2 / 7
二話 純白を真っ赤に染めてやりたい気分です
しおりを挟む
教会の鐘の音が鳴り響く。
「ここに、二人の結婚を認めます。二人は誓いのキスを」
神父の声はシンとした静けさの中響き渡って聞こえる。
式は異様な雰囲気に包まれていた。
本来ならばいるはずの新郎側の親族席はがら空きであり、新婦側しかいない。
それもそのはずである。
今結婚の誓いを行っているのは、どちらもランドット侯爵家の者であり、義理の姉弟なのである。
スカーレットは心臓が煩いくらいのバクバクと鳴る中、ルイスが嬉しそうなとろけるような笑みでベールを取るのを間近で見つめていた。
この義弟は本当に顔が良い。
切れ長のエメラルドの瞳と、通った鼻筋。そして薄い唇。身長はかなり高く、スカーレットは見上げなければならない。
この美貌に騙されて、何人の令嬢達が涙を呑んだことであろうか。
「スカーレット」
名前を呼ばれて、式の最中であったと意識を引き戻される。
頬に手を添えられると、その冷たいひやりとした感触にびくっとしてしまう。
今からこの美しい義弟とキスするのか。
それもこれもアゼフのせいである。
アゼフがこの場にいたならば、まず間違いなくスカーレットの純白のドレスは真っ赤に染ったことであろう。
ゆっくりとルイスの顔が近づく。
スカーレットは目をぎゅっとつぶっていると、それにルイスはくすりと笑い声を漏らしてスカーレットのおでこに優しく唇を押し当てた。
「永遠に大切にすると誓うよ」
うっとりとした微笑に、スカーレットは頬を引きつらせるしかなかった。
式がどうにか恙なく終わり、親族への対応は両親が引き受けてくれた。
スカーレットは着替えを済ませると、ソファへとぐったりとした様子で座り込み、そして今後について頭を悩ませる。
まずはアゼフの実家へと抗議の文面を送りつけると共に、慰謝料はこちらがもらうべきと主張しなければならない。
そう頭の中で考えながらも、スカーレットは大きなため息をついた。
「アゼフ……結婚が嫌なんだったら言ってくれたらよかったのに」
アゼフと婚約したのは十三歳の時であった。そしてその次の年に、ルイスがランドット家へと跡継ぎになる為に引き取られた。
国の法によって跡継ぎとなれるのは家系の血筋を引く男児のみとなっており、だからこそランドット家の親戚からルイスは侯爵家の跡継ぎとして引き取られたのである。
決してアゼフと仲が悪かったわけではない。
栗色の髪の毛と、藍色のへにゃりと垂れた瞳の愛嬌のある顔立ちをしているアゼフは、決して女性にもてはやされるような外見ではなかったがそれでもスカーレットにとっては大切な婚約者であった。
「私……そんなに魅力のない女かしら……」
アゼフの手紙を思い出して肩を落として居た時、後ろから突然ぎゅっと抱きしめられて、スカーレットは小さく悲鳴を上げた。
「ここに、二人の結婚を認めます。二人は誓いのキスを」
神父の声はシンとした静けさの中響き渡って聞こえる。
式は異様な雰囲気に包まれていた。
本来ならばいるはずの新郎側の親族席はがら空きであり、新婦側しかいない。
それもそのはずである。
今結婚の誓いを行っているのは、どちらもランドット侯爵家の者であり、義理の姉弟なのである。
スカーレットは心臓が煩いくらいのバクバクと鳴る中、ルイスが嬉しそうなとろけるような笑みでベールを取るのを間近で見つめていた。
この義弟は本当に顔が良い。
切れ長のエメラルドの瞳と、通った鼻筋。そして薄い唇。身長はかなり高く、スカーレットは見上げなければならない。
