29 / 54
第二十九話
しおりを挟む
極秘に結成されていたオーレリアに仕える部隊であるガデスダークサイドは、独自のルートから帝国にて暗躍する執事や侍女らからグレッグとアルバスの情報を得ると、いよいよかと動き出した。
これまではオーレリア皇女に直接話をすることはなかった。
だが、時が来たのだ。
執事や侍女という仮の姿から、漆黒の軍服へと姿を変えると、ガデスダークサイドはマッドマスター家当主であるエドモンドと情報を共有して動き始める。
エドモンドがオーレリアに仕える意思を示した際に、すでにその真意を問うためにガデスダークサイドは接触を果たしていた。そして、志が同じ事を理解し合っている。
オーレリア皇女の行動の先を読み、暗躍するのが臣下の努め。
エドモンドはマッドマスター家のオーレリア護衛部隊結成しており、馬車と騎乗部隊を用意するとオーレリア皇女の部屋に隣接する客間で待機をする。
ガデスダークサイドは、オーレリアの出立の用意をすると、オーレリアの動向を一人が皆に伝えた。
「オーレリア皇女殿下は、聖獣の守護を得たようです。そして、今、グレッグの動向を知り、こちらへと参ります。」
ガデスダークサイドと同じ漆黒の軍服に見を包んだエドモンドは、ガデスダークサイドを主として率いるエルザと握手を交わした。
エルザはオーレリアの侍女のふりをしていたが、今は侍女の時の様な笑みはなく、エドモンドに言った。
「我らが帝王、オーレリア様のために。」
「もちろんだ。」
「オーレリア様がこちらにお戻りになられます。」
廊下を歩く音が響いて聞こえ、皆が跪き、オーレリアを待つ。
オーレリアは、レスターと共に部屋の前に立つと言った。
「レスター様。もし、また会えたなら、その時はまた花畑に新しい花を植えましょうね。」
レスターは拳を握りしめると、真っ直ぐにオーレリアを見つめた。
「本当に行かれるのですか。」
「ふふ。なんの事でしょう。私は体調が悪いので休むだけです。」
「誤魔化さないでください。」
オーレリアはレスターの瞳を見つめ返すと、穏やかな笑みを浮かべて尋ねた。
「心配して下さるのですか?」
「当たり前でしょう。貴方を、、、。」
だが、その言葉の先をレスターは言えない。自分はレイズ王国の者である。
だから、一度視線を外して、レスターは苦しげに息を吐く。
オーレリアはその様子に期待してしまいそうになる気持ちに蓋をした。
何個も重ねられた心の蓋は幾重にも重なり、その重さを増している。
「レスター様。指を。」
「え?」
オーレリアはレスターの手を取ると、小指を絡めて言った。
「約束です。帰ってきましたら、お花を植えましょうね?」
「ッ!、、、、あぁ。武運を。では。」
何もできない自分が不甲斐なくて、レスターは背を向けるとその場から歩き去った。
マリアの時には感じたことのない胸の衝動に酷く動揺しながらも、鉛のように重い足を進めた。
これまではオーレリア皇女に直接話をすることはなかった。
だが、時が来たのだ。
執事や侍女という仮の姿から、漆黒の軍服へと姿を変えると、ガデスダークサイドはマッドマスター家当主であるエドモンドと情報を共有して動き始める。
エドモンドがオーレリアに仕える意思を示した際に、すでにその真意を問うためにガデスダークサイドは接触を果たしていた。そして、志が同じ事を理解し合っている。
オーレリア皇女の行動の先を読み、暗躍するのが臣下の努め。
エドモンドはマッドマスター家のオーレリア護衛部隊結成しており、馬車と騎乗部隊を用意するとオーレリア皇女の部屋に隣接する客間で待機をする。
ガデスダークサイドは、オーレリアの出立の用意をすると、オーレリアの動向を一人が皆に伝えた。
「オーレリア皇女殿下は、聖獣の守護を得たようです。そして、今、グレッグの動向を知り、こちらへと参ります。」
ガデスダークサイドと同じ漆黒の軍服に見を包んだエドモンドは、ガデスダークサイドを主として率いるエルザと握手を交わした。
エルザはオーレリアの侍女のふりをしていたが、今は侍女の時の様な笑みはなく、エドモンドに言った。
「我らが帝王、オーレリア様のために。」
「もちろんだ。」
「オーレリア様がこちらにお戻りになられます。」
廊下を歩く音が響いて聞こえ、皆が跪き、オーレリアを待つ。
オーレリアは、レスターと共に部屋の前に立つと言った。
「レスター様。もし、また会えたなら、その時はまた花畑に新しい花を植えましょうね。」
レスターは拳を握りしめると、真っ直ぐにオーレリアを見つめた。
「本当に行かれるのですか。」
「ふふ。なんの事でしょう。私は体調が悪いので休むだけです。」
「誤魔化さないでください。」
オーレリアはレスターの瞳を見つめ返すと、穏やかな笑みを浮かべて尋ねた。
「心配して下さるのですか?」
「当たり前でしょう。貴方を、、、。」
だが、その言葉の先をレスターは言えない。自分はレイズ王国の者である。
だから、一度視線を外して、レスターは苦しげに息を吐く。
オーレリアはその様子に期待してしまいそうになる気持ちに蓋をした。
何個も重ねられた心の蓋は幾重にも重なり、その重さを増している。
「レスター様。指を。」
「え?」
オーレリアはレスターの手を取ると、小指を絡めて言った。
「約束です。帰ってきましたら、お花を植えましょうね?」
「ッ!、、、、あぁ。武運を。では。」
