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九話 祝福
しおりを挟む両家顔合わせは、貴族御用達の料理店の一室で行うことになり、エラは満面の笑顔の両親と共に緊張した面持ちで座っていた。
予定の時刻の二十分前にあまりに楽しみにワクワクとしていたコーラル一家は到着し、今か今かとトーランド一家を待っていた。そして予定時刻の五分前、トーランド一家が到着した。
エラは緊張した面持ちでいたのだが、トーランド一家の人数の多さにまず驚いた。
普通ならば両親とルイスだけくればいいのだが、トーランド一家は祖母と祖父、そして長男とその嫁と子ども二人、三男とその嫁と子ども一人、長女とその夫と子ども四人と一家というより一族が勢ぞろいしたような雰囲気であった。
部屋がどうしてこんなに広いのかと思っていたがなるほどとエラは納得する。
両親はにこやかにトーランド夫妻とあいさつを交わし、エラはルイスと視線が合い、頬を赤らめながら笑みを交し合った。
ルイスは国の守護神とも呼ばれる男である。自分で本当に大丈夫だろうかと思っていたのだが、ルイスの両親もその家族もみんながエラに好意的であった。
「我が家のルイスは、本当に女の影がなく、心配していたのです! エラさん、ありがとう!」
「本当に……一時はルイスは男性が好きなのではと家族会議を開いたほどなのですよ?」
「いやぁ、ルイス兄さんはエラさんのような方がタイプだったのですねぇ! 今まで女の気配がなさ過ぎて好みすら知りませんでしたよ!」
「可愛い方がお嫁に来てくれて嬉しいわぁ!」
皆が口々にエラに好意を示しながら話をしてくれるものだから、エラは、はにかんだ笑みを浮かべながら、なんて素敵な家族なのだろうと思った。
にぎやかで、楽しくて、エラはこんな素敵な家庭で育つことが出来たからルイスはこんなにも素敵に育ったのだろうななんてことを考えていた。
「エラ嬢。すまない。うちはうるさいんだよ」
ルイスの言葉に、エラは首を横に振った。
「いいえ! とても素敵なご家族ですね!」
「そういってもらえると助かる」
トーランド夫妻とコーラル夫妻は意気投合したようで、その後、お互いの子どもの褒め合い合戦を始めた。
子供の時の話まで持ち出され、エラもルイスも恥ずかしさから目をつむりたくなるが、それでも相手の小さな時の話を聞けるのは楽しかった。
食事が終わった後は、若い二人で庭でも散歩してきなさいと言われ、二人は苦笑を浮かべながら庭へと出た。
「ルイス様のご家族、本当に素敵ですね」
「いや、エラ嬢のご両親こそ」
二人はくすくす笑い合い、手をそっとお互いに握って散歩を始めた。
そんな二人の様子を両家はそろって眺めながら、両親たちは涙を流す。
「大きくなったものだ。いつまでも子どもだと思っていたのに」
「本当ですなぁ。ですが、良縁に恵まれて、本当に、本当によかった」
二人の結婚は、皆に祝福されていた。
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