この美貌に騙されて、何人の令嬢達が涙を呑んだことであろうか。
「スカーレット」
名前を呼ばれて、式の最中であったと意識を引き戻される。
頬に手を添えられると、その冷たいひやりとした感触にびくっとしてしまう。
今からこの美しい義弟とキスするのか。
それもこれもアゼフのせいである。
アゼフがこの場にいたならば、まず間違いなくスカーレットの純白のドレスは真っ赤に染ったことであろう。
ゆっくりとルイスの顔が近づく。
スカーレットは目をぎゅっとつぶっていると、それにルイスはくすりと笑い声を漏らしてスカーレットのおでこに優しく唇を押し当てた。
「永遠に大切にすると誓うよ」
うっとりとした微笑に、スカーレットは頬を引きつらせるしかなかった。
式がどうにか恙なく終わり、親族への対応は両親が引き受けてくれた。
スカーレットは着替えを済ませると、ソファへとぐったりとした様子で座り込み、そして今後について頭を悩ませる。
まずはアゼフの実家へと抗議の文面を送りつけると共に、慰謝料はこちらがもらうべきと主張しなければならない。
そう頭の中で考えながらも、スカーレットは大きなため息をついた。
「アゼフ……結婚が嫌なんだったら言ってくれたらよかったのに」
アゼフと婚約したのは十三歳の時であった。そしてその次の年に、ルイスがランドット家へと跡継ぎになる為に引き取られた。
国の法によって跡継ぎとなれるのは家系の血筋を引く男児のみとなっており、だからこそランドット家の親戚からルイスは侯爵家の跡継ぎとして引き取られたのである。
決してアゼフと仲が悪かったわけではない。
栗色の髪の毛と、藍色のへにゃりと垂れた瞳の愛嬌のある顔立ちをしているアゼフは、決して女性にもてはやされるような外見ではなかったがそれでもスカーレットにとっては大切な婚約者であった。
「私……そんなに魅力のない女かしら……」
アゼフの手紙を思い出して肩を落として居た時、後ろから突然ぎゅっと抱きしめられて、スカーレットは小さく悲鳴を上げた。
39
あなたにおすすめの小説
破棄ですか?私は構いませんよ?
satomi
恋愛
なんだかよくわからない理由で王太子に婚約破棄をされたミシェル=オーグ公爵令嬢。王太子のヴレイヴ=クロム様はこの婚約破棄を国王・王妃には言ってないらしく、サプライズで敢行するらしい。サプライズ過ぎです。
その後のミシェルは…というかオーグ家は…
思いを込めてあなたに贈る
あんど もあ
ファンタジー
ファナの母が亡くなった二ヶ月後に、父は新しい妻とその妻との間に生まれた赤ん坊を家に連れて来た。義母は、お前はもうこの家の後継者では無いと母から受け継いだ家宝のネックレスを奪うが、そのネックレスは……。
義母と義妹に虐げられていましたが、陰からじっくり復讐させていただきます〜おしとやか令嬢の裏の顔〜
有賀冬馬
ファンタジー
貴族の令嬢リディアは、父の再婚によりやってきた継母と義妹から、日々いじめと侮蔑を受けていた。
「あら、またそのみすぼらしいドレス? まるで使用人ね」
本当の母は早くに亡くなり、父も病死。残されたのは、冷たい屋敷と陰湿な支配。
けれど、リディアは泣き寝入りする女じゃなかった――。
おしとやかで無力な令嬢を演じながら、彼女はじわじわと仕返しを始める。
貴族社会の裏の裏。人の噂。人間関係。
「ふふ、気づいた時には遅いのよ」
優しげな仮面の下に、冷たい微笑みを宿すリディアの復讐劇が今、始まる。
ざまぁ×恋愛×ファンタジーの三拍子で贈る、スカッと復讐劇!
勧善懲悪が好きな方、読後感すっきりしたい方にオススメです!
