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十二話 エラとルイス

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 舞踏会であった一件は次の日には新新聞社の見出しを飾った。

『グレイ侯爵家のジャン殿は、ベティ嬢のたくさんの愛の前に砕け散る』

『国の守護神 可愛いを語る』

『真実の愛とは ~愛を得た者と偽りの愛を得た者~』

 様々な見出しは社交界を大いに賑わせた。そしてそんな中、ジャンとベティの結婚は両家の間で静かに決められたのちに、二人は城から遠く離れた領地へと送られた。

 グレイ侯爵は跡取りをジャンの弟のグレゴリーに決めたらしい。ジャンが社交界に戻ってくる日はないだろう。

 それはベティも同じであり、ベティの両親もまた、社交界には顔を出すことが二度となくなった。

 エラはグレイ侯爵からもう一度謝罪を受けたが、全てはジャンのしたことだからとグレイ侯爵を笑顔で許したことで、一部からは天使ではないかと、その心根の美しさが称賛された。

 心根の美しさを持つものは、真実の愛を得るのだと社交界では噂となり、令嬢たちはエラに憧れの視線を向けた。

 そんなエラとルイスの結婚式がまもなくと迫る中、エラはルイスと共に、婚約者として迎える最後の舞踏会に参加していた。

 ジャンとの最後の舞踏会の時のエラは間違いなく不幸であった。

 そんな彼女が今、舞踏会に参加するどの令嬢よりも幸せそうに微笑み、輝いている。

 ルイスはそんなエラを見て優しく微笑む。

「エラ。今日も可愛いよ」

 ジャンとの一件があって以来、ルイスはエラと呼ぶようになり、エラにもルイスと呼び捨ててほしいと懇願した。

 その理由をエラが尋ねると、顔を赤らめながらルイスは説明した。

 呼ぶなと言ったのに、ジャンがエラの名前を呼び捨てるのがどうしてもいやで、今まで呼ばれた回数以上に自分がエラの名前を呼びたいのだと告げられたエラは、なんと可愛らしい人だろうかとルイスのことを思った。

「ルイスも素敵よ」

 二人は微笑み合う。

 舞踏会は煌びやかな光に包まれ、社交界で今最も注目を集める二人には視線が集まる。

「お似合いだわ」

「本当に」

「エラ嬢が可愛くないなんて、元婚約者に言われていたとは驚きだなぁ」

 そんな声が聞こえる中、エラは内心思った。

 ー私は可愛くなんてないわ。ただ、ルイスに恋をして変わっただけ。

「結婚式が待ち遠しい。エラ。これ以上可愛くなってはダメだ」

 そんなことを言う愛しい人を見つめながらエラは微笑んで言った。

「ルイス様。大好きです」

 ルイスはその言葉に破顔し、それを見ていた周囲は驚きのあまり目を見開く。

「俺も。大好きだよ。愛している」

 甘い言葉が聞こえた人々と、一生懸命に聞き耳を立てて聞いていた人々はその甘ったるさに、驚きを隠しきれなかった。

 次の日も、新情報新聞社は盛り上がりを見せるのであった。そしてその日の新聞も、今まで史上最高に、飛ぶように売れたそうだ。

 エラとルイスはその後おしどり夫婦となり、その後も何度も、新情報新聞を盛り上げるのであった。


★★★★★

 最後まで読んでくださり、ありがとうございました!
 少しでも、楽しんで読んでもらえていたら、とても嬉しいです。

 作者 かのん

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