【完結】結婚式当日に婚約破棄されましたが、何か?

かのん

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二話 純白を真っ赤に染めてやりたい気分です

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 教会の鐘の音が鳴り響く。

「ここに、二人の結婚を認めます。二人は誓いのキスを」

 神父の声はシンとした静けさの中響き渡って聞こえる。

 式は異様な雰囲気に包まれていた。

 本来ならばいるはずの新郎側の親族席はがら空きであり、新婦側しかいない。
 
 それもそのはずである。

 今結婚の誓いを行っているのは、どちらもランドット侯爵家の者であり、義理の姉弟なのである。

 スカーレットは心臓が煩いくらいのバクバクと鳴る中、ルイスが嬉しそうなとろけるような笑みでベールを取るのを間近で見つめていた。

 この義弟は本当に顔が良い。

 切れ長のエメラルドの瞳と、通った鼻筋。そして薄い唇。身長はかなり高く、スカーレットは見上げなければならない。

 この美貌に騙されて、何人の令嬢達が涙を呑んだことであろうか。

「スカーレット」

 名前を呼ばれて、式の最中であったと意識を引き戻される。

 頬に手を添えられると、その冷たいひやりとした感触にびくっとしてしまう。

 今からこの美しい義弟とキスするのか。

 それもこれもアゼフのせいである。

 アゼフがこの場にいたならば、まず間違いなくスカーレットの純白のドレスは真っ赤に染ったことであろう。

 ゆっくりとルイスの顔が近づく。

 スカーレットは目をぎゅっとつぶっていると、それにルイスはくすりと笑い声を漏らしてスカーレットのおでこに優しく唇を押し当てた。

「永遠に大切にすると誓うよ」

 うっとりとした微笑に、スカーレットは頬を引きつらせるしかなかった。


 式がどうにか恙なく終わり、親族への対応は両親が引き受けてくれた。

 スカーレットは着替えを済ませると、ソファへとぐったりとした様子で座り込み、そして今後について頭を悩ませる。

 まずはアゼフの実家へと抗議の文面を送りつけると共に、慰謝料はこちらがもらうべきと主張しなければならない。

 そう頭の中で考えながらも、スカーレットは大きなため息をついた。

「アゼフ……結婚が嫌なんだったら言ってくれたらよかったのに」

 アゼフと婚約したのは十三歳の時であった。そしてその次の年に、ルイスがランドット家へと跡継ぎになる為に引き取られた。

 国の法によって跡継ぎとなれるのは家系の血筋を引く男児のみとなっており、だからこそランドット家の親戚からルイスは侯爵家の跡継ぎとして引き取られたのである。

 決してアゼフと仲が悪かったわけではない。

 栗色の髪の毛と、藍色のへにゃりと垂れた瞳の愛嬌のある顔立ちをしているアゼフは、決して女性にもてはやされるような外見ではなかったがそれでもスカーレットにとっては大切な婚約者であった。

「私……そんなに魅力のない女かしら……」

 アゼフの手紙を思い出して肩を落として居た時、後ろから突然ぎゅっと抱きしめられて、スカーレットは小さく悲鳴を上げた。

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