婚約破棄された令嬢が呆然としてる間に、周囲の人達が王子を論破してくれました
マーサ
恋愛
国王在位15年を祝うパーティの場で、第1王子であるアルベールから婚約破棄を宣告された侯爵令嬢オルタンス。
真意を問いただそうとした瞬間、隣国の王太子や第2王子、学友たちまでアルベールに反論し始め、オルタンスが一言も話さないまま事態は収束に向かっていく…。
完 これが何か、お分かりになりますか?〜リスカ令嬢の華麗なる復讐劇〜
水鳥楓椛
恋愛
バージンロード、それは花嫁が通る美しき華道。
しかし、本日行われる王太子夫妻の結婚式は、どうやら少し異なっている様子。
「ジュリアンヌ・ネモフィエラ!王太子妃にあるまじき陰湿な女め!今この瞬間を以て、僕、いいや、王太子レアンドル・ハイリーの名に誓い、貴様との婚約を破棄する!!」
不穏な言葉から始まる結婚式の行き着く先は———?
王子と令嬢の別れ話
朱音ゆうひ@『桜の嫁入り』発売中です
恋愛
「婚約破棄しようと思うのです」
そんなありきたりなテンプレ台詞から、王子と令嬢の会話は始まった。
なろう版:https://ncode.syosetu.com/n8666iz/
「婚約破棄された聖女ですが、実は最強の『呪い解き』能力者でした〜追放された先で王太子が土下座してきました〜
鷹 綾
恋愛
公爵令嬢アリシア・ルナミアは、幼い頃から「癒しの聖女」として育てられ、オルティア王国の王太子ヴァレンティンの婚約者でした。
しかし、王太子は平民出身の才女フィオナを「真の聖女」と勘違いし、アリシアを「偽りの聖女」「無能」と罵倒して公衆の面前で婚約破棄。
王命により、彼女は辺境の荒廃したルミナス領へ追放されてしまいます。
絶望の淵で、アリシアは静かに真実を思い出す。
彼女の本当の能力は「呪い解き」——呪いを吸い取り、無効化する最強の力だったのです。
誰も信じてくれなかったその力を、追放された土地で発揮し始めます。
荒廃した領地を次々と浄化し、領民から「本物の聖女」として慕われるようになるアリシア。
一方、王都ではフィオナの「癒し」が効かず、魔物被害が急増。
王太子ヴァレンティンは、ついに自分の誤りを悟り、土下座して助けを求めにやってきます。
しかし、アリシアは冷たく拒否。
「私はもう、あなたの聖女ではありません」
そんな中、隣国レイヴン帝国の冷徹皇太子シルヴァン・レイヴンが現れ、幼馴染としてアリシアを激しく溺愛。
「俺がお前を守る。永遠に離さない」
勘違い王子の土下座、偽聖女の末路、国民の暴動……
追放された聖女が逆転し、究極の溺愛を得る、痛快スカッと恋愛ファンタジー!
離縁された悪妻の肩書きに縛られて生きてきましたが、私に流れる高貴な血が正義と幸せな再婚を運んできてくれるようです
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・虐げられた嫁・ハピエン・ざまぁモノ・クズな元夫】 (※完結保証)
ハンナは離縁された悪妻のレッテルを貼られていた。理由は嫁ぎ先のマクリーン子爵家の財産に手を付け、政治犯を匿ったからだという。
一部は事実だったが、それにはハンナなりの理由がちゃんとあった。
ハンナにそれでも自分を大切にしてくれた人への感謝を忘れず健気に暮らしていたのだが、今度は元夫が、「新しい妻が欲しがるから」という理由で、ハンナが皇帝殿下から賜った由緒正しい指輪を奪っていってしまった。
しかし、これには皇帝殿下がブチ切れた!
皇帝殿下がこの指輪を私に授けたのには意味があったのだ。
私に流れるかつての偉大な女帝の血。
女帝に敬意を表さない者に、罰が下される――。
短め連載です(3万字程度)。設定ゆるいです。
お気軽に読みに来ていただけたらありがたいです!!
他サイト様にも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる