4 / 44
四話 両親からの話
しおりを挟む
いつものように朝食を済ませた後、珍しく両親から話があると呼び出され、ミラは何の用事だろうかと訝しげに思っていた。
部屋に入るとそこにはサマンサと、ロンの姿もあり、どういう事なのかさらに困惑してしまう。
ロンが来ると言う話は聞いていないばかりか、サマンサの横に座っているという事に疑問を感じる。
「お父様、お母様・・これは、一体。」
父ザックはミラに座るように促し、厳しい表情を浮かべて大きなため息をついた。
「はっきりと言うが、お前にはがっかりした。」
「え?」
言われた意味が分からず困惑していると、母であるマリーナがわざとらしくため息をつくと言った。
「貴方の性格の悪さが社交界で噂になっているではないですか。はぁ、嘆かわしい。妹をいじめる姉なんて言われて、私、とても恥ずかしい思いをしたのですよ。」
「え?」
噂の事は把握はしているが、そこまで大事にはなっていない。それを本気にしているのは若い子達ばかりであり、しっかりとしている貴婦人らは本気になどしていない。
そうミラは思っていたが、ザックの言葉に顔が青ざめてしまう。
「お前は、この家の長女なのだぞ。それなのにもかかわらず、そんな噂が流れるなど・・はぁ。私はどこで育て方を間違えたのか。」
「このような娘に育って・・・はぁ、情けない。」
わざとらしく大きなため息をつかれ、ミラの体は縮こまってしまう。
「そもそもお前には自覚が足りないのだ。」
「本当に。サマンサはこんなに良い子なのに、なんで貴方はこんなにダメなのかしら。」
両親の言葉に、震えそうになりながら拳をぎゅっと握る。
ミラは自分自身に堪えろ、我慢しろと言い聞かせ、涙が溢れそうになるのをぐっと耐えた。
けれど、両親から飛んでくる矢のように鋭い言葉に負けそうになり、助けを求めるようにロンに視線を向けてしまった。
-どうして、そんな顔をしているの?
ロンは笑いを堪えるように奥歯を噛み、ミラを蔑むような視線を向けていた。
婚約者の歪なその笑みに、ミラは背筋がぞっとした。
噂がどこから出ているのか、調べなかったミラではない。そして、その噂の発端に近しい所にロンがいたという事には、たどり着いていた。
だが、信じたくなかった。
自分の婚約者であるはずのロンが、自分を悪く言うことなどないと思いたかった。
ただ、ロンが自分を婚約者として大切にしてくれていると信じたかった。
幼い頃から、ずっと側にいたのだ。
だが、現実は無情にもそんなミラの心を打ち砕く。
「ローレン公爵。私としても、ミラが婚約者な為に今周りにも悪く言われていまして。申し訳ないのですが、ミラとの婚約を破棄したいのです。」
さも当たり前のように紡がれた言葉が、頭の中をぐるぐると巡る。
「そうだな。ミラとの婚約など、破棄したくなるのは当然。」
「そうよねぇ。」
その言葉の意味が理解できず、ミラは呆然としていた。
その横で、サマンサが悲しげな瞳でミラの事を見てきたかと思うと口を開いた。
「ねぇお姉様・・・本当に、私の悪口を他の方々にしているの?」
はっきり言えば、今はそれどころではない。
だが、悲しげなその瞳に、ミラは慌てて首を横に振った。
「い、いいえ。私は貴方の悪口なんて言っていないわ。」
他の婦人らから忠告されることはあっても、ミラ自身がサマンサの悪口をいう事はなかった。
「・・そう、よね。優しいお姉様だもの。ねぇやっぱりお父様、お母様、それにロン様。そんな噂に惑わされてはいけないわ。」
純粋にそう言うサマンサに、ロンは慌てたように口を開いた。
「サマンサ嬢。悪いけれど、これは嘘ではないよ。」
「そうだぞ。サマンサ。それにな、ロン殿から言い提案をもらったのだ。」
「そうですよ。私達もずっとそうしたいと思っていたのです。」
「え?」
首を傾げるサマンサの手を、ロンは優しくとると言った。
「君の姉であるミラとは婚約を破棄する。だから、私と婚約を結んでほしいんだ。サマンサ嬢。」
「え?!」
サマンサは目を丸くしながらも頬を赤くし、ロンはその手にちゅっとキスをした。
-どういう、ことなの?
その光景をミラは呆然として見つめながら、震え始めた体をどうにか抑えようと自分の手をぎゅっと握る事しかできなかった。
★★★★
※作者かのんからのお知らせ
Twitter をしています。
アカウント かのん @QLu4NtugNyQDKYd
フォローしていただけると、とっても嬉しいです。
小説家になろう様でも、『ちびっ子元聖女は自分は成人していると声を大にして言いたい!』を連載中です。アイリス大賞8に応募していまして、評価やブクマいただけると、とっても嬉しいです。応援をできれば、どうか、よろしくお願いいたします!!
