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リナリーの秘密の時間14
しおりを挟む雨はしばらくすると止み、朝日が昇ると濡れた土も乾き始めた。
リナリーの濡れた服は湿っていてが、少しずつ乾き始めていた。
馬車は人目を避けるように細い道に入り、そして森の中へと入って行った。
薄暗い森の中はシンと静かで、リナリーは見つからないように道ではなく木に隠れながら馬を歩ませていた。
そして、馬車が止まったのは、一軒の小さな山小屋であった。
馬車からは男達が降りてきたかと思うと、カールは力なくダラリとした様子で男に担がれていた。
どうやら意識を失っている様子である。
やはり騙されたのだ。
リナリーは悩んだ。
きっと城では私がいなくなり騒動になっているだろう。
一度城に戻り助けを呼ぶか、このまま見張りを続け、シバが見つけてくれるのを待つか。
その時であった。
「雑な尾行だ。バレないと思ったのかい?」
次の瞬間、リナリーの視界は暗転した。
遠くから誰かが呼ぶ声が聞こえる。この声は誰だ?
あ、そうだ。
カールだ。
「カール?、、、いったぃ、、、、」
リナリーは重たい瞼をゆっくりと開け、後頭部を抑えると、痛みに耐えるように唸り声を上げた。
「リナリー!どうしてお前がここにいるんだ?!」
カールは青ざめた表情で、リナリーを見下ろしている。
手を縛られており、リナリーはどうにか体を起こすとカールを見つめた。
「大丈夫?さっきは意識を失っていたようだけれど。」
「目覚めたらお前がいたから、驚いたんだ。怪我はないか?」
「頭が少し痛いだけです。」
「そうか、、、、、巻き込んですまない。」
「いえ、自業自得ですから。」
そうリナリーが言った時であった。後ろからくくくっと笑う声が響いた。
振り返ると、そこには片目に眼帯を付けた、切れ長の瞳の短髪の男がいた。
「こんな時に仲良しこよしかい?」
「、、、私達をどうするつもり?」
リナリーは男を睨みつけた。
「さぁてね。」
「他の男達はどこへ行ったの?」
「本当に、勇ましいなぁ。だが、質問に答えるのは貴方のほうだ。何故、貴方のような方がここにいるんですかい?」
男の眼は恐ろしく鋭く、リナリーは一瞬引きそうになる心を、必死に振るい立たせた。
私の身元は知っているのね。
「貴方のような方?リナリー。どういう事だ?」
カールは意味が分からないように、焦っているような表情を浮かべている。
それに男は驚いたように目を丸くした。
「まさか知らないってわけか。カール様。あんたは周りを見てもいないんだな。」
「な、、、お前無礼だぞ!知らない事くらい僕にだってあるのは当たり前だろ。」
「そう言って言い訳をして、知る事のできる事すら知らないでいるのは、惰性ではないですかね?」
リナリーは男の話を聞き、敵意を感じないのが不思議だった。
それに、この部屋にも違和感がある。
ここは、本当にカールが担ぎ込まれた小屋だろうか。
カールは男の言葉に苦虫を噛んだような表情を浮かべた。
「もう一度尋ねます。どうして貴方のような方がここにいるんですかい?」
「カールが攫われる姿を見て、思わず。」
「なんで公爵令嬢が馬に乗れるんですかい?」
「馬くらい誰でも乗れるわ。」
「いやいや、普通の令嬢はのれませんよ。では、何故カール様の事をご存知なのですかい?貴方の立場では知り合いになっているのはいささか危険なのでは無いか?」
リナリーはカールを見た。
「カールは何者なの?」
男は額に手を当てて天井を仰いだ。
「貴方も知らないんですかい。」
男は呆れたように、大きく息を吐いた。
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