【完結】皇女は当て馬令息に恋をする

かのん

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第三十一話

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 オフィリア帝国では、レイズ王国王女リリアーナが庭にてお茶を楽しんでいた。

 真新しいドレスはとてもきらびやかで、決して安物では無いと誰が見ても分かる代物であった。

「はぁ、退屈ねぇ。」

 帝王は床に伏しグレッグはオーレリアを迎えに行ってしまった。

 リリアーナはお茶を一口飲んだ。

「お父様が行けって言うから来たのに、あーあ。暇だわ~。」

 リリアーナは、決して馬鹿な王女ではない。オフィリア帝国の帝王であるオランドやグレッグの残虐さも調べはついており、強かに彼らの好きそうなあざとく馬鹿な女を演じきっていた。

 そうでなければ人質である自分がどんな目に合うかなど目に見えており、リリアーナは息をつく。

 父は言った。

『お前なら大丈夫だろう。』

 確かに、人の好みを把握して、演じるのは得意だし、媚を売るのにも拒否感はない。

 まぁ、宝石やドレスも嫌いではないし、くれるというならもらう。

 けれど、父の一言はリリアーナを思いの外傷つけていた。

「私の事、、、きっとお父様はいらないのよ。」

 耳に入ってくる情報は、オーレリア皇女がレイズ王国でも女神のようだと噂されるようになったとの事や、国王も弟も気に入っているとのことなど、あまり聞きたいものではなかった。

 一国の王女たるもの、民の為に生きなければならない。

 そんな鏡のようなオーレリアの姿は、リリアーナには眩しすぎて、帝王やグレッグと共に貶すことは、少し気分を良くした。

 けれど、その時だけ。

 あざとく馬鹿な女の仮面は、部屋に帰ればすぐに落ち、情けない自分に戻ってしまう。

 オーレリアが輝くぶんだけ、自分の小物感を感じ、リリアーナは息を吐いた。

「オーレリア皇女がきっと帝王位を賜る事になるでしょうね。そうなったら、私はどうなるのかしら。」

 リリアーナは泣きたくなった。

 本当は、今すぐにでもレイズ王国に帰りたい。けれど父はそれを許さないだろう。

 役目を果たせと言うに違いない。

「とりあえず、オーレリア皇女が来たら、その時に話し合うしかないわね。」

 小さな声でぶつぶつと独り言を言うリリアーナの周りには誰もいない。

 そう。

 リリアーナの味方などここには誰もいないのだ。

 オーレリアに反して、リリアーナはただの15歳の女の子でしかなく、自分の身を悪意で固めて守る事しかできない、賢くも弱い少女であった。
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