虐げられ魔物の国に救われた少女は、恩を返すために人間の王国へと嫁ぐ!?

かのん

文字の大きさ
9 / 14

第九話

しおりを挟む
 水が吹き上がり、ジャックフォッドはその背にエマを庇いながら目を細める。

 何かが水の中にいる。

『主・・やっと、やっと見つけた。』

「何者だ!?」

 水の中からゆっくりと七色の瞳を持つ者が姿を現す。

 馬のような体に炎のように揺らめく鬣を持ち、その尾は長くまるで蛇のようにうねる。

 ジャックフォッドはその姿に眉間にシワを寄せる。

「まさか・・・神獣か?!」

 宙に浮く神獣は、ジャックフォッドに敵意を露にすると声をあげた。

『主を隠していたのはお前か!!忌々しい!』

「主とは?!エマ嬢のことを言っているのか?!」

『エマ!?!?あぁ、主の名がそのように短く、短絡的なものにされるのは胸が締め付けられる。主よ!今お助けいたしますゆえ!』

 次の瞬間、ジャックフォッドに向かって神獣は光を放つ。

 それを剣で弾いたジャックフォッドは、神獣に向かって声をあげる。

「話を聞いてほしい!そして、貴方の話も聞かせてくれ!」

『罪人の話など聞くものか!!』

 次々と攻撃を仕掛けてくる神獣の攻撃を、ジャックフォッドは必死に受け流すが、次第に強くなっていくのを感じて顔を歪める。

 後ろにエマを庇いながらでは明らかに分が悪い。

 どうするかと思案していた隙をついて、神獣は地面を踏み鳴らして大地に亀裂を生んだ。

「きゃぁぁ!!」

 エマは悲鳴をあげる。

 亀裂がジャックフォッドを飲み込もうと大きく開いたのである。

「ジャックフォッド様!!やめて!ジャックフォッド様に酷いことをしないで!」

 自分の声など聞いてはもらえないとエマは思いながらも必死に声をあげた。

 だが、次の瞬間、ジャックフォッドを神獣は助け、その体を背にのせてエマの前に跪いたのである。

 先程までの殺気が一瞬で消え、エマの前で神獣は尻尾をブンブンと振っている。

「え?」

『主からの初めての命令、嬉しかったです!!』

「え?」

 エマは目の前で起こっていることの意味がわからずに、ジャックフォッドを見ると、その顔は現状に困惑しているものであった。

 エマは視線を神獣に戻すと尋ねた。

「あの、貴方はどなたなの?それに、主ってどういうことにのかしら?」

 エマの問いかけに、神獣はさらに嬉しそうに尻尾をブンブンと振ると言った。

『我が名はリフレ帝国が神獣レフリー。そして貴方様は我が主にて、正当なるリフレ帝国の王であらせられます!!』

 その言葉に、ジャックフォッドもエマもしばらくの間、意味がわからずに首をかしげて固まってしまったのであった。  

しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)

柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!) 辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。 結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。 正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。 さくっと読んでいただけるかと思います。

好きすぎます!※殿下ではなく、殿下の騎獣が

和島逆
恋愛
「ずっと……お慕い申し上げておりました」 エヴェリーナは伯爵令嬢でありながら、飛空騎士団の騎獣世話係を目指す。たとえ思いが叶わずとも、大好きな相手の側にいるために。 けれど騎士団長であり王弟でもあるジェラルドは、自他ともに認める女嫌い。エヴェリーナの告白を冷たく切り捨てる。 「エヴェリーナ嬢。あいにくだが」 「心よりお慕いしております。大好きなのです。殿下の騎獣──……ライオネル様のことが!」 ──エヴェリーナのお目当ては、ジェラルドではなく獅子の騎獣ライオネルだったのだ。

婚約破棄された王太子妃候補ですが、私がいなければこの国は三年で滅びるそうです。

カブトム誌
恋愛
王太子主催の舞踏会。 そこで私は「無能」「役立たず」と断罪され、公開の場で婚約を破棄された。 魔力は低く、派手な力もない。 王家に不要だと言われ、私はそのまま国を追放されるはずだった。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 この国が長年繁栄してきた理由も、 魔獣の侵攻が抑えられていた真の理由も、 すべて私一人に支えられていたことを。 私が国を去ってから、世界は静かに歪み始める。 一方、追放された先で出会ったのは、 私の力を正しく理解し、必要としてくれる人々だった。 これは、婚約破棄された令嬢が“失われて初めて価値を知られる存在”だったと、愚かな王国が思い知るまでの物語。 ※ざまぁ要素あり/後半恋愛あり ※じっくり成り上がり系・長編

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ 

さくら
恋愛
 会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。  ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。  けれど、測定された“能力値”は最低。  「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。  そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。  優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。  彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。  人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。  やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。  不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。

婚約破棄されたので、辺境で「魔力回復カフェ」はじめます〜冷徹な辺境伯様ともふもふ聖獣が、私の絶品ご飯に夢中なようです〜

咲月ねむと
恋愛
「君との婚約を破棄する!」 料理好きの日本人だった前世の記憶を持つ公爵令嬢レティシアは、ある日、王太子から婚約破棄を言い渡される。 身に覚えのない罪を着せられ、辺境のボロ別荘へ追放……と思いきや、レティシアは内心ガッツポーズ! 「これで堅苦しい妃教育から解放される! 今日から料理三昧よ!」 彼女は念願だったカフェ『陽だまり亭』をオープン。 前世のレシピと、本人無自覚の『魔力回復スパイス』たっぷりの手料理は、疲れた冒険者や町の人々を瞬く間に虜にしていく。 そんな店に現れたのは、この地を治める「氷の騎士」こと辺境伯ジークフリート。 冷徹で恐ろしいと噂される彼だったが、レティシアの作った唐揚げやプリンを食べた瞬間、その氷の表情が溶け出して――? 「……美味い。この味を、一生求めていた気がする」 (ただの定食なんですけど、大げさすぎません?) 強面だけど実は甘党な辺境伯様に胃袋を掴んで求婚され、拾った白い子犬には懐かれ、レティシアの辺境ライフは毎日がお祭り騒ぎ! 一方、彼女を捨てた王太子と自称聖女は、レティシアの加護が消えたことでご飯が不味くなり、不幸のどん底へ。 「戻ってきてくれ」と泣きつかれても、もう知りません。 私は最強の旦那様と、温かいご飯を食べて幸せになりますので。 ※本作は小説家になろう様でも掲載しています。ちなみに以前投稿していた作品のリメイクにもなります。

処理中です...