何もできない自分が不甲斐なくて、レスターは背を向けるとその場から歩き去った。
マリアの時には感じたことのない胸の衝動に酷く動揺しながらも、鉛のように重い足を進めた。
23
あなたにおすすめの小説
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
【完結】断罪された悪役令嬢は、全てを捨てる事にした
miniko
恋愛
悪役令嬢に生まれ変わったのだと気付いた時、私は既に王太子の婚約者になった後だった。
婚約回避は手遅れだったが、思いの外、彼と円満な関係を築く。
(ゲーム通りになるとは限らないのかも)
・・・とか思ってたら、学園入学後に状況は激変。
周囲に疎まれる様になり、まんまと卒業パーティーで断罪&婚約破棄のテンプレ展開。
馬鹿馬鹿しい。こんな国、こっちから捨ててやろう。
冤罪を晴らして、意気揚々と単身で出国しようとするのだが、ある人物に捕まって・・・。
強制力と言う名の運命に翻弄される私は、幸せになれるのか!?
※感想欄はネタバレあり/なし の振り分けをしていません。本編より先にお読みになる場合はご注意ください。
愛されなかった公爵令嬢のやり直し
ましゅぺちーの
恋愛
オルレリアン王国の公爵令嬢セシリアは、誰からも愛されていなかった。
母は幼い頃に亡くなり、父である公爵には無視され、王宮の使用人達には憐れみの眼差しを向けられる。
婚約者であった王太子と結婚するが夫となった王太子には冷遇されていた。
そんなある日、セシリアは王太子が寵愛する愛妾を害したと疑われてしまう。
どうせ処刑されるならと、セシリアは王宮のバルコニーから身を投げる。
死ぬ寸前のセシリアは思う。
「一度でいいから誰かに愛されたかった。」と。
目が覚めた時、セシリアは12歳の頃に時間が巻き戻っていた。
セシリアは決意する。
「自分の幸せは自分でつかみ取る!」
幸せになるために奔走するセシリア。
だがそれと同時に父である公爵の、婚約者である王太子の、王太子の愛妾であった男爵令嬢の、驚くべき真実が次々と明らかになっていく。
小説家になろう様にも投稿しています。
タイトル変更しました!大幅改稿のため、一部非公開にしております。
ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない
魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。
そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。
ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。
イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。
ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。
いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。
離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。
「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」
予想外の溺愛が始まってしまう!
(世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!
旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~
榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。
ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。
別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら?
ー全50話ー
【短編】夫の国王は隣国に愛人を作って帰ってきません。散々遊んだあと、夫が城に帰ってきましたが・・・城門が開くとお思いですか、国王様?
五月ふう
恋愛
「愛人に会いに隣国に行かれるのですか?リリック様。」
朝方、こっそりと城を出ていこうとする国王リリックに王妃フィリナは声をかけた。
「違う。この国の為に新しい取引相手を探しに行くのさ。」
国王リリックの言葉が嘘だと、フィリナにははっきりと分かっていた。
ここ数年、リリックは国王としての仕事を放棄し、女遊びにばかり。彼が放り出した仕事をこなすのは、全て王妃フィリナだった。
「待ってください!!」
王妃の制止を聞くことなく、リリックは城を出ていく。
そして、3ヶ月間国王リリックは愛人の元から帰ってこなかった。
「国王様が、愛人と遊び歩いているのは本当ですか?!王妃様!」
「国王様は国の財源で女遊びをしているのですか?!王妃様!」
国民の不満を、王妃フィリナは一人で受け止めるしか無かったーー。
「どうしたらいいのーー?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる