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第一話
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オフィリア帝国とレイズ王国とは長い間争いが続いていたが、先の大戦にて和平条約が結ばれた。
その証としてお互いの国の代表が三年間交換留学をする事となった。というのは建前で、簡単に言えば人質である。
オフィリア帝国からは皇女であるオーレリアが、レイズ王国からは第一王女であるリリアーネが赴くことに決まる。
オフィリア帝国の帝王オランドはオーレリアを呼びつけると、厳しい口調で言った。
「役立たずは役立たずなりに、しかと役割を果たせ。」
「仰せのままに。」
恭しく頭を垂れるその姿に、オランドは舌打ちをするとオーレリアの銀糸のような美しい髪を乱暴に掴み上げて顔を上げさせた。
白い肌に映える美しい瞳はまるでエメラルドのような輝きを放つ。
「なんとおぞましき顔か。やはり魔女の子は魔女か!」
そう吐き捨てるように言うと、オーレリアの髪を引き、床に乱暴に叩きつけた。
オーレリアは石造りの床に体を叩きつけられるも声を漏らさず、耐えた。
「ふ。可愛げもない。」
「も、、申し訳ありません。」
「下がれ。その顔、二度と見せるな。」
その言葉に、オーレリアは父が自分にレイズ王国にて死ねと言っているのが分かった。
戦争狂いの父は早くこの和平などなくなればいいと思っているに違いない。
唇を噛み体が震えだしそうになるのを必死でこらえると顔を上げた。
「恐れながら、帝王様。どうか、、、民に目を向けて下さいませ。もう、民は戦えまけん。どうか、せめて三年、民に安らぎを与えてくださいませ。」
次の瞬間、体が打ち付けられオーレリアはうめき声を上げた。
「小娘が、わしに異を唱えるか。」
「どうか、、、どうかお願いでございます。」
「まだ言うか!」
「どうか、、どうか!」
「ならばせいぜい死なぬように耐えてみせよ。レイズ王国でそなたが死ぬ事が戦争の幕開けだ!」
オーレリアはその後意識を失うまで打ち付けられ、目が覚めると質素な自室のベッドの上に寝かされていた。
「ぅ、、、、。」
体を起き上がらせると全身に痛みが走る。それでもなお、オーレリアは蹌踉めきながらも立ち上がり、窓から外を見た。
空には星が輝き、城下町には灯が灯る。その一つ一つに家があり、人々は平穏を願って暮らしているのだ。
「姫様!お目覚めになられたのですか?!」
扉の隙間から明かりが入り、メイドのミリーが駆け寄ってきた。そしてふらつくオーレリアの体を支えると涙目で懇願する。
「どうかお休みください!姫様、、どうか、ご自愛下さいませ。」
「大丈夫よ。ミリー。わたくしは、休んでいる暇はないわ。だって、、、このままでは、民の苦しみが続いてしまう。」
「皆姫様が尽力して下さっている事は分かっております。ですから、どうか。どうか。」
ミリーに泣きながら懇願され、オーレリアは渋々といった様子でベッドに入り横になった。
毛布に包まりながら、オーレリアは体を震わせた。
目を閉じると先程の恐怖が蘇ってくる。
帝王オランドの眼光は凄まじく、その逞しい体躯からしてみればオーレリアなどいつでも殺せるであろう。
だが、オランドにはオーレリアは殺せない。
震える手を必死で抑えながら小さな声で呟き自分を落ち着かせるのは、小さな頃からの癖であった。
「大丈夫。わたくしは、まだ死ねない。大丈夫。」
オフィリア帝国には、オーレリアの味方はいない。
オーレリアの今ではただ一人となった兄は父と同様に戦闘狂であり、オーレリアを毛嫌いしている。
それもそのはずだ。
兄は帝王が后の唯一の子。その他の愛妾から生まれた兄弟らはすでに戦死や病死などでいない。そしてオーレリアは、父が見初めた魔女の子。母である魔女は、自分の境遇に嘆き悲しみ、父を呪って死んだ。それ以来、オランドはオーレリアを見るなり母を思い出すのか一度は愛した女の子だというのに憎しみ、蔑んできた。
オーレリアはすでに自分が愛される事はこの世では無いのだと悟っている。
父は自分を憎しみ。
母は自分を見捨て。
兄は自分を見下し。
自分は自分の未来を諦めた。
オーレリアは実の所、メイドのミリーでさえ信じてはいない。何故なら、彼女も命じられればオーレリアの食事に毒を混ぜたり、虫を入れたりしていると知っているからだ。
人とはほとほと醜い生き物であり、我が身可愛さに血も涙もないことをさらりと行う。
それでもオーレリアは、この国を愛していた。
緑が豊かで、どの季節でも美しく花々が咲き誇る土地は潤っており、とても美しい。
だからこそ、守りたかった。
しかし、レイズ王国との戦争により民は疲弊し、豊かな土地も踏み荒らされて無残な姿となっている所が多い。
オーレリアは帝王の言葉を思い出す。
『ならばせいぜい死なぬように耐えてみせよ。レイズ王国でそなたが死ぬ事が戦争の幕開けだ!』
せめて自分が人質となる三年間だけでも。つかの間の平穏だとしても、その間だけでも民に平穏に生きて欲しい。
