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六話 メルルの願い

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 水中の中から、真っ赤な炎が地面へと落ちていくのが見える。アレクサンダーは炎が地面に落ちた衝撃で、泉の中で水圧によって岸へと押し戻された。

「メルル!」

 アレクサンダーは起き上がるとメルルがいない事に気づき、水の中にもう一度飛び込んだ。

 水中で衝撃によって意識を失っているメルルを見つけるとアレクサンダーはその体を必至に引っ張り、水面へと浮上し、岸へと運んだ。

「メルル!しっかりしろ!メルル!」

 メルルの頬を叩き、起こそうとするが、意識が戻らない。

 アレクサンダーはメルルを寝かせると、気道を確保し、唇を重ねると空気を送り込む。

「メルル!おい!しっかりしろ!早く逃げるぞ!起きろ!」

 数回人工呼吸を繰り返した時、メルルが口から水を吐きだし、呼吸を取り戻した。

 アレクサンダーはその背をさすりながら意識を取り戻した様子にホッとすると、メルルを抱き起し、その体を抱きしめた。

「良かった。メルル・・・本当に良かった。怪我はしていないか?!」

「え?・・・」

 目を覚ましたメルルはアレクサンダーを見つめて目を丸くして固まった。

「メルル?・・大丈夫か?どこか、怪我をしたのか?・・メルル?とにかく、逃げないと。」

 アレクサンダーの頬に、メルルはゆっくりと手を当て、そして次の瞬間、思いきりひねりあげた。

「いってぇぇぇ!ちょっと、メルル!こんな時になんだよ!」

 メルルの腕力でも爪が食い込んでかなり痛い。

 アレクサンダーの言葉に、メルルは驚いた声で言った。

「貴方、アレクサンダーなの?まさか、こんなに、大きかったの?!」

「え?」

 アレクサンダーは自身の手を見て、それから、自分の顔や足を見て驚いた。

 先程までぶかぶかだったシャツとズボンが、今ではぴったりになっている。

「俺・・・戻っている!」

 次の瞬間、首にかけていたネックレスが輝き始め、聖剣本来を取り戻した。それを手にしたアレクサンダーはにやりと笑って、メルルに言った。

「ははっ!これなら逃げる必要はないな。」

「アレクサンダー?」

 アレクサンダーはメルルの頭に手を乗せ、優しく撫でると言った。

「メルル言っただろう?俺は女の人以外には負けたことはないんだ。すぐに戻るから待っとけ。簡単だけど守護魔法を掛けとく。こっから出るなよ。」

「貴方、魔法も使えるの!?」

 アレクサンダーはその言葉に苦笑を浮かべる。

「普通人間ってのは、他の種族に負けないように魔法の基本くらいは使えるんだ。」

「そうなの・・・あの・・本当に、大丈夫?」

 メルルの言葉に、アレクサンダーはにやりと笑ってしっかりと頷く。その姿にメルルの心臓は跳ねた。

「じゃあ、ちょっくら、行ってくる!」

 次の瞬間アレクサンダーは地面を蹴り、宙へと舞い上がる。そして近くにいた竜へと飛び乗ると、竜から竜へと器用に飛び移り、そして暗黒竜に向かって口笛を吹いた。

 暗黒竜はそれに気づくと、アレクサンダーをその背に乗せ、魔獣に向かって一直線に飛んでいく。

 メルルはその姿を下から見上げながら、手を組み、この心臓の高鳴りは何だろうかと思いながらも、必死で皆の無事を祈った。


 
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