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第二十話 心の変化
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シンと共に過ごすようになって、しばらくが立ち、キャロルは番と言うものを少しずつ学んでいた。
本にも乗っていたのだが、とにかく番とはその相手を唯一と定めて愛し尽くすものなのだという事をキャロルは身をもって体験していた。
甘い言葉を毎日囁かれ。
嬉しそうにプレゼントをされる。
食事の時には時間が合えば一緒に食べようと言われ。
出来れば食事を食べさせたいと願われる。
時間があれば自分の元へと訪れ、すぐに触れようとしてくる。
キャロルは、そんなシンの様子に毎日毎日流されてしまい、そして次第に心がほだされ始めているのを自身でも感じていた。
このままじゃいけない。
自分は人などもう信じないと決めたのだと心をいつも鬼にするのだが、シンを目の前にするとぐずぐずに甘やかされそして心を溶かされるのだ。
そしてそれを嫌ではないと思う自分もいた。
キャロルは大きくため息をつくと空を見上げた。
空は広い。空は自由だ。
そう思って手を伸ばすと、そこにはいつでも届く気がした。
けれど思うのだ。
空を飛んで飛んで、飛んで行った先に何があるのか。
そして振り返るとシンが両手を広げて待っていてくれる気がした。
シンが自分の帰る場所になりつつあることに、キャロルはドキリとした。
「はぁ。」
ため息をつくと、木の陰からヨキが姿を現した。
「お嬢様、どうしたんです?」
ヨキとも時間があれば話すほどには仲良くなってしまっている。
「このままで、いいのかと思って。」
そう言うと、ヨキは小さく笑い、そして言った。
「そろそろ素直になって見てはいかがです?」
その言葉に、キャロルは目をぱちくりとさせた。
「そろそろね、帰ってこない竜を待っているやつらが可愛そうになってきまして。」
キャロルはヨキの言葉に目を見張ると、おずおずとした口調で言った。
「知っていたの?」
「この国の人間は頭が固いから、気づいているのは俺くらいですけどね。」
「シンは?」
「これは俺の推測なので、報告はしていません。で、どうなんです?」
ヨキのにやにやとした笑みに、キャロルは降参とばかりに両手を上げると頷いた。
それを見ただけでヨキは笑い声を上げる。
「やっぱりなぁ。はは!竜を待っているやつらかわいそうだなぁ。」
キャロルはその言葉に項垂れると、小さな声で尋ねた。
「言うべき、、、よね?」
「そうですねぇ。あと少しすればそろそろ気づかれそうな気はしますが、、、ご自分から言った方が、得策ではあるでしょうねぇ。」
「そうよね。」
キャロルは大きく背伸びをすると、息を吐いた。
よし、自分が竜だとしっかりとシンに言おう。
そう決めるとキャロルはすっきりとした気分になった。
「あ、後、もう逃げられはしませんが、主のお嫁様になる事もそろそろ覚悟を決めていただきたい。」
「う、、、。」
キャロルは胸を抑えると顔を赤らめた。
その様子にまたヨキは笑い声を上げた。
「ずっとマテをしている主が可愛そうになってきました。この国は竜をたいそう大切にする国ですから、お嬢様が主のお嫁様になられれば、国はにぎわうでしょうよ。」
「そう、、、かしら。」
「そうでしょうよ。」
キャロルはその言葉に顔がにやけた。
なんだかんだ言って、ほだされているのである。
「分かったわ!今日、今晩シンにちゃんと言う。」
「そりゃあ良かった!」
そう言った、その日の晩、キャロルの住む宮に火が放たれ、轟々と建物は燃えた。
たくさんの人の叫び声が響きわたる。
「キャロル!」
シンは必死にキャロルを探すが、キャロルは火が消え皆が懸命に探したがついに姿を見つけることは出来なかった。
本にも乗っていたのだが、とにかく番とはその相手を唯一と定めて愛し尽くすものなのだという事をキャロルは身をもって体験していた。
甘い言葉を毎日囁かれ。
嬉しそうにプレゼントをされる。
食事の時には時間が合えば一緒に食べようと言われ。
出来れば食事を食べさせたいと願われる。
時間があれば自分の元へと訪れ、すぐに触れようとしてくる。
キャロルは、そんなシンの様子に毎日毎日流されてしまい、そして次第に心がほだされ始めているのを自身でも感じていた。
このままじゃいけない。
自分は人などもう信じないと決めたのだと心をいつも鬼にするのだが、シンを目の前にするとぐずぐずに甘やかされそして心を溶かされるのだ。
そしてそれを嫌ではないと思う自分もいた。
キャロルは大きくため息をつくと空を見上げた。
空は広い。空は自由だ。
そう思って手を伸ばすと、そこにはいつでも届く気がした。
けれど思うのだ。
空を飛んで飛んで、飛んで行った先に何があるのか。
そして振り返るとシンが両手を広げて待っていてくれる気がした。
シンが自分の帰る場所になりつつあることに、キャロルはドキリとした。
「はぁ。」
ため息をつくと、木の陰からヨキが姿を現した。
「お嬢様、どうしたんです?」
ヨキとも時間があれば話すほどには仲良くなってしまっている。
「このままで、いいのかと思って。」
そう言うと、ヨキは小さく笑い、そして言った。
「そろそろ素直になって見てはいかがです?」
その言葉に、キャロルは目をぱちくりとさせた。
「そろそろね、帰ってこない竜を待っているやつらが可愛そうになってきまして。」
キャロルはヨキの言葉に目を見張ると、おずおずとした口調で言った。
「知っていたの?」
「この国の人間は頭が固いから、気づいているのは俺くらいですけどね。」
「シンは?」
「これは俺の推測なので、報告はしていません。で、どうなんです?」
ヨキのにやにやとした笑みに、キャロルは降参とばかりに両手を上げると頷いた。
それを見ただけでヨキは笑い声を上げる。
「やっぱりなぁ。はは!竜を待っているやつらかわいそうだなぁ。」
キャロルはその言葉に項垂れると、小さな声で尋ねた。
「言うべき、、、よね?」
「そうですねぇ。あと少しすればそろそろ気づかれそうな気はしますが、、、ご自分から言った方が、得策ではあるでしょうねぇ。」
「そうよね。」
キャロルは大きく背伸びをすると、息を吐いた。
よし、自分が竜だとしっかりとシンに言おう。
そう決めるとキャロルはすっきりとした気分になった。
「あ、後、もう逃げられはしませんが、主のお嫁様になる事もそろそろ覚悟を決めていただきたい。」
「う、、、。」
キャロルは胸を抑えると顔を赤らめた。
その様子にまたヨキは笑い声を上げた。
「ずっとマテをしている主が可愛そうになってきました。この国は竜をたいそう大切にする国ですから、お嬢様が主のお嫁様になられれば、国はにぎわうでしょうよ。」
「そう、、、かしら。」
「そうでしょうよ。」
キャロルはその言葉に顔がにやけた。
なんだかんだ言って、ほだされているのである。
「分かったわ!今日、今晩シンにちゃんと言う。」
「そりゃあ良かった!」
そう言った、その日の晩、キャロルの住む宮に火が放たれ、轟々と建物は燃えた。
たくさんの人の叫び声が響きわたる。
「キャロル!」
シンは必死にキャロルを探すが、キャロルは火が消え皆が懸命に探したがついに姿を見つけることは出来なかった。
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