視線が集まっているのを感じる。
何故だ?
そう思い少し冷静に辺りを見回してみて気が付いた。
この国は女性がおしゃれをしない文化なのか、女性達はとても地味な色のワンピースを身にまとい、髪の毛はしっかりと頭に撫でつけるようにして一つに結んでいる。
皆が私を見て驚いたような顔をしていた。
文化が違うのかと焦っていると、あっという間に男性達に囲まれ二進も三進もいかなくなる。
やめてくれ。私は美形には耐性がないんだ。もう恐怖の対象でしかない。こんなおばさんほっといてくれ。頼むから、あぁ、手何て握らないでくれ。恐ろしいわ!
なので私は一喝。
「トイレに行きたいんです。」
恥ずかしいです。はい。でも、これが一番。ついでにお腹を押さえてみせると、男性達が引いていく。
その隙にトイレに駆け込んで大きく息を吐くと次は女性達に囲まれた。あ、でも女の人に囲まれるのは好きです。何となく幸せな気持ちになれます。
「あ、あの、その髪どうやるのですか?」
「そのワンピースはどこで売っているの?」
「お化粧がお上手ね?」
たくさん質問を受けまして、女性たちの持っている化粧品を見せてもらいました。
そうするとある程度はそろっています。私も化粧は得意なほうではないけれど、人の化粧って楽しいですよね。
「簡単でよければしましょうか?」
そう言うとすぐに行列ができたので、急いで仕上げていきます。そこまで細かなものではないけれど、人数がいるから仕方がないです。
上方はハーフアップにしたり、編みこみをしたり、横に流したり、色々とバリエーションを変えます。
お化粧はアイシャドウの使い方を主に変えていきました。
口紅もその人の印象に合わせて色を変えていきます。
一人にそんなに時間をかけるわけにはいかないので、出来るだけ早く仕上げていき、仕上げ終わったお嬢さんには仕方を見てもらって他の方の者を手伝ってもらいます。
ほおら、皆さん私よりもちょっと手を加えただけで何倍も可愛い。あ、ちょっと自信がなくなってきましたが気合で堪えます。
印象の変わったお嬢さん方が会場に戻ると、男性達からどよめきが起こりました。
ふう。
いい仕事をした気がします。
お嬢さん方にはお礼と言って、ブローチやイヤリングや髪飾りなど様々な物をもらって袋に入れてもらいました。いえ、いらないって断ったんですけれど、どんどん袋に詰められていって、もう断るに断れなくって仕方なく持っています。
取りあえずやっと帰ると、時間は出発時間と同じ。
少し疲れましたが、ランチ会場へと急ぎます。
どの子も私同様おしゃれをしていて可愛くて、なんだか学生時代に戻ったようです。
「え?その袋何?」
「いや、、、フリーマーケット、、かな?」
その後、もらったものを並べて内輪フリーマーケットを開きました。
飛ぶように売れて、私はホクホクです。
家に帰って、本当はすぐに化粧とか落として自由になりたいけれど今日はその恰好のまま旦那さんを待ちます。
「ただいまぁって、何?可愛いね。」
はい。いただきました。
あぁ、旦那さんの顔が一番落ち着きますね。まあ、美形は好きなんですけどね。
今日もお仕事お疲れ様です。
フリマで稼いだお金で今日はデパートの美味しいちょっとお高め料理です。
ふふ。異世界飯とどっちが美味しいかしらね。
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