【完結】可愛くない女と婚約破棄を告げられた私は、国の守護神に溺愛されて今は幸せです

八話 スクープ

　『国の守護神ルイス・トーランドに運命の相手あらわる！』

　貴族社会にも情報誌や新聞というものはあり、その中でも有名な新情報新聞にて大々的な見出しとなって国の守護神ルイス・トーランドの恋愛事情が載せられた。

　それは幾人もの令嬢たちを絶望へと突き落とすものではあったが、飛ぶように売れた。

　しかもその相手というのが、先日舞踏会にて婚約破棄を言い渡されたエラ・コーラル嬢であったからさらに盛り上がりを見せた。

「なんて素敵！　運命の出会いのようね」

「ルイス様がコーラル嬢を慰めたところから始まったのかしらぁ！　はぁ、憧れちゃう」

「あぁぁぁっぁっぁ。ルイス様ぁ。お慕いしていたのにぃぃぃ」

「コーラル嬢って、あれだろう？　あの、ほら、ジャン・グレイの元婚約者。次の相手がトーランド殿とは、コーラル侯爵家も大喜びだろうなぁ」

「グレイ侯爵は……頭が痛いだろうなぁ」

　そんな噂が出回るものだから、ジャン・グレイは現在父に呼び出され、激怒する父の目の前で床に座り、身を縮こまらせていた。

　グレイ侯爵は青筋を立てて新聞を握りつぶすと、ジャンに投げつけた。

「この愚息がぁぁ！　お前が、舞踏会などで婚約破棄騒動などを起こすから、我が家は笑いものだぞ！　家同士の婚約をお前は何だと考えているのだ！　あぁぁ！　コーラル侯爵家からの慰謝料については仕方がない。お前が全て悪いのだからな！　エラ嬢に申し訳がない……だが、我が子ながらこんな愚息と結婚しなくてエラ嬢はよかったのだろう……」

　うなだれるように椅子に座り込んだグレイ侯爵は大きく息をつく。

「ち、父上！　し、しかし、すべてはエラが可愛くないから」

「何が可愛くないだ！　お前の目は節穴か！　あれほど礼節丁寧なしっかりとしたお嬢さんを、可愛くないなど、お前は本当に目が腐っておる」

「で、ですが、僕にはベティがいるんです！　ベティを愛しているんです！」

「っは！　愛ねぇ……」

　グレイ侯爵は一度視線を逸らすと顎髭を触り、そして大きくため息をついてから口を開いた。

「その愛とやらが真実か、今度の舞踏会に行けばいくらお前でもわかるだろうよ」

「え？」

　首をかしげるジャンに向かってグレイ侯爵は言った。

「お前は、自分の目が節穴かどうかを、しっかりと目を見開いて確認してこい。話は終わりだ。出ていけ」

　ジャンはその言葉におずおずと立ち上がり、部屋を出ていった。

　グレイ侯爵は大きくため息をつく。

「はぁ……あいつは本当に見る目がない……」

　グレイ侯爵の呟きは、誰に届くこともなかった。