【完結】人嫌いの竜(少女)は、人を愛することが出来るのか!?

かのん

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第二十三話 真実

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 建物がガラガラと音を立てて崩れていく。

 子ども達は悲鳴を上げ、シンはキャロルを抱きしめた。

 キャロルはそんなシンの腕から出ると、にっこりと笑みを浮かべた。

「キャロル?」

「シン。大丈夫だよ。」

 次の瞬間、周辺がきらめき始め、そして光が辺りを包み込んだ。

 それはまばゆく、神々しいまでの光。

 シンはそれを真っ直ぐに見つめながら、がれきから身をもって自分達を守ってくれる美しい竜を見上げた。

「キャロル。キミだったんだな。」

 キャロルはがれきをものともせず、崩れるのが収まるとその背や翼に乗るがれきを振り払った。

 見上げれば大空が見え、キャロルはその空へと惹かれた。

 見上げれば自由がある。

 だが。

 キャロルは人の姿に戻ると、シンの腕の中へと飛び込んだ。

 そんなキャロルをシンはぎゅっと抱きしめ、そして髪を撫でた。

「飛んで行ってしまうかと思った。」

「ふふ。ここが私の居場所だと、そう思ったの。だめ?」

 その言葉にシンは満面の笑みを浮かべるとキャロルをぎゅっと強く抱きしめた。

「ずっと横にいてくれ。」

「嬉しい。」

「だが、恰好がつかないな。」

「え?」

 シンはキャロルと離れると女体化した自分を見て苦笑を浮かべた。

 キャロルは自分の力のせいだと悲しげな表情を浮かべたのだが、シンは首を横に振った。

「大丈夫だ。原因さえ分かれば、どうにかなるというもの。それにヒューは恐ろしい力に手を出したと気づいていないだろう。」

「え?」

「竜の力を奪うほどの魔術が、自身に帰ってこないわけがない。」

「それって。」

 シンはため息をつくと言った。

「大丈夫。キャロルは心配する必要はない。さぁ、とにかく一度行こうか。」

 シンはキャロルを抱き上げると、子ども達に顔を向けた。

「お前達もおいで。悪いようにはしない。」

 子ども達は不安げな表情を浮かべながらも頷き、シンについて行った。



 ラハトは皇帝陛下の側近にして、全てにおいて指揮を任されるほどの信頼を得ている存在である。

 そんなラハトはヨキにキャロルが攫われる瞬間を黙認しろと命じた。ヨキは主に怒られるぞとラハトに忠告はしたが、ラハトは言った。

「皇帝陛下の今後の為だ。膿を出し切る為に必要な事だ。」

 シンはもちろんその事を知りラハトを全力で殴りつけた。

 ラハトはそれでもなお、確実にヒューを追い落とすためには必要であることを伝え、すでに居場所まで確定している事をシンに告げた。

「軍と共に行き、ヒュー様を捕まえるべきです。」

 ラハトはそう言ったが、シンはその言葉に冷たくラハトに言い返した。

「お前を信頼しているのは変わらない。だが、それでもキャロルを危険にさらしたことは許されない。キャロルが帰ったら詫びを入れろ。」

「シン様!」

 そしてラハトの静止も聞かずにシンはキャロルの元へと向かってしまったのであった。

 崩れ落ちた建物を見た瞬間、ラハトは絶望を感じ、自分は過ちを犯したのだと涙を流した。だが、瓦礫の下から現れた美しい竜と、それによりそうシンの姿を見た瞬間に神に感謝した。

 それを見ていたヨキはほっと息を吐き、泣き崩れるラハトの背中を、仕事仲間のよしみで優しくさすってやったのであった。
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