オーレリアは決意を決めた。
絶対に生き延びてみせる。この国の民のために。
その証としてお互いの国の代表が三年間交換留学をする事となった。というのは建前で、簡単に言えば人質である。
オフィリア帝国からは皇女であるオーレリアが、レイズ王国からは第一王女であるリリアーネが赴くことに決まる。
オフィリア帝国の帝王オランドはオーレリアを呼びつけると、厳しい口調で言った。
「役立たずは役立たずなりに、しかと役割を果たせ。」
「仰せのままに。」
恭しく頭を垂れるその姿に、オランドは舌打ちをするとオーレリアの銀糸のような美しい髪を乱暴に掴み上げて顔を上げさせた。
白い肌に映える美しい瞳はまるでエメラルドのような輝きを放つ。
「なんとおぞましき顔か。やはり魔女の子は魔女か!」
そう吐き捨てるように言うと、オーレリアの髪を引き、床に乱暴に叩きつけた。
オーレリアは石造りの床に体を叩きつけられるも声を漏らさず、耐えた。
「ふ。可愛げもない。」
「も、、申し訳ありません。」
「下がれ。その顔、二度と見せるな。」
その言葉に、オーレリアは父が自分にレイズ王国にて死ねと言っているのが分かった。
戦争狂いの父は早くこの和平などなくなればいいと思っているに違いない。
唇を噛み体が震えだしそうになるのを必死でこらえると顔を上げた。
「恐れながら、帝王様。どうか、、、民に目を向けて下さいませ。もう、民は戦えまけん。どうか、せめて三年、民に安らぎを与えてくださいませ。」
次の瞬間、体が打ち付けられオーレリアはうめき声を上げた。
「小娘が、わしに異を唱えるか。」
「どうか、、、どうかお願いでございます。」
「まだ言うか!」
「どうか、、どうか!」
「ならばせいぜい死なぬように耐えてみせよ。レイズ王国でそなたが死ぬ事が戦争の幕開けだ!」
オーレリアはその後意識を失うまで打ち付けられ、目が覚めると質素な自室のベッドの上に寝かされていた。
「ぅ、、、、。」
体を起き上がらせると全身に痛みが走る。それでもなお、オーレリアは蹌踉めきながらも立ち上がり、窓から外を見た。
空には星が輝き、城下町には灯が灯る。その一つ一つに家があり、人々は平穏を願って暮らしているのだ。
「姫様!お目覚めになられたのですか?!」
扉の隙間から明かりが入り、メイドのミリーが駆け寄ってきた。そしてふらつくオーレリアの体を支えると涙目で懇願する。
「どうかお休みください!姫様、、どうか、ご自愛下さいませ。」
「大丈夫よ。ミリー。わたくしは、休んでいる暇はないわ。だって、、、このままでは、民の苦しみが続いてしまう。」
「皆姫様が尽力して下さっている事は分かっております。ですから、どうか。どうか。」
ミリーに泣きながら懇願され、オーレリアは渋々といった様子でベッドに入り横になった。
毛布に包まりながら、オーレリアは体を震わせた。
目を閉じると先程の恐怖が蘇ってくる。
帝王オランドの眼光は凄まじく、その逞しい体躯からしてみればオーレリアなどいつでも殺せるであろう。
だが、オランドにはオーレリアは殺せない。
震える手を必死で抑えながら小さな声で呟き自分を落ち着かせるのは、小さな頃からの癖であった。
「大丈夫。わたくしは、まだ死ねない。大丈夫。」
オフィリア帝国には、オーレリアの味方はいない。
オーレリアの今ではただ一人となった兄は父と同様に戦闘狂であり、オーレリアを毛嫌いしている。
それもそのはずだ。
兄は帝王が后の唯一の子。その他の愛妾から生まれた兄弟らはすでに戦死や病死などでいない。そしてオーレリアは、父が見初めた魔女の子。母である魔女は、自分の境遇に嘆き悲しみ、父を呪って死んだ。それ以来、オランドはオーレリアを見るなり母を思い出すのか一度は愛した女の子だというのに憎しみ、蔑んできた。
オーレリアはすでに自分が愛される事はこの世では無いのだと悟っている。
父は自分を憎しみ。
母は自分を見捨て。
兄は自分を見下し。
自分は自分の未来を諦めた。
オーレリアは実の所、メイドのミリーでさえ信じてはいない。何故なら、彼女も命じられればオーレリアの食事に毒を混ぜたり、虫を入れたりしていると知っているからだ。
人とはほとほと醜い生き物であり、我が身可愛さに血も涙もないことをさらりと行う。
それでもオーレリアは、この国を愛していた。
緑が豊かで、どの季節でも美しく花々が咲き誇る土地は潤っており、とても美しい。
だからこそ、守りたかった。
しかし、レイズ王国との戦争により民は疲弊し、豊かな土地も踏み荒らされて無残な姿となっている所が多い。
オーレリアは帝王の言葉を思い出す。
『ならばせいぜい死なぬように耐えてみせよ。レイズ王国でそなたが死ぬ事が戦争の幕開けだ!』
せめて自分が人質となる三年間だけでも。つかの間の平穏だとしても、その間だけでも民に平穏に生きて欲しい。
オーレリアは決意を決めた。
絶対に生き延びてみせる。この国の民のために。
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