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七話 魔獣討伐

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 暗黒竜の背の上へと立ち、アレクサンダーは聖剣を構える。

「只者ではないと思っていたが、勇者だったのか?」

 暗黒竜はアレクサンダーの事を助けた時の事を思い出しながら、喉の奥でゴロゴロと笑い声を上げた。

 アレクサンダーは、霊山の頂上まであと少しという所の、崖下の木に引っ掛かっていた。最初に見た時には気にも留めなかった暗黒竜だったのだが、その臭いを嗅いだ瞬間に、メルルの元へと連れて行くことを決めた。

 竜には、直観というモノが確かに存在する。漠然としてはいるが、運命のように引き合わせるべき相手と言うものが直観として分かる。だからこそ、メルルの為にこの男を助けたのだ。

 暗黒竜はにやりと笑うと言った。

「メルルを託すつもりが、戦いに来るとは驚いたわ。」

「ちゃんとメルルには攻撃が当たらないように魔法も掛けてきた。安心しろ。」

「あぁ。それを聞けて安心した。そのまま頬って来ていたらお前の喉を噛みちぎっていたところだ。」

「それは恐ろしいな。」

 そう言いながらも、魔獣の口から吐き出す炎の塊を、空中で交わしていく。

 魔獣の体はぶくぶくとまるで溶岩のように蠢いている。

「勇者、あれを倒せるか?竜とは相性の悪い生き物だ。」

「っは!当たり前だ。なんたって魔獣と戦う相性がいい一番の相手は勇者だけだからな!」

 次の瞬間、暗黒竜が魔獣に近づき、すれ違う時をねらってアレクサンダーは剣を振り下ろす。

「ぎゃぁっぁぁ!」

「っち!浅かったか!」

 魔獣の首元から緑の血が噴き出すも、切り落とすまではいかず、魔獣は空を飛び続ける。

「もう一度頼む!」

 そうアレクサンダーが言った時だった。魔獣が突然メルル目掛けて急降下を始めた。

「暗黒竜!」

「分かっている!」

 暗黒竜は羽を閉じてまるで弓矢のように急降下していく。そして、メルルに向かって魔獣が大きな口を開いた時、アレクサンダーは暗黒竜から飛び降り、聖剣を振り切った。

 次の瞬間、魔獣の首が飛び、地面に落ちる。

 最後の雄叫びすら上げられぬまま、自分の死すら感じる暇はなかっただろう。魔獣の体は空気に説けるようにして消え、緑の血も消え去った。

 暗黒竜は地面ギリギリの場所で方向転換し、宙をクルリとまわってから、メルルの元へと降りてきた。

「メルル!無事か?」

 暗黒竜はメルルに声を掛けるが、メルルからの返答はない。

 アレクサンダーは聖剣を鞘へと戻し、メルルの元へと歩み寄ると、その眼前で手を振り、そしてふむと考えると暗黒竜に言った。

「うん。目を開けたまま、気絶している。」

「ふむ・・それは、大丈夫なのか?」

「大丈夫だと思うが・・うん。ショックが大きかったかな。」

 竜様方のメイドちゃんには、目の前で魔獣の首が転がると言うのは、ショックが大きすぎたようだった。




 



 


 




 

 
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