部屋に入るとそこにはサマンサと、ロンの姿もあり、どういう事なのかさらに困惑してしまう。
ロンが来ると言う話は聞いていないばかりか、サマンサの横に座っているという事に疑問を感じる。
「お父様、お母様・・これは、一体。」
父ザックはミラに座るように促し、厳しい表情を浮かべて大きなため息をついた。
「はっきりと言うが、お前にはがっかりした。」
「え?」
言われた意味が分からず困惑していると、母であるマリーナがわざとらしくため息をつくと言った。
「貴方の性格の悪さが社交界で噂になっているではないですか。はぁ、嘆かわしい。妹をいじめる姉なんて言われて、私、とても恥ずかしい思いをしたのですよ。」
「え?」
噂の事は把握はしているが、そこまで大事にはなっていない。それを本気にしているのは若い子達ばかりであり、しっかりとしている貴婦人らは本気になどしていない。
そうミラは思っていたが、ザックの言葉に顔が青ざめてしまう。
「お前は、この家の長女なのだぞ。それなのにもかかわらず、そんな噂が流れるなど・・はぁ。私はどこで育て方を間違えたのか。」
「このような娘に育って・・・はぁ、情けない。」
わざとらしく大きなため息をつかれ、ミラの体は縮こまってしまう。
「そもそもお前には自覚が足りないのだ。」
「本当に。サマンサはこんなに良い子なのに、なんで貴方はこんなにダメなのかしら。」
両親の言葉に、震えそうになりながら拳をぎゅっと握る。
ミラは自分自身に堪えろ、我慢しろと言い聞かせ、涙が溢れそうになるのをぐっと耐えた。
けれど、両親から飛んでくる矢のように鋭い言葉に負けそうになり、助けを求めるようにロンに視線を向けてしまった。
-どうして、そんな顔をしているの?
ロンは笑いを堪えるように奥歯を噛み、ミラを蔑むような視線を向けていた。
婚約者の歪なその笑みに、ミラは背筋がぞっとした。
噂がどこから出ているのか、調べなかったミラではない。そして、その噂の発端に近しい所にロンがいたという事には、たどり着いていた。
だが、信じたくなかった。
自分の婚約者であるはずのロンが、自分を悪く言うことなどないと思いたかった。
ただ、ロンが自分を婚約者として大切にしてくれていると信じたかった。
幼い頃から、ずっと側にいたのだ。
だが、現実は無情にもそんなミラの心を打ち砕く。
「ローレン公爵。私としても、ミラが婚約者な為に今周りにも悪く言われていまして。申し訳ないのですが、ミラとの婚約を破棄したいのです。」
さも当たり前のように紡がれた言葉が、頭の中をぐるぐると巡る。
「そうだな。ミラとの婚約など、破棄したくなるのは当然。」
「そうよねぇ。」
その言葉の意味が理解できず、ミラは呆然としていた。
その横で、サマンサが悲しげな瞳でミラの事を見てきたかと思うと口を開いた。
「ねぇお姉様・・・本当に、私の悪口を他の方々にしているの?」
はっきり言えば、今はそれどころではない。
だが、悲しげなその瞳に、ミラは慌てて首を横に振った。
「い、いいえ。私は貴方の悪口なんて言っていないわ。」
他の婦人らから忠告されることはあっても、ミラ自身がサマンサの悪口をいう事はなかった。
「・・そう、よね。優しいお姉様だもの。ねぇやっぱりお父様、お母様、それにロン様。そんな噂に惑わされてはいけないわ。」
純粋にそう言うサマンサに、ロンは慌てたように口を開いた。
「サマンサ嬢。悪いけれど、これは嘘ではないよ。」
「そうだぞ。サマンサ。それにな、ロン殿から言い提案をもらったのだ。」
「そうですよ。私達もずっとそうしたいと思っていたのです。」
「え?」
首を傾げるサマンサの手を、ロンは優しくとると言った。
「君の姉であるミラとは婚約を破棄する。だから、私と婚約を結んでほしいんだ。サマンサ嬢。」
「え?!」
サマンサは目を丸くしながらも頬を赤くし、ロンはその手にちゅっとキスをした。
-どういう、ことなの?
その光景をミラは呆然として見つめながら、震え始めた体をどうにか抑えようと自分の手をぎゅっと握る事しかできなかった。
★★★★
※作者かのんからのお知らせ
Twitter をしています。
アカウント かのん @QLu4NtugNyQDKYd
フォローしていただけると、とっても嬉しいです。
小説家になろう様でも、『ちびっ子元聖女は自分は成人していると声を大にして言いたい!』を連載中です。アイリス大賞8に応募していまして、評価やブクマいただけると、とっても嬉しいです。応援をできれば、どうか、よろしくお願いいたします!!
28
あなたにおすすめの小説
〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。
了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。
テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。
それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。
やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには?
100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。
200話で完結しました。
今回はあとがきは無しです。
冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。
婚約破棄されたので四大精霊と国を出ます
今川幸乃
ファンタジー
公爵令嬢である私シルア・アリュシオンはアドラント王国第一王子クリストフと政略婚約していたが、私だけが精霊と会話をすることが出来るのを、あろうことか悪魔と話しているという言いがかりをつけられて婚約破棄される。
しかもクリストフはアイリスという女にデレデレしている。
王宮を追い出された私だったが、地水火風を司る四大精霊も私についてきてくれたので、精霊の力を借りた私は強力な魔法を使えるようになった。
そして隣国マナライト王国の王子アルツリヒトの招待を受けた。
一方、精霊の加護を失った王国には次々と災厄が訪れるのだった。
※「小説家になろう」「カクヨム」から転載
※3/8~ 改稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる